65. 久々の休日
ラミアの社会は基本、5日働いたら、1日休みの日になると決まっていて、それがローテーションとなっている。
でも僕たちは、僕の友たちの騒ぎがあり、その後の食事の世話があったので、もう半月は休むことなく、決められた仕事に励んでいた。
僕としては仲間の人間たちのことで働いていたのだから、何も文句をつけるようなことではないが、ナーリアたちにしてみれば、休みなくずっと働いていることになり可哀想なことになっている。
僕はそんなことに全く気が付かないでいたのだが、イクス様が昨日
「あなたたち、もうずっと休みの日がないわね。
私からラーリアたちには言っておくから、明日は休んで好きなことをしなさい」
と言ってくれて、はたと気づいた。
僕はナーリアたちに謝った。
「ごめん、僕の友たちのことでずっと休みなしだった。
あらためて、お礼も言わせて、みんな、ありがとう」
「そういえば、休みってなかったな。
新しいことを色々していたから、そんなの忘れていたよ」
サーブがそう言ってくれた。
「あんなに弱った人間の姿を見たら、アレクとの差を感じちゃて、放っては置けないよ。
気にしないではいられないから、休みなしも仕方なかったよ」
ナーリアが友たちのことを思って言ってくれた。
「それにこれはナーリアとして全体で任された仕事。
アレクが感謝したり、謝ったりすることじゃない」
セカンが僕に気を使わせないように言ってくれた。
「でも休みがあるのはやっぱり嬉しいわ。
毎日色々なことがあって面白かったけど、たまにはのんびりするのもやっぱりいいもの」
ディフィーが休みを喜んでいる。 本音だよね。
「私たちは働きすぎている」
なんかレンスはブレないな。
そんな訳で、今日は朝からのんびりしている。
ラミアの生活は普段は結構忙しいのだ。
命じられた任務としての仕事以外にも、様々なことをしなければならない。
僕たちは、火を使うから柴刈りや火種草取りは欠かせないし、洞窟から離れて禁足地で、つまりラミアの集団生活から離れて生活しているので、ラミアが役割分担してやっていたりもする洗濯や掃除なんてことも、全て自分たちでやらねばならない。
僕は調理と道具作りが優先なので、そういった仕事は免除されているが、ナーリアたちは毎日それらにも勤しんでいる。
特に大変なのが掃除だ。
ラミアの住居やその往来の多いところは、尻尾で移動するから、それを汚れないようにする為か、石畳になっていて、石の間も土と石灰を混ぜたもので固められている。
その石畳は、普段からラミアによって綺麗にされているのだが、僕たち自分の家の周りだけでなく、集落の広場からここまでの道の石畳をも掃除することとなったのだ。
最初は普通に、ラミアの習慣になっている背の高い草を束ねて掃いていたのだが、これは耐久性に問題があり、すぐにダメになるので、僕が竹の枝を束ねてそれに持ち手もつけて、竹箒を作った。
耐久性がだいぶ増したので、スピードが上がりマシになったが、面倒なのはやはり変わらない。
作業場の命の実は、やっと実と茎をほとんど分け終えた。 それぞれに分けて倉庫に保管している。
これらもナーリアたちが頑張ってくれた。
ラミアの集落の倉庫の命の実は、さすがに手が回らないとイクス様に泣きつくと、それは向こうでやってくれることになった。
その代わりに、実と茎とを分けるための道具は3台ほど作ることになった。
今は暑い時期なので、僕とサーブとセカンとディフィーは水浴び場で、半ば体を水に入れたり出したりして涼みながら、のんびりと手を動かしている。
僕が、煮て柔らかくした鹿の筋を水に晒しながら、繊維に沿って細かく裂いていたら、興味をセカンとディフィーが示し、
「何のためにそんなことしてるの?」と聞くので、
「弓作りに使う」と答えると、二人も作業を手伝ってくれている。
サーブは昨日使った剣をゆっくりと研いで、手入れをしている。
研ぎ終わり、剣を乾かしたら、サーブは木でできた小さな入れ物を取り出すと、蓋を開け指に何かつけ、剣に塗っていった。
