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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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93/108

93. 開戦

 夜が明けてきた。

 崖の下の少し開けた場所にゴブたちは寝床を作っていた。

 数は少ないが布を屋根のように木の棒で張っていたりもする。

 森の中で寝ないのは敵が近づくのを恐れてのことかもしれないが、上を遮る物が欲しいと思うのは、ラミアも人もそしてゴブも同じなのかもしれない。


 アーレアは何時最初の弓を打ち込むかを考えていた。

 夜を徹して監視していたのだが、緊張と興奮のせいか、眠気は感じない。

 食事もしたので、妙にやる気がみなぎっている。

 可能な限りゴブたちを怒らせ、その怒りに任せて戦えるもの全てに自分たちを追ってもらいたい。

 イライラする、頭にくる、そんな状態にゴブの集団全体を染め上げたいのだ。


 アーレアは10人を3つに分けて配置した。

 中央に自分を含めて4人、左右に3人ずつだ。

 中央の自分たちの後方が、ゴブを引き連れて行きたい方向だ。


 腹を空かせて目を覚ましたのだろうか、早起きのゴブが数匹、昨日採って食べ残しておいたのであろう食物に向かい、手にとって食べようとした。

 アーレアはその数匹に向けて、右側の班に射かけさした。

 射かけた右側の班はわざと誘導方向とは違う方向に音を立てて逃げ、直ぐに音を消して、先ほどより中央に近い位置で隠れる。

 射かけられ、手傷を負ったり食事を邪魔されたゴブは、右の班の方向に駆けていくが、しばらくすると敵がどこにいるか分からず、戻ってくる。


 その時にはその騒ぎで起きたのか、他のゴブが食料のある場所に行って食べようとしている。

 今度は左側から射かけさせ、食べさせない。

 同様に違う方向に逃げ、音を消して少し中央に寄ったところに隠れる。

 また、仕方なくゴブは戻っていく。

 まだ薄暗い中で、ゴブに発見される可能性は低い。


 2回の騒ぎで、ゴブのほとんどは起き出した。

 今度は中央から射かけ、誘導する方向に少し音を立てて逃げて、姿を隠す。

 流石に3度目となると、ゴブは音のしなくなった辺りを執拗に探すようになったが、探している自分たちをそのままに、他のゴブは食料を食べようとしていた。

 それに気づくと、探していたゴブは食料を食べようと、怒りの調子のままに戻っていく。

 そこでゴブ同士の小競り合いが起こった。

 その小競り合いが起こっているところを、今度はアーレア全体で射かけた。

 もうすでに辺りは明るくなり、ゴブにも姿が見えることだろう、アーレアたちは姿を現して、もう一度射かけ、逃走に移った。


 姿を見たゴブは一斉にアーレアたちを追い出した。

 アーレアたちは少しだけ姿を晒すと、森の中に消えて行った。

 ゴブたちはもう止まらない、遮二無二森の中に突っ込んでいく。

 アーレアたちは森の中ですでに方向を変えて移動していて、ゴブの先頭集団をやり過ごすと、半ばの集団にまた射かけ、今度は音を立てて逃げて行く。

 ゴブは少しヒートアップしてきた。


 その後、3人だけ音を立てて最初逃げさせ誘導し、あとは音を消して待ち伏せして射かけたり、二手に別れて誘導し、後から合流させて混乱したところを射かけたり、様々なことをしていく。

