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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
間の日々

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293. 戦いに向けて

 僕たち人間の男が、騎士たちの決起集会と名付けた集まりを終えて、ラミアの里に戻ると、ラミアの里ではもう戦いのための準備で大騒ぎだった。


 とりあえず僕らは、僕を除いて厩に行くことになる。

 「アレク、お前もきちんと馬を手入れしてやれよ。 すぐに実戦で乗ることになるのだからな。

  みんなもちゃんと世話しろよ。 今日はデイヴとキースを除けば町まで往復させちゃっているのだからな。 しっかり疲れが取れるように、まずは馬の世話をきちんとしろ」

 ギュートが全員に発破をかけている。


 僕は一人自分の家を目指して馬を走らせた。 別にもう急ぐ必要はないので、安全のためにもゆっくり向かっても良いのだけど、やはり何だか気が逸って急いでしまったのだ。


 家に着くと、家の周りにはナーリアの姉妹たちが集まっていた。

 今はそれぞれの武器の点検をしているようだ。

 僕は大急ぎで馬を厩に連れて行き、馬の世話を済まそうとしていると、アンとメリーがやって来た。

 「馬の世話は私とメリーでちゃんとしておくから、アレクは行って」

 アンにそう促されて僕は家の中へ入った。


 家の中では、ナーリア、セカン、ディフィーの3人が、図書館にあった地図を写してきたのだろう、何枚かの紙を広げて、熱心に作戦を検討していた。

 「この地図が確かだとしたら、タインさんが言っていたエルフの部隊が潜むことになる森ってこの辺りよね。 だとしたら、私たちが陣を構える場所はこの辺りになるわね」

 「とすると、私たちができる攻撃は、弓の一斉射撃くらいしかないのだけど、その攻撃をかける場所は、この少し狭くなっている部分が都合がいいよ」

 「そうだとすると、私たちはここに陣取りして対処することになるけど、それだと近接戦闘に持ち込まれた時に、狭くて人間側の人数の利点を活かせない」

 「確かにそうね。 今回はこちら側の方が人数が多いのだから、それはダメね」


 とても真剣だからだろう、3人は僕が近づいたことに最初気がつかなかった。

 ディフィーが気がついた。

 「あっ、アレク、お帰り」

 「アレク、良いところに来たわ。 一つ曖昧なままにしてきちゃった問題があったのよ。 アレクたち人間の指揮権は私にあるの、それともアルフさんになるの?」


 「あ、その問題なんだけど、アルフさんからお願いの形で要請を受けてきた。

  遠距離で弓の攻撃をしているところまでは、ナーリアの指揮に従って構わないそうだけど、近接戦闘の場面になったら、アルフさんの指揮に入って欲しいってことなんだ。

  近接戦闘の場面になったら、ラミアは後方に下がるようにという最初からの命令があって、その時に僕たち人間は下がらずに、そのままアルフさんの指揮下に変わるということらしい。

  人間の兵の中にも騎兵は少ないからね、だからなんだろう」

 「私たちナーリアは、指揮官のナーリアを除けば、人間の騎兵と遜色なく動ける。 人間の男だけがそのまま下がらないことにする必要はない」

 「セカン、ま、確かにそうなんだけど、ナーリアが他のラミアと離れてしまうと、もしゴブがそこまで達したら、危ないだろ。 エーレアたちはなんとかやれるかもしれないけど、他は防具もないしまだゴブと互角にも戦えないんじゃないかな。

  それを考えると、ナーリアだけ置いて、他は僕たちと一緒に行くというのはなしだよ」


 そうなのだ、ターリア・ワーリア・ヤーレアたちは、近接戦闘の能力がまだ低いだけでなく、防具などの装備の準備も間に合っていないのだ。 セカンはちょっと悔しそうだが、僕の言い分を認めたみたいだ。


