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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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91. 立案

 夕方になって、ミーリア様がアーレア様を連れて、もう一度やって来た。


 「アーレア、ご苦労。 疲れ切っていないか?」


 「はい、ラーリア様、ありがとうございます。

  探索は見落としがあるといけないので、夜は動いておりませんので大丈夫です」


 「それでもかなりの広範囲を探索しているのだ、無理はしないよう、させないようにしてくれ。

  まだまだ時間がかかるかも知れない、無理をして脱落してもらっては困る」


 「はい、承知しております」


 「で、率直なところを探索責任者としてどう思っているかを聞かせてくれ」


 「はい、私たちはこの二日間、考えられる範囲を徹底的に調べ上げたつもりです。

  それでも何一つ痕跡を見つけられないのは、ちょっと常識的に考えられません。

  こんなことはあり得ない、というのがアーレア全体の意見です。

  ということで、私たちはその考えられる範囲という常識を疑っているところです」


 「よく分からないぞ。 もう少し分かり易く教えてくれ」


 「私たちはゴブがこの森に入り込んできた侵入ルートを、他の種族、多くは人間ですけど、その者たちが支配する区域には隣接しない所からだと推測して、ゴブの居場所を探って来ました。

  その考えの延長上で探索区域も設定していた訳です。

  でもそれで居ないなら、もう一方も考えにくいですが、可能性としてはあると思ったのです。

  つまり、今回のゴブが居た方向だとしたら、そのもう一つ考えられるルートは人間の居住地方向からの侵入です」


 「アレク、ボブ」

 呼ばれた僕らはすぐにラーリア様に近寄った。


 「お前たち、ここに来る前にゴブの被害を聞いたか?」


 「いえ、聞いてません」

 ボブが簡潔に答えた。


 「少なくともゴブの大発生があったという話は聞いていないです」

 僕は少し慎重に答えた。


 「だが、装備が充実していることも、人間の居住地を襲った後ということなら、辻褄もあってくる。

  可能性がない訳ではないな。

  よし、その方向の探索を進めてくれ」


 次の日、あっさりとゴブの集団は見つかった。


 昼前に、アーレア様が凄い勢いでやって来たかと思うと、ラーリア様に報告した。

 「ゴブの集団、見つけました」


 青い顔をして、その後を続けた。

 「その数150以上、おそらくおおよそ200かと」


 「で、その内戦闘に加わるだろうゴブはどの位の割合だ」

 ラーリア様も顔色を変えてアーレア様に追加情報を求めた。


 「いえ、今の報告の数字は戦闘装備しているゴブの数です」


 あちらこちらで息を呑む音が聞こえた。


 緊急で、火の扱いをここに練習に来ているミーリアの上位5名も呼ばれた。


 「皆の者、よく集まった」

 ラーリア様、余程動転しているようだ、口調がおかしい。


 「まず最初に言っておく、ここでの話は集落では一切漏らすな。

  事態が深刻過ぎてパニックを起こしかねんからだ、理解できるな」

 皆一様に頷く。


 「敵の総数は概算で200だ。 戦闘ができる上位ラミア60名の3倍以上だ。

  その上、装備もかなり整っているのが確認されている」


 小さな声が聞こえる


 「戦闘できるゴブの数がこのラミアの集落のほぼ全員分とはな」


 「まともに戦えば、負けないまでもこちらも全滅に近くなりそうだな」


 「しかし、何もしなければその数でこの森を拠点にして増えられたら、我らは完全に滅亡だ」


 「戦わない選択肢はない」


 ラーリア様はしばらくその様子を眺めていた、そして言った。

 「全員、状況の把握はしっかりできたようだな。

  さて、これとどう戦うかだが、普通に戦えば、そう、こちらもほぼ全滅だろう。

  3対1の戦力差では、互角に持ち込むのがやっとだろうと思う」


 ラーリアは平然としている。

 ミーリアの5人は、決然とした顔をしている。

 アーレアは一人、それは無理だというのか、青くなっている。


 それを見たラーリア様はアーレアをフォローした。

 「アーレア心配するな、アーリア、アーレア、アーロアに3対1での戦いは無理だ。

  お前たちにそれを求めはしないから安心しろ」


 そう言われて安心できる状況じゃないよね。


 「だから普通には戦わない。

  今回は先ずは弓矢での戦いを仕掛ける。

  弓矢でできる限り敵の数を減らすことを目標とする」

 ラーリア様は異論はないか、という風に周囲を見た。

 皆、黙って聞いている。


 「そこで現在アーレアが監視しているゴブの集団の位置はここなのだが、」

 ラーリア様は地図の一点を指して言葉を続ける。


 「先ずはアーレアにこの場で弓矢で攻撃してもらい、ゴブをこの場から引っ張り出して欲しい。

  この時点の攻撃では、ゴブを倒せなくても構わない。

  ゴブの頭に血を上らせ、戦闘できる者全てが引き出せるようにしてもらいたい。

  そして、そのゴブを引き連れて、森のこの位置まで逃げて来て欲しい」


 逃げてくる位置をもラーリア様は地図で指し示した。


 「アーレア、どうだ、できそうか?