 そうして草原まで来た時、そこで思い切り姿を晒し、一直線に奥に向かって逃走した。

 ゴブはその姿を見て、数も少なかったから競争のように追いかけ始めた。


———————————————————————————————-


 アーレアがゴブの誘導を始めたのは直ぐに気がついた。

 夜が開け始め、陽の光が差し込んだと思ったらすぐに、その騒ぎは始まった。

 最初は、いつ始まるかと耳を澄ませていたから、些細なことを大きなことと勘違いしたのかと思った。

 しかし、その少し後で、さっきよりもう少し大きい音が聞こえたので、今度は確信した、もう始まっている、と。


 私たちミーレアは袋の口を閉じる役目だ。

 誘導してきたゴブを、待ち構えている中では一番最初に目にすることだろう。

 だがその時に、ゴブに気付かれてはいけない。

 何があっても潜んでいて、ゴブが草原の中央に入っていくのを待たねばならないのだ。


 だんだん喧騒が近づいてくる。

 近づいてくるだけでなく、どんどん喧騒が酷くなってきているのがわかる。


 アーレアが逃げて来た。

 ゴブたちも直ぐ後を追いかけて来ている。


 「逃げて、早く逃げて!!」

 私は心の中で大声を上げる、それ程に近い、近すぎると私は思った。

 私たちは今、たとえ何があろうと手を出せない、助けることはできないのだ。

 胸が早鐘を打っている、苦しい。


 隣にいるラーリド様を見た、厳しい顔をしているが、私と違い落ち着いている。

 アーレアへの信頼は揺るがない、と言われている気がした。

 信頼して、揺るがずに待つのだ、そして自分の使命を全うする。


——————————————————————————————


 私は最初から不安でしょうがない。

 アーレアが誘導してきたゴブたちが、もし奥に向かわず、こちらに向かってきたらと、どうしても考えてしまう。

 その場合、ラリト様とラーリン様がいるとはいえ、あとは私たちアーリアの10人しかいない。


 今回の作戦は弓矢で敵のゴブの数を減らすことが重要事項だ、とのことだけど、矢の軸が木ではなく竹になり、羽が2枚から3枚になったからといって何が違うというのだろう。

 矢は牽制するくらいにしか役に立たないと私は思う。

 ゴブたちが奥に向かわず、こちらに来れば、私たちは全滅だ。



 私はこの作戦が不満でしょうがない。

 なぜいざという時逃げ隠れがしにくい草原を決戦の場に選んだのか。

 もちろん説明に納得できなかった訳ではないが、そもそもこの作戦を考えたのは上位でもないナーリアたちだというではないか。

 元のラーリア様の作戦では森の中での決戦だったのを、ナーリアなどが意見を言って変更するとはどういうことなのだろうか。

 最初にゴブを発見したから、出せない人間を世話するために禁足地に居るから、そんなことは作戦に何の関係もないではないか。

 何故ラーリア様たちや、ミーリア様がナーリアの言葉を聞き入れたのかが私には理解できない。


 反対側を指揮することになっていて、私と同じ不安に苛まれているはずのアーロアと話をしたら、どういう神経をしているのだろうか、あっけらかんと

 「えー、だってこっちの作戦の方が明らかに優れているじゃん。

  それにラーリア様たちもミーリア様たちも、そんなの十分に比較して考えたに決まってるじゃん。

  その上でこっちの作戦を採用しているんだよ。

  それに従うのは当然だよ」

と答え、何を言っているの、という顔をされた。

 10人の命を預かっているのだ、心配するのが普通だろう、不安になるのが普通だろう。


 ゴブたちの喧騒が聞こえてきた。

 アーレアはゴブたちを誘導するという危険な任務を行なっている。

 きっともう何人かの犠牲が出ていることだろう。


 今はもうその誘導が、どんな犠牲を払っても、予定通りにゴブたちを奥に向かわせてくれることを祈るだけだ。


————————————————————————————


 さっき、遅れて集落を出たヤーレアがやってきて、2食目の食事を置いていった。

 私たちワーリアの分だけでなく、ラーリク様、ラーリナ様の二人とアーロアの10名の分も私たちが預かっている。


 私たちは基本、戦に出なくて良いことになっている。

 私たちの仕事は、こうやって食事を預かったり、弓を使わなくなった時に預かったり、怪我の治療をしたり、怪我のひどい場合は集落に連れ帰るのが任務だ。

 ま、あくまで基本であり、何があるか分からない。

 もちろん私たちも弓矢と剣で武装している。


 いざとなれば戦わねばならないのだけど、戦える自信はないなあ。


 私たちと同世代だけど、ナーリアたちは戦いの最前線に立っている。

 人間の世話をすることになって、姉妹なのに何でナーリアたちだけ特別扱いになるのだろうと、ちょっと嫉妬していたけど、その人間が作った弓がちょっと強力だったからということで、今回の決戦では戦いの最前線に立たされることになったらしい。

 うーん、何が幸いで、何が災いだか、本当に分からないね。


 ラーリク様とラーリナ様はきっと当然なんだろうけど、アーロア様も落ち着いていらっしゃる。

 きっとこれなら私たちが戦う場面はないと思う。


 さあ、そろそろゴブの近づく音が聞こえてきた。

 私たちはどうであれ、上の人の言う通りに動くしかない。

 とにかく今日が早く過ぎ去るように頑張るだけだ。


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