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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
波乱

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318. ボブの家の建設

 瓦の使用の目処が立つと、バンジは何やら実験を始めた。


 瓦を焼く為の窯を作るために作った煉瓦を作る為の最初の工程、土を枠に入れて煉瓦の形にして乾かすのだが、その為の枠をケンのところから持ってくると、バンジは煉瓦を作り始めた。

 ただし、ケンたちがやっていた様に、粘土を水で捏ねて、枠に詰め込んでいった訳ではない。


 バンジは土に枯れ草を切った物を混ぜ、それを水ではなく、半分アスファルトになっているような、ドロっとした燃える水で硬く捏ねた。 そしてその土を枠に詰め込んで乾かしている。

 雨が多い季節だったのだが、徐々にその季節を抜け始めたのだろう。 何だか強い日差しを感じる時が増えてきた気がする。

 バンジが作った燃える水で捏ねた煉瓦は、普通の水で捏ねた物と違い、乾くのが遅かったが、強い日差しが当たると温度が上がるからだろうか、だんだん乾いていった。

 バンジの煉瓦は、枠より少し大きさが小さくなった感じで、乾き切ったようだ。


 「バンジ、今度はこれを炭焼き窯で焼くのか?」

 ケンが当然そうなるだろうという感じでバンジに尋ねると、バンジは

 「いや、これで出来上がりだ。 これは焼かない煉瓦なんだ」


 バンジはその出来た煉瓦にまず水をかけてみた。

 普通の焼く前の煉瓦だったらば、水をかけられたら、水を含んで形が維持できないのだが、バンジの作った煉瓦は水を弾いて、全く形が崩れなかった。

 その後でバンジは、その煉瓦を何段か積んで小さな壁を作り、その壁にくっ付けるように火を焚いた。 今度もその煉瓦は崩れたりしなかった。 ほんの少し表面が痛んだかなという程度だ。


 「良し、成功だ。 これで雨にも火にも強いけど、石で作るよりずっと簡単に家を建てられる。 待たせたボブの家と、本格的な鍛冶場が作れる。

  それからケン、お前の家も炭焼き窯の近くに立てるのが希望だったから、この煉瓦で火に強い家を建ててやるぞ」

 「おう、まあ順番は本当はボブのところの方がもっと前だったからな、ボブの所の次になるのは仕方ないが、嬉しいぜ」

 実験を見ていたケンにバンジがそう言うと、ケンは照れ臭いのか、「嬉しい」の言葉の前に色々付け足して、それをバンジがニコニコと笑っていた。


 もう一人この実験を見ていた人がいる。

 どこで聞きつけたのか、ラーリア様が自分の住む家を作る為の実験だからと見にきていたのだ。

 「燃える水は油の一種だと思うから、水を弾くのは予想していたが、あれだけ近くで火を焚かれても、燃えたりはしないのだな。

  油が混ぜられているのだから、燃え出しはしないかと、私は内心ハラハラしていたんだ」

 「はい、ラーリア様。 実は僕もそれが心配で、水をかけてみたのは本当に確認だけで、本当に実験したかったのは、火を当ててみてどうなるかだったんです。

  期待通りに、燃え出したりしなくて、本当に良かった。

  最悪は、アレクの家のように石で全体を作らねばならないかと考えていたのです。

  でも石で作るとなると、その手間は煉瓦で作る何倍にもなりますし、家の作りも制約が大きくなってしまいますから」

 「ああ、それは私にも理解できるよ。

  本当に良かった。 うん、私も本当に楽しみだ。

  もちろん煉瓦を作ったり、それを積んだりは私たちも精一杯手伝うぞ」


 こうしてバンジとミーレナさんを含んだその妻たちと弟子、それにボブとその妻たちはみんな、焼かない煉瓦の製作にしばらくかかりっきりになった。



 ラーリア様とミーリア様も当然ながらレンガの製作にかかりきりになったので、僕たちはなんとなく暇な時間が出来た。 今まで僕たちはいつでも忙しくしていて、他のナーリアたちの姉妹グループが割と暇な時でも、僕たちだけは時間に追われているのが常だったのだが、どういう訳か今は、姉妹グループは任された仕事に追われているのだが、僕たちは余裕があるという状態になった。 何だか変な感じだ。


 僕たちはその余裕のある時間を図書館で費やした。 今後に備えて、何かヒントになることがないかと、それぞれに興味の向いた本を調べているのだ。

 ただし、僕らの中でもアンは人間の女性が中心になって行っている紙作りと、最近はほとんど常に紙作りの作業場には、布作りの係のラミアがやって来るので、そっちが優先で、あまり僕らと一緒に図書館には来ない。


