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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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77. ディフィーの弓

 森に入る時、特に狩をする時の僕の装備について、ナーリアは上の人と掛け合ってみると言っている。

 こういう時、ちょっとだけ寂しいような、現実を思い出すような気分を味わう。

 そうだった、僕は捕らわれた身だったと。

 普段の生活ではそんなこと忘れているし、どちらかというと今現在は、僕の提案でナーリアたちが動くことが多いので、捕われた身なんてことは思い出しもしない。

 武器の使用と所持が許されていないことが、唯一捕らわれの身であることを思い出させる事柄だ。

 ナーリアが掛け合ってくれるということだが、これは僕にとっては手の出せない話な訳で、考えても仕方ないと割り切ることにした。


 で、ディフィーの問題を考えてみたのだが、力が弱いことは一朝一夕にどうなることではない。

 それに筋肉がつきにくい体質という個性もある訳で、仕方ない部分だ。

 それではレンスみたいに速射に磨きをかけたとしても、ディフィーでは獲物に近づく技能に問題がある。

 速射する前に、狙った獲物に逃げられては意味がない。

 尻尾の力を使って弓を引いておくことを考え、クロスボウを思い浮かべたが、獲物に近づいてからクロスボウをセットし、そうして撃つなんて動作をしてたら逃げられる可能性が高いし、形が大きくなり重量が増しては非力なディフィーの移動力をますます削ぐことになると思い至った。

 なかなかよい案が思い浮かばない。


 力の弱い者が重い荷物を引っ張る方法を考えていて、ある光景が思い浮かんだ。

 それは僕自身が世話になるかも知れなかった孤児院にあったのだが、小さな子でも水汲みができる井戸があったのだ。

 ロープをぐるぐる引っ張ると、水が入った重い桶が、井戸の底から上がってくるという物だ。

 仕組みは、大きい糸巻き状の木にロープが巻いてあり、そのロープを引っ張って糸巻きを回すと、それにくっ付いている小さな糸巻きに桶に繋がったロープが巻きつくという物だった。

 これを弓で応用できないかと考えた。


 僕はディフィーから弓を預かり、弓を改造することにした。

 せっかく塗ったタールをナイフで削って剥がし、弓を沸騰した湯の上にかざして湯気を当てる。

 すると乾いていた糊が水分を徐々に含み、重ねて貼り付けてあった部分を剥がすことができる。

 僕は一度、弓をバラバラにして、組み直すことにした。

 両端には、竹を炙って捻って曲げ、穴を開けた部品をつけた、そこに木で作った大きい円盤と小さい円盤を組み合わせたモノに鹿のツノで作った芯を通し、組み込む。普通に弦を引いた時よりずっと曲がりが小さくなるだろうから、矛盾しているようだが、鹿の筋をより多く貼り、竹の板も一枚余分に貼り、強力にした。

 余計な部品を付けたところなどは、筋を縒った紐できつく縛り補強した。

 糊をしっかりと乾かす。

 補強した部分が緩むのが怖いので、貼り合わせた部分だけでなく、紐の部分もタールを塗って防水を徹底した。

 弦も少し縒りを増やし太い物にした。

 弦を張るのが複雑になってしまったし、強力にしたので弓を曲げるのも大変で、サーブ、セカンにも手伝ってもらう。

 最初からより曲がった状態に弦を張ってみた。


 弦を張り終わり、本当に楽に引けるか心配になり、引いてみる。

 大丈夫だった、楽に引くことができた。

 問題は矢の威力だ。


 ディフィーを呼んで、試し射ちをさせてみる。

 今までディフィーは昔のラミアの弓で射っていた時のように左肩までしか弦を引かなかった。

 しかし、今度の弓では僕が勧めている右肩まで弦を簡単に引いた。

 射ってみた、ディフィーも驚いたが、僕も狼狽える程の矢の威力だった。

 サーブが射る一番遠い位置からでも、ディフィーも射ることができる。


 「なんなのこの弓、すごい威力」


 「いや、僕もこんな風になるとは思わなかった」


 「こんな威力なら、私も欲しいと言いたいとこだけど」

 サーブが言葉を濁した。


 「そうね、弓が重くなっちゃうのは我慢するとしても、射るのに時間がかかり過ぎちゃうね」

 ナーリアが的確な表現をする。


 「射るのが遅い私でも、この弓でディフィーが1本射る間に、3本射ることができるんじゃないかな」


 「サーブ、それは自己評価が甘過ぎる。 サーブに3本は無理。

  でも私の5本は堅い」

 レンスの評価が正しい気がする。


 「遅いけど、威力はすごい。

  ディフィーの役割を見直して、作戦を変える必要がある」

 セカンの言う通りだと僕も思う。


 ディフィーはみんなの意見を聞いて、考えているようだ。

 でも自分も戦力になると思い少し嬉しそうだ。


 もう少し早く射つことができないかとちょっと考えたが、放棄した。

 構造上、弦が3本にもなっていて、2本の間に矢を通して残りの1本にかけて引かねばならないのだから、時間がかかるのは仕方ない。

 これ以上のことは僕の頭では無理だ。


 そんなことをしていたら、ラーリア様がやって来た。

 昼にナーリアが呼び止め、僕の武装のことを話していたのは知っているが、すぐに来たのは何か意味があるのだろうか。


 「お前たち、また何か面白いことをしているな。

  その変な弓はなんだ?

  そのお揃いの格好はなんなんだ」


 ラーリア様は弓だけでなく、胸当てにも興味を示した。

 そうだった、ラーリア様に胸当てはまだ見せてなかったのだった。


 興味を持たれてしまっては仕方がない、みんなが弓矢の練習をしているところをラーリア様に見てもらう。


 「なるほど、弦を右肩まで引くから保護のための胸当てが必要だったんだな。

  ま、確かに矢の威力は増すな。

  あの変な弓は、非力なものが使ってあの威力はすごいが、時間がかかり過ぎるな。

  他の者に作るモノではないな」


 ラーリア様は、ちょっと見ただけで、的確な批評をしてくる。

 ナーリアたちの弓矢の練習の見学は満足した様だ。


 「ところでアレク、今、人間の食事の準備はだいぶ楽になっているな?」


 「はい、ほとんど僕が食べている物と同じ物が食べれるようになって来ているので、以前の様に特別なことをしなくなったので、楽になりました」


 「では明日の朝、前に若い子たちに食べさせた食事と同じ様な物を10人前用意しといてくれと言っても大丈夫だな?」


 「はい、その程度なら用意できます」


 「それでは任せた。 明日の朝、取りに来る」


 「はい、わかりました」


 「それから昼少し経った頃に戻ってくるので、水浴び場を使わせてもらおうか。

  ぬか袋も10人分用意しておいてくれ」


 「はい」


 「これは出来たらで良いが、夕食も用意してくれるとありがたいな。

  ああ、それにはきっとイクス様も来るだろう」


 「はい?」


 なんだかだんだん大げさになっていく様な。

 僕だけでなく、ナーリアたちも怪訝な顔をしだした。


 ラーリア様はその雰囲気を読んで、

 「大丈夫だ、何の特別なことでもない。

  ここのところ人間の問題で延期になっていたのだが、本来はラーリアは最低限10日に1度は出掛けるのだ。

  人間が落ち着いたからな、その本来しなければならないことをするだけだ」


 「ていうことは、明日はラーリア様が全員来るってことですか?

  それって僕たちにとっては十分特別なことなんですけど」


 僕の後ろでナーリアたちがすごく複雑な顔をしていた。

 僕だけでなくナーリアたちも、もちろん拒否権なんてありません。


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