59. 鳥と卵
その日夕食を早めに終えると、セカンは言った。
「もうすぐ日が暮れる。 そうしたら、鳥を獲りに行く」
「それ、いい。 私も行く」
レンスが即座に賛成した。
「え、もう夜だよ。 そんなに急がなくてもいいんじゃないかな」
「夜だから。 思い立ったが吉日ともいう。
それにアレクは付いてこなくていい。 邪魔なだけだし」
セカンの言うことがまだ厳しい。
「そうだな、鳥を獲りに行くなら、私も邪魔だな。 留守番してるよ」
と、あっさりサーブが言う。
「私も留守番。 足手まといになるから」
ディフィーも留守番すると言う。
「行く事決まりなの?」
ナーリアがやれやれという感じで言う。
「あれだけ行く気満々じゃ仕方ないだろ。 ナーリアはお目付役で行っといで」
とサーブが応じた。
「もう」
と言いながらもナーリアもいそいそと支度をして、三人で出て行った。
「なんか良かったのかな。
僕がセカンの弓を壊しちゃたから、セカン、やる気になっちゃったのかな」
「別にいいんじゃないか。 鳥は夜獲りに行くものだし」
と軽くサーブが返してきた。
「え、そうなの。 夜の森で取れるの?」
「ラミアは夜目が人間より利くから。
それにレンスは音を全くたてずに移動できるし、セカンもほとんど出さない。
ま、ナーリアもそれなり。
私と、サーブはそういうのは苦手」
「だから、アレクも含めて私たちは夜の鳥獲りには邪魔なのさ」
「ま、ナーリアは下で荷物持ちね。
あの二人は鳥に気付かれずに巣のところまで登って、あっさり獲るから」
「適当なところでナーリアが切り上げてくるさ。
のんびり待っていよう」
「なんか、いいのかな」
「良いのよ。 ナーリアだって、実はウキウキで出て行ったんだから」
「ええ、そうなの」
「ああ、ナーリアは卵が好きだからな。 内心はウキウキさ」
そうか、立場上行かない訳にいかない、という感じで出て行ったのはポーズだったのか。
「ところで、サーブに聞けば良いのかな?」
「ん、なんだ?」
「狩なんだけど、もっと大きい獲物も取れるかな?
今まで、ウサギくらいしか獲ってないからさ、今、鳥獲ってもらってるけど」
「どんなモノを獲りたいんだ?」
「弓を作るのに、せめて鹿が有ればと思うんだ」
「弓作るのに獣がいるの?」
ディフィーが弓作りに食いついた。
「良いモノを作るって、セカンに約束しちゃったからね。
そのためには色々用意しないとダメなんだよ」
「ま、理由はよく分からないけど、鹿なら取れるよ。
猪だとか、熊だとかになると私たちでは無理だけどね。
鹿なら四人に私の方に追い込んでもらえれば、大丈夫だ」
「ありがとう。
流石にナイフだけで鹿が獲れるかというとちょっとね。
罠作って、獲れないことはないと思うけど、時間かかりそうだしね」
「ま、それは任せてくれ」
「私はその鹿と、弓作りがどう関係するのか、そっちが興味があるわ」
「それじゃ、ディフィーには弓の作り方を教えるよ。
あと、イクス様にもっといろんな鍋がないか聞かないといけないな」
そんなことを話しているうちに三人が帰ってきた。
綺麗な尾羽のある、結構大きい鳥を6羽も獲ってきた。
「すごいな、そんなに獲ってきたの?」
「私とレンスは2-3羽獲れば良いと思っていたのだけど、ナーリアがもっと獲れって言うから」
「だって卵が6個なかったら、不公平になるじゃない」
「生まれたての卵を6個見つけてたら、6羽獲ることになった」
ディフィーが一番最初に持ってきた小鉢を6つ取ってきた。
僕は茹でて食べようと思い、竃にまた火を入れ、一番小さい鍋にお湯を沸かして卵を入れた。
みんなは小鉢に卵を割って、生のまま食べている。
ナーリア、美味しそうだ。
僕も茹で上がった卵の殻を剥き、食べる。
美味しい。 卵なんて高級食材だよな、普通。
なんて思っていたら、横からセカンが
「お湯に入れて固くした卵も食べてみたい、少しちょうだい」
と言ってきた。
僕は弓を壊した負い目もあるし、少しセカンに分けようとした。 そしたら
「セカン、それはダメ。
卵は不公平がないように、一人一個って言ったでしょ。
卵は味見でもらうのもダメ」
ナーリア、強い口調でした。 誰も異議を挟めません。 はい。
しかし、夜こんな時間にこんなことしているのは初めての経験だった。
前の部屋にいる時には、周りに他のラミアがいたから、こんなことは絶対できない。
竃に火を入れたから、窓から入る外の月明かりだけでなく、竃の火で部屋が照らされているから、この夜でも僕でもみんなの顔貌まで見える。
火の光に照らされたラミアたちはなんだか幻想的な感じがして、ちょっと現実感がなかった。
一ヶ月前には考えられない光景だなと思い、夢かもと思った。
そしてまたちょっと、なんか今幸せだな、って思ってしまった。
「この鳥、このままでいいの?」
レンスに現実に引き戻されてしまった。
「いや、首を落として、逆さに吊るして血抜きくらいしとかないと」
そうしないと肉が美味くなくなっちゃうからな。 でもそれ関係するのは、ほぼ僕だけだな、まだ。
友たちはまだ肉を食べるところまで行っていない。
「そのくらいは僕がやるよ」
鳥を持って外に出ると、セカンが手伝いに付いてきてくれた。
ナーリアに怒られたので、悪かったと手伝ってくれるようだ。
僕は鳥の足に縄を縛り、首を切って近くの木に吊るした。
このくらいの鳥では大して血も出ないだろうから、それでいいだろう。
明日は鍋にお湯沸かして、それをかけて毛を毟らなくちゃ。