 モエギシュウメも夜は大体家に戻って来るが、本来の連絡業務に飛び回っていることの方が多い。 でも、もうハライトも復帰しているので、ハライトが飛べなかった時よりは楽になっている。

 そうそう、季節が変わり、ハーピーたちは冬毛から夏毛に羽が生え変わり、言っていた通り身体に布を纏うようになった。 ただ羽根があるので、着る時の制約が大きいからか、飛んでいる時の抵抗を考えるからか、頭から穴の開いた布を被り、それを紐で留めていくという形の服で、儀式用の凝った作りの物もあるらしいが、普段着ているのは、僕の目からはあんまりカッコよくない。

 「モエギシュウメ、なんていうか、あまり良い見栄えじゃないわね。

  冬毛で着てない時の方が、ずっと良いわ」

 「ディフィー、そうあからさまに言わないで。

  ハーピーは羽根があるし、飛ぶのに邪魔にならないようにしなければならないから制約が多いのよ」

 「そうだとしても、酷いと思う。

  セカン、もう少しマシなの作れない」

 「うーん、レンス、確かにもう少し見栄えが良くは作れると思う」

 「セカン、お願い、作って。

  正直に言えば、人型のハーピーが今いなくなっちゃってるから、ハーピーの服を上手に作れる人がいないのよ。

  儀式の為の綺麗な服なんてのは、普段使わないから、結構残っているのだけど、普段遣いの服は今は見すぼらしいのよ」


 この後、セカンがモエギシュウメに服を作ってやると、すぐにウスベニメも私も欲しいと言い出し、その後ハーピーからたくさんの「服を作って欲しい」という依頼が舞い込むことになった。

 さすがにセカンだけで対処できる訳はなく、ラミアの布作り係も巻き込む話になってしまった。

 布作りの係では、最初はハーピーの服まで作る布の余裕はないと、断っていたのだが、そこにハーピーは大量の麻などの素材を持ち込んだ。 人型のいない現在のハーピーたちでは、糸の原料となる麻などを、そこから糸の素材となる状況にまでは割と効率良く作れるのだが、それからは細かい作業となるので、苦手にしていたようで、その素材までの状況になっている物は大量に在庫に抱えていたらしい。

 それから後で分かったことだが、麻を刈って集めるなどの、最初の作業はラミアがするよりもハーピーは、自分の足の鋭い爪でザクザクと刈り取れるという利点がある為か、ずっと効率良く出来ることが分かった。 そんな訳でラミアでもハーピーでも一番使われている布である麻は、ラミアとハーピーの分業で前よりもずっと効率良く作れるようになった。

 またハーピーは服を作ってもらったお礼として、自分たちの抜けた冬毛を大量にラミアの里に持ってきた。 これはモエギシュウメの抜けた冬毛をメリーが集めだして、それで最初クッションを作ったことによる。 ハーピーの冬毛を集めてみたら、大鳥の羽毛よりもなお一層ふかふかな布団を作れることが分かったのだ。 ハーピーの里では、生え変わりの時に出る羽毛は、厄介な廃棄物だったのだが、集められて再利用されることになった。


 僕たちの図書館通いは、なかなか成果が出なかった。 まあ、当然だろうと思う。

 そうして図書館通いしている間にも、レンスが子供たちを連れて、大々的に大山蛾の繭を取ってきて、全員で子供たちと一緒に糸作りをしたりもした。

 今年は去年とは違い、最初から時期を見計っていて、大山蛾のいる木も先に探してあったので、繭は完全なモノを沢山取ることが出来た。 イクス様が高級な糸がたくさん作れたと喜んでいた。


 そのイクス様だが、図書館でラーリド様と、エレクの妻のシルクとの3人で、何やら話をしていた。 何か考えていることがあるようなのだが、珍しく僕たちとは別に何かをしようと計画しているらしい。



 そうこうしているうちに、焼かない煉瓦がある程度の量が出来て、煉瓦を作りつつも、まずボブの家の建設が始まった。

 ボブの家は、木材で骨組みを作り、その骨組みに肉を付ける感じで、煉瓦を積んでいった。 骨組みは垂直に立つ柱だけでなく、ほぼ等間隔に横に棒も通っていて、それらを包み込む形で煉瓦が積まれていった。


