78. ラーリア様たちが来た
朝、取りに来るとは聞いたのだが、その朝がどのくらいの時間を指しているのか、僕たちはラーリア様に聞くのを忘れてしまっていた。
ラーリア様たちが全員来るということで頭が一杯で、そこに誰も気が付かなかったのだ。
僕らは朝の森行きをやめて、まずはラーリア様たちの食事を用意することにした。
食事を用意させて、取りに来るということは、持っていくということで、それだから若い子たちに出した形と指定されたのだろう。
僕はディフィーに命の実などを包む、幅広の葉の採取を頼み、セカンとナーリアには鹿肉の燻製を小さく切って、串に刺すことを頼んだ。
ラーリア様たちに出すのだから、少し彩りを添えようと思って、レンスに大急ぎで果汁の多い実を食料係まで取りに行ってもらった。
サーブには藁束を作ってもらい、僕は竹のスプーンを作った。
全ての素材が揃ったところで、みんなで一気に包み、藁束の中に入れ込んで頼まれた食事を作り終えた。
やれやれ大丈夫、取りに来るまでに間に合ったと安心して、僕は普段の友の食事の準備にまた取り掛かろうと、ナーリアたちも普段の日常仕事に取り掛かろうとしていたら、ラーリア様たちがやってきた。
僕たちは家の外に整列して出迎えた。
「ラーリアの皆様、おはようございます。
準備は出来ているので、いつでもお持ちします」
ナーリアが代表して挨拶した。
ラーリア様はちょっとシマッタという顔をして、挨拶を返してきた。
「あ、お前たち、おはよう。
早くに出て来たのだが、もう食事の準備をしておいてくれたのか。
素早いな、ご苦労だった」
「ラーリア、『食事の準備を見学したい』と伝え忘れたのか?」
「いや、ラーリオ、昨日は、この者たちがちょっと面白いことをしていてな。
そっちに気を取られて、・・・、すまん、伝え忘れた」
「その面白いことと、ラーリアだけ新しい弓とその荷物を持って来たこととは繋がりがあるのね」
「ま、そういうことではある。
サーブ、この弓と荷物を戻るまでどこかに置いておいてくれ。
ラーリル、そう睨むな」
サーブはラーリア様から弓と荷物を預かっている。
自分の失敗を責められてタジタジになっているラーリア様というのもなかなか見ない光景だ。
「本当は私たちは、食事の用意をみんながする姿を見学する予定だったのよ。
だからこんなに早く来たのだけど。
ラーリアは私たちが来る時間も伝えてなかったのね。
あ、私はラーリドよ。
自分の名前ってまだ使い慣れないけど、ちょっと新鮮ね」
ラーリア様たちの一人、ラーリド様が僕たちに説明してくれた。
「ま、とにかくだ、もう食事も用意されている。
受け取って、すぐに行こうではないか。
早く終わらせてここに戻れば、私が昨日見た面白いことを、皆も経験することができる。
その方がいいんじゃないか」
ラーリア様が事態の収拾を図った。
僕は目配せして、ディフィーとレンスに作った食料を持って来させた。
ラーリア様たちは受け取って
「まあ、今から何か言ってもしょうがないわね」
「そういうことなら早く行って終わらして来ましょう。」
などと口々に言って、先に向かった。
ラーリア様もナーリアを呼ぶと何か言って、先に向かった。
「ラーリア様も、ラーリアの中ではあんなに色々言われるのね」
セカンが驚いた様に言う。
「言い忘れたの責められて、困っていた」
レンスがちょっと面白そうに言った。
「ラーリアの中ではラーリア様が特別偉いという訳ではないのね。
私たちにあんな感じは普段全く見せないけど」
ディフィーも興味深そうに言う。
「で、ラーリア様は何をコソコソ言ってたんだい?」
サーブがナーリアに尋ねる。
「午後割と早い時間に戻ってくるから、弓矢の練習の準備をしといてくれ、って。
それと体を拭く布を持ってくるのを忘れたから、昼にもらって来ておいてくれ、だってさ」
「なんか、ラーリア様、気を使ってる?」
僕がそう言うと、みんな爆笑した。
昼に友たちに、鹿肉の燻製を少し多めに出してやる。
全く問題なく、喜んで食べている。
もう大丈夫かな、と思い、僕は今まで作ろうと思っていたのだが、まだ作っていない物を、よし作ろうと決めた。
でもとりあえずは今に集中だ。
イクス様のところに寄り、ナーリアが話をしている。
「ラーリア様に、体を拭くための布を頼まれまして」
「ああ、今日はそっちに寄るのだったわね。
夕食も欲しいって言ってなかった?」
「はい、それも、昨日言われました」
「じゃ、ちょっと待っててね」
イクス様は係の若い娘たちにも言って、色々と準備している。
え、布10枚だけじゃないの。
「敷皮も10枚持って行きなさい、それとこの折り畳み机も4台ね。
皿や鉢などの食器は前に多く持たせたから足りるわね」
「あの、こんなに持って行くのですか?」
「あなたたちの家のあの部屋に、あと10人は入れないでしょ。
使わないときは倉庫の方にしまっておきなさい。
それと、この皮は毛を毟らないのよ」
「はい、わかってます」
「それから、夕食の時は私も行くから」
また気を使わなければいけないラミアが一人増えた。
僕たちは荷車に、それらの荷物と隣の食料係からも食材をもらって載せ、家へと向かった。
毛皮や机を家の前にセットしておこうか迷ったが、一度倉庫にしまっておくことにした。
食材は竃のところに用意しておく。
僕は塩漬けにしておいた肉を取り出し、川の水に浸けて塩出しをしておいた。
ナーリアたちはいつもの昼の後始末を終えると、全員胸当てを着込み、手袋と弓矢を準備した。
藁束の的が使い込んでかなりもう痛んでいるので、サーブとレンスに手伝ってもらって、一度バラして傷んだところを取り去り新しい藁を足して、綺麗に作り直した。
ナーリア、セカン、ディフィーは家の周りと水浴び場の掃除を一生懸命にしている。
あー、気を使うなぁ、やっぱ。
まだ掃除をしている時に、もうラーリア様たちは戻って来られた。
僕たちはそそくさと作業を止めて、出迎えようとしたのだが、それより先に声を掛けられた。
「その掃除道具は何?」
セカンが持っていた竹箒に興味を持たれたみたいだ。
「これですか。 竹箒です。 アレクに教えられて作って使っています」
「あなた、名前なんていうんだったっけ?」
「はい、セカンです」
「私はラリファよ。 ちょっとそれ貸してみて」
ラリファ様はセカンから竹箒を受け取ると、あたりを掃いて試している。
「これ、かなり使い勝手が良い様に思うけど、あなたはどう感じている?」
「はい、今まで同じ目的で使っていた、背の高い草より、効率も耐久性もずっと良いと思います」
「これを作る材料はある?
あるなら作り方を教えなさい。
みんなこれの作り方を教わるわよ」
サーブ、ディフィー、レンスが柄になる竹と、切り落としておいた枝の部分、そして縛るための縄などを取りに行った。
「これがあれば、今日はもっと楽だったんじゃない」
ラリファ様は他のラーリア様たちにそう言った。
そういえばなんとなくラーリア様たちは皆、薄汚れている気がする。
何をしに、どこに行ったんだ?




