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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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81. オリーブと粉挽き

 僕がイノシシにこだわっているのは、何も鹿より強い獣を獲りたいからではない。

 鹿よりも硬い革も、強い体毛も、素材としては確かに魅力的だ。

 だが、最大の魅力は、良質な脂がたくさん取れることだ。

 今の生活改善に、というか、食生活改善に油が欲しいのだ。


 油といえば動物性だけではなく、植物性の油もある。

 でも残念ながら、植物性の油の多くは種を搾って取るものである。

 種はラミアは食べちゃうんだよなぁ。


 人間も色々な種を食べるけど、ラミアはその比ではない。

 もっと考えれば、油を搾れる物あるかもしれないけど、日々の事柄に負けて、考え付かずにいる。

 でもだ、とうとうオリーブの実が取れる時期がやってきた。


 オリーブの実の中の種は当然のことだが、ラミアは食べてしまう。 だがその外皮をはラミアは食べない。

 オリーブは外皮からも油が取れる。

 このことはラミアも良く知っていて、剣の手入れなどにはオリーブオイルを使っているという、現にサーブは使っている。

 でもあまり作られてはいない。

 なぜなら、作るのは結構面倒というか、手間暇がかかるのである。


 オリーブオイルは、外皮を潰して、それを揉むというか、かき回すというか、滑らかにするというか、とにかくグチュグチュと棒でかき混ぜ、突っつき、擦り合わせないと作れないのだ。

 そうしてやっと油が出来るのだ。

 その手間暇が結構大変で、剣の手入れ程度の量しかラミアは作っていない。


 僕はこれを友たちにやらせようと考えた。

 もうかなり元気になっているけれど、流石に猟に出るという程にはなっていない友たちは、若いラミアの子たちに藁を使った作り物などを教えていたが、その肝心の藁がもう在庫がないのだ。

