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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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72. 干し肉の行方

 「アレク、サーブとレンスが、もし竃の前を離れられるなら、弓の調子をみてほしい、って呼んでいる。 どうする?」

 セカンが昼食の準備をしている僕に声を掛けた。


 「アレク、見てきて良いよ。 私が見てるよ」

 ナーリアが気を利かせて、竃番を買って出てくれた。


 毎日の作業になっているから、最近は人間が食べるものでも、ナーリアたちに任せても、新しかったり珍しかったりしなければ、安心して任せられるようになってきている。

 言葉に甘えることにした。

 「じゃあお願いできるかな。 ちょっと見てくる。 ありがとう」


 呼ばれた2人の方に行ってみると、弓の調整が終わったみたいだ。

 朝、森から帰ったら、2人はすぐに麻糸を縒って弦作りを始めていた。

 それから今までずっと弓の調整をしていたのだろう。


 僕は調整の終わった弓を引かせてもらった。

 完璧な調整だった。

 いや、それは言い過ぎかもしれないけど、少なくとも僕がするよりも断然優れた調整だった。

 「すごいな二人とも。 僕よりずっと上手だな。

  セカンとディフィーが二人に任せると言ったのが、良く理解できたよ」


 「ああ、こういうことは得意なんだ。

  と言っても、削るのはレンスで、私は調子を合わせる意見を言うだけさ」


 「サーブ、それ違う。

  私はサーブの言う通りに削っているだけ」


 「それじゃあ、こう言えば良いのかな。

  二人の合わせ技は本当にすごい」


 言葉ではなく、僕の心からの賞賛が伝わったのか、二人はちょっと照れくさそうだけど嬉しそうな顔をした。


 「セカンと、ディフィー、まだ向こうに行くまでに時間があるから、横の層になっている部分にタールを塗っといてよ。

  そうすれば午後に本格的に試してみることが出来るから」


 僕が竃の前に戻ると、後を追うようにセカンとディフィーが、あの小石を敷いたザルを持ってやって来た。

 僕は燠を少しそれに載せてやり、「薄く塗るだけでいいよ」と言って送り出した。

 それから、ナーリアに「本当にサーブとレンスの弓の調整はすごいね」とおしゃべりをしながら、友のための調理をした。


 前回の休みからこの日で5日働いたことになり、今回はラミアの習慣に従い、きっちりと休むことになった。

 明日何も無いのでは、友たちがなんとなく可哀相な気がして、僕はまだ作ったばかりの干し肉を、一人当たり5枚程、彼らに今日の昼食とは別に渡そうと考えた。

 まだ熟成は全然して無いけど、何も無いよりはマシだろうと、葉っぱに包んで藁で止めて、一人分づつの包みを作った。


 昼にそれを友に渡すと、

 「おお、アレク、気がきいてるな」

 なんて憎まれ口を叩いてくる。


 「少しづつ食えよ。 一度に食って、また、腹が痛いなんて騒ぐなよ」

と返す。


 昼が終わり家に戻ろうとすると、イクス様に呼び止められた。

 「アレクくん、少し後で、ここにそうっと戻って来てごらん。

  きっとなかなか面白いモノが観れるわよ」


 「そうっとですか?」


 「そう、そうっと」


 僕は家に戻ると、大急ぎで弓の仕上げをセカンとディフィーの三人でした。

 弓の左手で握る部分に鹿の皮を細く切った紐を水に浸けて巻きつけ、途中矢を沿わす所に薄く削った角をはめ込んだ。

 そして要所要所に、腸を細長く切って、それを煮て乾かし、繊維状になったモノを縒って作った糸を、これも水に浸してきつく巻き締め、こちらには糊も塗った。

 弦にも糊を塗っておく。

 これで戻る頃には糊が乾いていれば良いのだが。


 僕たちはイクス様に言われた通り、そうっと言われた場所に戻った。

 イクス様はすぐに気がつき僕らに近づくと

