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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
波乱

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325/350

325. ラミアの害虫対策

 僕の友たちの家作りは、やっと一段落を迎えた。

 全員の家を作り終えることが出来て、上位ラミアたちが落ち着きを取り戻したのだ。


 それぞれの家の位置は、やはりそれぞれの受け持っている仕事に近い位置が基本となっていることが多いのだが、ギュートとヤーレンのように今までの流れからもそうはいかない所もある。

 ギュートは馬の世話を考えたら、一番草原に行くのに近い位置に厩を移動して、その近くに家を建てるのが最も良いと思うのだが、厩の位置が今までの共同住宅近くから動くと、復興させようとしている町からも遠くなって不便だと、そのままにされたので、結局そのまま厩の近くに建てられた。

 ヤーレンも、畑に近い所に、家と農作業に使う器具をしまっておいたり、雨の日の作業をするための小屋を作れば良いと思ったのだが、家は復興させようとしている町に建てられた。


 どうするのかなと僕が一番思っていたのはハキで、ハキとハキの妻たちはここのところ瓦作りを主にしていたので、焼き物窯の近くは随分とたくさん小屋を建てていたし、その近くにするのかと思ったら、復興させようとしている町の中心に近く、領主様のいる町に繋がる道にすぐ出れる場所に家を建てた。 少し変な作りの建物になっているのでバンジに聞くと、増築というか、もっと大きな建物の一部となるからだという。


 ターリアたちも家の建築がとりあえず終わったので、仕事が楽になったかというと、全くそんなことはなかった。

 建てねばならない建物はまだまだたくさんあるのだ。

 「こんなはずじゃなかった。 少しは休めると思っていたのに」

 ターリオの叫びは、ターリア全体のものだ。


 とにかく建築資材が不足しているので、ハーピーの里のもう使われなくなっていた建物は解体され、それに使われていた石は運び込まれることになった。

 ハーピーの移住も決定しているので、ハーピーの為の住居も、復興させようとしている町に作らねばならないのだが、さすがにバンジもどんな建物を作れば良いか分からないので、今現在のハーピーの里の建物は石作りということもあり、ダイクと一緒にハーピーの里の見学に行って来たらしい。

 ハーピーの里に2人が行ってみると、考えていた以上に使われていない放棄されている建物が多くて驚いたらしい。

 「本当にハーピーはもっとずっとたくさん元々はいたんだな。 放棄された建物だらけだったよ」

 ダイクがそう言って、昔のことを想像していた。


 昔とはいっても一番古くても高々60年あまり前のことで、石を積んで作られた建物だから、その建材としての石は十分に今でも使える。

 バンジとダイクで相談して、ハーピーのための家は、ハーピーが慣れているだろうこともあり、ハーピーの里で使われていない家の石をどんどん運んで、石造りの建物にすることになった。

 石を運ぶのはハーピーが自ら行う。 飛んで運ぶのだから、一度に大量に運ぶことは出来ないが、逆にハーピーにとってはハーピーの里と復興させようとしている町の間の距離なんてほんの一飛びだ。

 毎日毎日たくさんのハーピーがその間を休みなく行き来して、最初びっくりしていたラミアや人間たちだったが、すぐに日常の光景になってしまった。

 ただ、ハーピーは石の輸送は出来るが、今の鳥型ばかりのハーピー族では、それを積み上げる作業は上手く出来ない。 ハーピーの家の石積みは、道の復旧と共にダイクの仕事となった。

 ダイクの手伝いをしているダイクの妻たちは、そんな訳でたくさんのハーピーと親しくなったようだ。


 それから早急に建てられているのは、厩の近くに刈った草を貯めるための大きなサイロだ。

 この冬はサイロで作られるサイレージがなくて、馬の餌に困った。 次の冬にはそんなことのないようにしたいからだ。

 これはもうしっかりと木で作られている。 木で作った大きな枠に、雨が入らないように屋根がつく形なのだが、その内部に何もない構造と、一番上から刈り取った草を落としていくために、外側にスロープを付けたので、少し複雑な構造だ。

 複雑な構造になる理由はスロープが上りと下りに分かれて付けられているからだ。

 サイロが完成したら、草原の草刈りを他のことを一時中断して、なるべく大人数ですることになっている。 ギュートの計画では秋までに三度行う予定らしい。


 あと、ハキの家の側には、家が建てられたすぐ後から、倉庫が建てられている。

こっちはなんていうか、最低限の枠組みというか柱と梁を木で建てたら、壁になる部分などは日干し煉瓦で作っている。日干し煉瓦を積んでところどころに竹を縦横に入れて補強している形だ。 日干し煉瓦は雨には弱いので、壁の下半分くらいには外側は竹を割った物を取り付けて、補強と雨を防ぐ壁にしている。 屋根も最も簡単な竹屋根だ。

