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The、スター。  作者: caem
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10/14

ギグズ。


 惑星『ギグズ』。

 その星は、犯罪者達が大半を占めていた。

 銀河警察から追われる立場の彼らにとっては。

 じつにいい隠れ蓑になっていた。

 酒場が充実しているのが、とくによかった。


「「イェーイ! 乾杯!!」」


 なにかをやり遂げたあとの酒は格別だった。

 五臓六腑にしみわたる。


「くはーっ! 最高だぜ兄弟!」


「まったくだぜ、兄弟!」


 居酒屋『ナラク』。

 その名店の美酒を頂戴していた。

 ごくごく、ごくごくと喉を潤していく。

 最高の酒の肴をつまみながら。


「惑星『バリス』にて。スターが、銀河警察を襲撃した模様です」


 店のモニターを観ながら。

 ふたりの注文は、とどまることを知らなかった。


「「マスター! ジャンジャンもってこい!」」


 その勢いは、店内の酒がなくなるほど。

 それはとても、景気がよかったのだろう。


「「なんなら、ほかの奴らにも奢ってやるぜえ!!」」


「ヒュー♪ 太っ腹!」 「ドンペリーニ兄弟っ!」


 そこには粘菌タイプ(スライム)の。

 ドンペリーニ兄弟というふたり組がいた。


「たまんねーなあ?」 「俺たち、つよつよ(・・・・)ッス!」


 ふたりは久しぶりに勝利の美酒に酔いしれていた。


 かつて、ふたりは賞金首として有名人だった。

 スターやスカイにも引けをとらないほど。

 奴らに関わると、全身の毛が根こそぎなくなる。

 それほど、恐れられていたときもあったが──

 

「兄ちゃん。キュリウたべていいかい?」


「ひとつだけな?」


 キュリウというのは、どこのお店でも安くて。

 モアシというのに、匹敵する野菜だった。

 そこにはかつての、凶悪犯罪者の姿はなかった。

 落ちぶれたら、とことん落ちぶれてしまう。


「スカイがやられたってよ」 「へえ~、誰に?」


「そんなの、スターに決まってるじゃんか」


 それを聞いた瞬間、思わず顔を会わせた。


「きたぜチャンスが……!」 「やるしかないよね?」


 そして決行された。うまくいった。

 ドンペリーニ兄弟は、銀河警察を襲撃した。


「侵入者は……スターです!」 「マジか!?」


 突如、銀河警察はあわただしくなった。

 優秀な人材がいなかったことも、重なって。

 ただ、蹂躙されていった。


「至急、要請を!」 「そんなの、させないよ?」


 限りなくスターの姿をしていた。


 かつてふたりは、スターを見たことがあった。

 それは、スターの2ndスタイルだったが。

 その姿は、まるで悪魔のようで。

 その立ち振舞いは、まるで死神のようで。

 とにかくただ、ふたりは息を潜めていた。


 それが経験として活かされた。


 そもそもふたりは、粘菌(スライム)だった。

 化けるという能力に秀でていた。

 あとは、あのときのスターになれば──

 超空間移動(テレポート)さえも、容易に使えた。


「署長……どうして……」


「あとは……きみに任せた……」


「「ぎゃはははは! ここ最高っ!!」」


 居酒屋『ナラク』のモニターには録画機能があって。

 リモコンでリピートしていた。

 お店側からすれば、迷惑行為に違いなかったが。


「ん~? ここ、おかしくないか?」


「は? どこだよ?」 「ほら、ここだよ」


 すでに酔っぱらっていたのに。

 気になってズームアップしたら。

 署長が、最後の言葉を言い放つシーンで。

 目線が、ずっと、こちらを向いていた。


「「え……怖いんだけど……」」


 その瞬間、ドンペリーニ兄弟も。

 その場に居合わせた客も、鳥肌がたった。

 ザアザアとノイズが──、ときおり混ざる。

 そして、ぞっとした。酔いが覚めた。


「見てるだろ」 「お前ら」 「まだ、見てるだろ」


 画面ごしに、本物が語りかけてきた。

 直接、居酒屋『ナラク』の全員に。

 どろどろとした、殺意が彼らの身体に訪れた。


「ぐぶっ」


 次から次へと。

 血を吐いて逝く者もあれば。

 胸を必死に掻き毟り、机に突っ伏していく。

 それは、やがて自分たちの番だった。


「ワタシは、お前たちではない」


 そう言うと、容赦なく。

 ドンペリーニ兄弟を、呪い殺した。

 まるで、ヘドロみたいに、なっていた。

 まだ誰にも知られていない能力をつかった。

  

「ホント、失礼しちゃうわね~」


 たまにスターは、井戸にいた。

 たまにスターは、屋根裏にもいた。

 惑星『ギグズ』にも、そんな場所はあった。


 ただスターは、やってもないことは許さない。

 たとえ、怨霊になっても。


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