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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
波乱

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332/346

332. 新たな温泉完成

 もうすぐ色々な作物の収穫期が来る。

 もちろん今ではヤーレンの指導の下に、今までのラミアの里では栽培されなかった色々な作物が作られていて、毎日の収穫や、畑の手入れにヤーレアたちをはじめとして多くのラミアたちが働いている。

 それに今まで通りにラミアの里で作られている作物もあるし、それ以上に今でもラミアの主食である木ノ実の類の収穫もあるので、ラミアは大忙しなのである。


 もうすぐ収穫期が来るのは、秋に収穫する方の命の実つまり米と、その他のヤーレンの指導の下に植えられた、貯蔵に適している作物、粟、稗、蕎麦といった穀物だ。

 ヤーレンとハキの計算では、この冬はラミア全員が起きていても、春に採った麦とこれから採れる米で、食料としては賄えるはずだが、何か計算外のことが起こった時のことを考えて、色々な穀物を作り、予備の穀物備蓄を進めていきたいのだという。 それに余れば、馬や鶏の餌にしても良いのだ。


 同様に備蓄することのできる豆類は、もうかなり収穫されていて、日に干されたりしている。

 僕は自立性の豆は茎ごと採って竿干しすれば楽だろうと考えたのだが、ギュートから強硬な反対意見が出て、豆のサヤだけをむしり採って、それだけで干すこととなった。 豆類の葉は、馬のとても良い餌になるらしくて、手間がかかっても利用しないのはありえないらしい。


 僕たちナーリアとワーリアは、可能な限りは温泉を引くことを優先していた。 少なくとも寒くなる前に新たな温泉を引きたかったのだが、色々と全身がホコリに汚れてしまう穀物の収穫の前に、できれば新たな温泉を使えるようにしたいと考えていたからだ。

 それと、ボブやバンジのところに来ている弟子の男の子たちは、仕事柄結構体が汚れることがあるらしいのだが、恥ずかしがって僕らのところの温泉には来ないで、隠れるようにして水浴びで用を済ましているみたいなのだ。

 僕らよりも若い男の子たちの気持ちは分かる気がする。

 それにハキのところにも、人が来ることになったのだが、そちらは男の人だけでなく、女の人も来るらしい。

 とにかく、新たな温泉を作ることは重要なのだ。


 ところで、僕は昔はどうしていたのかに、ちょっと疑問を持った。

 復興させようとしている町の跡に、温泉を引いた遺構はない。 当時の人は一体どうしていたのだろうか、と。

 「家でお湯を沸かすのって、前にしてみたから分かるけど、結構大変なんだぜ。

  僕のところは普通の庶民だから、寒い時はお湯を桶に入れて体を拭くくらいしかしたことがなくて、ここに来てから風呂の気持ち良さを知ったのだけど」

 「それは僕だって同じだよ、アレク。

  風呂の気持ち良さを前から知っていたのなんて、デイヴくらいじゃないか、きっと」

 「それじゃあ、ここで昔暮らしていた人も同じような感じだったって、ことなのかな、エレク」

 「いや、バンジとダイクによると、建物の遺構には結構風呂の跡はあるらしい」

 「まあ、周りは森だったんだから、面倒だけどやろうと思えば薪を集められるか」

 「いや、僕は他の可能性があると思っている。

  風呂のある家の跡が、それでは多過ぎるんだよ。 こんなに多くの風呂を沸かせるほど、薪を集める人が居たはずはないと思うんだ」

 「それじゃあ、どうしたんだ?」

 「僕はきっと、油を燃やしたんじゃないかと思う。

  今僕たちはランプ用の油と、ほぼ固まってしまっているアスファルトしか、燃える水の泉から採れる物を利用していないけど、アスファルトも燃やそうとすれば燃えるのだけど、そこまで固まってないところを取ってきて燃やして、風呂を沸かしていたんじゃないかと思うんだ」

