52. 道具作りと採取
朝食は食べたらしい。
その後、サーブ、ディフィー、レンスの三人は荷車を引いて、出て行った。
残った僕たちは、ナーリアとセカンが僕に、「昨日言ってた道具を作るには何をすればいいのか?」と聞くので、その場その場で答えると、ナーリアとセカンが用意などを次々と行い、引きづられるように僕も作業をした。
竹を切ってきた、その竹を一定の長さで切り揃えた、割って櫛の歯の作り方を教えた。
木を切った、丸太を作った、適当な大きさの丸太を二つ持ってきた。
僕はハッと気がつくと、二つの丸太の皮を剥き、その丸太の真ん中に棒を通す穴を開けていた。
余程深く物思いに耽っていたようだ、何をしていたかの記憶が曖昧になっている。
途中何度も採取組の三人が戻ってきていた気がするし、昼飯も食べた気がする。
それにしても今いる作業場になんでこんなに大量の命の実というか、麦が積み重ねられているんだ。
確かにサーブに採ってきたモノをどこに置いておけば良いか聞かれて、とりあえず「作業場が広いからそこに入れれば良い。」と答えた気はするのだが。
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私とサーブとレンスは朝食を食べた後、荷車を引いて、昨日の命の実の畑にやってきた。
アレクは「全部採る。」なんて言ってたけど、とにかく私も昨日食べてみて、たくさん欲しいと思ったから、採取を頑張ろうと思った。
いざ始めてみると、この作業は結構キツイ。 身を屈めて根元から切るということが、かなり辛いのだ。
組の選択を間違ったかしら、と思ったが、自分が言い出したことだからどうしようもない。
荷車に一杯になった時はかなり安堵した。 やっとこの作業から解放されると。
二人は、と目をやると、二人とも同じ気持ちなのが分かった。
荷車に命の実の束を満載して、集落の前を通りかかった時、イクス様に見つかった。
「あなたたちは何をしているの? それ、命の実よね。
昨日話を聞いて命の実が欲しいのは分かるのだけど、何でそんな束にして積んでいるの?」
二人を見ると、二人とも私を見つめている。 どうやら説明役を私にさせたいらしい。
私は昨日の晩の様子をイクス様に話し、茎も一緒に採った方が粒をバラけさせるのに都合が良いこと、茎にも利用価値があるらしいことを説明した。
イクス様はじっと聞いていたと思ったら、
「でも、採るのかなり大変じゃない? 三人でしてたら何日もかかりそうね」
と仰った。
「はい、でもまあ、アレクが今ショック受けちゃって使い物にならないから、ちょうどいいかな、とも思うんですけど」
「あら、やっぱりそうなの。 でもまあ、やることはさっさとやっちゃうべきよね。
とりあえずあなたたちは早くこの荷物を置いて、ここに戻ってきなさい」
ええっ、私はもうこの作業はこれで終えて、他のことをしたいと思っていたのだけど、戻って来なければならないことになったみたいだ。
「はい。」とは答えたけど、げんなりした気分だ。
サーブとレンスも同じ顔をしている。
サーブがアレクに採ってきた命の実の束をどこに置くかを相談している間に、私はセカンに話しかけた。
「アレクの様子はどう?」
「全くダメ。 完全に心ここにあらずって感じ。 時々意識が浮上してきてハッとなるんだけど、すぐに戻って周りのことが認識されてないみたい」
「そう、しばらくダメかもね」
「もう少し他の人間たちの様子が分かって、それが少しでも良い方向になっていれば気分も変わるのだろうけど、今はそれもないし」
「ディフィー、話してないで、束運ぶよ。 セカンも手伝って」
レンスに呼ばれてしまった。
「レンスは何急いでいるの?」
「戻ってくる時にイクス様に呼び止められちゃって、すぐに戻ってくるように命じられちゃたのよ」
「それで、イクス様から人間の情報は?」
「何もなし」
二人で荷車に向かった。
荷を下ろして、集落に向かうと、集落前の広場でイクス様が待ち構えていた。
イクス様はまあ分かるのだけど、イクス様の後ろに3台の荷車と30人ほどの私たちより若いラミアが居るのは何故?
「あの、後ろの若い子たちと荷車は何ですか?」
私はうっかり「イクス様」と呼びかけそうになり、周りに他の者がいる時は秘密と言われていたのを寸前に思い出し、その言葉を口元で飲み込んで、質問をした。
「あなたたち、待っていたわよ。
あなたたちでも一人で10人くらいなら指導できるでしょ。 頼んだわよ」
「あの、私たち他人の指導なんてしたことないんですけど」
サーブがびっくりしてイクス様に不安の声をあげた。
「あら、そうお。 でも大丈夫よ。 難しいことじゃないわ。
命の実のあなたたちの採取方法を教えてあげて、荷車一杯になったらここに戻って来て、そしたらまた私に声かけてね。 じゃ、お願い」
イクス様はそう言うと、スタスタと行ってしまった。
私たちは仕方なく、若い子たちを連れて大勢で、命の実の畑に向かった。
三人で手分けして、根元から切る事、束にしてまとめる事など、私たちの採取の仕方を教えた。
若い子たちはそのやり方が物珍しくて、興味を引いたのか、面白がって働き始めた。
早い、先ほど三人で作業していた時とは比べものにならないスピードで作業が進む。
そりゃ、人数が10倍にもなれば早いよね。
荷車が計4台だったが、先ほどの三分の一以下の時間で一杯になり、また集落に向かう。
呼ぶまでもなく、イクス様が出て来て、声をかけてくる。
「まあ、早かったわね。 ちゃんと教えられたみたいね」
「はい、みんな素直に言うことを聞いて、働いてくれました」
私は若い子たちをほめてあげといた。
「それじゃあ、あなたたちはまた家に荷を置いて来なさいな」
そう私たちに言うとイクス様は若い子たちの方に向かった。
「はい、あなたたちは、積んできた束をここに下ろして。
そうしたら、もうこのナーリアのお姉さんたちがいなくても、同じように採取できるわよね。
どんどん採取して来なさい。」
えっ、あの若い子たちにもっと採取させるのですか。
「ほら、あなたたちもボヤッとしてないで、どんどん運んで。
次から次から来るから、頑張らないと運びきれないわよ」
「あの、私たちだけで、これを家に全部運ぶんですか?」
「当たり前でしょ。 あなたたちの家は禁足地の中にあるのよ。
普通の子は入れないんだから当然でしょ。」
「そうですよね〜」
私たちは集落前の広場と家の間を何往復したか分からない。
「あの、イクス様、もう家の作業場に一杯で持っていっても入りません」
「そう、それじゃあ、これ以降はこっちで倉庫に入れておくわ。
収納できるようになったら教えてね」
そう言うと、イクス様は若い子たちに声を掛けに行った。
「はーい、あなたたち、そろそろ夕方だからお終いにしましょう。
畑にいる子たちにも声かけて来てね。
今あるのは倉庫の方に入れてお終いにしましょう。
みんなよく頑張ったわ。
そのうちナーリアのお姉さんたちが何か褒美をくれるそうよ。
良かったわねー」
え、何、それ決定事項ですか。
はぁ、死ぬほど働かされました。




