51. 暗転した気持ちを
命の実とは麦などの穀物だと知って、それが栽培されていることを知って、僕は浮かれていた。
その上、久しぶりに肉を食べてテンションが上がり、我を忘れてはしゃいでしまった。
豆を水に浸すのも忘れ、今朝大急ぎで山芋を掘りに行かねばならなかった。
帰ってきたら、ミーリア様が待っていた。
昨日、イクス様に忠告されて、その時は反省した気になっていたのに、本当は何も反省せず浮かれまくっていたのだと、とても強く思った。
穀物を手に入れられると思って、自分が友たちを助ける特別な人間になったかのように自惚れた。
まだたった2回、昼食に一品出すことが出来ただけで、それだってナーリアたちの協力でやっと間に合っただけなのに、簡単に助けられると思っていたなんて、なんておめでたいんだろう。
僕が今、なんだか幸せを感じていたものだから、ほんの少し手助けすれば、友たちも幸せな気分になれるものだと勝手に思い込んでいた。
頭の中を暗い思いばかりが次々と渦巻いていく。
ダメだ。今現在出来ること、するべきことに集中しないと。
こうやって落ち込んでいても意味がない。
「僕はちょっと、捕れてたウサギを川で昨日のように解体してくるよ。
ついでにちょっと頭を冷やしてくる」
「私が一緒に行こう」
サーブが付いてきてくれることになった。
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アレクがサーブと一緒にトボトボと川に向かうのを見送る。
見えなくなった途端に話し出す。
「アレク、かなりショックだったみたい」
「昨日の晩はすごくはしゃいでいたから、ちょっと落差が大きいよね」
「気持ち分からなくない。 昼の時は人間たちも一昨日より少し良くなったかと私も思ったもの」
「それにあの弱った感じだった人間が暴れまわるなんて、誰も予想しない」
「原因もわからない。 アレクは変わらないのに」
「やっぱり、口移しの水のせいかな」
「その可能性が高いんじゃない。 ラーリア様も何か疑っていたようだったし」
私たちも、ため息をついてしまう。
アレクほどではないけど、やはりショックを感じる。
でも私はこれからどうするか、アレクが戻る前に決めたいと思う。
「今日これからどうするかを考えないと。
あの様子ではアレクから提案が出るとは思えないから、私たちで決めておく必要があると思うの」
「こういうところ、やっぱりナーリアはリーダーよね」
ディフィーがそう言うと、セカンとレンスもうなづいた。
もう、こういう時だけ私のことリーダー扱いするんだから。
「アレクは今日は使い物にならないんじゃないかな、あの様子だと」
「うん、こないだのサーブよりひどい」
私の問いにセカンが答えた。
「命の実はもっと採って来なければいけないと思うの。
だからそれを第一に考えて行動するべきだと思うのだけど、あの状態のアレクは」
「うん、連れて行っても無駄ね。 途中の行動も遅くなるし、効率が悪くなるだけだわ」
「それにミーリア様が、また後で来るようなことを言っていたから、ここを完全に空ける訳にはいかない」
ディフィーとセカンが私の考えの後に続いてくれた。
「それじゃあ、今日は命の実採取組と居残り組に分けることにする?
それで居残り組は何をしようか?」
「昨日アレクは、命の実を茎からこそげて粒だけにする道具と粒の外側の殻を剥く道具を作るみたいなこと言ってた」
レンスが良い提案をしてくれた。
「そう、そんなことを言ってた。
アレクには家で道具を作るように言うのが良い」
セカンが続いた。
「だとしたら、家に残る方はアレクの道具作りの手伝いね」
「そうだとしたら、セカンは残り組。 手先が一番器用。
私は収穫組、そういうのは苦手。 たぶんサーブもそういう」
「私も収穫組がいいかな。 ということでもう一人はナーリアね」
レンスとディフィーが組分けを決めていく。
「え、私、器用じゃないよ」
「そんなことないんじゃない。 セカンの次に火点けてたし。
それにミーリア様がまた来るとしたら、リーダーのナーリアが居た方がいいんじゃない。」
「もう、またこういう時だけ私のことリーダー扱いするんだから」
「いや、リーダーなのは事実」
アレクとサーブが戻ってきた。
私は目でサーブにアレクの様子を訊ねる。
サーブは首を小さく横に振り、目でも答える。
「全然ダメ」
まあ、やっぱり、そうよね。
全員揃ったところで私は宣言する。
「今日は2組に分けて作業します。
1組目はサーブとディフィーとレンスで、命の実の収穫を行ってもらいます。
2組目はアレクとセカンと私で、ここに残り、命の実のための道具作りをします」




