表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カケラ~日常  作者: 崋山楽 
想い
17/20

第十七話 夕日

 二つの場所が同時に光に包まれた。




「『場』より生み出されし『闇』よ、『闇』を生み出しし『場』よ今一度光の中に帰るがよい。光を受け入れ、無に帰すが良い」



   **********************




「…え?」

「目が覚めた?」

 私は目を覚ました。

 一番最初に目にしたのは青空。

 見える太陽の位置からして、今は真昼時だ。

 一番最初に耳にしたのは、淡々としていてもどこか暖かい感じのする声だ。

「え、あ…」

 私は起き上がり周りを見渡した。

 近くにはここまで一緒にやってきた隊の人と、増援で来てくれた人が横たわっていた。

 そして、後ろにはひっそりと立っているのはこの世でもっとも長く存在している子ども、イツ・キ様。

「『闇』と『場』の脅威は去った。もう、ここは大丈夫」

「あ、はい」

 私は今だ状況把握が済んでいない頭で、返事を返した。

 私は、イツ・キ様の格好に違和感を覚えた。

「あなた以外はまだ気を失っています。外傷の手当ては終わってます。命にかかわることは無いでしょう」

「…はい。…ありがとうございます」

 やはり未だに回らない頭で返事をした。

 そして、唐突に理解した。

 イツ・キ様に対しての違和感の正体を。

 イツ・キ様が普段身に着けている、力を込めた飾り類が一切無いのだ。


 いつもジャラジャラ付けているわけではない。

 しかし、どんな状況下でも対処できるように最低限のものは身に着けていいる。

 いつも結い上げている髪は風になびき、体を締め付けていた飾り紐は無くなりゆったりとした格好になっている。


「イツ・キ様その格好は…」

「ああ…あなた達の力全てと同等の力を出すにはこれぐらいでないと…」

 イツ・キ様は私の拙い一言でさっし、説明をしてくれた。


 つまり、私達の『闇』の核に届いた力が、イツ・キ様の力のこもった飾り全てと匹敵したのだろう。


「村人にあなた達を運んでくれるように頼んだ。そろそろ来る頃だから、それまで休んでいなさい」

「はい」

 それから少しの時間がたった。

 私以外は目を覚ますことなく、村から来た人たちによって村へと運ばれていった。

 私も手を貸してもらい、村へと入っていった。




「私はこの村の周りの柵を創り直してきます。ほかの人のことはお願い」

「はい。お任せください」

 村にみんなが落ち着くと、イツ・キ様は私にそう言って出て行った。


 確かに、この村の周りにある柵は『魔物』が寄り付かないように『力』が込めてある。

 それが、月日がたちボロボロになっている。

 それを直すのだ。


 私は休み休み、みんなを見回った。

 みんなは借りている一軒には入りきらず、周辺の家々に分散して眠っている。


「イツ・キ様」

「どうかした?」

 夕刻になり、私はイツ・キ様のところに行った。

「何人か目覚めまして、その人たちに他の人のことを頼みました。…村の人が夕餉を用意してくれました。そろそろ暗くなりますし、今日はこの辺で引き上げましょう。あなた達も、家にお帰りなさい」

 イツ・キ様とイツ・キ様の周りにいる数人の子どもに言った。

 子ども達は、私の言葉を素直に聞き入れ家へと帰っていった。

「イツ・キ様」

 イツ・キ様は手を止めはしたが、動く気配が無い。

 沈もうとしている太陽を見ている。

「イツ・キ様」

 もう一度、今度は強めに声をかけた。

 イツ・キ様がゆっくりと私を振り返った。

「行きましょう。村の人たちが待っています」

「分かりました」

 イツ・キ様が歩き出し、私はイツ・キ様の夕餉の支度が整っている家まで案内した。




 翌日




 翌日にはみんなが目を覚ました。


 イツ・キは昨日に引き続き柵の修繕をしていた。

 他の者は各々やるべき事を始めた。


 『場』があった場所と『闇』が最後に現れた場所、それと『闇』が今までに現れた場所にそれぞれ向かい、その場所を清めた。


 夕刻には全員が作業を終えた。

 無論、イツ・キも。


 その日の夕餉には全員が揃った。

 村にある一番大きな家にも、全員は入りきらないため広場にテーブルが置かれた。


 イツ・キは上座に座っている。

「私は明朝学校に帰ります」

 食事の最中、イツ・キが言った。

「ベキ・ス、ス・タン」

「はい」

「はい」

 イツ・キと共に村に来た二人が答えた。

「二人が問題なければ、共に発ちましょう」

「はい」

「問題ありません」

 二人はそれぞれ頷き、返事をした。

「増援できた隊の者達も速やかに撤収すること。後のことは小部隊に任せていいですね?」

 イツ・キは続いて周りを見回しながら言った。

「はい。分かりました」

「勿論です。お任せください」

 増援部隊は承知し、小部隊の隊長も承知した。


 小部隊の大人は『魔物』退治を生業にしている。

 退治すれば国からの報奨金だけでなく、近くにそれによって被害をこうむっている集落や、人がいればそこからも幾ばくかの礼金がもらえる。

 小部隊にいる子ども達はいわば社会勉強をしているだけなのだ。

 多少の給金はもらえるが、生業にしているわけではない。

 求められ、後から来た増援もまた、校外授業の一環なのだ。

 こちらも、多少の報奨金をもらえる。

 しかし、集落にはそれを理解していないものもいるし、派遣されてきた子どもの中には、少し物欲が強いものもいる。

 無用な争いを防ぐために、事が終われば小部隊以外のものは速やかに撤収することが義務付けられている。


「増援部隊は、明日の昼ごろここを立つ予定です」

 増援部隊の報告を聞き、イツ・キは席をたった。

「分かりました。私たちのほうが早くに学校に着くでしょうが、報告書は各々出すこと」

「はい」

「学校に着くまで気を抜かないように」

「はい」

 イツ・キはそう言うと、その場から去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