バリス。
惑星『バリス』。
その星は秩序の星。
光輝く、尊き星。
誰もが規律正しく、規則に則り。
ただ悪人に立ち向かい、ただ勇敢に挑む。
強きを助け、弱きを挫く。
それをモットーに。
正義の星とも呼ばれていた。
いつしか、銀河警察となっていた。
「たしか……きみの担当ではなかったかね?」
「ギャラガくん」
「はいっ!」 「返事だけは相変わらずだな」
どうして呼ばれたのかは、なんとなく分かっていた。
きっと、あのことだろう。
「そう、あのスターだ」 「はいっ!」
「正直、うんざりしている」 「でしょうね」
「なら──、いい加減、どうにかしたまえ!!」
握り拳が、ドンッと机に叩きつけられた。
そのあまりの剣幕に、辺りは静寂に包まれた。
「このままでは──、銀河警察として成り立たんのだ」
「パワハラじゃんか」 「ん? なにか言ったか?」
「いえっ、なにもっ」 「とにかくだ」
署長は部下に忠告した。
「軍隊が動くまえになんとかしたまえ」 「はいっ!」
「分かったなら、さっさといきたまえ」 「はいっ!」
パタンと部屋をあとにした。
スターという超人を捕まえる部署に配属された。
彼にとって、荷が重いのは分かってはいたが。
「あんなに、怒鳴らなくても良いじゃあないかよ」
「なんか言ったかっ!?」 「いえっ! なにも!」
そういえば。
署長は、地獄耳だった。
見た目でも。
「はあ~、どうすっかな~」
唯一許された、喫煙所でモクモクと。
若手の宇宙刑事は、たそがれていた。
「もう、辞めようかな~。ダルいし」
実際そうして、銀河警察を辞める者も多くない。
そして、彼らはやがて、犯罪に色を染めていく。
「そうなれたらラクなんだけどな~」
吹かしていたタバコを、灰皿に捨てた。
空っぽになったコーヒーを、ゴミ箱に捨てた。
「だけど……」
ヴィー、ヴィー、ヴィー、ヴィー、ヴィー、ヴィー。
けたたましい警報が鳴った。
「惑星ゴスローにて、爆弾魔のボンバが現れました」
「至急、要請を!」
銀河警察では、若手ながらも。
ギャラガは、優秀だった。
「スターじゃあないなら、まあいいか」
たった半日で、凶悪犯罪者を捕まえることはできた。
だが、ギャラガにはまだ、使命が残されていた。
「ふわ~あ、あふん」
翌朝、盛大にあくびをして。
ぽとぽとと、お湯を沸かして。
いつもの、コーヒーを淹れていた。
手作りのサンドウィッチを楽しみにして。
宇宙ラジオを聴いていた。
「ふんふんふ~ん♪」
鼻歌交じりの、朝餉だったが。
「ついさきほど──、銀河警察が消滅しました!」
それは愛用のコーヒーカップが割れるほどの。
衝撃的な出来事だった。
「え……なんなの……?」
急いで訪れたが、職場はがらくたになっていた。
あの、ごう慢だった署長でさえも。
頑張ろうとしていた矢先に、膝が崩れ落ちた。
「ギャラガくんか……」 「署長……!?」
たった、ひとことを聴きたくて。
ギャラガは署長を抱えた、
もうすぐ、逝くだろう。
あの愚痴なんて、もう聞けないだろう。
ああ、冷たくなっていく。
「あとは……任せた……」
しばらくしてから。
「スターが、銀河警察を襲撃した模様です」
「みなさま、くれぐれも気をつけてください」
「くそがああああっ!!」
ギャラガが覚悟を決めるなか。
スターには、まるで覚えがなかった。
惑星『バリス』には、一度も立ち寄らなかったのに。




