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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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88. 危惧

 「さて、詳しい話を聞こうか」

 ラーリア様は普段のくだけた調子ではなく、厳しい口調で言った。


 「はい、私たちは山ぶどうを目的として、森の中を進んでいました。

  そして、前方に何らかのモノが居ることに気がつきました」


 「まだその時にはゴブだとは思わなかった訳だな」


 「いえ、その可能性が高いと判断しました」


 ナーリアの報告にディフィーが口を出した。

 「まだ距離があったので姿はまともに見えませんでしたが、見える熱の大きさと、それが上下に頻繁に伸びたり縮んだりするので、ゴブが立ち上がったり座ったりしているのではと推測しました。

  その時点では推測でしかありませんでした」


 「良い判断だ。 それでどうした?」


 「気配を隠すことの上手い者を、確認のために偵察に出しました」


 「気付かれない様に近づいて、ゴブであることを確認しました。

  ただ、その時点ではゴブが革の帽子を被っているのを見たのに、その報告を皆にするのを忘れました」

 セカンが続けた。


 「その報告でゴブが2匹だと確定したので、どうしようか判断に迷いました」


 「ああ、その気持ちは理解できる。 それでどうしようと考えたのだ?」


 「私は2匹だけという可能性は低いのではないかと、まず考えました。

  ゴブはグループで行動するモノと習いましたので、他にも近くに居るのではないかと考えました。

  『ゴブ、即、殺』が鉄則だと知ってはいましたが、私たちは実戦の経験がありませんでしたので、近くにゴブが散らばっているとしたら手に余ると考え、一応確認のためにもう一度、今度は周辺を偵察することにしました。

