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The、スター。  作者: caem
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4/8

ゼント。


「ぜったいに、ヤツだ」


「いや。違うんじゃあないですか?」


「あんな姿に騙されるんじゃあない!」


 それは、ぷよぷよしていた。

 それは、ぷにぷにしていた。

 ゆえに、スライムと呼ばれていた。


「ヤツこそ──、あのスターなんだ!」


 惑星『ゼント』。

 その星は、荒くれ者が溢れていた。

 どうりで、酒場ばかりだった。

 誰もが、スターという存在に躍起になって。

 こぞって、愚痴っていた。


「おやじ、もういっぱい!」 「あいよ」


 だが、酒場の主人からしたら。

 ただの、上客でしかなかった。


「つまみはどうするかい?」


「コッケーのハツに決まってんだろ!」 「あいよ」


 コッケーというのは、いわゆる鳥で。

 惑星『ゼント』では、とくに飼育されていた。

 ほかの惑星にも輸出されるほど、需要があった。


「でもさあ……仮にヤツがスターとしてもだ」


「ああん?」 「返り討ちにされるのが目に見える」


 ドンッ。

 仲間の、その弱気な発言に。

 思わず、酒樽を叩きつけてしまった。


「いいか? いまこそチャンスなんだぜ?」


 ずいぶん酔っぱらっていたが。

 意外にも、素面(シラフ)だった。

 『グランドバイツ』という討伐ギルドのマスター。

 ガナッシュが言うには。


「ヤツは必ず油断する」 「その心は?」 

 

「俺たちを舐めきっているからだ」


 そう言って、グビッと酒を飲み干した。

 ガナッシュは、討伐ギルドのなかでも、上位にいた。

 そして、数々の実績をあげていた。


 見た目は、頼りなさそうな、小人のようだったが。

 惑星『ゼント』の、どの酒場にもサインがあった。


「とにかく──、とにかくだ」


 そこにいた酔っぱらいどもに告げた。

 高々と、グラスを掲げて。


「スターを仕留めるのは、このグランドバイツだ!!」


「「いえーい、乾杯!」」 「頑張ってくれよー!!」

 


 明くる日、ガナッシュは。

 可愛らしい、スライムに拘束されていた。

 猿ぐつわまでされていた。

 完璧に、捕縛されていた。


「ただのスライムなのになあ」 「モゴモゴっ!?」


「ぼく、きみに、なんか迷惑かけたかなあ?」


「あ、ぼく。スライムのルメロっていうんだけど」


 一方的に紹介された。

 ガナッシュが、身動きできないのをいいことに。

 さらに、ルメロは質問した。


「なんか、誰かと勘違いしてやいないかい?」


 最悪だった。

 まさか、スライムというのに拷問されるだなんて。

 このままだとガナッシュは、恥の上塗りだった。

 スターという超人を捕まえて、一躍有名人になるハズだったのに。


 たかが──、スライム。

 ルメロに屈してしまうとは。

 このまま──、処罰してくれたらと。

 心底、願っていた。


「まあ……あんたの勘は当たってはいたけどね」


 スライムのルメロは、次々と変貌していった。

 美少女から始まって、老人に化けて。

 美少年にもなって、老婆にも化けて。

 いままで、出会った襲撃者にも姿を変えて。


「どれが、お望みですか?」


 ガナッシュの両親の姿にもなれた。

 スターには、不可能という文字は辞書にはなかった。


「どうしてほしいの?」


 決して手を出してはいけなかった。

 スターという超人には。

 ガナッシュは。後悔しても足りなかった。

 あれだけ、高らかに叫んでいたのに。


 もう、二度と。

 惑星『ゼント』の。

 美酒には、ありつけない。



「スライム、ばかにするなよ」


 スライム、ルメロ。

 スターは気に入っていた。

 その名前は惑星『ゼント』で捨てたが。

 また、どこかで、使うかもしれない。

 

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