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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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64. 鹿狩り

 今日こそは鹿を獲ると気合いを入れて、朝の森に入っていく。

 とはいっても、ナイフ一本しか許されていない僕はさすがに鹿狩りで何かできる訳ではなく、獲るのはサーブたちに任すしかない。

 僕は気分だけで、本当に気合が入っているのはサーブたちです。


 思った通り、牡鹿の群れは昨日とほとんど同じ場所で見つけることができた。

 僕たちは警戒して逃げられないギリギリまで近づき、群れを観察し、狙う鹿を決めた。

 それから小声で鹿に警戒されないように、今回の狩の作戦をディフィーを中心にして決めていった。

 レンスとセカンは完全に気配を消して、自分の持ち場に向かって行った。

 ナーリアもそれなりに気配を消して、持ち場に向かっている。

 そういうことの苦手なディフィーとサーブは鹿たちとは反対方向にまず向かい大回りをして持ち場に向かった。

 僕はこの場に残っていることが役目だ。

 人間である僕は、ラミアとは違うから、他の誰よりも気配が消せない、というか、鹿の注意を引きつけている訳だ。

 僕がここにいることで、みんなの行動を楽にしているのさ、ふん。


 気配を消しているとはいえ、決めた場所にいるのだから、僕から見ればどこにいるか分かるはずなのだが、レンスとセカンはそれでも分からない。

 サーブが一番見え見えで、ナーリアもどこに居るかは分かる。

 そして、ディフィーが狙うと決めた牡鹿にそーっと近づいて行った。


 ディフィーは牡鹿に気付かれたと思った瞬間、姿を晒してその牡鹿に飛びかかるように近づき霧を吐いた。

 霧は効果がいくらかでもあっただろうか微妙なところだった。

 鹿は驚いて、ディフィーから逃げて走り出す。


 鹿が逃げて少し走った先には、ほぼピンポイントでナーリアが居た。

 ナーリアは自分に鹿がぶつかりそうになる一歩手前で姿を晒し、鹿が方向転換で動きが遅くなる瞬間に霧を吹きかけた。

 ナーリアの霧は鹿にかかった感じがした。

 まだ鹿は逃げる。


 さすがに今度はピンポイントという訳にはいかなかったが、セカンの方向に鹿はさっきより長く逃げる。

 セカンは鹿が来る前に場所を移動していて、ちょうど良い場所で待ち構えていて、ナーリアと同様に霧を吐いた。

 まだ鹿は逃げる。


 少し鈍った速度で鹿は逃げていくのだが、その速度では逃げていく先のレンスが待ち構えるための移動時間は十分だったろう。

 また同様にレンスも霧を吐いたが、それで終わらず、レンスも鹿を追い出した。


 ディフィー、ナーリア、セカンも霧を吐いた後、何もしていなかった訳ではなく、鹿の逃げる方向を限定するために、姿を晒して移動していた。

 鹿は疲れたのか、毒霧が効いてきたのか、最初の勢いとは全く違う調子で、それでも逃げていく。


 予定通りにサーブの方に鹿が逃げて行ったと思ったら、サーブが剣を抜き、尻尾をバネのように使い、一瞬で鹿に近づき、首を切った。

 鹿は2・3歩よろめいただけで倒れた。


 サーブ、強えぇ。

 確かに鹿はもうヨロヨロだったけど、一瞬で近づき、しっかり鹿の頚動脈を切り裂いていた。

 うん、鹿なら任せてくれと言う訳だ。


 それに、ディフィーの立てた作戦通りの展開で、ほぼ予想通りの場所に鹿は走って行った。

 こっちも凄いんじゃない。


 「ほら、何してるの。 獲った鹿はどうするの?」

 見事な狩を見てぼんやりしていた僕に、ディフィーが声をかけてきた。