 「ほら、ここから広場を気づかれないように、観てみてごらんなさい」


 「あら、あの子たち、人間に習って藁で色々作っているのかしら」

 ディフィーが声をあげた。


 僕もちょっと驚いた。

 昼食会をした30人の若い子たちが、三人づつ僕の友たちに群がって、藁縄を作ったり、ムシロを編んだり、入れ物を作ったりしている。

 僕の友たちはそれを一緒にしながら、助言したり、教えたりしている。

 一緒にいるミーレア様たち(今日の担当なのかな)もニコニコしながら一緒にその作業をしている。


 「何時からこんなことになっているんですか?」

 僕はイクス様に尋ねた。


 「ほら、昼食会の時に、アレクくんたちが気軽に声を掛けてくれても良いというようなことを言ったじゃない」


 「はい、確かにあれから私たち若い子たちに、しょっちゅう声を掛けられるようになりました」 ナーリア


 「うん、最初恥ずかしかったけど、最近慣れた」 レンス


 「その後で、サーブちゃんが麦わら帽子の作り方を若い子に教えたじゃない」


 「はい、ここまで流行るとは思いませんでした」 サーブ


 「でも、上手く作れない子も結構いたのよ。

  そうしたら、その子たちが教わろうと思って、アレクくんの仲間に声を掛けたのよ。

  麦藁帽子なんて今までなかったから、きっと人間のモノだと思ったのね。

  若い子は、勘がいいわ」


 「それで、ラミアの上の人的には、それでOKだったんですか?」

 ちょっと疑問だったので、僕は重ねて聞いた。


 「少し元気になってきたアレクくんの友人たちも、何かしたいという気持ちはあるみたいだったし、ラミアとしても部屋の中だけにいるより元気になるんじゃないか、という気持ちがあったのよ。

  まだ、動いて何かするって程じゃないから、丁度良かったのね。」


 僕は安心したし、嬉しくなった。 少しでも元気を取り戻してくれるのは、やっぱり嬉しい。


 「あらっ、食べてる」

 セカンが呟いた。


 セカンの呟きが気になり、僕も広場をもう一度よく見た。

 「あいつら、明日食べるように、と言って渡したのに、もう食ってやがる」

 ちょっとムッとした。


 「ちょっと待って。 みんな食べてる」

 セカンが言葉を足した。


 「あ、本当だ。 みんな食べてる。

  ミーレア様たちまで食べてるよ」

 ナーリアがちょっと羨ましそうに言う。

 なんなのその食いしん坊キャラみたいな言い方。


 確かによく観察するとみんな食べている。

 あの食いしん坊のデイヴの周りもちゃんと食べている。

 一人当たり干し肉は5枚しか配っていないから、今の時点で、若い子三人にミーレア様に渡しているから、もう全部消費していることになる。


 耳を澄ませば声も聞こえる。


 「お兄さん、これもらっちゃって良いの?」


 「うん、良いよ。 それとも人間の食べ物は食べれない?」


 「そんなことない。 美味しいと思う」


 「なら食べて良いよ」


 「でもこれ、お兄さんたちのためにアレクさんが作ったんでしょ」


 「ああ、君たちはアレクを知っているんだったね」


 「うん」


 「大丈夫。 僕が頼めば、アレクはまたくれるさ。

  だから構わず食べてね。

  それよりアレクのことは『アレクさん』と呼ぶのだから、僕のことも『エレクさん』て呼んでくれないかな」


 「いいの?」


 「うん、その方が嬉しいかな」


 やっぱり、あいつら良い奴らだな。

 僕はなんだか、嬉しいような、誇らしいような気分になった。

 あ、ちょっと涙出そう。


 「アレクくん、彼らに明日の分持って来てあげても良いんじゃないかな。

  私に渡してくれたら、明日彼らに届けてあげるわ。

  もうない訳じゃないんでしょ」


 「そうですね。 あんな風に言われたら、仕方ないな。

  もう一度戻って、取って来ます」


 「あ、私の分も忘れないでね」


 僕はもう一度、ナーリアに付き合ってもらってやって来た。

 11人分持って。


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