 「なんだ、そんな簡単な方法があるんだったら、それぞれの家に風呂を作れば、面倒な工事をして、ここから離れたあんな場所に温泉を作らなくても良いんじゃないか」

 「うん、それはバンジとダイクも考えたみたいだけど、結局、風呂は各家に作らないことにしたみたいだよ。

  だって、やっぱりまた大火を起こしそうで怖いじゃないか。

  風呂のために、油を燃やしているなんて、怖いだろ。 アスファルトが燃えるとなかなか消せないのは知っているだろ」

 「確かにそうだな。 それで作った家には風呂は付けなかったのか」


 新しく建てた家に風呂がない理由は分かったけれど、この復興している町から新たな温泉までは距離がある。

 「でもさ、新しい温泉は作っているけど、ここからはちょっと遠いよな。

  本当に風呂が必要になる寒くなってからは、ちょっと辛い距離だと思わないか」

 「それも考えていて、ギュートが復興している町とラミアの里の洞窟前と新しい温泉との間を、夕方近くから馬車を巡回させると言っている」

 どうやら、新しい温泉を作ることになった時から、僕らとは別に色々考えられていたらしい。


 新しい温泉を作る工事は、もう最終段階に入っている。

 一番面倒な温泉を引くことは、僕らが竹のパイプやら木の升やらを作って準備して、敷設自体はほとんどワーリアたちが行っていた。

 「私たちはターリアやヤーレアみたいに特化していなかったのだけど、こんな土木工事に特化するつもりはなかったわよ。

  それに、こんな技術なんて、この温泉が出来上がったら、他に役に立たないじゃない」

 ワーリドが不満を言い募るけど、他に担当できるグループがなかったのだから仕方ない。


 ほぼ源泉までのパイプが繋がって、今は急ピッチに湯船と付属施設が作られている。 湯船は家のところにある物のほぼ3倍近い大きい湯船と、少し小さい湯船が2つ作られることになった。

 今度の源泉は今まで使っている源泉よりも湯量が豊富で、今までのみたいに吹き出したり少なくなったりの湯量の振れが少なく、ほぼ一定の感じで湯が沸いている。

 それで今度は湯を引くためのパイプを2本にして、たくさんのお湯を引くことが出来たので、湯船を大きくすることになったのだ。

 ただ、今回の源泉の方が遠いので、途中で冷めてしまうことを考えて、パイプは溝を掘って、その中を通し、溝の中を干した草で埋めて蓋をした。 それでも溝の中に水分が溜まるだろうから、その排水も考えたりと、かなり工夫することになった。 その分、作るワーリアたちは大変だった訳だが。

 まあ、その甲斐あって、出来上がった時には、温泉は湯船に貯めるのに十分以上に熱かった。


 湯船はダイクを中心にしてしっかりと石で作られた。 石はハーピーが運んできてくれた物だ。 ハーピーは1人でも人間を掴んで吊るして運べるくらいだから、かなり大きな石でも運べるのだが、ロープで縛って、2人がかりや4人がかりでもっと大きな石まで運んでくれたので、立派な湯船が出来た。

 それから新しい温泉は付属する施設が充実している。

 今度は周りを囲む塀や、屋根もきちんとついている。 脱衣場などもしっかりした建物が作られた。

 施設として充実させたのは、僕らの家の温泉は、家の側に作られているからという理由もあるのだが、もう一つ大きな理由がある。 今度の新しい温泉は、大きな湯船は今までと同様に誰が入っても良い浴槽だが、小さい方の2つはそれぞれに男性用・女性用と分けたからだ。

 ラミアや僕たちは当然なのだが、人間の妻たちもラミア流の混浴に慣れてしまって、今では誰も気にしなくなってしまったのだが、ボブやバンジの弟子の男の子たちは、恥ずかしがって一緒には入れない。 それからハキのところにも商店関係の人が来ていたりするが、こちらには女性もいるから女性用も必要なのだ。

 ハーピーは今でも源泉の方の元々入っていた温泉に多くは行くので、あまり関係ないのだが、これから人間が増えていけば必要になるのを見越しての措置だ。


 出来上がった温泉は、正直に言えば僕らにはあまり関係なく、出来上がってすぐに一度試しに入ってみただけになってしまっている。

 やはり家に温泉があるので、わざわざ出かけていくメリットがないんだよなぁ。

 それに家の温泉と違って、男湯、女湯と分ける為に仕切りが作られているので、湯船が広くなったのに、なんとなく解放感は減っているから、家の温泉の方が気持ちが良い気がしてしまうのだ。


 ラーリア様たちや、戦闘訓練の後這いずるようしてやって来て、入っていたミーリア様たちなど、家の温泉に慣れてしまっている人たちは、やはり僕らと同じで、新しい温泉はちょっと不評だった。

 同様に、メリーと同世代の子供世代も、順番に鶏の世話に来た時は家の温泉に入っていたので、家の温泉の方が良いらしい。 最もそれは、家の温泉だと温泉から出ても裸で遊び回れるからという理由が大きいみたいだ。 新しい温泉ではすぐに服を着て移動しなければならないから。