 そうだった茫然としている時じゃない、やることやらなくちゃ。

 今日は忙しくなるぞ。


 僕は鹿の頭を落とし、まずは後ろ足に蔓を縛り付け、近くの木に逆さに吊るし、血抜きをした。

 血が落ちている間に担いでいくための棒を用意して、血が止まったら足を棒に括り付けて、担いでいくことにした。

 ナーリア、サーブ、セカン、レンスの4人で担いでもらい、僕は頭を担いだ。

 作戦を立案したディフィーが一番の功労者だと思うので、先頭で周りを警戒しながら歩いてもらった。



 もう大分時間がかかっているので、大急ぎで川まで来て、鹿の腹を裂き、内臓だけ取り出して、あとは川の底に沈めてなるべく大きな石で固定しておく。

 内臓も食べられる部分と、ダメな部分とに分けて、ダメな部分は穴を掘って捨てて、食べられる部分は他と同様に川に沈めておいた。


 とりあえず大急ぎで家に戻り、昼の準備をする。

 今日は昨日と同じだ。

 ただし、鶏ではなく、昨日レンスに獲ってもらったウサギだけど。

 気持ち、肉を大きく切っておいた。


 午後、鹿の解体にかかる。


 まずは鹿の皮を剥ぐ。

 これは得意だというサーブに頼む。

 サーブ、ウサギも皮を剥ぐのは上手なんだよなぁ。 なんでそのあと、肉を部位別に身取るとなると、下手くそになるのか。

 剥いだ皮をいつものように鞣しの係に持って行こうとするサーブを止めた。 今回は皮も自分たちで使うつもりだと。

 そうしていつも以上に皮についた肉や、筋を丁寧にとってもらい、また水の中に沈めておく。


 サーブはここまでで、今度はセカンとディフィーに手伝ってもらって、肉などの部分を分けていく。

 まずは肉を部位ごとに切り分け、もう一度水の中で血抜きをすると共に、温度を冷やす。 冷えたら二人に、適当な大きさに切って、桶に少し多めの塩とで漬け込んでいってもらう。

 腸も縦に裂いてもらい、よく洗ってもらう。

 その間に僕は、丁寧に脚や背中の硬い筋を取り外す。

 骨についている軟骨部分も丁寧にとって集めた。 筋や軟骨は新たに持ってきた適当な鍋に入れておく。


 ナーリアにはこの間、頭からツノを切り離す作業をしてもらっていた。

 そして、レンスと作業が終わった者は、矢竹を取りに行ってもらい、僕は鍋を火にかける準備に竃の近くに持って行き、肉の桶は冷暗所に運ばせた。

 そしてその後、2人と一緒に森に弓の一番元となる、折れにくい木を取りに行った。弓作りの土台となる木だ。

 弓作りは、セカンの弓を作るのだが、セカンとディフィーも僕の弓作りを一緒にやってみたいというので、彼女らも一緒なのだ。

 ちなみにディフィーは自分の弓、セカンはレンスの弓を作るのだという。


 弓の土台となる木を取ってきて、僕は次に竃に火を入れ、筋や軟骨などの鍋を火にかけた。

 かなり獣臭い臭いが出るので、本当は外でやりたかったのだが、基本火はこの竃でしか使うことを許されていないから、仕方ない。

 弱い火でトロトロと煮たいので、太い薪を入れ放置する。

 時々見て、水が減って足りなくなったら水を足すことになる。


 そうこうしているうちに、残りの三人が矢竹をかなりの量取ってきて、作業場に積んでいる。

 僕はみんなに、矢竹を火で炙って熱くして、反りを直して真っ直ぐにする方法を教える。

 そうして真っ直ぐにし、節の部分をナイフで削れば、矢の軸ができる。

 作業場で一人一人に小さな熾火でも近くに置いて、この作業をすれば効率が良いのだが、今は竃でしか火を使えないから、今度ラーリア様に相談することにする。


 弓作りも、矢作りもまだ本番は始まらない。


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