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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
波乱

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326/347

326. 今までと違う槍を作る

 大型ゴブとの戦いは早くても4-5年先のことだと落ち着きを取り戻したラミアの里ではあるけど、もちろん僕たちはそれを忘れた訳ではない。


 人間の騎士たちと訓練を共にしてみて、その結果としてセカンとディフィーはそれまで考えていた戦法を全て捨て去り、何か新しい方法を考えようとしているみたいだ。 2人はハーピーに協力してもらって、この辺りの地図を図書館にあった物を基にはしているが、ずっと精密に詳細な物にしていっているようだ。

 そして2人とも仕方なく自分たちでも確かめるために、空を飛んでいたのだが、あれほど空を飛ぶのを怖がって嫌がっていたのだが、回数を重ねることで徐々に慣れてきたようだ。


 「今ではディフィーも大声をあげなくなったし、セカンも固まることがなくなり、飛びながら俺たちと話をすることも出来るんだぜ。 誰でも慣れるものだなぁ」

 ハライトがそう言うのだから、2人とも本当に飛ぶことが大丈夫になったのだろう。


 戦い方といった作戦の部分は、セカンとディフィーに任せるにしても、僕たちには他にもこれからの戦いのためにしなければならないことがある。 それはまずは武器・防具といった装備の充実だ。

 まずしなければならないのは、ターリア、ワーリア、エーレアの装備の充実だ。


 上位は防具は自分たちで努力して、この冬から春に掛けてで自分の体型にあった防具を作り終えていた。 エーレアが僕たちの真似をして防具を作ったのに触発されて一気に防具が作られたのだ。

 元々防具を持っていたミーリア、ミーレアも、体型に防具を合わせることの重要性を再認識して、持っていた防具をしっかりと調整し直すことになった。

 その過程で、革製の防具はたとえ樹脂を塗って固めてあっても、調整する部分にしばらく湯気を当てるといくらか柔らかさが戻り、木槌で叩くなどの作業によってある程度大きさ形の調整が出来ることが分かったのは大きかった。 その調整によって弱くなった部分には、場所によっては大鳥の革なども使って補強もした。


 何が大きかったかというと、ナーリアたちとエーレアたちの最初の方の防具を調整することによって、体型の似た姉妹たちに使わせることが出来たのだ。 これによって体型が変わってしまって使えなくなった防具が、倉庫で埃を被るだけにならずに済んだし、材料の節約になったのだ。

 お古の防具をもらうことになった姉妹たちは、その調整時に、

 「私の方がもうちょっと胸が大きい」とか、「私の方が、ちょっと痩せている」だとか、本当か嘘かもはっきりしない言葉で大騒ぎをしたが、概ね満足しているようだった。

 ただ、残念なことにディフィーのお古は、姉妹でも小さ過ぎて誰も再利用することが出来なかった。 今更ながらディフィーはこの前の脱皮の前は本当に小さかったのだなぁと、あらためて思った。 今では完全に周りのラミアと遜色ない体型になっているから、ちょっと不思議な気もした。


 不満たらたらなのが、お古をもらえなかった姉妹たちである。 結局15人のうち9人は防具が貰えたのだが、6人は防具が無く、新たに作ることになったのだが、6人に作った防具は、それまで作っていた防具とは訳あって形が違うのだ。

 なぜ違うかというと、今までの防具は普通の弓を射ることを前提に作られているので、体型に合わせて、なるべく体に密着させる形で作られている。 しかし、エーレアを除く姉妹たちは弓は普通の弓ではなくクロスボウを使うので、弓を射るために、体になるべく密着させた形の防具を作る必要はないのだ。

 それならば、もう少し簡単に作れて、この後体型が変わって、次に渡す時に調整のしやすい、作りやすい形にしても良いのではと考えたのだ。

 新しい防具は体型に沿っていないことはないのだが、個々の違いは全く考慮していない、特に違うのは胸の部分で新しい方は内部に詰め物を当てて、個々に合わせる形となっている。 そして他の胴の太さとかの大きさの違いも、デイヴの防具を作る時に工夫された、調整が出来る形になっているのだ。


 「手抜きですか、これは手抜きですか?」

 ワーリルがそう言って、この防具を先導して作った僕とセカンに食って掛かってきた。

 「いや、違うぞ、ワーリル。 決して手抜きではない」

 「それじゃあ、何で、残りはみんな一律に同じ物なのですか」

 「同じっていっても、きちんと調整してそれぞれに合わせられるようになっているじゃないか」

 「でも、元の防具はそれぞれが完全に体型に合わせていたじゃないですか」

 「それは、あれはお古だからな。 そうする以外使えないから。

  ワーリル、考えてみろ。 もう少ししたら、きっとお前たちも脱皮して体が大きくなる。 そしたら今回作った防具はすぐにやはり使えなくなって、新しい物が必要になるだろ。 その時に次に使う者のために調整しやすい物を作るのは当然だろ。

