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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
波乱

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313/348

313. 砦でのエーレアたち

 「エレオン、それじゃあ砦まで頼むよ。

  アレクから防寒着借りて来たけど、まだ要るかな? もう大丈夫なくらい暖かくなったと思うのだけど」

 「それなら、試しに一度飛んでみるか。 エレク、お前、飛んだことないだろ。

  それから、砦に行くのは2-3日待て。 その方が面白いものが見れると思うぞ。 行く日は何日と決まっている訳ではないのだろ」


 とりあえずエレオンに腕を掴まれて、空を飛んでみた。

 感想としては、確かにデイヴが言っていた通り、足に地面を感じないというのは不思議な感覚で、水の中で溺れている様な気分になる。 でもミーリア様の言うように、ある程度の高さになってしまえば、どうであれ落ちたらおしまいで、低く飛ぼうが高く飛ぼうが同じ事だ。

 「何だ、エレクは初めてというのに落ち着いているな。 初めての時は、アレクはともかく、デイヴは『落とすなよ』と大騒ぎだったし、キースの奴は完全に腰を抜かしていたぞ。 まあ、他の奴らも似たり寄ったりだったが」

 「それは、これだけ何人もの体験談をすでに聞いてる僕と、全く初めてで何の知識もないアレクたちの時では違うよ。 それに僕はもうエレオンたちをよく知っているけど、アレクたちの時は互いに知り合ったばかりだろ。 信頼感も全く違うよ」

 「ああ、そうか、そうだったな。 なんだかもうずっと前から、お前たちとは友人だった様な気になっているから、そういう事は忘れがちだな。

  で、どうだ防寒着は必要そうか?」

 「ちょっと寒いけど、もう要らないかな。 着るとちょっと暑そうだし、砦で脱いで、どこかに置いておいてもらうのも面倒だから」


 結局、僕はエレオンの意見を入れて、3日後に砦に向かう事にした。

 以前ラリオ様やラーリン様は、デイヴとキースが空を飛ぶということをとても危険視して、それがきっかけで子供を作ることに一気になったという。 でも今ではもう、僕がエレオンに頼んで砦に飛んで行くと言ってもラーリド様は

 「そうね、その方が時間が掛からないし楽でいいわね。 日帰りで戻るの?」

と、何の心配もしていない。

 「流石に日帰りでは、アルフさんやブマーたちと話せる時間が足りないと思うので、2-3日向こうに泊めてもらうつもりです」

 「そうなの。 なるべく早く帰って来てね。

  それじゃあ私は、セカンとディフィーと共にラミアが判る範囲での下書きを作っておくわ。 戻ったらそれに、人間側から見た記録も付け加えましょう。 エレオンもハーピーから見たことを手伝ってくれるのでしょ」

 「はい、エレオンも手伝ってくれます」


 図書館の資料室は今はいつも何人もが働いている。

 図書館の資料室には大火の後に関しては、ほとんどラミアの記録だけで、少し人間の記録があるだけだったのだが、人間の記録とハーピーの記録もきちんとまとめて残しておこうということになったのだ。

 人間の記録は、町の領主の館で複写製本されて、こちらに持ち込まれることになっているのだが、ハーピーの記録に関しては、シロシュウメ様が

 「ハーピーの町は今後放棄の方針が決まっているのだから、ある物をそのままここに持ち込めば良い」

と言ってくださったのだが、ハーピーの記録は特に途中から人型が少なくなった為だろうか、書式が大きくなり、図書館の資料室に並べるには、他との整合があまりに取れず扱いにくいモノであった。

 それで現在、僕の妻のシルク、デイヴの妻のエリーゼ、ケンの妻のソフィアの人間組に、ミーリド様、ミーレド様が加わって、図書館の資料の書式に合わせた形に写す作業を別室でしているのだ。

 シルクには何か頼みたい仕事がイクス様にはあるらしく、

 「今はまだだけど、もう少しして時期が来たら、図書館の仕事が終わり切らなくても、私の頼む仕事を優先してね」

と言われているのだが、何を頼まれるのだろう。



 「何だ、エーレアたちは昨日馬車でやって来たけど、エレクはエレオンと空を来たのか」

 ブマーがそうちょっと意外そうな感じで言って、僕と最初に挨拶した。 エレオンはちょっとニヤニヤしている。

 ブマーはキースの幼なじみということで、僕らと齢が変わらないから、僕たちとは急速に打ち解けた。 ただ、デイヴに対してだけは、僕らと同じ様に接するという事は出来ないみたいだけど。


