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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
間の日々

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292/362

292. 領主館での詳細と

 タインさんが町に向かうのに少し遅れて僕たちも町に向かった。

 僕とデイヴとキースの人間3人は騎馬、ミーリア様とナーリアは二輪の馬車、そしてセカンとディフィーは一輪の馬車で町に向かった。

 整備された道を走るので、ミーリア様とナーリアも騎馬の人間3人とほとんど変わらない速度で走ることが出来たので、バーバラさんもいるので普通の馬車に乗るタインさんたちに、町に着く前に追いついてしまった。

 僕たちはタインさんと一緒に領主の館に入った。


 僕たちはすぐにいつもの離れに一度案内された後、領主様の部屋に呼ばれた。

 乗って来た馬や、馬車などは顔見知りになっている館の騎士が、責任を持ってきちんと世話したり仕舞ったりの手配をしてくれた。

 ラミアの乗って来た馬車を珍しがって、話がしたそうだったのだが、急いでいたので、とてもそんな話をしている暇はなかった。


 領主様の部屋に僕らが入った時は、まだタインさんが戻って来た挨拶が終わったかどうかというタイミングだった。

 ハーピーたちも既に最初からこの部屋に招き入れられていたようだ。

 驚いたのは部屋の中にアルフさんも居たことだ。 ウスベニメたちが連絡に行ったタイミングでタインさんが戻って来たことを知ったのだとしたら、まだ、ここに向っている途中でもおかしくないのに。 つまり、先に連絡が行っていて、もうこっちに先に来ていたということだな。

 奥方様も最初部屋に居たが、タインさんが戻って来た挨拶が終わると、すぐにバーバラさんを連れて部屋から立ち去ってしまった。


 奥方様とバーバラさんが立ち去った後、最初にタインさんはラミアの里で話された内容を繰り返して、領主様、アルフさん、カーライルさん、ストームさん、そしてアルフさんと共にいるブマーに大枠を伝えた。

 部屋の中に少しほっとした雰囲気が漂った。


 「それで我々が要求された兵はそれほど多くはありません。

  基本は、この地方の入り口となる、滅ぼされた町の辺りに500程の兵を配置すれば良いこととなりました」


 タインさんがそういうと、カーライルさんが、

 「その程度の兵力で良いのか。 それならば現状で無理なく配置する事はできるが」

と言い、ストームさんが

 「どういった意味での兵の配置という事なのでしょうか?」

と、タインさんに問いを発した。


 「ゴブが最終的に攻められての逃走方向として、この地方を目指すのではないかという予想です。

  その時に逃げられないで完全に殲滅するための配置という事です」


 「なるほど、そういう事か。 確かにゴブはこの地方の入り口に当たる場所の町を滅ぼし、この地方偵察部隊を送り込んできていると見て良いだろう。 その可能性は大きいかもしれないな」

 領主様が少し深刻そうな顔をして言った。


 「しかし、王国の作戦担当はこの地方を目指して逃げるゴブの総数は多くても200を超える程度だろうとのことです。

  それ以上の数となれば、行動が遅くなり、逆にそこに辿り着く前に殲滅できるだろうとのことです」


 タインさんの説明を聞いて、セカンとディフィーが小声でものすごい勢いで話し合っている。

 僕は二人に尋ねた

「どう思う。 王国の作戦担当の言う事は当てになりそうか?」


 セカンが答えた。

 「1万の兵でゴブを狩り出すという作戦が本当なら、図書館で見た地図の資料から考えると、確かにそんな風になってもおかしくはないと思う。 ただ」

 そこまで僕に言うとセカンは全体に対して言った。

 「でもこの地方にゴブが侵入してくるルートは2つ考えられます。 街道筋を来るならそれで良いのですが、森側を通って大鳥のいる草原、ラミアの森へと続くルートも考えられます」


 「うん、僕もそう思って心配だったから、質問をしたんだ。 するとそのルートの起点となる森にはエルフの部隊を配置するから、それを突破して向かう事はまず考えられないという事なんだ。

  現実的に考えて、そっちのルートをゴブが取るのは可能性が低いと思う」


 エルフの部隊というのがどれ程の戦闘力を持つのか分からないので、安心できる状況なのか判断のしようがない。 でも、王国の作戦担当はそれで十分だと判断しているらしい事は分かる。

 なんとも言えなくて、セカンは黙った。


 「それと王国から求められた事はまだ後2つほど有ります。

  1つは、王国の本陣にこの地方の代表を入れるという事。 これはそれぞれの地方との連絡役と、王国全体が関わっているのだという象徴的な意味が強いことで、実質は観戦するだけのことです。

