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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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73. 弓を試す

 結局、出来た弓を試してみるのは、翌日の休みの日となってしまった。

 結果的には糊が完全に乾く時間が出来たということで良かったのかもしれない。

 休みの日にあくせくするのも嫌なのだが、僕は弓を試す前にちょっとした道具を一つ作ろうとしていた。

 ところが材料と道具を前にして、ちょっとどころか全く手も足も出ない。 どうしたらいいんだろう。


 何を作ろうとしていたかというと、弓を引くときに右手にはめる手袋みたいなものを鹿の皮で作ろうと思ったのだ。

 今まで矢の損耗を嫌って、矢を数多く射るということをしなかったラミアには、そういったものを手にはめる習慣がないみたいだった。

 藁束の的に射ることで矢の損耗が防げるので、この前矢を試した時は、調子にのって数打ったのは良いが、弦で指が擦れていたのだった。 それを防ぐ手袋だ。 親指、人差し指、中指の三本が覆えれば良いのだが。

 しかし、裁縫が得意ではない僕は、皮をどんな形に切って、縫い合わせていけば良いのか、イメージがつかめない。

 頭の中で考えて、葉っぱをちぎって組み合わせて試してみたりするのだが、いまひとつ上手くいかない。


 首をひねって考えていると、セカンがやって来て、何をしているのか聞いて来た。

 僕は自分の作りたい物のイメージを簡単にセカンに話したのだが、セカンは

 「私の手に合わせてそれを作ってみてもいい?」

というので、元からまずはセカンの分を作ろうと思っていたのだし、もちろんと答えると、セカンはなんの躊躇いもなく、皮をナイフで切っていき、針と糸で簡単に縫い上げてしまった。


 セカンは出来たものを手に着けてみて調子を確かめると、一度縫った糸を切り、ちょっとだけ皮の形をナイフで変えて、もう一度縫い直した。


 「こんな物かしら。 確かにこれを着けていれば指が痛くならない。

 アレクは色々知ってるね」

と僕を褒めてくれたが、僕はポカンと呆れるばかり。


 なんなのこのセカンの器用さは。

 最初からセカンに頼むんだった。

 僕が悩んでいたのは時間の無駄だった。


 セカンに残りの四人の分も作ってあげてくれる様に頼むと、セカンは一人づつ呼んで、サイズを合わせて簡単に作り上げてしまった。


 「ラミアって、こんなに器用なんだ。」

って僕がしみじみ言ったら、

 「こんなことはセカンにしか出来ない。」

とレンスに即座に訂正された。


 それにしてもナーリアたちは、みなそれぞれに優れた技能を持っている気がする。

 セカンが器用なのは、今回より良く分かったが、レンスの音を立てないでの移動や弓矢作りの才能も凄いし、サーブも地味に色々出来る。


 サーブで驚いたのは、革鞣しだ、「得意だ。 任せてくれ。」というので、最初の毛を取った皮の鞣しを任せた。

 それをサーブは他の作業をしながら、尻尾の先で器用に叩いたり折ったりして、気が付けばすっかり綺麗に鞣してしまっていた。

驚いていると

「ま、貧乏ゆすりの様なものだ。 ほとんど意識しないでやっているだけだ」


 サーブは本当に器用なのか不器用なのか、訳がわからない。


 ディフィーは感知力、観察力、行動予想なんてことが、ずば抜けている。

 獲物の獣を見つけたり、薬草を見つけたりも早いが、それ以上にとにかく予測が的確で正確だ。

 きっと周りの情報を得る力も凄いのだが、その分析力が凄いのだろう。


 あれっ、ナーリアが一番普通だ。

 何かが特別上手な訳でもないし、タールの臭いが苦手なこと以外は何かが特別下手な訳でもない。

 ほっとするキャラだけどね。



 弓を試した。

 みんな驚いている。


 「凄い。 確かに折れた弓よりずっと優れている」


 良かった、セカンに許してもらえそうだ。


 「同じ調子で射って、倍の威力があるんじゃないか。

  これなら飛距離もずっと出ると思うぞ」

 サーブが喜んでいる。


 「私はちょっと問題だわ。

  自分で作ったのだけど、私には大きすぎたし、強過ぎるわ」

 ディフィーは自分の弓が合わなかった様だ。


 「私も、やっぱりもうちょっと小さいのが欲しい」

 レンスも大きさに問題がある様だ。


 結局、セカンは約束の品だから僕ので良しとなったが、ディフィーが作った弓はナーリアが使うことになり、レンス用にセカンが作った弓をディフィーが使うことになった。


 「私がもらっていいの?」

 ナーリアがちょっと遠慮した。


 「良いのよ。 私には上手く使えないから」

 ディフィーがあっさり言った。


 それから少しの時間、ディフィーとレンス、セカンとサーブ、それにナーリアという組み合わせで矢を射ったのだが、皆、以前と同じ射ち方をしている。

 僕は弦をしっかりと右肩のところまで引く射ち方を勧めてみた。

 威力も増すし、左肩までしか引かないより、慣れれば狙いも正確になると思うのだが。


 ここでサーブに問題点を指摘された。

 「アレク、そうは言うがな、その射ち方だと、弦が胸に当たりそうで、怖くて出来ないよ」


 なるほど、言われてみれば。 男の僕には盲点だった。


 僕は残りの皮を持って来て、セカンに手伝ってもらって、即席でサーブに皮の胸当てを作った。


 「これなら、どう?」


 「ああ、こうやってカバーすれば怖くなく引けるな」


 サーブは試しに僕の推薦する射ち方をしてみた。

 威力が段違いだった。


 「こんなに違うのね」

 ナーリアが驚いて声をあげた。


 「でも、ダメだ。 胸当てが作れない。 皮がない」


 僕がそう言うと、

 「今倉庫にあるラーリア様が持って来たのも毛を落とそう。

  それでも足りないから、また鹿を狩ろう。

  矢の長さもちょっと足りないな、もう少し長い矢も作ろう。

  矢を長くすると矢筒も今までのモノだとダメだな、これも作り替えないと」


 サーブが興奮して暴走気味になっている。


 「サーブ落ち着け、まずはお前の弓を作るのが先決だろ」


 「そうだった。 やっぱり私はもうちょっと大きめで強い弓がいいぞ」


 「わかったから、落ち着けって。」


 サーブの興奮を余所に、レンスがさっきからずっと、短く引いて素早く射る練習をしている。

 いつの間にか、この間の様に矢を一人だけ3本使って練習している。


 「やっぱり私は短くて強い弓がいい」

 レンスは別のことを考えている様だ。


 「この手袋、すごく良い。 指が痛くならないから、ずっと練習できる」

 レンスは手袋が気に入った様だ。


 「えーと、弓作りだけど、ラーリア様の分もあるから、またセカンとディフィーにもお願いしても良いかな」


 「いいわよ。 作り方覚えたから、今度はもっと素早く作れるわ」

 ディフィーが了承してくれた。 セカンもうなづいている。


 「それじゃあ、ラーリア様の分はやっぱり頼まれた僕が作るとして、セカンはもう一度レンスのを、ディフィーはサーブのを作ることでいいかな。

  サーブとレンスは、弓の土台となる木の部分は二人に尋ねながら自分で作ること。

  これなら好みの長さになるからどうかな」


 あれっ、休みなのに作業を割り振っちゃってるよ。

 みんな、やる気だから良いのだけどね。

 鹿の皮の毛を抜くのは、やり方を教えたらナーリアが引き受けてくれた。

 ここのところ他と別のことをナーリアに引き受けてもらってばかりだな。

 また水浴びの時にサービスするか。


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