41. 初仕事の結果は
なんとか昼食の時間に間に合ったと、ちょっとホッとしていると、ミーリア様が様子を見にやって来た。
「どう、今日の昼食用に何か出せる物がある?
昨日の今日で難しいのは、私もラーリア様も分かっています。 ダメだったとしても仕方ないと思っているけど」
「はい、なんとかみんなの協力で、一品出せる物が用意できました。
これから向かおうかと思っていたところです」
「そう! よく準備が間に合ったわね」
ミーリア様は無理だと思っていたらしく、喜んでくれている。
「あの、わざわざミーリア様が直々に様子を見に来てくれたのですか?」
恐縮した感じで、サーブが尋ねた。
良かった。立ち直ったみたいだ。
かなり勇気を出してミーリア様に話しかけたのだろう。
「ここは禁足地の中だから。 簡単に誰かを使いに来させる訳にはいかないのよ。
それにまだ、ここに入ってくることが出来る者で、あなたたちとマトモな面識があるのはイクス様を除けば、私とラーリア様だけしかいないじゃない。
今のところ私が来るしかない状況なのよ。
でも、すぐにもっと多くの面識を持つことになると思うわよ」
なんだかさらっと大変なことを言われた気がした。
昼食を取る広場に向かおうとして、僕はミスに気がついた。
どうやって運ぼう。
水分の入った大きな木鉢はとても運びにくい。 せめて桶にするべきだった、まだいくらか持ち運びしやすい。
「私も運ぶことまで、頭になかったわ。
次は荷車を用意するようにしましょう」
とミーリア様が言ってくれた。
とりあえず今のところは仕方ないので、左右から2人で一つの木鉢を持って行くことにした。
これがとても難しい。 中身をこぼしそうでそうっとヨレヨレと進む。
僕が参ったな、という顔をしているとナーリアが困惑の表情を浮かべている。
何故と思って、他の4人を見てみると、何事もないかの様になんの不安げもなく静かにスーッと運んでいる。
足で歩くのと、尻尾で移動するのとの、大きな性能差か。
困った、まいった。
「アレク、替われ。 私がナーリアと持つことにしましょう」
「えっ、ミーリア様にそんなことしていただくのは。」
「いいから替わりなさい。 このままあなたに持たせたら、時間に間に合わんないわ」
ミーリア様と僕が替わる時、ナーリアは「なんてことさせるのよ」と恨みがましい目をしたが、何も言わなかった。
ナーリアの「なんてことさせる」って、ミーリア様に対してなのだろうか。
それともミーリア様と持つという自分のことなのだろうか。
ああ、きっと両方だよな。
結構恨んでいるし、怒ってる?
ナーリアでは珍しく、マジ睨みだった気がする。
僕はなんだか居たたまれない気分で、竹で作った柄杓を持って、列の最後をトボトボ付いていった。
昼食会場では、もう昨日の様に用意が整っていた。
僕はナーリアたちに頼み、友だちの分のコップを集め、作ってきた山芋のスープもどきを注ぎ、配ってもらった。
ラーリア様をはじめ、ラミアたちはそれに興味を示すが、友たちは虚ろな目をしていて何の動きもない。
配り終えたところで食事が始まった。
ラーリア様はボブに、「ほら、これを飲んでみろ」とコップを手渡している。
他もそんな調子だが、中には飲ませてもらっている奴もいる。
ボブがふと能動的に動いた。
「これ、お代わりください」
飲ましてもらっていた奴も、自分でコップに手を添えて飲んでいる。
結局3杯づつみんな飲んで、余りが少なくなったところで、急にたくさん飲んでもと思い、終わらせた。
ラーリア様が興味を持たれ、
「それはラミアにも飲めるのか、飲んでみたい」と言った。
ナーリアが
「試してみましたが、味はともかく、エネルギーとしてはラミアには」
と否定的なことを答えたのだけど、
「ナーリアが試したのなら、私も試してみたい」
と押し切られた。
で、ほんの一口ずつラーリアの方たちにも配ったら、全て終わってしまった。
あ、自分は味見しかしなかった、と思ったけど、ま、いいか。
友たちは一品いつもと違う味があったせいか、いつもの果物なども昨日と比べると多く食べているみたいだ。
その様子を見て、ラミアたちが喜んでいる。
ラミアたちは人間が幾らかでも元気になれば、より精が得られると思って喜んでいるのかもしれないけど、でも僕は喜ぶラミアたちを見て、嬉しく思い、何となく心が暖かくなっている気がした。
ラミアだよ、ラミアなのに喜んでくれているんだよ。
昼食が終わり、自分の都合の良い解釈だと思いながらも、昨日よりいくらか元気に、友たちは次の水場に向かって行った気がした。
これなら、もしかしたら、良くなっていくかもしれない、少しだけ希望が湧いた。
ラーリア様とミーリア様は昨日と同じに、この場に残られていた。
「アレク、ナーリアたち、昨日の今日で良くやった。
期待以上の仕事ぶりだった」
「ありがとうございます」
ラーリア様のお褒めの言葉にナーリアが代表して答えた。
「私は少し希望が見えた気がしたよ。
明日以降も雨でない限り、今日のように昼を食べよう。
お前たちに期待する」
さらっと言ってくれてるけど、難題だよね。
僕も頑張りたいと思っているけどさ。
「ところでミーリア、お前はこの後どうするつもりだ?」
「はい、私は今日はこの後もナーリアたちに付いているつもりです。
まだ不足の物もあるようですし、様子見です」
「そうか、色々考えて用意してやれ」
そう言うとラーリア様は水場の方に去って行った。
ちょっと笑ったような気がしたけど、何だったんだ。