 逆にあまり家の温泉に入ったことのない、若い子世代、そしてアーリア・アーレア・アーロアには好評だった。

 特にアーリア・アーレア・アーロアには大好評だった。 自分たちの空いた時間にいつでも気軽に温泉に入れるのがとても嬉しいらしい。

 以前はラミアの森の巡回警戒が一番の仕事だった彼女たちのグループは、新しい温泉までの距離は全く気にならないらしい。

 若い子世代は順番に馬車で温泉に行っているみたいだ。


 さて、なるべく急いで新たな温泉を作ろうとした理由の一方である弟子の男の子たちは、それぞれの師匠になったボブとバンジが、一番最初は連れて温泉に行った。

 「あの、俺たちも温泉になんて入って良いのですか?」

 ボブの弟子が心配そうに尋ねた。

 「もちろんだ。 こっちの男湯はお前たちのことを思って、作られたんだからな」

 バンジがそう答えてやると、バンジの弟子が

 「若棟梁、俺たち今まで風呂なんて入ったことありません。 ましてや温泉なんて」

 「ま、そうだよな。 俺もラミアの里に来るまでは、温泉どころか風呂なんて入ったことなかったよ。

  でもここでは誰でも温泉に入れるんだ。 それにな、ラミアは女性ばかりだから清潔好きなんだ。 だから俺たち男も体を綺麗にしてなくちゃいけないのさ」

 ボブがそう言って、汚れたら温泉に必ず入るようにと注意した。


 そしていざ新しい温泉に着いて、中に入るときに、バンジが一番重要な注意をした。

 「とにかく、お前たちが絶対に守らなければいけないのは、女湯には入らないことだ。

  別にお前たちが構わなければ、真ん中の一番広い湯船の方は入っても構わない。 ラミアたちは別に裸を気にしないから、お前たちが入って来ても問題にしないからな。 でも女湯はダメだぞ」

 「師匠たち、俺たちは男湯にしか入りません!!」

 「それに、きっとそっちには師匠たちのラミアの奥方だけでなく、人間の奥方も入っていたりするんじゃないですか?」


 バンジのちょっと揶揄いの入った注意に弟子たちがそう反論すると

 「バンジ、チョナは気にすると思うか。 ハンナは『何を今更』と弟子たちと一緒になっても、全く気にしないと思うんだが」

 「きっとチョナもどこ吹く風だな。 ラミア風に慣れたなぁ。

  俺たち最近はもう、お互いの妻たちとも風呂の中でも普通に話しているものなぁ、ラミアに限らず」

 「それは棟梁たちだからです。

  俺たちはラミアの奥方たちだって気にします」


 そうして新しい温泉の男湯の方はボブとバンジの弟子に加えて、ハキのところに来る店の男たちも利用するようになり、ある程度使われていたのだが、女湯の方はたまにハキのところに女の店の人が来たり、誰かしら人間の女の客が来て使うことはあったが、あまり日常的には使われることがなかった。

 ところが少しして女湯の方も使われるようになった。

 誰が使うようになったかというと、妊娠してお腹の大きくなり始めた人間の妻たちである。


 「ソフィアによると、私たちのお腹が大きくなっているのが、ラミアにとっては珍しいから、ラミアとお風呂に入っていると、『もっと良く見せて』とか、『ちょっと触らせて』とか、すごく言われるからということらしいわ。

  ラミアが卵で膨らむのは位置が違うし、ハーピーはハーピーの里の温泉に基本行ってしまうから、お腹に卵がある時の体型をまともには見ないじゃない。

  それにラミアもハーピーも人間ほど大きくならないし、あまり変化しないから、やっぱり珍しいのよ」

 と、アンがその理由を説明してくれた。

 確かに、若い子や子供たちと一緒になったら、すごく興味を持たれて大変そうだよな。

 うん、女湯も作っておいて正解だった。


 結局のところ新しい温泉は、家に元の温泉がある僕らには、あまり関係のない物となったのだけど、それは家に来ていることの多いラーリア様、ミーリア様も同様だった。 ミーレナさんも以前から比べれば減ったとはいえ、来ることが多くて、やっぱり家の温泉に入ることの方が多い。

 それは子供を入れるのに都合が良いからかもしれない。 ミーレナさんが2人連れて来ていると、子供が4人になり、温泉に入れるのには人手が多い方が楽だ。

 ミーレナさんが来る時は大体2人連れて来ているから、その為か、ラーリナ様も来ることも多くて、ここで入ることが多い。 大体においてラーリアたちは、こっちで入ることが多い気がする。

 あと、家の温泉に入りに来るのが多いのは、アレア様、ロア様、アリファ様の3人組だ。

 「どうももうここの温泉に慣れちゃってて、ここの方が落ち着いてゆっくり出来て、疲れがとれる気がするのよね。

  どうせラーリア様とミーリア様もここにいるし」

 ロア様がそう言っているが、ボブはあまりこっちには来ない。 弟子と一緒に新しい方に行くことが多いみたいだ。 ハンナがどっちにするか迷うみたいだ。


 なんであれ、以前のように順番で大急ぎで入るなんてことはなくなったのは、ちょっと嬉しい。 それから僕はティッタを温泉に入れるのを任されることが多くなって、それもちょっと嬉しい。


 そうそう、アンは最近はエリ、マリ、そしてハーピーの2人と温泉に入ることが多い。

 人間の妻たちの戦闘訓練は、妊娠した者が出てからは無くなったので、その時に習慣になっていた時間を続けているようだ。 そのおしゃべりに、最近は結構ナーリアたちがよく混ざっている。

 人間の男では、何故かキースがこっちに来ることが一番多い。


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