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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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68. 矢を試した

 30人の食事会をした為、午後の時間が中途半端になってしまった。

 そこで、前日作った矢を試してみることにした。

 一日経って、もうすっかり糊が乾いているから、試してみても良いだろう。


 みんなそれぞれに最初に作った矢と弓を持ってくる。

 僕はこの前使って仕舞っておいた藁束で作った的を出して用意した。

 僕が弓を折ってしまったセカンは、どうやらディフィーに貸してもらうことにしたらしい。


 それぞれにまずは近い位置で射ってみる。


 「今までの木の矢と、違いはないわね。 同じ様に射てる」


 まあ、その距離じゃ、違いは分からないよね。

 「もう少し、遠くから射ってみてよ。 違ってくるから」


 みんな何度か射る度に距離を長くしていった。


 「うん、アレク、いつもより真っ直ぐ飛んでいる気がするぞ」

 サーブが感じたようだ。


 「絶対真っ直ぐ飛んでいるわ。 私この距離だともう的に当てる自信ないのだけど、ちゃんと的に当たっているもの」

 ディフィーの言葉は褒めてくれているのだけど、なんとなく信頼感がない。


 見ていると弓一つでも皆それぞれに個性が見えてくる。

 ディフィーは褒めてくれた場所以上には距離を取らなかった。

 それ以上は当てる自信がないようで、外して矢を壊すことを恐れたようだ。


 ナーリアとセカンはもう少し離れた位置で止まった。

 止まった位置から練習している。

 セカンはナーリアに弓を借りることに切り替えたみたいだ。


 レンスは何か考えているようだ。

 おもむろに家に戻ると、もう二本矢を取ってきて、3本の矢を次々と連続して射る練習をしている。

 距離はもっといけそうなのだが、ディフィーと同じ位置で射っている。


 サーブは違った。

 一回射るごとに距離をどんどんと伸ばしていった。

 最終的にはディフィーの倍くらいの距離から射って戻ってきた。


 「本当にすごい違いだよ。

  もっと遠くからでも射ることができそうだけど、これ以上はアレクみたいに弓を壊してしまいそうだ。

  それに矢の長さが足りない」

 サーブが的確な指摘をする。


 「ええっ、いつもの矢よりこれの方が長いじゃない」

 ディフィーがサーブの言葉に驚いたように言う。


 「私の弓は、みんなの弓より少し大きいせいもあるかも。

  でもどっちにしても、今の弓だとここまでしか引けないから、これ以上矢を長くすることはできないな」

 サーブが上目づかいで僕の方をチラッと見つめた。


 え、それって、サーブも新しい弓が欲しいっていう催促なの。

 ナーリアがそのサーブの上目使いに気がついた。


 「今作っている弓って3張りだよね。 サーブにも作るなら私も欲しい」

 うん、そうなるよね。


 レンスが真剣な顔で話に加わった。

 「アレクが教えて作っている弓って、この弓より強力になるんだよね」


 「ああ、絶対に強力になるぞ」


 「だとしたら、この弓より小さく作っても、この弓より威力がある矢が射てる?」

 レンスは自分の他よりいくらか小さめの弓を見せながら聞いてくる。


 「たぶんできると思うぞ。 レンスは小さくて強い弓が欲しいのか」


 「セカンに作ってもらっているのに悪いと思うけど、この矢を射ってみたら、そういう弓が欲しくなった」


 「ん、別に構わない。 そうしたら今作っているのは、私の予備にするから」

セカンが全然気にしないとレンスに言ってあげている。


 「そういう注文ができるなら、私のはこれより少し大きくして、強力にしてくれ。

  そうしたらもっと長い矢を作れば、ずっと遠くまで飛ばせると思うんだ」

 サーブも注文をつけ始めた。


 「なんだか楽しそうな話をしているな」

 僕たちは急に声をかけられて、みんなビックリして飛び上がった。


 「ラ、ラーリア様、いらっしゃていたのですか。

  すみません、話に夢中になっていて、全く気が付きませんでした」