  それにお古の防具は普通の弓を使うことを前提とした物で、クロスボウを使うことを前提にしていない。 新しいお前たちのはクロスボウを使うことを前提に作っている」

 「確かにそうかもしれませんけど、何だか釈然としないのよ」

 「だから、どうせすぐに脱皮して体型が変われば。 その時にはターリア、ワーリア、ヤーレアは全員クロスボウ用の防具に新たになることになるから、先にそれに慣れておくのだと考えれば、悪いことではないだろ」

 「うーん、何だか上手く言いくるめられている気がする」

 何とか残りの6人に納得してもらった。


 このクロスボウ用の防具に問題がなければ、将来的には若い子世代にも全員、この防具を着けてもらうことになる。 6人はそのためのテストをしてもらう意味もあるのだ。


 そして、僕とボブ、セカンとディフィーが選んだナーリアの姉妹たちの新しい武器は槍だ。

 というのは、騎士たちとの模擬戦闘ではっきりしたのだが、剣では姉妹たちは圧倒的に不利なのだ。


 腕力が人間の少し鍛えた男とではやはり敵わないということもあるのだが、それ以前に人間の男とではリーチに差があって、その差を克服するのが大変なのだ。 その差を克服するには、セカンのように間合いに精通するか、サーブのように攻撃の調子を変えられるように練習するか、さもなければレンスのように手数で圧倒したり素早く動けなければならない。 どれも正直誰もが出来ることでもないし、その技能を身に付けるのには大変な努力がいる。

 ミーリア様たちが主武器を槍にしていて、それでも力を上手く逸らす技術に焦点を当てて訓練しているのは、本当に故あってのことなのだと、今更ながらに感じた。


 それでもミーリア様たちのように槍を使うには、やはり凄い訓練が必要なのは当然だと思うので、僕たち4人はそれも無理だと考えた。

 そこで僕たち4人は、ミーリア様たちが使う普通の槍ではなくて、特殊な槍を2種類考えた。


 一つはとても長い槍だ。 これは実はまともな戦闘を考えている訳ではない。

 この長い槍を作ろうと考えたヒントの第一は、僕たちナーリアが最初に熊を狩った時の作戦だ。 矢で熊を倒すことが出来なくて、熊が自分たちに向かってきた時には、最終的には向かってきた熊を柵の内側から僕が剣鉈の槍で刺し殺す手筈になっていた。 それをゴブに応用しようというのだ。

 つまり、柵の内側から、柵に引っかかったゴブを長い槍で攻撃しようと考えた訳だ。 槍が長ければ、より離れた位置からゴブを攻撃出来るので危険が少なくなる。


 でもこの槍は最初試作してみた時は、実戦の役には立たないかと思った。 長くするとその分、穂先が小さくても重く感じて上手く狙って的に当てることが難しいのだ。 それにどうしても長くすると柄がしなってしまうことも狙いが定まらない原因となる。

 そうなると、もし防具をゴブが着けているとしたら、防具の隙をついて攻撃することはすごく難しくなる。 突いたり、切ったりの狙いが定まりにくいからだ。


 試して上手くいかず、ボブが「この穂先が揺れてしまうのがダメなんだよな」と逆に穂先を悔しがって揺らしていたら、たまたまその先が的にぶつけてしまい、的を壊してしまった。

 「おい、ボブ。 イラついて的を壊すなよ」と僕が言うと、セカンが「あっ、そうか」と言って、僕の言葉を途中で制した。

 「ボブ、もう一度、今みたいにして的を壊して」

 僕もだが、ボブも意味が分からないという顔をしつつ、同じように穂先を揺らすようにして的にぶつけて、壊した。

 「そうよ、何も槍だからといって、刺したり、切ったりに拘る必要はないんだわ。

  棒で叩き壊すみたいに、先に穂先はあるけれど、叩いて攻撃しても良いのよ。 それにその方がどこに当たってもダメージを与えるかもしれない」

 なるほど確かに槍だからといって、刺したり切ったりにこだわる必要はないかもしれない。 僕やボブは自分たちが使っているのが大身槍で穂先が大きいので、突いたり斬ったりが主な攻撃方法だから、それに囚われてしまっていたのかもしれない。

 「ねえ、もしかして、突き刺したり、斬ったりを主にしないのだったら、槍がもっとしなっても問題ないんじゃない。

  何が言いたかというと、今作った槍は穂先があまりしなって目標からズレないように、柄の中に木の棒を芯として入れて、しなりを抑えているじゃない。 でも、しなっても構わないのだったら、芯の棒がなくても良いんじゃない。 そうすれば槍が軽くなって扱いやすくなるのではないかしら」

 ディフィーもそんなことを言い出した。


 僕とボブはなるほど確かに僕らよりも力が弱いナーリアの姉妹たちが使うことを考えたら、軽くするというのは意味があるなとは思ったのだが、外側の竹だけで作ったら、そのしなりで叩いた時の攻撃力が減ってしまうのではないかと思った。 硬い棒で殴った方が痛いと思ったのだ。