 この倉庫は構造も簡単だし、作るのに特別な技術も使われいる訳ではないので、次々と建てられていった。 瓦を焼くための窯の周りといい、ハキの関わるところは建物が増えていってしまう。


 そうそう、ハキのところにも実家から、これは弟子というよりは商人の見習いがやって来ている。

 ハキは商人の見習いだけでなく、焼き物の職人を招聘して、瓦を焼くだけでなく、色々な焼き物を作りたいらしいのだが、まだそこまでは手が届いていない。 さすがに食器だとか、壺だとかの焼き物となると、ハキにはもう手に負えなくなってラミアに教えられない。 専門にそれを仕事にしていた人に教わる必要があるのだ。

 「本当に原料となる土は僕でも判るくらい良いモノがあるんだ。 レンスによると陶土もあるし、鉄が採れる周りの土も焼き物に使えるらしい。 その道の職人なら、絶対に来ると思うんだ」

 ハキは完全に商売人の顔になっている。


 とにかくみんなそれぞれに忙しく仕事をしている訳で、そんな中僕たちとワーリアたちは、一つの大きな事業を任されることになった。 温泉をもう一本ラミアの里に引こうとしているのだ。


 今は暖かい季節だから、基本的には文句が出つつも、僕たち以外は水浴びに戻されてしまっている。 僕たちは元々家に付随していた水浴び場を大きく改造して温泉にしてしまったので、戻すに戻せないから温泉使用のままだけど。

 僕たち以外では、紙作りはアンが中心になって人間の女が主にやっているので、その関係で人間の妻たちは温泉に入る機会が多い。 それと僕らの家に、赤ん坊たちが集められることが多いので、その母親であるラーリア様たちも便乗して温泉に入っていくことが多い。 あとはケンのところは炭で汚れることが多いので、ちょくちょくやって来る。 それ以外の友たちは、割と水浴びで済ませてしまっている。 それぞれの弟子たちもそんな感じだ。


 次の冬は出来れば全員、最低でも上位とナーリアの姉妹たちは冬籠りしないで起きていることを目指している。 それに向けてヤーレンを中心に食料の増産もされているし、馬や鶏の世話だけを考えても起きている人数は必要なのだ。

 寒くなれば水浴びという訳にはいかず、どうしても風呂が必要になってくるのだが、木を燃やして風呂を沸かすのは中々大変だ。 それに温泉の気持ち良さを知ってしまっているので、やはり温泉が良い。 という訳でもう1箇所温泉を寒くなるまでに作ることになったのだ。


 とはいっても、僕らの家のところに引いて来ている源泉の湯量では、もう1箇所に引くという訳にはいかず、別の場所から引かねばならない。 そうそう都合の良い場所に源泉がある筈もなく、今度の温泉の源泉は、温泉を作る場所から、僕らの家の源泉に比べると3倍も離れた場所になってしまった。 温泉を作る場所も、ラミアの里からは少し離れた場所にしなければならなかったので、どうしようかと思ったのだが、本当に寒い時は馬車での往復を考えればなんとかなるだろうと、そのまま作ることになった。

 ただ、悪いことばかりではなく、源泉の湯量は、源泉がハーピーが元々使っている温泉の場所に近くなっているからか、僕らの家で使っている源泉の3-4倍の量が出ているので、温泉の湯船を大きくすることが出来ることが分かった。


 僕たちは湯量も考えて、今度は二本並行して竹のパイプを繋げていくことにした。 そして今度は3箇所をトンネルにしなければならない。 僕らの家の温泉では地質が弱くてトンネルには出来なかったのだが、今回はトンネルを通せるようだ。

 とりあえずワーリアたちにはトンネルを掘ってもらうことにした。 ワーリアたちがトンネルを掘っている間に、僕らは竹のパイプと木枠を用意することにする。

 竹のパイプは前の時の6倍、木枠は共用して使うことにして数を減らしても3倍の数となる。 その数を揃えるのは大変な作業となってしまい、ワーリアたちがトンネルを掘り終えるまでに必要な数の1/3しか用意することが出来なかった。