 「他には何かアルフさん、言ってた?」

 ナーリアが重ねて聞いてきた。


 「うん、戦場の選定とか、近接戦闘までの作戦とかは、セカンとディフィーに任せるって。

  アルフさん自身は、急に続々と集まる兵を、なんとか纏めて戦いの場に連れて行くので手一杯だから、そこは任せるということだよ」

 「確かに、いつも一緒ではない兵を急に500名もほんの2-3日でまとめるのは大変な作業になると思うわ。 それ以上手が回らないのは仕方ないわ」

 ディフィーが同情を込めた声音でそう言うと、ナーリアとセカンも肯いている。


 「やはり数えさせてみたが、矢の数が全然足りてない」

 サーブが中に入ってくるなり、そう言った。

 サーブとレンスが外で他の姉妹たちと何かをしていたのは見たが、矢の数を確認していたのか。


 「やっぱりね。 それじゃあ、明日は朝からサーブとレンスは彼女たちを指揮して出来る限り矢を作ってよ。

  私とナーリアとセカンは戦場を下見に行ってくるわ。

  アレクはどうする? ここに残って何か作業する? それとも戦場の下見に付き合う?」

 「うーん、今回は僕がいなければならない作業はなさそうだから、僕も下見に付き合うんで良いかな?」

 「もちろん良いわよ」とナーリアが答えた。


 「でも、ちょっと気になったのだけど、矢を量産するということだけど、そんなに矢羽が確保できているの?」

 「あれ、アレクは知らなかったの。

  クロスボウは命中率が問題になるような使い方はしないから、矢に矢羽は付けないことにした。 実験によると飛距離が少し落ちてしまうが、大した問題ではないことが分かったから。 それにクロスボウだとすぐに羽根が傷んでしまうから、その方が実用的だと判断した。

  今回、10中8・9はゴブが来る街道筋にクロスボウ隊を配置したのは、それも理由の一つ。 今、矢羽がとても不足していて、普通の矢は量産できない」

 セカンがついでのように色々説明してくれた。


 翌日僕たちは戦場になるだろう場所の下見に行った。

 馬を酷使することになってしまうのだけど、馬を用いることによって、僕たちの1日の行動半径はずっと伸びた。 戦場とする場所までも、少し無理をすればなんとか日帰りできるのだ。

 今回の場所は街道筋だから、ナーリアの二輪馬車でも、問題なく付いて来れるからでもあるのだけどね。


 僕たちはハーピーの情報で、もうすでに地図の細かい違いも知っていて、訂正してあるのだが、それでも実際に自分の目で場所を見ることはとても有益だった。

 セカンとディフィーはクロスボウによる戦いの方法を色々考えているようだし、ナーリアはナーリアで周りをチェックしている。

 僕もまあ、目的があって視察にきた訳だが、今はまあ、3人に付き合っている格好だ。


 「えーと、この道が狭くなっている所で、矢で攻撃して、今いるこの道の両側が開けた場所で騎士たちによる近接戦に持ち込むということを考えているのかな?」

 「うん、基本的にはそういうこと。

  少し工夫を凝らすけど、その流れで間違いない」

 「なるべく長く狭い所で矢を射掛けたいよね」

 「そして、狭いところから出てきたこの場で、近接戦にしたい。

  そうすれば一方向から出て来るゴブを攻めるだけで、効率が良い」


 僕は少し考えて、その言葉に反論した。

 「確かに、その方が有利に戦えるのは確かだと思うのだけど、それだと反転して、別方向に逃げられる可能性があるんじゃないかな。

  反転されて、次は森の方に逃げられたら、二度手間になるし、この街道側で戦うより不利になってしまう。

  それにこれは僕の考えなんだけど、アルフさんはゴブを数で上回っているから、完全な包囲殲滅をしようと思っているのではないかと思うんだ。 騎馬である僕たち人間を、接近戦になった時には自分の指揮下に置こうと考えているのは、その時に騎馬の機動力を活かして、背後に回り込ませるためじゃないかと」