 「こうすると、煉瓦だけで積んだ時よりも、ずっと壊れにくい家が出来るんだ」

 バンジはそう言っていたが、確かにとても頑丈そうな壁が出来ている。


 煉瓦を積み始めてすぐ、ボブの実家から、ボブの弟子となる二人の若い男がやって来て、ボブの家作りを手伝うようになった。

 二人は自分たちで鍛冶場の横に、鍛冶場にくっ付けるように、単なる屋根程度の寝床を作り、暮らすようになった。 食事はハンナがその二人の分も作って、届けているので、まあ良いのだが、さすがに風も鍛冶場の壁しか遮らない寝床ではラーリア様が見かねて

 「とりあえず家が出来上がるまでは、集合住宅の方で寝起きするように。

  今はもう、集合住宅の方には空き部屋があるのだから、何もそんな所で寝起きする必要はない」

と言って、二人に集合住宅の一室を当てがった。

 二人はそれを遠慮していたのだが、やはり気になっていたボブが師匠の命令という形で、集合住宅の部屋を使うようにさせた。


 「あのラーリアの奥方様たち、このラミアの里で一番偉い人たちが住んでいるこの場所に、俺たちのような者が一緒して、本当に良いのでしょうか?」

 それでも二人はそう言って、困った顔をしていたのだが、ラーリア様が

 「お前たち二人はボブの弟子だ。

  ボブの弟子のことを、私や他のボブの妻が気にかけることは当然のことだ。

  私が良いと言えば、ここに住むのになんの問題もない。 何も気にせずに家ができるまではここに住めば良い。

  私はこっちの部屋に夜は居るから、何か困ったらいつでも声をかけてくれれば良いぞ」

と二人に言ってやっていた。


 実際問題として、やって来たボブの弟子は、若い男と言うにはまだ少し若過ぎな感じで、若い子たちのちょっとだけ上の年齢で、男というより男の子だった。

 それだけ若い男の子というのはラミアの里ではとても珍しい存在なので、まだ共同住宅に残っているラーリア様たちは、この二人を何だかとても可愛がるようになってしまった。

 二人もラミアの赤ん坊が珍しくて、いや二人にしてみればラミア自体がとても珍しいのだろうけど、二人も夕食後に身体を洗って共同住宅に戻ると、赤ん坊たちと一時遊ぶのが日課になった。


 ボブの家は、どんどん完成に向かっていき、とうとう屋根を作るところまでになった。

 屋根を支える木は、例の柔らかい木を瓦の窯の周りで熱して硬くした木だ。 軽くて強い。

 その柱、梁に板を打ち付け、バンジはまずその板にアスファルトを塗った。

 アスファルトを塗ったことで、板は水を弾くようになり、最低限の雨風を防ぐ屋根の役目はするようになった。 しかし、そのままでは火には弱い。

 ここでその板屋根の上に、アスファルトと土を混ぜた物を接着剤にして、苦労して作った瓦が乗せられていった。

 こうしてボブの家が完成した。


 完成した家の中は、みんなの寝室になる大部屋は、もちろん麦藁をしたに敷いた柔らかい床になっている。

 弟子の部屋は3部屋作ってあり、この部屋はベッドが作ってあって、そのベッドも麦藁を使った柔らかいものとなっている。

 食事に使うテーブルなどの家具は、チョナが中心になって作った物を、アレア様とロア様が台車に載せてすぐに運んで来た。


 ボブに関係する建物はこれだけじゃない、鍛冶場もすぐに同様の工法で頑丈な建物が作られた。

 ただし、ちょっと違いがあって、家の方は中から上を見れば、木の屋根を支える骨組みが見えるのだが、鍛冶場では別に天井が取り付けられた。

 それはバンジの工夫の賜物で、少し厚みの薄くて、穴が二つ開けられた煉瓦を作り、その穴に竹の棒を通して、なんていうか、幅があまりない煉瓦の板のような物を作り、それを敷き詰めるような感じで天井にはめ込んでいって、煉瓦の天井を作ったのだ。

 それだけでなく、鍛冶場の炉に近く熱が強く当たる場所や、炎や火の子が当たりそうな場所には、焼いた時に割れてしまった瓦を壁に貼り付けて、表面を瓦で覆ってしまった。

 「どうだボブ、これだけ対策しておけば、どんなに鍛冶仕事をしても、鍛冶場が火事になったりはしないだろ」

 「ああ、全くだ。 これだけ外側だけでなく内側まで防火対策をするとは思わなかったよ」

 ボブが嬉しいような、ちょっと驚いたような顔でそう答えると、バンジは何だか嬉しそうだった。


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