 そんな訳で、パイプを敷設して伸ばしていく作業は、トンネルを掘り終えたワーリアたちが当たり、僕らは資材準備をするという役割分担にすぐになってしまった。


 もう一つ僕らには重要な仕事が任されている。 それは人間用の畑の管理だ。

 暖かくなってからのラミアは、基本的には今までの食生活に戻り、栽培している木ノ実と豆中心の食生活に戻っている。 もちろん森で採れる物も多い。

 人間もラミアの食べる木ノ実の、皮というか果肉の部分を食べるので、今までより食事の準備は楽になっている。 でも人間にとってはそれだけでは物足りないので、肉を食べたりも当然しているのだが、ラミアの里2年目の今は、人間用のラミアが今までは作らなかった作物を育てている畑も作ったのだ。 そしてそれらは、友たちとその人間の妻だけでなく、弟子たちもラミアの里に来て、人間の数が増えたので、とても重要な仕事なのだ。

 成り物の類は、ラミアが好んで食する物とは違い種が小さい。 またはラミアが食すよりも早くに収穫する。 根菜系はハーピーとの共同の畑でも栽培している。

 一番のメインは葉物系の野菜なのだが、これはラミアは今までは全く食べることがなかった物だ。 ラミアにとってはほとんどエネルギーにならないらしい。

 人間にとっては是非とも欲しい野菜なのだが、とにかくこの野菜は手間がかかる。 何が大変て、害虫を常に退治していないと、すぐに食べられる物では無くなってしまうからだ。

 

 害虫の退治は、基本的には見回って、いたらば即座に手で排除することである。 これがとにかく面倒だ。

 手で排除するのでは間に合わなくなり、僕は炭作りの副産物である木酢液を薄めて撒くという方法も使った。 木酢液を薄めた水を撒くと、虫が落ちるので、それを集めれば一網打尽なのだ。


 それを見ていたディフィーが言った。

 「なんだ、それで良いの。 だったらもっとずっと簡単に害虫退治が出来るじゃない」

 そう言うとディフィーは、害虫が付いている葉物野菜に毒霧を吐いた。 あっさりと害虫が落ちた。 準備も要らないし、霧にして吹き掛けられるので、柄杓で撒くよりもずっと効率も良い。

 えっ、そんなに簡単に出来る方法があったんだ、と僕はなんだか膝の力が抜ける気分だった。 僕は一応聞いてみた。

 「木酢液を薄めた水は、雨が降ったり食べるときにちょっと水で洗えば、なんの問題もないのだけど、毒霧を掛けたのは大丈夫かな」

 「大丈夫なんじゃない。 豆に付く虫は昔からこうして排除しているから。

  口移しの水を飲ませるのとは違って、こうして虫を排除した豆を今までも人間も食べていて、何も問題がないのだから、きっと大丈夫よ」

 なるほど、全然知らなかったが、僕たちも普通に食べていた訳だ。 それならきっと大丈夫だろう。


 「今思ったのだけど、そうやって落とした虫って、それも役に立つんじゃない」

 ナーリアがそんなことを言い出した。

 「えっ、いつも踏みつけて殺しちゃってたけど、この虫が役に立つの」

 「うん、私たちラミアは踏みつけるのは尻尾にくっつきそうで嫌だから、石で潰してたんだけど、今ふと思ったのだけど、鶏の餌にならないかしら?

  ほら、鶏は草に付いてきた虫を喜んで食べているじゃない」

 確かにその通りだった。


 このナーリアの一言をきっかけとして、畑の害虫の駆除は子供たちの仕事となった。 それは人間用の畑に限らない。

 子供たちにとっては、鶏の餌とり兼、ラミアにとって重要な毒霧吐きの練習にも、という一石三鳥の仕事となったのだ。


 これは僕たちがとても楽になっただけでなく、ヤーレアたちにも喜ばれた。 作物につく害虫を退治することは、重要だけど中々大変な作業であるのは、人間もラミアも変わらない。

 そして卵の生産性も少し上がったし、卵が美味しくなった気がする。

 ナーリアのちょっとした気づきは、とても良い結果をもたらした。


 ただ一つ心配したことがある。 それは蜂だ。

 蜂の箱もだんだん数が増えて、今ではかなりの数になった。 それに伴い、畑では蜂が常に飛び回っていて、今までより実の付きが良くなっているし、もちろん蜂蜜や、蜜蝋も採れている。

 その蜂が、害虫駆除の時に一緒に落とされていないかを最初心配したのだ。 まあ蜂は毒霧で眠らされても、そのままにしておけば目を覚ますので、蜂自体に問題はないと思う。 でも毒霧をかけられるのを自分たちへの攻撃だと勘違いして、子供たちを刺さないかと心配したのだ。

 でも心配は杞憂だった。 子供たちが毒霧を吐きに作物に近づくと蜂はその場から逃げ去り、毒霧にその身を晒すことはないようだ。

 蜂の巣を採る時は、蜂も巣を守ろうとしてきっと逃げないだけなのだなと僕は思った。


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