  足が速く、気配を隠すことが上手な二人に、私たちから見て前方500mの範囲に他にゴブがいないか確認してもらいました。

  また、私自身はその2匹のゴブを詳しく確認に行きました。

  気配を隠すことが上手くない3人はその場で待機させました」


 「的確な判断だが、大胆でもある。 不測の事態は考えたか?」


 「はい、その場合考えられる対処は二つしかありません、一斉に戦うか、逃げるかのどちらかです。

  どちらにするかは起こってみないと判断できないので、その場合の合図を決めておきました」


 「良く分かった、続けてくれ」


 「偵察が終わり、状況を確認すると、考えるべき問題でした。

  辺りにはその2匹のゴブしかいないということが分かりましたが、2匹のゴブとも武装していることが確認できました」


 「これが、その証拠という訳か」


 「はい。 2匹とも剣を持ち、革の帽子を被り、革の胴を着ていました。

  帽子には驚いたことに額の部分に補強の金具が取り付けられていました。

  持ち帰ったのは、その剣と補強の金具です」


 「それでどう判断したのだ?」


 「私たちは、その2匹のゴブが、もっと大集団の斥候ではないかと判断しました。

  そこで放置するべきではないと考え、2匹なら私たちでも出来ると考えて、戦いを挑みました。

  ただし、近距離で戦うのはリスクが高いと思い、なるべく長距離から弓で狙い、仕留めることができました。

  その後は、証拠としての先ほどの物とゴブの片耳を回収し、死体などは土に埋めて、大急ぎでここに戻ってきました。

  以上です」


 「わかった。 全体的にとても良い判断であった。

  今日はもうこれでいい。 家に戻って、ゆっくり休め。

  まあ、また後で何かとあるかもしれんがな。

  とりあえず、戻ってよし」


 僕たちは部屋から出て、家に戻った。


—————————————————————————————


 「アーレア、報告を聞く」

 「はい」


 ラーリア様の言葉はいつになく厳しい。

 私はナーリアたちが部屋にいる間、この部屋の扉近くで隠れて待っていた。

 ナーリアたちが出て行った直後に私はここに呼び込まれた。


 「私たち三人はいつもと同じように、ナーリアたちの監視をしていました。

  監視のために森の中を私たちの方が先行していたので、ゴブの発見は私たちの方が先でした。

  ナーリアたちがそのままゴブに気付かずに進むと危険だと思い、監視を諦め知らせようかと思ったところで、ナーリアたちも気づきました。

  そこからのナーリアたちの行動は自分たちで報告した通りなのですが、正直に行って、驚くばかりの行動でした」


 「うん、聞こう」


 「まず、ゴブの存在に気づいた位置ですが、我々が気づいた位置よりもそれは随分と手前でした。

  あの感知能力はずば抜けています。

  次に偵察に出た、二人の行動スピード、気配を隠す能力、我々に全く引けを取りません。

  特に黒髪は、どちらも我らより優っているかもしれません。

  そして、リーダーのナーリアとそのまま呼ばれる金髪の指揮能力の高さには、開いた口が塞がらない思いでした。

  今まで、どちらかというとのほほんとしていて、どうしてこいつがリーダーなんだと思って見ていましたが、いざとなったらとんでもない逸材でした」


 私は次に話すことの為に一息おいた。

 そうしなければならないほどの衝撃だったのだ。


 私が一息入れたので、報告が終わったのだと勘違いしたのだろうか、ミーリン様が退出を促す為だろうか、口を挟んできた。

 「そう、ナーリアたちはなかなかの逸材揃いのグループだったのね」


 「いえ、本当の驚きの報告はまだこれからです。

  ナーリアたちが戦うことを決意したのは、状況からみて最善だと私も判断しました。

  ただ、初の実戦で、数的には1対3の形になるとはいえ、本当に戦えるかは未知数だと考えました。

  私たちは戦いになれば、監視をやめ、そこに介入するべきだと考えました。

  私たちだけだと2対3になりますが、どうにかなるだろう、少なくともナーリアたちよりもはまともな戦いになると考えました。

  そう考えていたのですが、ナーリアたちが取った戦法は弓矢による戦闘でした。

  私たちは弓矢はゴブの動きを牽制するためのモノで、それで戦いを決しようとは考えませんが、ナーリアたちの考えは全く違い、弓矢の戦いで勝てなかったら即座に逃げるという考えでした。

  正直、私たちはこれはダメだと、逃げる姿しか思い浮かびませんでした。

  私たちはナーリアたちが逃げるルートを想定し、追ってくるであろうゴブを迎え打てる場所に潜みました。

  ところが、完勝でした。 戦いになりませんでした。

  ゴブたちは気づいた時には死んでいる状態でした。

  完全に死んでいるゴブに対して、銀の短髪と人間に首を切らせるという無駄なトドメを刺させたことだけが、初めての戦いらしかったことでしょうか。

  とにかく特筆すべきは、ナーリアたちの弓矢の能力です。

  何なんですかあの威力と、長射程は。

  革の胴を長距離から貫いているのです。

  何なんですか、あの目にも止まらぬような速射は。

  あの少しの時間に何射したのか。

  そして何よりも、何なんですかあの狙いの正確性は。

  私の常識からは逸脱しすぎていて表現の仕方がわかりません」


 確かにそれまでにイノシシを獲るところは見たけど、実戦なのよ。

 全く狩とは別物です。


 ラーリア様は苦笑している。

 あれ、なんか反応が予想と違う。

 ラーリア様たちは「まあ、あれ使ったら、そんなものだろうねぇ、彼女たちなら」などと軽く言っているし、ミーリア様も「ああ、あれね」なんて言っている。

 ミーリア様の下5人だけが、私が思っていた通りの反応をしている。

 何を言っているんだという顔。 あれは実際に見てみないと分からないと思う。


 「まあ、弓矢の話はもういい。

  それでその後の対処はどうしたんだ」


 「はい、私はここに報告に戻り、残り2名には辺り一帯、もっと距離を広げて探索するようにと命じました」


 「うん、それでいい。

  アーレア、監視の業務は今日で解く。

  今後はアーレア全体を指揮して、全力でゴブの発見に努めろ。

  発見した場合、監視と報告のみに徹しろ、攻撃はしなくていい」


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