 もう少し経てば、また大量の在庫ができるだろうが、今、遊ばせている必要はない。

 僕は自分たちでも精力的にオリーブを採ってきたが、若い子たちにもお願いして、積極的に採ってきてもらうことにした。


 木鉢と潰すための擦り石をイクス様に用意してもらい、友たちにその作業を任せた。


 「俺たちにオリーブオイル作りをさせようという訳か」


 「ああ、そうだよ」

 ケンが文句をつけてきた。


 「あの作業、結構大変なの知っているよな」

 「もちろん知ってる」

 「それでも、俺たちにやらせようというのか」

 「そうだ」


 僕はケンから目を離し、他の友たち、特にデイヴの方を見て叫んだ。

 「お前たちは油炒めが食べたくないのか。

  オリーブオイルを絡めた豆を食いたくないのか」


 「俺は食いたい!」

 思った通り、デイヴが食いついてきた。


 「俺にはオリーブオイルを作っている時間がない。

  ラミアは基本的に食べないから、作らない。

  だとしたら俺が頼れるのは・・・」


 「俺たちしかいない。 俺は作るぞ。

  茹でた豆にオリーブオイルと塩を振って食うぞ」

 デイヴは盛り上がっている。


 「ケン、負け、負け。 オリーブオイル作るぞ」

 ボブが仕方ないという感じで宣言した。

 友たちはため息はついたが、異存はない様だ。


 少し離れたところを見ると、イクス様が大爆笑していた。

 クイクイと手を振って呼ばれた

 「アレクちゃん、なかなかの策士ね」


 「そんな、ただ、働かざる者食うべからずです」

 イクス様はまた大爆笑した。


 そんなこんなでオリーブオイルはかなりの量ができた。

 途中から、ラミアの若い子たちが友たちを手伝い、一気に仕事が進んだ。

 友たちとラミアの若い子たちの間には、そんな絆ができていたらしい。


 今ではもうとても緩くなってしまったが、一応友たちと一緒にいる監視役の上位ラミアも、そんな光景に自分たちも交じって、作業を手伝いながらおしゃべりをしている。

 イクス様が言うには、若い子たちと上位ラミアが一緒に同じ仕事をして、おしゃべりをしているなんて、今までになかった光景らしい。


 僕はもちろん彼らに、茹でた豆にオリーブオイルと塩をかけた料理を出してやった。

 今回は干し肉の時とは違い、最初から若い子たちの分も作って出してやった。

 デイヴは泣き顔で「うまい」と言って食べている。

 ラミアたちには、水に浸しただけでオリーブオイルと塩を振ったモノと、人間と同じモノの二通りを出してあげたのだが、人間パターンも好評だったのが意外だった。


 オリーブオイルで味をしめた僕は次のことを画策した。

 みんなに石の擦り板と擦り石を渡し、命の実、つまり麦を配った。


 「お前らパンが食いたくはないのか」

 「あ、アレク、それ要らないから」

 エレクに止められた。


 「今度はなんだい。 粉挽きかい」

 「ん、ま、そうなんだけど」


 「大丈夫、みんなもう文句を言わずにきっとやるよ。

  自分たちの食生活もかかっているから」

 「いや、それなら良いんだけど」


 僕がちょっと拍子抜けした顔をしたら、みんなにやれやれという顔をされてしまった。


 「ところでアレク、なんでこんな物で粉にしようっていうんだい?

  普通に石臼で粉にすれば良いじゃんか」

 ダイクが聞いてきた。


 「石臼がないか探したんだけど、ここでは見つからなかったんだよ」

 「見つからなければ、作れば良いと思うのだけど。

  木臼は作ったろ」


 「木臼は作れるけど、石臼は俺には無理だよ」

 「それじゃあ、俺が作るよ。 俺、石工の息子だから、石臼くらい道具があれば作れるぞ」


 「石工の道具って、どういった物なんだ。 俺、それすら知らないよ」


 僕はイクス様に石工の道具がないか尋ねてみた。

 イクス様も石工の道具がどういうものか知らなかった。


 ダイクを連れて来させられた。

 最初言葉で伝えようとしたのだが、なかなか分からなかったら、イクス様が石板と蝋石を持ってきた。

 ダイクは石板に道具の形を書いた。

 それを見て、イクス様は探しに行ったのだが、帰ってきたときに持ってきたのは、石用ののみが二つだけだった。


 この時、僕はちょっと閃いた。

 「イクス様、宝物庫の中って、火に関係する物がほとんどということは、鉄の物ばかりですか?」


 「そうね、だいたいそうなるかしら」

 「木の棒状の物が付いていたりする物ってありますか?」

 「うーん、見たことないと思うわ」


 僕はダイクに振り返り、こう言った。

 「ダイク、道具の鉄の部分だけを細かく描いてみろ。

  柄だとかそれ以外の部分は描かないでいい」


 ダイクは怪訝な顔をしながらも、石工用の様々な形をしたハンマーのヘッドの部分などを石板に描いた。


 「こういった物なら、なんだか分からないけど集めてあるところにあるかなぁ。

  もう一度探してみるわ」

 今度は目当ての物のヘッドの部分だけがかなり見つかった。

 ダイクによると十分すぎるほどの道具の数だという。


 その後ダイクは監視役のミーリル様と若い子を5人連れて、石臼作りに適した石を取ってくると、本当に簡単に石臼を5つも作ってしまった。

 石臼を回すのを若いラミアが面白がり、粉挽きもどんどん進んでいく。


 僕は持ち手に竹を被せて回す時に手の平が擦れなくなる工夫をダイクに教える。


 「面白いこと考えるなぁ。 そんなこと必要か?」

 ダイクがそう言うので、僕は答える。

 「ラミアは基本女の子だろ、俺たちより肌が弱いんだ。」


 「なるほどなぁ。」

 ほとんど口から出まかせだったんだけど、ダイクに盛大に感心されて、ちょっと居心地が悪かった。


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