  人間と異なる種族も参戦しますので、その代表も集めることになっているので、ミーリア様、エルシム様にはそちらに来ていただけないでしょうか。 この地方を代表する人間としては私が今のまま勤めたく思います」


 うん、これは当然の配慮と言えるのかもしれない。 連絡役の意味はもちろんあるのだろうが、観戦するだけと言えば大したことではないが、実質的にはゴブとの戦いの時に、各地方がおかしな動きを見せないようにという人質でもあるのだろう。

 そのことについては、言葉にしないが誰もが気づいているというか、暗黙の了解という感じで話が進んでいく。


 「それは王国としては当然の配慮であるな。 心得た、ハーピーは私がそれに応じよう」


 「私も、同様に私がそれに応じます。 まだラーリア様たちは子供から離れることが出来ませんから。

  それで、そこには何名ほどで向かえばよろしいのでしょうか。 私だけで用が足りるのでしょうか」

 「さすがにお一人でということではなく、5名から10名ほどとのことです」


 ミーリア様は当然ミーリアでそこに向かおうと考えたみたいだが、エルシム様はちょっと頭の中で考えているようだ。


 「それからこれはエルシム様への質問なのですが、ハーピーは今回の戦いに何名ほど兵として出せますでしょうか?」


 エルシム様はタインさんのその言葉に、ちょっと困ったような恥ずかしげな調子で答えた。

 「本当に申し訳ないと思うのだが、ハーピーは今現在30名ほどを出すのが限界なのだ。 全く申し訳ない」


 エルシム様がハーピーの苦境を率直に口にした。 ハーピーはそこまで数が減ってしまっているのか。 ハーピーの総数はラミアとそう変わらないがちょっと少ない程度と知っていたが、戦える者となるとそうも少ないのかと僕は思った。


 「はい、了解しました。

  申し訳ありませんが、ハーピーの方々は戦える人数全てを出していただけないでしょうか。 いえ、直接戦闘をお願いはしませんので、危険はないと思います」

 タインさんが随分と踏み込んだことを言い始めた。


 「みなさんもきっと知識として知っておられると思いますが、ゴブを完全に駆逐できないのは、ゴブの棲処が天然の洞穴と、ゴブ自身で掘ったらしいトンネルとで、地中の迷宮となっているからです。 正直なところ王国でも、そのゴブの棲処の穴がどうなっているか全く分からず、出入り口の数さえ不明です。

  今回は判明してい穴の出入り口全てから、煙を流し込みゴブを穴から引きずり出して、殲滅することになっています。

  でも、知られていない出入り口の方が数が多いと思われ、実際はその作戦を行った場合、どこからゴブが出没するか見当がつかない訳です。

  そこで出来るだけ多人数で、ゴブの棲処の辺りを囲むということが今回の基本になったのですが、ゴブが知られていない出入り口から出て来たのを、いかに素早く探知するかが、今回の作戦の最も重要な点になります。

  そこで、王国からハーピーの上空からの偵察を要請されました。 いえ、もっと正確に言えば、ハーピーの協力が得られることを前提として今回の作戦が立てられました」


 「なるほど、そういうことならハーピーは協力は惜しまない。

  ただ、それでは本部の方に行くのは5名ほどで、私以外は戦闘に適さない者でも良いだろうか」


 「ありがとうございます。

  本部の方に向かうのは、それで構わないと思います」


 「それで、作戦の開始はいつになるのでしょうか?」

 ミーリア様が最も重要なことを聞いた。


 タインさんが、困ったような、緊迫したような顔で答えた。

 「はい、ゴブがもう棲処から出没し始めたとの報が入り、もう時間の猶予がないということで、5日後からと決まりました」


 部屋に居た者はみんな目を見開いた。

 ちょっとした沈黙を破って領主様が声を出した。

 「さすがに5日後では、何もしている暇もないな。 兵を集めるだけで手一杯だな。

  カーライル、ストーム、大丈夫か?」


 「5日ということでは、砦とこの近辺の兵を取りまとめるのがやっとでしょう。 まあ、500という数なので、なんとか間に合うかと」


 「よし、それでは二人は兵を集め、まとめる作業を行え。 集まった兵の指揮は、砦の兵が中核部隊となるであろうから、アルフレッドが執れ」

 領主様の命令に、カーライルさん、ストームさん、アルフさんが次々と応えた。


 ミーリア様が少し焦った調子で言った。

 「セカン、ディフィー、ラミアはどうすれば良いかしら?」


 セカンとディフィーは猛烈な勢いで二人で意見を交わしていたが、まずディフィーが答えた。

 「王国の作戦担当によるとラミアの森側にゴブが侵入してくる事はないとのことでしたが、やはりその可能性は否定しきれないと思います。 ですからラミアはその可能性を考えて、ラミアの森の入り口付近に監視を主にした布陣をしなければならないと思います。