 でもまあ、物は試しと、芯の木のほとんどの部分を失くした、長さは同じだけど良くしなる槍を作ってみた。

 そして試しに、その槍をしならせて的に叩きつけてみると、しならない槍よりも軽い力で、派手に的を壊すことが出来ることが分かった。 僕とボブが考えた攻撃力が減ってしまうのではという危惧は逆だった。 しならせた方が叩きつけた時の攻撃力は上がるのだった。


 こうしてよくしなる長い槍の採用が先に決まった。 この槍はターリア、ワーリア、ヤーレアに持ってもらうことにした。 基本戦術は遠い敵に、3度に渡ってクロスボウで攻撃し、それでも近づいて来たら、柵の中から長い槍で安全に攻撃をするという訳だ。


 もう1種類はもっとずっとトリッキーな槍だ。 ちょっと見はミーリアやミーレアの使う普通の槍と変わる所はない。

 ただ、この槍のちょっと違う所は、槍を持って構える時に、穂先に近い方の辺り、つまり敵と立ち会っている時に敵に近い持ち手の辺りの柄の部分に、革で円筒形を作り硬くしたモノが、ある程度一定の範囲を自由に動かすことが出来るように取り付けられているのだ。


 この筒を取り付けた利点は2つ。

 まず1つ目は、槍で突いた時に、筒に柄を滑らすように押し込むことで、普通の槍よりも間合いを伸ばすことが出来る。 要するに不意打ちができるのだ。

 今までの普通の槍では突いてきても届かない場所に身を置いたと思った相手に、槍の穂先が届くことになる。 これによって戦う相手に傷を負わせることが出来る可能性が高くなるし、初見の場合は相手は間合いが掴めずに、攻撃しにくくなる。


 もう1つは、筒を滑らせることで続けて何度も突きを繰り出すスピードが速くなり、その的を狙う正確さも増すということだ。 スピードが速くなるといっても、敵が3回突ける間に、こっちは4回か、せいぜい5回という微々たることだけど、実際にはその差は圧倒的に有利だ。


 だがそんな有利なことだけでなく、逆にその筒を持っている時は、突くことには良いが、払いにいったりは力が上手く乗らないし、払われた時には隙が出やすくなってしまう。 左右の手がほぼ同じ位置になった時に払われると、離れた位置で持っている時よりも、穂先を大きく逸らされてしまうからだ。


 これらの利点・弱点は最初から気がついていたのだが、僕たちはゴブとの戦いに有効だろうと判断していた。 ゴブがこの槍と戦って、その利点・弱点を後からのゴブに伝えるということはないだろうと思ったからだ。 つまり、いつでもゴブはこの槍と初見となって不利な立場に立つと思うのだ。


 こっちの槍はエーレアたちに使ってもらうことにした。

 少し使い方を練習してもらい、模擬戦闘をしてもらった。 相手は普通の槍を使うミーレア5人だ。

 ミーレアの5人も槍を使うことによって、大型ゴブや人間の男のリーチの長さを擬似的に再現して、戦闘を行ってみたのだ。

 結果、エーレアたちはミーレアの5人に完勝してしまった。 ミーレアの5人は自分が思っていたよりも伸びてくる槍の先に戸惑い、エーレアたちの最初の攻撃をは避けたのだが、自分たちが攻撃をする前に、エーレアたちの素早い突きの連撃を受けきれずに敗れたのだった。


 エーレアたちはミーレアに勝ったことに、自分でも信じられないと驚いたけど、飛び上がるように喜んだ。


 「なるほど、面白い槍ね。 私たちも戦ってみたいわ」

 ミーリベ様がそう言って、次にミーリアの下5人とエーレアたちは戦ってみることになった。 エーレアたちは、ミーレアの5人に勝った勢いで、やる気十分のようだったが、僕とボブは2人で「これはダメだ」と目配せをしあった。

 思った通り、エーレアたちは何もすることが出来ないまま、あっさりと叩き伏せられた。


 ミーレト様が言った。

 「ずるいですよ。 私たちが負けたのを見ていたからじゃないですか。

  これじゃあ、私たちがとても弱いみたい。

  私たちもエーレアたちと再戦したい」

 確かに、ミーレアたちはエーレアたちの槍を初見で、その特徴を知らなくて戸惑っているうちに負けてしまったのだ。


 再戦した一度負けたミーレアの5人は、今度はエーレアたちをミーリアにやられたよりも、少し手厳しく、あっさりと叩き伏せた。

 エーレアたちはちょっとだけ高くなった鼻を、あっさりと叩き折られた。


 それでも僕たち4人のこの槍の評価は下がらなかった。

 「うん、思っていたとおり、初見ならこの槍はとても有効だわ」

 このディフィーの評価が、僕らの感じた全てを言い表している。


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