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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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87. 初めての実戦とそれから

 もうかなりの時間が経っているのかと思ったが、日はまだあまり高くなっていない。

 緊張した時間を過ごしているから、きっと長く感じるのだろう。

 だが、それでも少し日が上に移動したから、森の中の見え方は変わってきている。

 風は止まっている。

 匂いで感づかれる可能性は減るが、移動で動く葉などでは気づかれやすくなる。

 僕は弓を辺りにぶつけないように気をつけながら、ゆっくりと所定の位置へと動いて行く。

 剣鉈はもういつでも即座に抜けるように、用意している。

 すでにディフィーやサーブの場所は分かるが、レンスとセカンは僕にはどこにいるかも分からない。

 よーく気配を伺って、ナーリアのいる場所がやっと分かった。


 ゴブは他に気を取られることなく、僕が採ろうと思っていた山ぶどうを食べている。

 もうすでに下の方の簡単に取れる位置は食べ尽くしてしまったのか、手を上に挙げ、体を伸ばすようにして、高い位置のぶどうを食べている。

 ナーリアの言った通り、剣を下げ、皮の胴を着て、皮の帽子をかぶっている。

 体を完全に晒してくれているので、よく見ると皮の帽子の額のところには金属板が付けてあって防護力を強化しているのも分かった。

 もしかすると胴にも何か強化されている場所があるかも知れない。


 僕にはディフィーが矢を射るタイミングを計っているのが分かる。

 そしてどのタイミングで射ようとしているのかも分かった。

 きっとみんな同じことを考えているだろう。


 心臓がひどく早く動いている。

 でも僕はこんな時こそ冷静にならなければいけないことを、さんざ習ってきた。

 逸る心を意思の力で押さえつける。


 ゴブはぶどうを食べているが、二匹揃って高い位置のぶどうを採ろうとした時、その時こそが矢を射るチャンスだ。

 その時をジッと待っている。

 ゴブはなかなか同時にぶどうを取ろうとしない。

 今、二匹ともぶどうを取ろうと立ち上がり体を伸ばし始めた。

 僕は弦を引き、狙って、ゴブを射た。

 ディフィーに合わせなければいけないのを忘れたが、ディフィーも同時に射ったみたいだ。

 僕は自分が射った結果も見ずに、2射目の矢を番え、今度は胴に目掛けて射った。

 何故だか分からないが、その時ゴブがまだ立っていたのか、それとももう倒れていたのか、それさえ分からなかった。

 ただ胴に向けて矢を射った。

 冷静にと思っていたが、全然冷静ではなかったのだろう。

 僕にほんのわずかに遅れて、ナーリアも2射目を射ったのが分かった。


 辺りが急に静かになった気がした。

 ゴブは確かに地面に倒れている、何本も矢が刺さっている。

 ナーリアは手を大きく前に振った。

 僕とサーブに対する、ゴブの首を落とせというサインだろう。

 僕がゴブに近づいて行くと、サーブも近づいてきた。

 そしていつ来たのか、僕の横にはセカンが、サーブの横にはレンスがいる。

 もう少しという所まで近づいて、僕とサーブは一旦止まり、呼吸を合わせて一緒に一気にゴブに走って向かい、それぞれのゴブの首に剣を突き入れた。

 ゴブは動かなかった。


 ゴブのところに僕たちは集まった。

 ゴブに矢はほぼ全部的確に計画通りに刺さっていた。

 胴の皮は補強されてなくて、僕の矢もナーリアの矢も刺さっていた。

 脚には片足2本づつの矢が刺さっているのにびっくりした。

 もし、ゴブが生きていたとしても、この状態では一歩も動けなかっただろう。


 セカンとレンスがもう一度辺りを警戒して、見回りに行った。

 僕は近くにあった葉っぱで丁寧に剣鉈についたゴブの血を拭った。

 サーブは血を拭う前にゴブの右耳を剣で切り落とし、それを袋に入れてから剣を拭った。 そうして穴を掘り始めた。

 ナーリアとディフィーはゴブの剣と皮帽子の補強の金属を袋に入れて回収している、金属は貴重だからね。

 僕は刺さった矢を折って、羽根を回収した。

 刺さった部分は嫌だけど、羽根は勿体無いから回収したい。


 サーブの穴掘りに、ナーリアとディフィーも加わり、戻ってきたセカンとレンスもそれに続いた。

 僕は穴掘りの役には立たないので、穴までゴブを引きずって行き、出来た穴に投げ込んだ。


 「さあ、大急ぎで報告に戻るわよ」

 ナーリアの号令のもと、僕たちはできる限りの速さで、ラミアの集落へと戻った。


 ラミアの集落に戻ると、僕たちの姿に気がついたイクス様が、僕たちがたどり着く前に、近くにいた娘に何か言いつけて、僕らの方に寄ってきた。


 「ナーリア、何があったの?」

 いつもと違う鋭い声だ。


 「緊急事態です」


 「緊急事態はあなたたちの格好を見れば分かるわ。

  何があったの?」


 「武装したゴブが出ました」


 「そのゴブは?」


 「見つけた2匹は、私たちが処理しました」


 「証拠は?」


 「耳を切って持ってきました。 それとそのゴブが所持していた武器などを回収してきました」


 「よくやったわ。 このまま一番奥の部屋に進んで!」


 そうだった僕たちがこんな完全武装で集落の方に来たのは初めてだった。

 弓も見た目が違うし、ナーリアたちの皮の胸当てもきっと目立つ。

 それ以上に僕までが弓と剣で武装している訳だから、他のラミアの注目を集めてしまうのは仕方ない。


 僕たちはどんどんと中を進んでいく、先に誰か伝令がいたのか、僕たちは止められることなく、あの大部屋まで来た。

 入り口でためらっていると、ラーリア様たちがやってきた。

 「何をしてる。 早く中に入れ」


 僕たちが中に入ると、それから次々とラミアが集まってきて、結局ラーリア、ミーリア、ミーレアの全員が集まった。


 集まったところでとりあえず簡単に、武装したゴブに遭遇したことをまず告げる。

 それだけで、ラーリア様以下全員とても深刻になり、即座に動いた。


 「ミーレアは今から外に出て指揮をとれ。

  森に出た者は全員引き上げさせろ。

  アーリア、アーレア、アーロアに警戒させろ。

  人間たちは一度ここに連れて来い。

  即座に動け」

 ミーレア様たちがすぐに部屋から出て散って行った。


 出て行ってまだ上位居住区の喧騒が収まらないうちに、僕の友たちがやってきた。


 「人間たちよ、すまないが今日はそれぞれのミーリアの部屋で休んでいてくれないだろうか。

  我らはちょっと忙しくて諸君の相手が誰もできない。

  それぞれの部屋に軟禁という訳ではない、誰かの部屋に集まったりしてくれても全く構わない。

  ただ、そこの居住区画から出ないでいてほしい。

  お願いできないだろうか」


 ボブが代表して答えた。

 「わかりました、ラーリア様。 我々は今日は居住区で大人しくしております」


 「ありがとう、すまない」


 退出する時にボブは僕に小声でちょっと話しかけてきた。

 「おい、どうした?」


 「ゴブだ」


 「で、この騒ぎということは」


 「ああ、たぶん」


 「よく分かった」


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