44. 久しぶりの
ミーリア様を見送った後、僕は大急ぎで大きな袋に入った殻付きの豆を、みんなに手伝ってもらって1/3ほど殻と豆とに分けた。
その後僕は大鍋を洗い、みんなには干した火種草と枯れ枝を、もう夕暮れ近くなったので、薪を貯めておく為の場所だと思われるところに取り込んで置いてもらった。
「この草はまだ乾ききってないけど、大丈夫なの?」
ディフィーが聞いてきた、こういう所は本当に良く気が回る。
「うん、明日晴れていればもう一回干すようだね」
「また、今日と同じ作業をしなければならないのね。 面倒くさいのね」
「そうだな。 もう少しマシになる様に、少しヒマができたら工夫するよ」
「方法はあるのね」
「まあ、あるのだけど、今は準備する時間がないから仕方ないかな」
「ちょっと我慢ね」
僕は洗った鍋に殻を取った豆を入れ、水を張っておく。
「で、これに火を使うの?」
「いや、それはまだ。 明日の朝までこのままにしておくのさ」
セカンに答える。
僕は自分の持ち物の小さな鍋を取り出し、ナーリアに声をかける。
「あのまだ小さい豆の鞘も貰ってきたよね。 あれどこ?」
「それなら、ここにあるぞ」
サーブが答えてくれて、それを僕に手渡しながら、一つつまみ鞘から種を出して食べてみていた。
「やっぱり時期が早過ぎて、ほとんどエネルギーがないな」
僕は受け取るとそれをテーブルの上に置いておいて、さっき見せた様に火を点け、今度は竃の薪に火を移していった。
この竃は工夫されていて、鍋を置いて調理する部分も何箇所かある上、蓋も工夫されていて、外し方で数種の大きさの鍋にちょうど良い大きさの穴ができる様になっている。
少し太い薪が燃え始め火が安定したところで、棒で一番小さい穴になる蓋を取り、そこに水を入れた僕の小さな鍋をかけた。
鍋に塩も入れ、沸騰してきたところでテーブルに置いておいた、小さな鞘入りの豆を鞘ごと入れる。
しばらく煮て、豆に火が通ったと思い、薪が勿体無いので、燃えてる薪をあらかた脇の灰の中に埋めて火を消す。
たったこれだけのことを、ミーリアたちは声も出さずに見ていた。
「火ってこうやって使うのね」
「ああ、とても興味深い」
「でもあれだと豆はダメになっちゃうんじゃない」
「人間とラミアの違い」
「火が綺麗だった」
僕は後ろにそんな声を聞きながら湯を切って、豆を食べ始めた。
美味い、久しぶりに火のとおった食物の味は最高だった。
豆に塩気も付いて、とにかく美味い。 他のことは考えられない。
全て食べ切る直前に気がつき、みんなに聞いてみる。
「食べてみる?」
みんなに一鞘ずつあげてみたけど、
「うん、柔らかくなっていて、塩気もあるけど、エネルギーないね」
「味に飽きた時の口直し。 ま、あまり意味ない」
やっぱりね、火を扱うことは評価されたけど、食べ物に関しては人間とラミアは根本から違い過ぎます。
この後、ラミアにとって普通の食事をした。
寝る前には昨晩と同じ様に、今日の出来事と明日どうするかを話すことになった。
なんだか恒例化しそう。
僕は今晩はディフィーの番なので、いつもされてばかりではつまらないと考えて、ディフィーの背中にまわり、背中側から触ってあげながら、話に参加した。
「他の人間への初めての食事の提供、上手くいったわよね」
こういう所はリーダーの自覚があるのか、ナーリアが口火を切る。
「上手くいったと思うぞ。 褒められたしな」
「人間も喜んでいたと思うな」
サーブと僕が答える。
「今日始まったばかり、まだまだこれから出来るかどうか」
「明日からもどうするかが問題よ。 さっきも思ったけど人間の食べ物はわからないもの」
「それ、私も思った」
そうなんだよな、ラミアは人間の食べ物がよくわからないから、結局僕の手伝いをするしかない感じになっちゃう。
「それで明日はどうするの?」
ナーリアが心配そうに聞いてくる。
「明日は今水に浸けている豆があるから大丈夫。
だから明日は獣を狩ることをどうにかしたいな。
ラミアも獣は獲るでしょ」
「ああ、普通に狩るぞ。 ここの敷皮を見れば分かる通りだ」
「といっても私たちはそんなに大きな獣は狩れない」
「私たちの狩を見る?」
「うん、見てみたいかな。 時間は朝でいいの?」
「大丈夫だ、そんなにかからない」
意外と簡単に明日昼までの予定が決まった。
それからはやっぱり明日になってからだよなぁ。 具体的な明日の昼の用意を僕は考えないと。 作る物はとりあえずもう決まっているけど。
「でも今日はミーリア様がワタワタしてて面白かった。」
珍しくレンスが話題を振った。
「ほんとほんと、ミーリア様ってなんでも完璧にこなしますって感じに見えていて、隙のない感じだったから、とても新鮮だった」
ディフィーも即座に追随した。
「私はミーリア様の前に出ると、いつも尻尾が細くなる様な思いだったのだけど、火種草を集めるのを手伝ったりして、普通に振る舞える様になって嬉しかった」
サーブが大分ミーリア様に馴染んだらしい。
「あれ程不器用だとは思わなかった。」
セカン、それは辛辣すぎるから。
こうなると、ラミアの口は止まらない。
僕はただディフィーを触りながら、この時間を聞き流して過ごしていた。
「それにしてもラーリア様は、火も完璧に扱えちゃうし、本当にすごいよね。
弱点なんてあるのかしら?」
ナーリアの言葉にみんな何かないかと考えたみたいだけど、弱点は見つからなかったみたいだ。
ラーリア様は完璧ラミア?
じゃ、イクス様は?