「サーブ、何を剣に塗っているの?」僕が尋ねると
「ん、オリーブの油だぞ、剣が錆びないようにな」
「オリーブオイルってあるの?」
「オリーブは食べるからな。 食べるなら、オイルはあるだろう、普通」
良いことを聞いた。
ナーリアは暑いのに、「まだ家も周りもよく見ていない」と言って、家の中や、家の周り、周囲の色々な物を見て回っている。
ここに移ってから忙しくて、最低限のところしか見てないんだよな、僕も確かめなくちゃとは思うけど、休みとなると暑いし、やる気にならない。
こういうところナーリアは真面目なのか、リーダーの自覚なのか分からないが、とても真面目だと思う。
レンスは木陰の涼しいところで最初から昼寝と決め込んだようだ。
そうそう、僕たちの頭の上は麦わら帽子がのっかっている。
僕が暑いから自分のために作っていたらサーブも真似して作った。
僕が被って外に出て、やっぱりあるとないでは大違いだ、と喜んでいたら、みんなも興味を示して試してみて、全員欲しいということになった。
え、全員分編まないといけないの、と思ったが、サーブが引き受けてくれた。
僕たちが麦わら帽子を被って広場に行ったら、まずイクス様やラーリア様が興味を示し、試して、欲しいと言い出した。
二人にもサーブが作って渡すと、火がついたように多くから欲しいと言われるようになった。
とてもサーブが作りきれないので、サーブに講師になってもらって、若い娘につくり方を教えてもらった。 急速にラミアの中で麦わら帽子が蔓延していった。
イクス様が集落の方で命の実と茎を分けると言ったのは、麦わら帽子の材料確保の意味もあったかもしれない。
僕は鹿の筋を細かく裂く作業は二人に任せ、三人から離れると、近くで幅が広くて大きい草の葉を取り、それを持って家に戻った。
竃に火を入れ、肉の串焼きを竈門の中の網に、そして自分の分の命の実を入れた鍋を五徳にセットした。
火をつけて調理しつつ作業場に行き、上端と下端を縛った藁束を人数分作った。 それから竹をナイフで簡単に削り、スプーン風にしたものを6本作った。
ラミア用の水に浸けておいた命の実を葉に盛り、包んで藁で結ぶ、僕の分はもちろん炊いた実だ。 焼きあがった肉串も葉で包む。
それらを一人分づつ藁束の間に押し込んだ。
僕はその藁束6本を小脇に抱えて、外に出て声を掛け、みんなにレンスの寝ていた涼しい木陰に集まってもらった。
「今日の昼飯作ったよ、はい、これ」
と藁束を一本づつ、みんなに渡した。
みんな、「何なの」という感じでキョトンとしていたが、僕が藁束の中から葉の包みを取り出し開くと、みんな真似をした。
「何これ、楽しい」ナーリア
「面白い」レンス
「藁束の中に食べ物。 ちょっと意外」セカン
「よくこんなこと思いついたわね」ディフィー
「外でこんな風にして食事にするのも、ちょっと良いな」サーブ
うん、なかなか好評です。
食事を食べ終わると、ナーリアが言った。
「それで、今回のこれは、私たちを驚かせることだけが目的じゃないんでしょ」
うん、なかなか鋭い。
「これさ、若い子たち30人に食べさせてみるっていうやつの試作なんだけど、どうかな」
「すごく良いと思う。 楽しいし、美味しさも伝わる。 その上、藁をこんな風に使うという創意工夫が勉強になる」
セカンがベタ褒めしてくれた。
「それにこれ、30人分運ぶという手間を考えての形でしょ。 これなら家で作って簡単に運べる」
ディフィーもなかなか鋭い。
「若い子たち、絶対喜ぶと思う」
レンスも賛成してくれた。
「それじゃ、若い子たちにっていうのはこれで良いとして。
私はまたこれを作って欲しいぞ。
休みの日に、今度はこれを持って景色の良いところに行って食べるというのは、どうだろうか」
「サーブ、それ良い。 冴えてる」
ナーリアが即座に反応し、みんなの話は次の休みの日にどこに遊びに行くかに、一気に流れ去っていったのであった。