 「ブマー、何処にいるの?」

 「エレオ、俺はこっちだ」

 「私たちに何も言わずに、1人で何でいなくなるのよ。 私たちがいる時に、何かする時は、必ず何をするか教えてっていつも言っているでしょ」

 エレドがブマーに小言を言いながら、エレオとエレドが部屋に入って来た。 僕はエレオンに促されるまま、2人の視界に入らない様にエレオンの陰に隠れていた。

 「いや、ごめん。 急にエレオンたちがやって来た、という連絡を受けたから、大急ぎでここに来ちゃったから」

 そのブマーの言葉を聞いてエレドが

 「あら、エレオン来てたの?」と言った。 どれだけブマーしか目に入ってないんだ。

 ブマーがチラチラと2人に合図を送っているのに、僕は気がついていた。 それにエレオが気が付き、エレオが部屋の中に入って来てブマーに近づきつつ、ちょっと覗き込む様な感じでこちらを見て、僕の存在に気がついた。

 「あっ、エレクも来てたの!」

 「うん、一日遅れになったみたいだね」

 エレオとエレドが真っ赤になって、ちょっと慌ててブマーの後ろに移動した。


 「ブマー、この2人って、ここではいつもこんな調子なの?」

 「うん、まあ、そうだな」

 「もしかして、尻に敷かれている?」

 「エレク、そうはっきり言わないでくれ。 秘密だぞ、絶対に秘密だぞ、特にキースには言わないでくれ!」

 エレオンが大笑いしていた。 なる程、エレオンがここに来るのを遅らせた訳は、これを見せたかったのか。

 大笑いしているエレオンを、エレオとエレドの2人がすごい顔して睨んでいるけど、まあそれは仕方ない。 自分たちでブマーしか目に入らずに、僕とエレオンに最初気づかないでいたからだし、それ以前にこの部屋に入る時点で他の者が居る可能性を全く考えなかった2人が悪い。 2人ともそれが分かっているから、エレオンを睨むだけで何も言わないのだけど。


 アルフさんに会った時には、逆にこっちが驚いた。 エーレアとエーレファがアルフさんの後ろに揃っていたのだが、2人とも何だか有能な補佐役という感じだ。

 途中で砦のアルフさんの部下が何かの件でアルフさんの指示を求めて来たのだが、アルフさんが指示を与えると、エーレアが出て行こうとした部下をちょっと呼び止めて、エーレファと2人して何かの書類を取り出して、アルフさんの指示をもう少し細かく指示しているみたいだ。 そしてアルフさんの部下がその2人の指示に

 「はい、了解しました。 その様に取り計らいます」

と、当然のごとく言って去って行ったのだ。

 またそれを、アルフさんは信頼しきって、任せているという感じなのだ。


 「僕は大雑把な性格なのか、細かい事は覚えていないし、指示するのも苦手なんだ。

  今まではそれだから、部下がいちいち私の言葉を聞いてから、クラッドリングのところに行って、僕の指示を元にして細かい指示を受けていたみたいなんだけど、エーレアたちがいると、細かいことも記録しておいてくれて、僕が指示をするとそれを元に、細かいところまで指示してくれるんだ。

  クラッドリングは『自分の仕事が捗り、すごく助かります』と大歓迎しているよ」

 「クラッドさんはともかくとして、他の部下たちはどう思っているのですか?」

 「え、何も問題ないというか、歓迎しているよ。 手間が省けるし、自分たちが細かく覚えている必要がなくて楽らしい。

  ブマーは2人がいるから、自分で僕に付いていなくても良い時間が増えるのも嬉しいらしいけどね」

 なんていうか、セカンの姉妹であるエーレファはそれでもアルフさんの補佐役というのも合っている様な気もするのだが、まさかサーブの姉妹のエーレアが補佐役として、それまでの記録をめくって確かめたりしながら、アルフさんの補足の指示をしたりしているとは思わなかった。


 それでもまだアルフさんとブマーはいい、一番驚いたのはクラッドさんだ。

 ブマーがエレオとエレドの尻に敷かれているのは、何となく解る気がする。 アルフさんが大雑把な性格だから、細かい部分の補佐をエーレアとエーレファがするというのも、違和感はあるけど、でもまあそういうのもあるのかな、と思う。

 だが、クラッドさんは違う。 僕はエーレルに驚いたのではなく、クラッドさんの事を、「何なんだ、これは」と開いた口が塞がらないくらいに驚いたのだ。


 僕たちはクラッドさんの事は、キースの兄だからかもしれないけど、何だかちょっと緊張して、ちゃんと接しなければいけないという気持ちを持っている。

 クラッドさんがキースに接する姿は、やはり優しく心配しているのは分かるけど、ちょっと頭ごなしで煩い。 言うことが正論で反論できないから、なんていうかキースが感じている、苦手意識というか煙たさ、自分が愛されているからだと解っているのだけど、反発を感じてしまうという気持ちがとても分かる。

 だから、僕らもそれに影響されて、クラッドさんと会う時はちょっと緊張を感じる。

 これがアルフさんだと、領主家の長男で時期領主という公的な立場に対する緊張は感じるけど、デイヴの兄ということでは、デイヴとの仲がフランクな感じだからか、不思議とクラッドさんの様な緊張は感じないのだ。