  監視の業務で疲れていて、逃げる自信がないというなら、他と変わることもできるが」


 「大丈夫です。 やらせてください。

  アーレアは隠密性とスビードが自慢です。

  うってつけの役目だと感じます」


 「難しいし、危険な役目だぞ」


 「分かってます」


 ラーリア様は、「よし」という感じで頷き、話を進める。


 「この位置で敵を待ち構える。

  待ち構えるのは、ラーリア、ミーリア、ミーレア、アーリア、アーロア、そしてナーリアお前たちにも悪いが加わってもらう。

  本来お前らは上位ではないから、戦さ場に出る立場にないのだが、今回はそうも言ってられん。

  お前たちの弓の力は十分な戦力だ、すまないが参加してもらう」


 ナーリアたちも当然参加するという顔をしている。

 ラミア存亡の危機なのだから、当然のことだ。


 「それから今回は、お前たちの姉妹の隊にも参加してもらう。

  直接的に戦闘にはお前らと違い参加させないが、補給その他の雑事、それにいざという時の予備戦力になってもらう」


 本当に総力戦なんだ。

 ナーリアたちと同世代を出してしまったら、残りはあの若い子たち以下と、イクス様の様な様々な係の長となっている人しかいない。

 ほぼ完全に戦力出し尽くしだね。


 「ラーリア様、我々も戦います」

 ボブがみんなを代表して、表明した。


 みんなも覚悟を決めた感じで、ボブの言葉に頷いた。

 「我々は力だけなら、アーレア様に劣りません。

  何らかの力になれるはずです」


 ラーリア様は、しまったという顔をした。


 「すまない、お前たちもここに居るということを完全に失念していた。

  申し出はありがたいが、それは許可できない。

  お前たちが戦さ場に出るのは、まだ無理だ」


 「いえ、十分に体は戻りました」


 「そんなことはない。

  まだお前たちは森の中を半日走り回っていられるような体力はないだろう。

  戦さ場で走れないということは死を意味する。

  分かっていて、そのリスクは負わせられない。

  お前たちは集落で、我々がもし敗れ去り、討ち漏らしたゴブが襲って来たら、あの若い子たちをすまないが死に物狂いで守ってやってくれ。

  忘れていたが、明日よりお前たちも武器の携帯を許す」


 ボブは引き下がるしかなかった。

 まだ無理だよな、半日走り回るだけの体力はないよな、と僕も思った。


 エレクが声をかけてきた。

 「アレク」


 「任せろ。 大丈夫だ」

 全然大丈夫な気はしていないのだけど、そう言うしかないよね。


 「話を戻して続けるぞ」

 ラーリア様は少しだけ逸れた話を元に戻して続ける。


 「アーレアがこの地点に誘導したら、ラーリアが後方の逃げ道を塞ぐ形で弓での攻撃を始める。

  ゴブは前方からではなく、後方からの攻撃に少し混乱しつつも、反転してラーリアの方に迫ると思われる。

  ラーリアにゴブが十分に迫ったら、合図をするので、前方よりナーリアたちが長距離で射てる利を生かして、攻撃しろ。

  いくらか前方に残っていたゴブがいたとしても、お前らの速射でそいつらはどうにかなるだろう。

  ゴブが前後からの矢の攻撃で混乱したら、残りのミーリア・ミーレア・アーリア・アーロアもありったけの矢を射かける。

  これで数を減らし、上位ラミアは矢が無くなり次第、突撃する。

  アーレアはこの攻撃の間に体制を立て直し、討ち漏らして集落の方向に向かうゴブがいないように網を張る。

  ナーリアたちは矢を打ち終えたら、そのアーレアたちより後方に下がれ」


 ラーリア様はここまで一気に語ると、不敵に笑顔を作り。

 「あとは各自殲滅あるのみだ。

  こんなところでどうだろうか、検討してみてくれ」


 ラーリア様たちとミーリア様たちは様々な可能性を検討しているようだ。

 僕たちが口を挟める雰囲気ではない。

 ディフィーとセカンが小声で早口に何かを真剣に話している。


 ラーリア様たちとミーリア様たちの話で、先ほどのラーリア様の案にもう少し肉付けがされた。

 ゴブたちの後方でラーリアが攻撃を仕掛ける際、遅れてくるゴブが居るとラーリアが挟み撃ちされる可能性があるので、ラーリアの後ろにアーロアを布陣する。

 僕たちナーリアが後方に下がろうとしている時に攻撃される可能性があるので、アーリアを近くに布陣。

 よって左右にミーリアとミーレアを布陣することとなった。


 そんな話が決まっていった最中、ディフィーが唐突に声をあげて、質問しても良いかどうかをラーリア様に問うた。


 「構わないぞ、何でも聞いてみろ。

  軍議の席はそれぞれの立場は関係ない、自由に発言するが良い」


 「ありがとうございます。

  私はゴブは攻撃した対象に向かって攻撃してくる習性があると聞きました。

  それでこの作戦は、その習性を前提に作られていると思うのですが、間違ってはいないでしょうか?」


 「その通りだが」

 ラーリア様がちょっと怪訝そうな顔をされた。


 「だとしたら、もう少し楽になる作戦が私たちはあるのです」

 げっ、ディフィー言い切った。


 「まずは誘導先を森ではなく、こちらの草原にするのです」

 畳み掛けるようにセカンが続けた。


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