49. マジ食いした
イクス様からノミをもらって家に戻る途中、僕は二人に頼んで寄り道をした。
もう、ワクワクが止まらない。
うさぎの肉を浸しておいた川に立ち寄ったのだ。
僕は上に乗せておいた石を退けて、肉を部所ごとに大きな木の葉に包み、適当な枯れ草で結んで、持ち運びしやすい様な包みにした。 その荷物を持って、飛び跳ねる様な気分で家へと向かう。
途中で、その荷物をセカンに預け、香草や、刻むと刺激的な味を出す草の実などを採っていく。
ノミはサーブが持ってくれていた。
家に着くと、驚いたことに採ってきた命の実が、全部さっき試した作業を終えて、大鍋の中で水に浸されていた。
残ってた三人がやったらしい。
「もしかして、全部やったの」
「もう少し試してみようとやり出したら、ちょっと楽しくなっちゃって。
ダメだった?」
ナーリアが少し心配そうに弁解した。
「ダメってほどのことじゃないけど、三人とも手の平見せて」
案の定、手の平は小さい擦り傷だらけだ。
そりゃそうなるよね、手で実を擦り続けたら。
「あれは試しにだよって言ったじゃん。 ちょっと待ってて」
僕はもう一度大急ぎで家を出て、傷薬になる薬草を摘んできた。
「ほら、三人とも手の平出して、傷薬つけるから」
「うっ、ちょっと沁みる。 懲りたわ」
ディフィーが少し顔をしかめてそう言った。
「あの作業を簡単にする道具があるからって言ったじゃん」
「ちょっと面白かったから調子にのっただけよ。 もう終わったこと」
はいはい、まあいいけどさ。
もう時間は夕方になってきている。
僕は今度はナーリアに竃に火をつけてもらうことにした。
「今度はナーリアが火を点けて。 セカンは指導かな」
「あ、セカンの時に言うの忘れてたけど、灰に入れて火を消した薪は燃えやすくなっているから、取り出して最初に竃に燃すのに使うと、火を点けやすいよ」
セカンにちょっと睨まれたっぽいけど、ま、いいか。
ナーリアとセカンだけでなく、他の三人も加わりワイワイ言いながら、火を点けている。
僕はその間に、今晩自分で食べる分の肉に塩を振って串に刺し、もう一つの大鍋に水瓶から水を入れたりしていた。
内臓は小さく切り別にしておき、鍋の水に残りの肉を入れる。
鍋に入れる時に、肉の脂の部分はナイフで切り取っておく。
うさぎは脂の部分は少ないんだよなぁ。
「火、点いたよ」
「ありがとう」
ナーリアは1度目は竃に火を移す時に失敗して消えてしまい、2度目で成功したみたいだ。
僕は水と肉を入れた鍋を竃にかけた。
それから、自分の小鍋を取り出して、それに水に浸してある命の実を掬って水ごと入れて、そっちも竃の別の場所の小さい蓋を取って火にかけた。
塩を振って串を刺した肉は、竃の薪をくべる場所の脇の扉を開けると、火に直接当たらず炙ることができる様になっているところの段に差しかけておく。
本当にこの竃は良くできている。
僕がウキウキ気分でこういった作業を進めているのを、みんなは物珍しそうな、生暖かい目で見ている。
僕ははたと気がつき訊ねてみる。
「僕が食べるもの、もしかしてみんなも試食する?」
「当然」
だよね。 みんな食べる気満々だよね。
「あ、深皿はもらってきたけど、普通の皿がない」
「肉を包んできた大きな葉でいいだろう。 私が取ってくる」
サーブが取りに行ってくれた。
小鍋の方は量が少ないからすぐに沸騰し、命の実が煮えている。
僕はスプーンでちょっと食べてみた。 大丈夫だもう煮えている。
セカンが味見したそうにしているが、
「まだサーブが戻ってきてないから待って。
それに、もう一品作るから」
そう言って、もう一つ持っていたそこの浅い小鍋を火にかけ、脂をのせる。
脂が溶けてきたら、切っておいた内臓、香草を炒め、そこに例の刺激的な味を出す草の実を刻んで入れた。
ちょっと刺激的な香りが立った。
ちょうどサーブが戻ってきた。
僕は竃の中の肉も取り出し、作った三品を少しずつ、切ったり分けたりして、ほんのちょっとずつ味見用に葉の上に盛ってあげて、各自に配った。
「それから、深皿には水に浸した命の実を盛って、僕はこの煮たのを食べるけど、みんなはたぶんそれが食べれるよ」
食事が始まった。
美味い、とにかく美味い。
肉が美味い、焼いたのも、炒めたのも、本当に美味い。
肉を食べながら、煮た穀物を食べる至福。
僕は感動しながらガツガツと食べていた。
ふとナーリアたちを見ると、食べながら話しあっていた。
「命の実って先に殻剥いてあって、スプーンで食べると、こんなにエネルギーがあるの?」
「まったくだ。 実った時にチマチマ剥きながら食べてる時は気がつかなかったな」
「それにこれなら乾いた状態で貯めておけるから、いつでも簡単に食べれるよ」
「果物なんかが少なくなっても、困らない」
「こっちのアレクが作った物はエネルギーにはならないけど、味は美味しい。
これを食べながら、命の実を食べるとすごく美味しい」
「本当だ。 なにこれ、すごく美味しい。 手が止まらなくなる」
何か色々と考えさせられる、考えるべきことを話している気がするが、今はそんなことに構っていられない。
僕はとにかくガツガツと食べていた。
「アレク、もうちょっと味見ちょうだい」
「えっ、味見でしょ。 もう無いよ。 食べちゃったよ、みんな」
「ええ~っ!!」