  少しの間、戦線を支えれば、人間の兵の助力も得られると思いますから、今からではそれがベストかと」


 セカンが付け加えた。

 「ただ、その場合確率的には高い街道筋の方に予定通りゴブが来たとすると、今回の戦いに、ラミアはなんの貢献もなく終わってしまいます。

  こういう考え方はラミアらしくないのかもしれませんが、同盟の今後を考えると、それは望ましくないのではないかと思うので、一部街道筋の方に回る必要があると思います」


 「分かったわ。 それでは街道筋にはナーリアが中心となって、向かいなさい。

  あなたたち以外、誰が向かうのが良いかしら?」


 今度はセカンとディフィーにナーリアも加わって、3人で意見が交わされ、ナーリアが答えた。

 「私たちの姉妹たちで街道筋に向かいます」


 「それで良いの。 はっきり言うけど、あなたたちを除けば、あなたたちの姉妹はまだ戦闘力はそんなに高くないわ。 それに防具も完成していない」


 「ミーリアは王国の本陣に向かうと思いますし、ラミアの森を守る戦力を弱めたくありません。 それに、姉妹たちの主な武装はクロスボウですが、クロスボウは森の中ではあまり役に立ちませんが、街道筋ならその威力を発揮できます。 それに人間の兵が500も居るなら、近接戦に姉妹たちが巻き込まれる可能性は低いかと考えます」


 「分かったわ。 それではその方向で戻ったらラミア全体に命令しましょう」


 僕は、結局若い子たちのクロスボウは実戦に間に合わなかったなぁ、なんて考えていた。 そして、それは良かったという安堵の気持ちも伴っていることに気がついた。


 「とすると、またナーリアさんたちと一緒することになるね」

 アルフさんがそうナーリアに声を掛けた。


 「はい、そうなります。 また、よろしくお願いします」


 「うん、こちらこそよろしく。

  でもナーリアさん、今回の街道筋の全体の指揮官はナーリアさんに頼む訳にいかなくて、僕になっちゃうんだ」


 「はい、それは当然だと私も思いますから、気にしないでください」

 ま、それはそうだよね、500名を率いているし、次期領主でもあるアルフさんが指揮をとる方が当然だ。


 領主様が場を閉めた。

 「さて、ここまでとしよう。

  ミーリア殿、ラミアのみなさんは明日の朝、ラミアの里に戻るのが良いだろう。

  少し後で夕食を共にしていただけると嬉しい。 その後の話も聞きたいしな。 エルシム殿も泊まっていかれるか?」


 「いや、我々は最近は日が長くなってきたから、まだ戻ることが出来る。

  戦いに向かう人選などもしなければならないので、お暇しよう」


 「残念な気もするが、仕方ないかな。

  とりあえずこれでこの場は解散とするが、デイヴィド、キース、アレク、お前たちは少しここに残れ」

 そう言って、領主様はエルシム様と立ち話を始めてしまった。


 エルシム様がまだ立ち話をしているので、ハーピーの3人組も即座に帰る訳には行かず待っている。 僕とデイヴとキースは、彼らと少しおしゃべりを始めた。

 ミーリア様は、頭を下げると扉に向かって出て行った。 きっと食事前に少し身綺麗にしたいとでも思ったのだろう。

 ナーリアたちもミーリア様に倣って、一緒に部屋を出て行った。


 ナーリアたちが出て行っても、しばらく領主様はエルシム様と話していたが、十分ナーリアたちが遠ざかったと思われたのか、

 「さて、もうラミアでも聞こえないだろう。

  ちょっとラミアたちに聞かれたくない話をしよう」

 領主様はとても沈痛な顔をして話を始められた。


 僕たちが遅れて離れの部屋に行くと、早速ナーリアが僕たちがなんで残されたのかを聞いてきた。

 「いや、明日、騎士たちが戦いに向けての決起集会というのをするらしいんだ。

  それで僕たちは形の上だけだけど、みんな騎士ということになっているだろ。 それでその集会に参加することを要請されたという訳さ。 どうやら戦いに向けての決起集会だから、例外を認めることが難しかったらしいんだ」


 「え、何それ、形だけって話だったんでしょ」

とディフィーは不満を口にしたが、セカンは

 「まあ、この館や砦にいる騎士にしてみれば、特別扱いは気に入らないかもしれない。 闘いの前に、その感情を煽ることはないという判断だと思う」

と現実的な意見でなだめてくれた。


 「それでミーリア様、明日の朝は僕たちはここに残らなければならなくなりました。 それと、今ラミアの里にいる奴らも、ハーピーが連絡して明日早くにこっちに向かうことになっていると思います」


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