ギグズ。
惑星『ギグズ』。
その星は、犯罪者達が大半を占めていた。
銀河警察から追われる立場の彼らにとっては。
じつにいい隠れ蓑になっていた。
酒場が充実しているのが、とくによかった。
「「イェーイ! 乾杯!!」」
なにかをやり遂げたあとの酒は格別だった。
五臓六腑にしみわたる。
「くはーっ! 最高だぜ兄弟!」
「まったくだぜ、兄弟!」
居酒屋『ナラク』。
その名店の美酒を頂戴していた。
ごくごく、ごくごくと喉を潤していく。
最高の酒の肴をつまみながら。
「惑星『バリス』にて。スターが、銀河警察を襲撃した模様です」
店のモニターを観ながら。
ふたりの注文は、とどまることを知らなかった。
「「マスター! ジャンジャンもってこい!」」
その勢いは、店内の酒がなくなるほど。
それはとても、景気がよかったのだろう。
「「なんなら、ほかの奴らにも奢ってやるぜえ!!」」
「ヒュー♪ 太っ腹!」 「ドンペリーニ兄弟っ!」
そこには粘菌タイプの。
ドンペリーニ兄弟というふたり組がいた。
「たまんねーなあ?」 「俺たち、つよつよッス!」
ふたりは久しぶりに勝利の美酒に酔いしれていた。
かつて、ふたりは賞金首として有名人だった。
スターやスカイにも引けをとらないほど。
奴らに関わると、全身の毛が根こそぎなくなる。
それほど、恐れられていたときもあったが──
「兄ちゃん。キュリウたべていいかい?」
「ひとつだけな?」
キュリウというのは、どこのお店でも安くて。
モアシというのに、匹敵する野菜だった。
そこにはかつての、凶悪犯罪者の姿はなかった。
落ちぶれたら、とことん落ちぶれてしまう。
「スカイがやられたってよ」 「へえ~、誰に?」
「そんなの、スターに決まってるじゃんか」
それを聞いた瞬間、思わず顔を会わせた。
「きたぜチャンスが……!」 「やるしかないよね?」
そして決行された。うまくいった。
ドンペリーニ兄弟は、銀河警察を襲撃した。
「侵入者は……スターです!」 「マジか!?」
突如、銀河警察はあわただしくなった。
優秀な人材がいなかったことも、重なって。
ただ、蹂躙されていった。
「至急、要請を!」 「そんなの、させないよ?」
限りなくスターの姿をしていた。
かつてふたりは、スターを見たことがあった。
それは、スターの2ndスタイルだったが。
その姿は、まるで悪魔のようで。
その立ち振舞いは、まるで死神のようで。
とにかくただ、ふたりは息を潜めていた。
それが経験として活かされた。
そもそもふたりは、粘菌だった。
化けるという能力に秀でていた。
あとは、あのときのスターになれば──
超空間移動さえも、容易に使えた。
「署長……どうして……」
「あとは……きみに任せた……」
「「ぎゃはははは! ここ最高っ!!」」
居酒屋『ナラク』のモニターには録画機能があって。
リモコンでリピートしていた。
お店側からすれば、迷惑行為に違いなかったが。
「ん~? ここ、おかしくないか?」
「は? どこだよ?」 「ほら、ここだよ」
すでに酔っぱらっていたのに。
気になってズームアップしたら。
署長が、最後の言葉を言い放つシーンで。
目線が、ずっと、こちらを向いていた。
「「え……怖いんだけど……」」
その瞬間、ドンペリーニ兄弟も。
その場に居合わせた客も、鳥肌がたった。
ザアザアとノイズが──、ときおり混ざる。
そして、ぞっとした。酔いが覚めた。
「見てるだろ」 「お前ら」 「まだ、見てるだろ」
画面ごしに、本物が語りかけてきた。
直接、居酒屋『ナラク』の全員に。
どろどろとした、殺意が彼らの身体に訪れた。
「ぐぶっ」
次から次へと。
血を吐いて逝く者もあれば。
胸を必死に掻き毟り、机に突っ伏していく。
それは、やがて自分たちの番だった。
「ワタシは、お前たちではない」
そう言うと、容赦なく。
ドンペリーニ兄弟を、呪い殺した。
まるで、ヘドロみたいに、なっていた。
まだ誰にも知られていない能力をつかった。
「ホント、失礼しちゃうわね~」
たまにスターは、井戸にいた。
たまにスターは、屋根裏にもいた。
惑星『ギグズ』にも、そんな場所はあった。
ただスターは、やってもないことは許さない。
たとえ、怨霊になっても。




