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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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36. 役目のための説明

 私は起きた時、ふと昨晩ナーリアたちに今朝どこで待っていたら良いかを指定しなかったことに気がついた。

 また彼女らをヤキモキさせるのも可哀想なので、私は伝言を頼むことにした。

 上位者用居住区の入り口の警備役の1人に、

 「普通に仕事に出る時間に、カウンターのある部屋で待っているように」

と伝えてくれるように頼んだ。

 まさか私自身が、それを伝えに行く訳にもいかない。


 今朝はアーリアが食事を持ってきてくれた。

 私とラーリア様がこの2日ほど今回の件で忙しく、人間に構っている暇がないので、ミーレアが主に人間の世話をしているのだが、そのおこぼれがアーリアにもあったらしく、妙に機嫌がいい。

 ふと、どんな時でも人間と一緒にいられる立場のナーリアたちが羨ましい気がした。

 上位の私たち、考えればラーリア様でさえ、彼女たちほど人間と一緒にいる時間はない。 役立たずだけど。


 食事の後、外に出る身支度を整えてから、ラーリア様の部屋へ向かった。 部屋を訪れてみると、ラーリア様も準備を終えているようだ。

 何故か微妙に機嫌が良い。

 昨晩は私とラーリア様たちと話をしていたので、人間と遊ぶ余裕はなかったはずだし、ちょっと不思議に思う。


 「よし、来たかミーリア、さっそく行こうか」


 「いえ、ラーリア様、私が先に行ってナーリアたちを連れて、打ち合わせの場所に行って待っています。

  ラーリア様は少し後に来てください」


 「そんな面倒なことしなくても良いだろ」


 「いえ、形も大事なんです」

 私はラーリア様を押しとどめ、先にカウンターの部屋に向かった。


 カウンターの部屋に行くと、ナーリアたちがイクス様と話していた。

 イクス様は私に気がつくと大きな声で、

 「ミーリア様が来たよ。 ほら頑張るのよ!!」

とナーリアたちに言い、私には他の者に気付かれないようにウインクを送ってきた。

 私も周りに気付かれない程度に小さく会釈し、ナーリアたちの方に近づいた。

 良かった、サーブと呼ばれている娘も、今日は元気があるようだ。


 「おはよう。 すぐに外に出てラーリア様をお待ちしますから、後についてくるように」


 「おはようございます。 了解です」


 ナーリアが代表して答えてきた。


 私はナーリアたちを後ろに従えて外に出て、目的地を目指した。

 後ろを見なくても私にはナーリアたちの困惑が分かる。

 何しろ普段決して足を向けない方向に向かっているのだから。


 目的地の禁足地の門の前に着いて振り返ると、すかさずナーリアが質問してきた。


 「あの、ミーリア様、禁足地の門の前に来たのは、何か意味があるのですか?」


 「もちろんです。 一つはここには他の者たちは足を向けませんから、秘密が保てます。

  他にも理由がありますが、それはラーリア様が来れば分かることでしょう」


 ラーリア様は待つという時間もなく、一人でやって来られた。


 「ミーリア、ご苦労様。 ナーリアたちも朝からご苦労」

 ラーリア様は軽い感じでそう言った。 もう少し威厳がある感じが良いと思うのだが。


 「さて、すぐに本題に入ろう。 ナーリア、今日の本題はどんなことだと思う?」


 「はい、主なところは火を扱うための約束と注意事項かと思います。

  それと新しい役目に関しても、もう少し話があるかと考えています」


 「うん、まあ大体そんなところだ。 では移動しながら話そうか」


 ラーリア様はゆっくりと門の方に向かって行った。


 「この先に何があるかは秘密になっている。 一部の、というよりほぼラーリアしか知らない。

  ミーリアはこの中に入ったこともあったな。 何があった?」


 「はい、父祖様の墓所がありました。 それが禁足地になっている理由かと推測しています」


 「ま、それも一つの理由ではある」


 ラーリア様は門を通り越し、石畳となっている道を進んでいくと、不意に右に曲がり山陰の方に向かって行った。


 「あの、ラーリア様、父祖様の墓所はもう少し真っ直ぐ行った先だと記憶しているのですが?」


 「そうだな、だが今回はそっちには行かない。

  ああ、ナーリアたちは父祖様の墓所の方へは行かないこと。 これは命令だ」


 「はい、了解しました。」


 ナーリアたちは訳も分からず、後をついて来る。

 禁足地の中なんて初めてだから、キョロキョロと辺りを見回している。

 少しすると石造りの家が見えてきた。

 その家の前でラーリア様は立ち止まり、説明を始めた。


 「ここが今日の目的地だ。

  アレクに火の使用は許可するが、それはどこでも火を使っても良いということではない。

  火の使用はこの場所でのみ許すことにする。

  ラミアは原則として火の使用が禁じられていて、下の者は火は禁忌だと思っている。

  だから火を使うところを多くの者に見せる訳にはいかない。

  そのための措置だと思ってもらえれば理解できるだろう」


 確かに周りを見渡すと、ほんの少しの移動距離なのに、山の尾根を少し回ることになっていて、ラミアの集落の入り口方向からは、その尾根が目隠しになり全く見えない立地となっている。

 確かにここならば、火を使ってもラミアの集落の他の者からは見えないだろうし、煙に気付かれることもほとんどないだろう。


 「それから重要なことをもう一つナーリアたちに伝える。

  お前たち6人は今いる部屋を引き払い、今後はこの家を使うこととする」


 ナーリアたちは全く予想していなかった話なのだろう。

 「えっ」と目を見開いてびっくりしている。


 「お前たちは火を使うところを見せることが駄目なのはわかっていたと思うが、お前たちが火について話をすることも問題があることに気がついていなかったな。

  これから火についての会話がお前たちの中でどうしても増えていくだろう。

  それを何度も周りの者が聞けば、とても不審に思う。

  すでにお前たちが火について話しているのが聞かれていることを、お前たちは気付いていないんじゃないか。

  お前たちは今、注目のまとだから、多くの者がお前たちのことをこっそりと目で追い、聞き耳を立てている。

  少しは自覚していたみたいだが、まだまだ甘い。

  それを防ぐためだ」


 ナーリアたちは渋い顔をしてシュンとなっている。

 自分たちでも思い当たることがあるのだろう、納得して聞いている。


 少しいじめすぎたとラーリア様は思われたのか、少し砕けた調子で言葉を続けた。

 「それにここは他から離れているし水も引いてある。 お前らにも良い話だ。

  アレクといくら遊んで騒いでも構わないし、朝身体を拭くことも、なんだったら水を浴びることも自由にできるからな。

  今朝も随分匂いをさせていたとイクス様がおっしゃってたぞ。

  私も気づいたがな。

  私もミーリアも忙しくて人間に触れる暇もなかったというのに、お前らはなかなか贅沢をしているな。」


 ナーリアたちは真っ赤になって俯いている。 どうやら自分たちとしては、きちんと身体を拭いて、匂いを消してきたつもりだったようだ。

 すまない、立場を忘れて私はちょっと「ザマアミロ」と思ってしまった。


 「ま、今のお前らは他の者にとって、一緒の場所で生活するには、刺激が強すぎる。 自分たちでは気を付けているつもりでも、周りに色々と大きな波風を立ててしまっているのだ。

  人間の男を、まだ上位でもないのに世話しているのだから、当然のことだろうがな」


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