表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/104

79. 剣鉈

 予定外に始まった竹箒製作教室だが、流石にラーリア様たちの飲み込みは早く、あっという間に自分たちで竹箒を作れる様になり、それぞれ自作の竹箒を自慢している。

 しかし、そこは竹箒。 誰が作ったって大差ある訳がないと思うのだが、それなのに何故それぞれに自分の作ったものの優れているところを主張できるのか、謎である。

 竹箒は次にラーリア様たちが来る時まで、倉庫に厳重に保管することとなった。


 それから本命の弓矢の練習の見学になったのだが、そこからは先程までの喧騒が急に静かになり、みんな真剣な眼差しとなった。

 ナーリアたちはとりあえず、皆一度づつ自分の好きな位置から的を射た。


 ナーリアとセカンは中距離から射る。

 矢の威力の強さに感心される。


 サーブとディフィーは遠距離から射る。

 距離もだが、狙いの正確さに話が集中する。


 レンスだけは近場から三本の矢を動きながら速射してみせた。

 ここでも速さはもちろんだが、正確さが話題となる。


 ここで着替えてきたラーリア様が合流し、サーブに

 「矢はできているか?」と声をかけた。

 サーブは自分が使ったのよりもなお長い矢をラーリア様に渡す。


 ラーリア様が持ってきた荷物は、ラーリア様の鎧だった。

 実はラーリア様がナーリアたちの練習を見た時に、胸当てのことに気づいたのに、欲しいと言わなかったことが、僕はちょっと気に掛かっていたのだが、その訳を見せてくれているらしい。

