50. はしゃいでいた頃
僕はその夜、みんなにお礼を言った。
「セカン、ディフィー、ありがとう。
二人が命の実のことを教えてくれたおかげだ。
セカンにはイクス様の説明でも世話になった」
「レンス、ありがとう。
ウサギの狩はレンスのお陰で楽に終わって時間ができた」
「ナーリア、ありがとう。
僕が食器のことを忘れていたのをフォローしてくれた」
「サーブ、ありがとう。
イクス様のところ行くの付き合ってくれたし、葉っぱを取りに行ってくれた」
あれっ、ちょっと理由が弱いか。 ま、いいや。
「とにかくみんな、ありがとう」
なんかもう、僕はテンション上がりまくりだった。
「今晩はナーリアの番だっけ。 でも今の僕はみんなにキスしたり、抱きついたり、触ったりしたい気分だよ」
「えーと、ここなら前と違って騒いでも問題ないから、ちゃんと私にくれるなら、みんなにも色々しちゃってもいいよ」
ナーリア、ノリノリだな。 気分が伝染しちゃったかな。
「セカン、どう思う。 人間が精を出すのに獣の肉は重要ていう話、本当のことだったのかしら」
「獣の肉が媚薬になるという話は知らない。 久々に食べれてテンションが上がっているだけだと思う」
セカン、ディフィー、冷静に分析なんてしてないで。
「そういうことなら、精を出してもらうのだけは順番だから我慢するけど、他のことは我慢しない」
レンスは姿勢がブレないな。
「わ、私もだアレク。 私も何をされても構わないぞ」
サーブは何かされること前提なのね。
はっちゃけました。
朝、珍しく僕が一番に目が覚めた。
半分まだ寝ている状態で、なんか酷かったな、ナーリアだけでなく、セカンにも出した気がするなぁ、なんて考えていて、急に現実に気がついた。
「みんな、起きて。
まずい、豆を水に浸けておくの忘れた。 今からじゃ間に合わない。
また朝のうちに山芋掘りに行かないとならない。
それしか間に合わない!!」
レンスが一番に起きて、即座に触ってきた。
「今日はそれどころじゃないから」
「私の番、大丈夫、すぐに出させるから。 アレクはそのままみんなを起こす。 私はこっちを頑張る」
確かに起こしているうちに放出させられたけどさ。
みんなで水を浴びて、大急ぎで支度をして芋を掘りに行った。 大急ぎで芋掘りなんてしたら汗かいて、もう一度水浴びが必要じゃん。 後から気がついた。
途中で罠に今日も一匹かかっていたし、昨日の肉があるので狩はしない。
芋を大急ぎで探して、掘っての帰り道、レンスがボヤいた。
「アレク、今朝は量が少なかった。 私は多い方がいい」
「そんなこと言ったって、昨日の晩2回出した後だもの、仕方ないよ」
「レンス、朝大忙しだったのだから、夜まで待てば良かったじゃん。 私だってそのくらいのことは許すよ」
レンスの次の番のディフィーがそう批評した。
「そんなの。 出させるチャンスがあったなら出させるのはラミアの本能」
え、そんな本能あったの。
「そんな本能はない。」
セカン、ありがとう。 危うくレンスの言うこと信じちゃうところだったよ。
豆を浸しとくの忘れて、とても焦ったけど、芋が採れてこれでなんとかなると、ちょっと気分に余裕が出来て、そんな話をしながら帰ってきた。
家に戻ってみると、驚いたことに中でミーリア様が疲れた顔をして座って待っていた。
やっぱり朝一で水浴びをしといて良かった。 怒られるところだった。 僕は最初、そんなことを思ってしまったのだけど、どうもそんな雰囲気じゃない。
「良かった。 アレクはいつも通りなのね。
昨晩急に、他の人間たちが錯乱して暴れまくったのよ。
今は全員拘束して、でも危ないから、あの大部屋に集めて監視している。
何か食べれる状態じゃないから、今日の食事はいらない。
それを伝えに来た。
とりあえず今は、ラーリア様たち、ミーリア、ミーレアで交代して監視しているから、私も戻らないとならない。
また後で」
僕は気分が暗転した。
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アレクの作ったスープを飲んだ後、人間たちは美味しかったのか、それともやはり体に良かったのか、元気が出てきた様子で機嫌が良かった。
だが、夕方近くなってだんだんと様子が変わっていった。
何故かしきりに水を飲みたがるのである。
飲んでも飲んでも足りないと言う感じで、水を求める。
何かがおかしい。
私はもしかすると食べたものに問題があったのかと思い、もう一人まともに食べたはずのアレクの様子が知りたくて、もしかしたら知っているであろうイクス様の元に来た。
「アレク、ここに来ましたか?」
「ちょっと前に来たわよ。
あの子たち、面白いことを見つけたみたい。
もう少しよく分かったら、あなたにも教えてあげるわ」
「アレクの様子に変化はなかったですか?」
「見つけたことに興奮していたみたいだけど、他には変化はないわねぇ」
私は考えながら、他の人間の様子をイクス様に説明した。
「水をそんなに欲しがるのは、やはり変ね」
「アレクに同じ様な様子がないということは、やっぱり口移しの水が・・・」
「そうね、何かの影響を与えていたと考えるのが、一番有り得るかもしれない」
「私、口移しの水を絶対に与えてはいけないと命令してきます。
ちょっとこれからの予想がつきませんけど」
「そうね、その方が良いかもね」
今までは口移しの水は、私がナーリアたちの挑戦を受けると言ったことで、皆意地で与えていなかっただけだ。
それを命令で与えてはいけないことに徹底した。
水は普通の水のみ与えること、口移しの水は絶対に与えるな、と。
夕食後、事態は一変した。
まず夕食を人間たちはみな吐き戻した。
そして水を求め、水を飲んでも吐き戻し、また水を飲みを何度か繰り返すと、急に凶暴化した。
目付きも変わり、狂気が宿っている。
ラーリアたちの力なら、弱っている人間などものともしないが、ミーリアたち、ましてやアーリアたちなどでは対抗できず、騒ぎが起こった。
騒ぎが激しくなったので、まずは拘束したのだが、「水、水をよこせ!!」という大声で叫ぶのが酷く、仕方なしに猿轡までさせねばならなかった。
それでも暴れるので、体をぶつけたりしないように、人間たちをみな大部屋に運んで、そこでラーリア・ミーリア・ミーレアで、交代で監視と世話をすることにした。
朝になり、水くらいは与えないと死んでしまうのではと考え、猿轡を解き水を与えてみる。
飲みはするがやはり吐き、また叫び始める。
仕方なしにまた猿轡をする。
アレクたちのことを思い出し、ミーリアを使いにし、今日の昼食のキャンセル伝えるとともに、アレクの様子を見て来させる。
やはり、アレクに異常はないようだ。




