ゴロード。
「うちゅうのう~みは~、お~れ~のうみ~っとぉ」
それはすでに鼻歌ではなく、ハッキリと口にしていた。
とにかく、上機嫌にはちがいないだろう。
ガキンガキンと、つるはしのようなモノをふるっていた。
「ん? こりゃまた……うわはははは。良いのが採れたぜえ」
酒焼け声のようなガラガラ声がそこらじゅうに響き渡る。
そこには、屈強な戦士の身体つきをしていたが。
まるで、ファンタジー世界の住人──、ドワーフみたいな姿であった。
「こりゃあ今日も、酒がうまくなりやがるぜえ」
惑星『ゴロード』。
その星は、ゼロワンに見た目は似ていたが。
鉱石や鉱物がとれることができた。
それは、宇宙で暮らす生命体にとって。
必要不可欠な、資源であった。
「こんな穴場。誰にも渡してたまるかよ」
ドクロの旗を掲げる、宇宙船の姿がポツンとそこにあった。
「うちゅうのかぜは~、おれ~のかぜ~っとお」
すこぶる調子よかったらしい。
と──、そこに。
「おやっさん! なんかえっちでスゴいのが!」
「バカヤロー! 船長って呼べっていつも言ってんだろうが!」
「すいやせん。バーロック船長」
それにしても、えっちでスゴいというのは分からない。
あっちでスゴいのが見つかったというならまだしも。
「いったい、どれほどの宝物を見つけたっていうんだ」
部下に連れられてきた、その現場で。
キャプテンバーロックは、思わず言葉を失ってしまった。
「こりゃあたしかに──、えっちでスゴいなあ」
そこには、全裸の美女が佇んでいた。
なめらかな指先、しなやかな身体つき。
見つめられたら最後、永遠に虜になるひとみ。
触れたらもう、ずっと抱き締めるしかない。
「こりゃあたしかに──、えっちでスゴいぜえ」
誰もが魅了されてしまうほどの、彫刻があった。
「とりあえず、とりあえずだ! 丁重にお迎えしやがれ!」
「「「へい、キャプテンバーロック!!」」」
ドクロの旗の宇宙船の乗組員は、総勢夢中になった。
最高級の報酬を、やさしく丁寧に運びいれた。
「それにしても、コイツは……」
いままで、見たこともなかった。
いままで、こんなに昂ることもなかった。
さんざん、旅してきたが。
たくさん、良いことも酷いこともしてきたが。
「それにしても、えっちでスゴいぜえ」
キャプテンバーロックは、まじまじと眺めていた。
細部にいたるまで、それは鉱石とは比較にならない。
その価値は、何物にも勝るだろう。
「た……す……け……て」
「うおうっ!? なんだあっ!?」
その彫刻を見ていたキャプテンバーロックの頭のなかに。
突然──、透明な声が鳴り響いた。
「きん……の……はりを……」 「金の針……か?」
それは宇宙では貴重なアイテムだった。
高価格で取り引きされていたが、万能薬でもあった。
火の鳥という、羽から調合されていた。
「それを……」
「いや、たしかにあるけどさあ」
いざというときの、隠し球だった。
キャプテンバーロックは、ひそかに手にいれていた。
厳重に、何重にも鍵をかけていた。
「は……や……く……」
そして、彼は禁断の箱を開けてしまった。
「あ~、やっと解放されたわ!」
いま、キャプテンバーロックの前には。
あけっぴろげな、素っ裸の美女の姿があった。
とにかく、刺激的すぎて、目のやり場に困る。
「ありがとうね♪」 「いや、こちらこそ……」
見てはならないが、どうしたって見えてしまう。
そこには彫刻から解放された、美女がいた。
堂々として、毅然として、ありのままを見せつけていた。
「で、さあ……」
「わたし、ビーナスっていうんだけど」
「お願い、聞いてくれない?」
キャプテンバーロックは、しどろもどろになっていた。
こんなにも、美しい女性と出会ったことはなかったから。
「わたしをこんな目に合わせたやつらに、復讐したいんだけど」
その囁きに、乗っかるしかなかった。
キャプテンバーロックは、スターの甘い声に唆された。
「くそっ、しくった」
いつもなら、なんなく反撃できたのに。
いままで味わったことのない攻撃だった。
「ヤツにいっせいに浴びせろ!」
レーザーが放たれた。避けきれなかった。
やがて、命中してしまった。
スターは、ずっとお尋ね者だった。
最高額の賞金首だった。
いくら姿を変えても、狙われていた。
「やったぜ!」
まったく身動きできない。
それは石化という、現象だった。
「くそが……」
なけなしの超能力をつかった。
そして──、惑星『ゴロード』で彫刻になっていた。
ともあれ──、キャプテンバーロックのおかげで。
「あんたたち、よくもやってくれたわねぇ」
あとは一方的に蹂躙していった。
石化光線とかいうのは、もはや通じることはなかった。
死屍累々。
屍の血を浴びながら。
「バーロックさん、ありがとうね」
そこには。かつて誰もが愛した彫刻の姿はなかった。
返り血を浴びた、狂気の女神の姿があった。
さぶいぼ──、鳥肌がたっていた。
「いや……どうもね?」
キャプテンバーロックでさえ、ドン引きしていた。
惑星『ゴロード』でスターはビーナスという名前を捨てた。
それはよくあることだった。