 そしてクラッドさんは、今までの戦いの時にもそうだったが、アルフさんの下で実質的に兵を纏めたりたりだとかで苦労していて、何というか実際の年齢以上に僕たちより年上の雰囲気があるのだ。


 「エーレル、エレク君にまずはお茶を出してやってくれ、それで我々も一緒に飲もう」

 「クラッドさん、僕たちに君付けなんて不要ですよ。 キースのお兄さんなんですから、僕たちのことも呼び捨てで十分です」

 「ん、そうなのかな。 公式な立場としては君たちとは同じ騎士の立場なのだが、弟の親友たちだと思うと、何となく、なんて呼ぼうかと思ってしまうんだよ」

 「クラッドさん、エレクだって、キースの兄にそんな風に構えられたら、余計に緊張しますよ」

 「ん、エーレル、そういうものかな」

 「そうですよ。 クラッドさんは彼らより威張っていて良い立場なのですから」

 「ははははは、威張って良いというのは違うかと思うけど、もっと気楽で良いという事だな、エーレル」

 「はい、そういう事です」

 ん、何なんだ、この雰囲気は。 クラッドさんは何かとエーレルの名前を呼んでばかりだ。 エーレルもピッタリとクラッドさんに寄り添っている。 何だかクラッドさんの今までの厳格なイメージが木っ端微塵だよ。



 僕は本来の目的は果たしつつ、誘われるままに砦の兵の訓練にも参加した。 とは言っても、武器も防具も持って来てはいないので、木刀を借りた程度の簡単な参加だ。

 砦の兵たちは完全武装させられた上で、砦の周りをまずは走らされている。 何故か訓練の指揮をとっているのはエーレアだ。

 走った後で基礎的な訓練が終わり、最後に実戦訓練をしたのだが、その時に

 「エレク、騎士たちの相手をしてあげて」

 とエーレアに言われた。

 「えーと、でもこれじゃあハンデがあり過ぎだろう。 今日は僕は武装もしてないでの参加だから、他の騎士たちよりもずっと楽だったから」

 「でも、もしいつものように完全武装して、その上で若い子たちの訓練用の木刀だとかも持って走ったとしても、他の騎士みたいにヨレヨレにはなっていないでしょ」

 「それは、普段さんざサーブに絞られているからね」


 エーレアはしてやったり、という顔をして騎士たちに向かって言った。

 「ほら、いつも私たちが言うように、サーブはもっと厳しい訓練をすることがわかったでしょ」

 ブマーが言った。

 「おい、エレク、本当にサーブはもっと厳しいのか?」

 「ああ、戦闘訓練の教官をしている時のサーブはこんなもんじゃない。 その時だけはサーブは鬼だな。

  俺たちは若い子の訓練のついでだから、まだマシという感じで、本気で訓練させられたら、ラーリア様たちにさせられるより、もっと厳しいかもしれないな。

  その若い子たちと一緒の訓練でも、ここでの訓練より激しいけどな」

 「本当かよ。 サーブちゃんの訓練はそんなに厳しいのか」

 他の騎士からそんな声が上がった。


 ラミアの里に戻る前に、僕はアルフさんに呼ばれた。

 部屋に行くと、エーレアたちは居なくて、クラッドさんとブマーが居た。

 「エレク、エーレアたちが居ない場で問いたいと思っていたのだが、ちょっと良いか?」

 「アルフさん、何ですか?」

 「実は、エーレアたちが私だけでなく、クラッドリングとブマーにもなのだが、早く人間の妻を持てと、とても口うるさく何度も言ってくるのだ。

  それに、ほとほと困っているのだが、何か理由があるのか。

  ここに私たちの世話に来ている暇はないということなのだろうか。 何かラミアの里の方で、エーレアたちをここに来させられない理由があって、それをエーレアたちが言い出しにくくて言えないのかもしれないと思ってな。

  我々としては、見てわかっただろうが、エーレアたちになるべくちょくちょくと、長くここに居て欲しい。 だが、それは我々のわがままだとも承知している」

 「あ、何だ、そんなことですか。 そんな難しい話ではありません。

  今、復興させようとしている、人間とラミアそしてハーピーが共に暮らしていた町では、人間の男は人間の妻とラミアの妻を持つのが普通だったそうなのです。 そしてラミアは人間の妻が妊娠したら、自分も卵を作るというのが決まりだったそうです。

  ですから、今はラミアの里でも僕らの人間の妻たちが、早く妊娠しろとラミアの妻たちにせっつかれているのですよ。

  エーレアたちにしてみれば、早くアルフさんたちに人間の妻も作ってもらって、その人間の妻に妊娠してもらわないと自分たちも子供が持てないので、そう言っているのでしょう」

 「つまり、エーレアたちは早く私たちの子供が欲しいから、人間の妻を娶ってくれと催促しているということか?」

 「そういうことです」


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