 ナーリアが気まずい思いを振り払って、ラーリア様に答えた。


 「周りに気を配るのを全員が全く忘れているというのは感心しないが、まあ、家の前だから許そう。

  ところで何をしていたのだ。

  弓を作るとか話していたようだが」


 僕は何となく話題を逸らそうと思って、

 「ところで、何のご用でいらっしゃったのですか?」

と聞いたのだが、

 「ああ、昼に一つ余った分を私が持っていったのだが、それを食べさせた者の感想を伝えないと無礼だと思ってな。

  とても美味しいと喜んでいたぞ、誰に渡したかは言えないがな。

  ところで、まずちょっとその矢を見せてみろ」


 あっさりと流されてしまった。 話題を変えるのは失敗したようだ。


 ラーリア様はナーリアから矢を手渡されると、じっくりとそれを観察した。


 「ほう、矢竹で作った矢か。

  火が使えるから、出来る技だな、これは。

  みんなアレクが作ったのか?」


 「いえ、作り方は教えましたが、全部みんなが作った物です。

  僕が作ったのは教える時に作った一本だけです」


 僕はラーリア様が細い竹の種類の名前、矢竹と知っていたのにも驚いたが、即座に火を使って竹の撓みを直したことを看破したことに内心とても驚愕した。 ラーリア様は矢竹で矢を作る方法を以前から知っていたのかも知れない。


 「5人とも作れるのか?」


 「はい、全員作れるようになりました。

  特に竹を真っ直ぐに矯正する技は、レンスが特別に上手です」

 ナーリアが答えたが、「そんなことまで言わなくていい。」という非難の目をレンスが向けている。


 「そうか、それならたくさんの矢が作れるな」


 なんだかラーリア様にいけないことを知られた気がする。


 「羽は3枚か。

  羽を取り付けている糸を固めているのや、矢筈、鏃のところにも使われているらしい糊は何だ?」


 「はい、獣の筋や軟骨を煮て、作った糊です」


 「なるほどな」


 そして藁束の的を見ると

 「そしてこれを的にして試していた訳か」


 ラーリア様はナーリアたちをさっと見渡すと、サーブに弓を借り、セカン、サーブの矢も貰って歩いていった。

 ディフィーとレンスが射ていた場所まで行くとまず軽く一本射った。

 スタスタと遠ざかり、今度はナーリアとセカンが射っていた位置でまた射った。

 また遠ざかり、最後はサーブが一番離れた位置で射って戻ってきた。


 「なるほど、矢の直進性がラミアのモノと比べ段違いだな。

  だが、これ以上はこの弓では持たないか。

  それでさっきの弓の話となる訳か。

  確かにこれならもっと強力な弓があれば、ずっと遠くまで正確に飛ばすことができるな」


 ラーリア様は感心したような、面白いとでもいうような顔をしている。


 「で、アレクはもっと強力な弓が出来ると言っているのだな」

 ラーリア様は僕にではなく、サーブに向かって質問していた。


 「はい、ラーリア様。

  それで私は今の弓よりも大きくて強力な弓が欲しいと言いました」


 「そうか、話はよーく分かったぞ。

  私ももっと強力な弓が欲しいな。

  アレク、よろしく頼むぞ。

  大きさはお前の背丈くらいが良い」


 「え、ラーリア様の弓も作るのですか?」


 「話を聞いていれば、そうだと分かるだろう」


 「そんな気はしたのですが、材料が足りません」


 「何が足りないんだ」


 「作るのに鹿の筋とか角とかを使うのですけど、今ある量では無理です」


 「それならすぐに鹿を獲って持って来よう」


 「ただの鹿じゃなくて、若いけど立派な角を持った鹿で、獲ったらすぐ血抜きしたモノでないと」


 「分かった、なかなか条件があるのだな。

  だが、その程度大丈夫だ」


 「あの、ラーリア様、血抜きって分かりますか?」

 ディフィーが尋ねた。


 「ああ、知っている。 大丈夫だ、待っていろよ」


 ラーリア様はその後少しサーブと話し、上機嫌で去って行った。


サイド・ストーリー「ラミアの独り言」のep2が、本編のこの頃の話です。

良かったら、そちらも読んでください。

でも、そっちの先はあまり読み進まないでくださいね、ネタバレ多数になってしまいますから。


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