63. 友たちと話す
朝、前日見つけた鹿の跡をもう一度辿り、探すことにした。
鹿は少なくとも数頭の群れを作っているので、この時間なら朝の行動を終えた群れが見つかるのではないかとちょっと期待した。
ディフィーが聞いてきた。
「アレクはどんな鹿が獲りたいの?」
「今回は少し目的があるから、若いけど角の立派な鹿かな」
「そう」
ディフィーがちょっと顔を曇らせたので、僕も注意深く跡を観察した。
あ、そういうことか。
小さな鹿の群れを確認した。
しかし残念ながらその群れはメス鹿と子鹿の群れで、食べる為の肉を得る為というだけなら良いけど、僕は角を欲しいと思っているので、その群れではダメだった。
足跡に子鹿のモノが混ざっているのに、セカンは先に気付き、この事態を予想していたのだろう。
僕もディフィーの顔を見て、気がついた。
狩人として、新人だけどさ、ちょっと負けた気がして、恥ずかしい。
がっかりして家に戻りかけているとセカンが違う跡を見つけた。
今度の跡は、ディフィーの顔を曇らさない。
それを辿ってみると、今度はドンピシャで雄の群れだった。
この日は獲物の確認をしただけで終わりにした。
場所を大きく移動してしまい、逃げられてしまう可能性もない訳ではないが、もうすぐ交尾期を迎えるこの時期に、雌も近くにいる環境で、食料も豊富にあるこの場所から離れるとは思えない。
そもそも群れ探しが2度手間になったので、この日は鹿を狩っている時間的な余裕がなかったのだ。
家への道すがら、レンスにウサギを二匹獲ってもらう。
僕は幅が広くて長い草の葉を数枚取って帰った。
ウサギの処理はレンスとサーブに任せる。
二人とも、もう手慣れて、血抜きも肉の身取りもきちんとこなせる。
ナーリアに竃に火を入れて、大鍋に水を沸かしてもらう。
鶏肉を鍋に入れて茹でる。
ナーリアには火の番とともにアク取りも任せる。
茹でた鶏肉は一度取り出し、小さくナイフで切っておく、鍋に命の実を入れ鶏肉を茹でたお湯で煮る。
大分入れる量が増え、煮えた実の固形感が増している。
そこに小さく切った鶏肉も加えて、味を整えた。
最近晴れてる日の昼食時は、人間たちは集まってしゃべりながら食べている。
まだちょっと支えられたりしてここまで来るが、さすがに飯を食うのに補助はいらなくなったからでもある。
僕はラミアたちが人間が集まるのを嫌がるかと思ったが、そんなことはなく、すぐ近くで自分たちも食事するだけで、自由にさせてくれている。
だから僕もそんな会話に少し参加する。
「なぁ、アレク、そろそろ焼いた肉とか出してくれよ」
食いしん坊のデイヴが僕にそう言ってきた。
「今日だって、肉の量増えているだろ」
「俺はこんな茹でてスカスカになった鶏肉じゃなくて、焼いて油が滴っているような肉が食いたいんだ」
ボブが横から口を挟んだ。
「デイヴ、お前何言ってんだ。
一昨日、好い気になって食い過ぎて、また青い顔して寝てただろうが。
まだ俺たちはそこまで回復してない。
今はアレクに任せておくというか、お願いするしかないだろが」
「それにしても、アレクがこの鳥とかも獲ったのか?」
ケンが聞いてきた。
「いや、違うぞ。 ラミアが獲ってくれたものだ。
その穀物だって、子供のラミアが集めてくれたモノだぞ。
まあ、調理したのは俺だけど」
「ほらみろ、文句言える立場か、俺たちは。
ラミアにこんだけ世話になっていて」
ボブはこういうところは義理堅いというか真面目だ。
「でも、俺たちどうしてこうなったんだ。 そしてなんでアレクだけ大丈夫だったんだ?」
この疑問の答えは、僕は考えて用意していた。
立場上、ちょっと自虐的なのが嫌だけど仕方ない。
「ラミアに捕まって、大部屋に連れて行かれたところまでは覚えているだろ。
あの後、そこで特別な果物が出されたのさ。
ラミアにはなんの問題もないが、それが人間には大問題だったのさ」
「それで、なんでお前だけ大丈夫だったんだよ」
嫌そうな顔をして僕は答えた。
「俺はその果物が出る前に、部屋から出されちゃったんだよ」
「なんでお前だけ出されたんだよ」
「いいじゃんか」
「良くねぇよ。 そこが一番の疑問だろ。」
むすっとした顔をして僕は言った。
「役にたたなかったんだよ、俺だけ。
だから、その部屋にいても仕方ないってさ」
なんか微妙な沈黙が訪れた。
「だってラミアだよ。 お前らあの状況で良く興奮出来たな」
「そりゃするだろ。 あの胸見たら」
ウンウン、とみんな首肯く。 いや僕も分かるよ、今となっては。
割と仲の良かったエレクが助けるように話題を変えた。
「そういえば今朝普通に生理現象が起こっちゃって、部屋では裸だろ、隠すのに苦労したよ」
「え、俺なんて、すぐに一緒にいたラミアが嬉しそうに出してくれたぜ。
あれ、病み付きになるな、すげーいいぜ」
デイヴがあっけらかんと、そう言った。
僕はエレクに言った。
「忘れたのか。 ラミアは精をエネルギーにする種族だぞ。
溜まって興奮したら、出してやれば喜ぶんじゃないか。
それが最高の恩返しかもしれないぜ」
「そうか、そういうものなのかもな」
ボブがとても感心して、なんとなくやる気を見せていた。
ラーリア様、ミーリア様に感謝されるかな。
「感謝の印に出してやるのは良いと俺も思うけど、お前らやり過ぎるなよ。
まだ体力全然回復してないんだから」
「そうだな、みんな気をつけようぜ。
いつまでもラミアとアレクに負んぶに抱っこじゃ、しょうがねぇ」
僕だけでなく、人間をラミアたちはどうしたいのかを、聞いてみないといけない時期が来たのかもしれないと僕は思った。
なんとなく、そんなに悪いことは考えてないという安心感があるけど、ラミアの元から戻ってきたという話は聞いたことがないから楽観もできない。
僕の知るラミアたちの雰囲気と、この戻ってきたという話を聞いたことがないという事実は、相反しているんだよな。
もしかしたら、この仲間の様子が、今までのことの鍵だったのかもしれないけど。




