ゼント。
「ぜったいに、ヤツだ」
「いや。違うんじゃあないですか?」
「あんな姿に騙されるんじゃあない!」
それは、ぷよぷよしていた。
それは、ぷにぷにしていた。
ゆえに、スライムと呼ばれていた。
「ヤツこそ──、あのスターなんだ!」
惑星『ゼント』。
その星は、荒くれ者が溢れていた。
どうりで、酒場ばかりだった。
誰もが、スターという存在に躍起になって。
こぞって、愚痴っていた。
「おやじ、もういっぱい!」 「あいよ」
だが、酒場の主人からしたら。
ただの、上客でしかなかった。
「つまみはどうするかい?」
「コッケーのハツに決まってんだろ!」 「あいよ」
コッケーというのは、いわゆる鳥で。
惑星『ゼント』では、とくに飼育されていた。
ほかの惑星にも輸出されるほど、需要があった。
「でもさあ……仮にヤツがスターとしてもだ」
「ああん?」 「返り討ちにされるのが目に見える」
ドンッ。
仲間の、その弱気な発言に。
思わず、酒樽を叩きつけてしまった。
「いいか? いまこそチャンスなんだぜ?」
ずいぶん酔っぱらっていたが。
意外にも、素面だった。
『グランドバイツ』という討伐ギルドのマスター。
ガナッシュが言うには。
「ヤツは必ず油断する」 「その心は?」
「俺たちを舐めきっているからだ」
そう言って、グビッと酒を飲み干した。
ガナッシュは、討伐ギルドのなかでも、上位にいた。
そして、数々の実績をあげていた。
見た目は、頼りなさそうな、小人のようだったが。
惑星『ゼント』の、どの酒場にもサインがあった。
「とにかく──、とにかくだ」
そこにいた酔っぱらいどもに告げた。
高々と、グラスを掲げて。
「スターを仕留めるのは、このグランドバイツだ!!」
「「いえーい、乾杯!」」 「頑張ってくれよー!!」
明くる日、ガナッシュは。
可愛らしい、スライムに拘束されていた。
猿ぐつわまでされていた。
完璧に、捕縛されていた。
「ただのスライムなのになあ」 「モゴモゴっ!?」
「ぼく、きみに、なんか迷惑かけたかなあ?」
「あ、ぼく。スライムのルメロっていうんだけど」
一方的に紹介された。
ガナッシュが、身動きできないのをいいことに。
さらに、ルメロは質問した。
「なんか、誰かと勘違いしてやいないかい?」
最悪だった。
まさか、スライムというのに拷問されるだなんて。
このままだとガナッシュは、恥の上塗りだった。
スターという超人を捕まえて、一躍有名人になるハズだったのに。
たかが──、スライム。
ルメロに屈してしまうとは。
このまま──、処罰してくれたらと。
心底、願っていた。
「まあ……あんたの勘は当たってはいたけどね」
スライムのルメロは、次々と変貌していった。
美少女から始まって、老人に化けて。
美少年にもなって、老婆にも化けて。
いままで、出会った襲撃者にも姿を変えて。
「どれが、お望みですか?」
ガナッシュの両親の姿にもなれた。
スターには、不可能という文字は辞書にはなかった。
「どうしてほしいの?」
決して手を出してはいけなかった。
スターという超人には。
ガナッシュは。後悔しても足りなかった。
あれだけ、高らかに叫んでいたのに。
もう、二度と。
惑星『ゼント』の。
美酒には、ありつけない。
「スライム、ばかにするなよ」
スライム、ルメロ。
スターは気に入っていた。
その名前は惑星『ゼント』で捨てたが。
また、どこかで、使うかもしれない。