 セカン、ディフィー、ナーリアは3人で議論を始めた。

 かなり真剣に長く話していたが、僕はじっと待っていた。

 とうとうディフィーが言った。

 「うーん、確かにアレクの言う通りで、アルフさんの考えの方が今回は正しいかもしれないわ。

  私たちは味方の犠牲が1番出ない方法を考えることに集中してしまっていて、狭い範囲でしか作戦を考えていなかったと思う。

  ゴブの殲滅という第一目標の達成を考えるなら、その戦法の方が確かだと思う」

 「うん、その戦法を前提に、もう一度作戦を練り直す」と、セカン。


 「アルフさんが近接戦になったら、ラミアは下がってくれと言ってきたのは、リスクを甘受しても殲滅戦をするからということだったのね。

  ラミアは数が少ないから、犠牲が出ると種族としての存亡に関わるとアルフさんは解っているから」

 ナーリアがそう言って、ラミアを後ろに下げる意味を慮ってくれた。

 うん、確かにそれもあるよね。


 僕たちはその日のうちに家に戻ったのだが、家に着いたのはもう暗くなってからだった。 ちょっとアンとメリーが心配していたみたいだが、イクス様が

 「あの4人は十分強いし、馬で行ってるのだからゴブがいても簡単に逃げ切れるから大丈夫よ」

とアンに安心しているように言ってくれたらしい。

 ティッタはメリーの不安感に釣られてしまうのか、ちょっと周りの様子の違いに敏感に反応しているのか、ナーバスになっているようだ。 それに僕は気がついたのだけど、今はティッタのことをかまう余裕が全くない。 そのことが苦しいのだけど今はイクス様に任せておくしか方法がない。


 ナーリアはその晩は全員で作戦を考えた。

 アンもその話し合いに加わっているので、加わっていないのはイクス様とメリーとティッタの子供二人だけだ。

 アンが話し合いに加わっているのは、今回ナーリア世代より上のラミアが各係のラミア以外、子供のために出れないイクス様とラーリア様たちを除き、全て動員されてしまうので、食料の用意などの補給関係はアンたち人間の妻たちと若い子世代が中心でしなければならないからだ。

 各係のラミアたちはラミアの里を守る予備兵力として、一時的に現役復帰してもらう手筈になっている。


 僕たちはセカンとディフィーを中心にして、かなり夜遅くまで話を続けた。 確認すべきこと、話し合うことはまだまだ多かったが、戦いが迫っているので寝不足にならないようにと徹夜は避けただけという感じだ。


 タインさんに言われた5日後に向けての2日目もあっさり終わった。

 3日目は朝からラミアの里の全員が集められ、今回の戦いについての作戦が、細かくセカンとディフィーから伝えられた。

 今回の戦いでの1番の問題は、ラミア全体を指揮する指揮官がいないことだ。

 当初僕たちが想定していた戦いが起こる時期よりも、戦いが早まったので、まだラーリア様たちは戦いに出れない。

 指揮を取るのが当然のミーリア様は、王国の本陣に行かねばならない。


 ちなみに王国の本陣に行くための馬車は、ミーリア様は個人の自分の馬車で行くが、他のミーリア様たちは御者が出来ないので、仕方なくミーレナさんとアリファ様が御者を勤めて王国本陣に行くことになった。

 他に御者が出来るラミアはアレア様とロア様を含め、ミーレアは出来るのだが、戦力を引き抜くことになるので、避けることになったのだ。

 セカンとディフィーは、ミーレナさんとアリファ様を戦力から外すのは、より大きな戦力ダウンではないかと悩んだが、グループとしての戦力を優先した。

 ミーレナさんが御者をすることになるのが、子供がいるので本当は問題なのだが、どうにも人材が足りなかった。

 ゼルカーナはラーリナ様がサイプルと一緒に、僕らの家に来ていることになった。 イクス様もいるし、メリーもいる。 それに良く来ているから慣れているからね。


 ナーリアは街道筋の方に姉妹グループを連れて出てしまうので、ラミアの森の方の指揮は、今までの経験で1番森の中での指揮に適しているとアレア様が執ることになった。 ロア様が副官になった。

 森の方の部隊の行動は、警戒と、もしもの時の時間稼ぎで、もしゴブが迫っても極力近接戦闘は避ける方針だ。

 上空からハーピーが常に見張っているので、奇襲を受ける可能性はほとんど無いし、少し時間を稼げはすぐに街道に陣を張っていた人間の兵が駆けつけることになっている。 その人間の兵が駆けつけるための時間を稼ぐのが、もしもの時に一番の仕事となる訳だ。

 あと問題になったのが食料の補給だ。 今回の戦いは、状況によっては一日では終わらない。 いや数日掛かると思うのが普通のことだろう。

 その間の食事をどうするかが問題となる。

 食料を届けるのに、馬車が一台しか使えないのが痛い。 アン以外に馬車を使える人材が全く残っていないのだ。 荷車、一輪の手押し車で、若い子たちに頑張ってもらうしかない。


 4日目、町からやって来たタインさんたちと共にミーリアが王国の本陣に向かった。

 ナーリアとその姉妹グループ、及び人間の男たちも出発する。 こちらは予定する戦場に少し細工を先にするためだ。

 またこの日から本格的ハーピーが盛んに行き交って、情報の伝達をし始めた。


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