 うん、確かにその鎧があれば胸当てはいらないな。

 そうだった捕まった時に確かにラーリア様は鎧を着ていたものな。


 ラーリア様はサーブから矢を受け取ると、サーブとディフィーの射た位置よりも遠くから、的に向けて矢を射った。

 当然、的に深々と刺さっている。


 「サーブ、良い出来の矢だ。 ありがとう」


 「いえ、竹の曲がりの矯正はレンスですから、褒め言葉はレンスにお願いします」


 「分かった。 レンスもありがとう」


 「お役に立てて良かったです」


 サーブ、レンスもまともな受け答えも出来るのね。


 「これがラーリアの見せたかったもの、面白くて他のことを忘れてしまったことなのね」

 「どうだラーリオ、面白いだろ」

 「確かに、他のことを忘れるのは分かる」


 「で、ラーリアはこれらのことの秘密を一つ一つ私たちに教えてくれようという訳なのかな」

 「ラーリル、焦らなくても良いだろう。 ゆっくり一つづつ見ていこう」


 「まずはその矢ね。

  その矢は我らラミアのモノではなく、人間のモノね。

  正確さはそれが秘密かしら」


 ラーリド様の指摘にラーリア様の指名で僕が答える。

 人間の作り方を教えたが、作ったのはナーリアたちであること。

 確かにそれまでのラミアの矢よりも真っ直ぐに飛ぶが、的に当てる技能はナーリアたちの練習によるところも大きいこと。

 藁束の的により矢を傷めることが少なく、繰り返し練習できること。

 矢竹を使っているので、比較的短時間で作れること。


 「みんなが嵌めている手袋も、もしかしてそれに関係するんじゃない?」

 ラーリド様が気づいた様だ。

 「はい、指が擦れないので、長時間の練習ができます」


 「あれもアレクくんが作ったの。 私も欲しいわ」

 「いえ、あれはセカンが作りました。」

 「手袋は私も見落としていたな。 セカン、私も欲しいぞ」


 ラーリア様も欲しがったことで、ラーリア様たちはみんな欲しいと言う。

 セカンは「材料があるか見てきます」と言って、倉庫に革を取り入ってしまった。


 「威力が強力だったり、飛距離が出るのは弓のせいね。

  これはどうなっているの?」

 ちょっと小柄なラリト様が今度は尋ねてきた。

 「いくつかの素材を貼り合わせることによって、強力にしています」


 「これは一人で人数分作ったの?」

 「いえ、これもセカンとディフィーが半分以上作っています。

  調整はサーブとレンスですし、弓だけに限らず素材作りは随分ナーリアも関わっていますし、合作と言って良いと思います」


 「あなたたちでも作れる?」

 ラリト様はディフィーに聞いた。

 「技術的にはまだまだアレクの方が上ですけど、作り方を教わったので、私たちだけでも作れないことはないです」


 「アレクは作り方を教えてしまったけど良いのか?」

 「ディフィーは仲間ですから。

  それにみんなで一緒に作った方が早くみんなの装備が充実します」

 「そうか」


 その後ラーリア様たちは、ナーリアたちの弓をそれぞれに借りたりして、弓矢を試した。

 セカンは持ってきた革で次々と手袋を手に合わせて縫っている。

 毛を毟って鞣した鹿の皮は、全部使ってしまった。


 ラリト様は小柄なのでディフィーの弓に興味を示していたのだが、やはり射るのに時間がかかるので諦めたようだ。

 ちょっと残念がっている。


 みんなの射方を見て、胸当ての意味をやはり察したみたいだが、それには触れなかったのは、ラーリア様同様鎧持ちだからであろう。

 そしてラーリア様たちみんなが新しい弓を欲しがった。

 そーだよね、そーなるよね。


 「それはまだちょっと待った方が良いだろう。

  弓も矢も作らせた私が言うのは本末転倒も甚だしいのだが、まだナーリアたちはここの家での生活に必要なことも準備途中だ。

  急な出来事だったからな。

  今はまだこの家で生活できるように条件を整えることが先決事項だと思う。

  弓を我ら全ての分作らせたのでは、そればかりに時間がかかってしまう。

  もう少し、後にしよう」


 ちょっと残念というか、仕方ないという感じで、反論は出なかった。


 とりあえずラーリア様たちには5人づつ先に水浴びをしてもらう。

 流石にこの人数みんなでできるほど、ここの水浴び場は広くないのだ。

 ナーリアにぬか袋と体を拭く布を渡してもらい、他は夕食の準備をする。

 昼にもらって来た敷皮や机を出すのを任せ、僕は塩出しした肉を竃で焼く。 もちろん自分の分の命の実は煮ながらだけどね。

 レンスは自分たちの分の敷皮も部屋から持っていって外に出した。


 ラーリア様たちの水浴びが終わったので、僕たちも急いで自分たちの水浴びをすることにした。

 水浴びを大急ぎでして戻ったのだが、その間にイクス様が来ていた。


 「なんだお前たちは水浴びした後も服を着るのか?」

とラーリア様たちの誰かが聞いて来たが、僕たちが答える前に、

 「やーね、ラーリン、この子たちはまだこれから火を使うでしょ」

と側にいたイクス様が答えてくれた。


 「レンスちゃん、私にも敷皮持って来て」

 レンスが部屋に敷皮を取りに行った。


 僕は焼いていた肉を竃から取り出し、小さく切って皿に盛っていく。

 一方で、セカンが命の実を鉢によそっていく。

 それらをナーリアたちがどんどん運んでいく。

 果物の鉢も出して、食事が始まった。


 「何だ、今日の肉は時々ピリッと辛いことがあるぞ」

 ラーリア様が気づいたようだ。


 「今日は肉を焼くときに、ピリッと辛い草の実を、棒で肉に押し込んで置いて焼いたんです。

  だから所々にその味がついていて、辛味を感じるんです」


 「なるほど色々工夫しているんだな」


 「ラーリアだけ度々この料理を味わっているのは不公平だな。

  我々ももう少しここに来て、ここの食事を味わえるようにしよう」


 え、ちょっと待って、今でもすごく大変なんですけど。

 ほら、ナーリアたちの元気が無くなっている。


 「辛っ。 アレクくん、辛い実が肉の中にそのまま入ってたよ」

 「あれっ、全部取ったと思ってたんだけど、イクス様大当たりですね」

 「こんなの当たりたくないわよ」


 食事中、僕に武器を持たせるかどうかの話し合いもされた。

 ラリト様が、僕が弓矢を作ったり作り方を教えてくれているのに、武器を持たせないのは理に合わないと、強く主張してくれ、誰からも反論されなかった。

 意外にあっさりと僕の武器携帯が許されてしまった。


 「たぶんそうなると思って、持って来といたのよ。

  はい、これ。 これでしょ、アレクくんの武器は」

 イクス様が包みを渡してくれた。



 ラーリア様の見せてみろ、との言葉で、僕はちょっと恥ずかしい気がしたが、袋から出し木の鞘を払う。


 「アレク、そのなんていうか、不思議な形の剣だな」

 サーブが聞いてきた。

 「うん、剣鉈っていうんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