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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
間の日々

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290. 卵

 春はだいぶ深まって、もう森の動物も随分と活発に活動を始めた。

 ラミアもとうとう最後の子供ラミアたちを起こすことになった。 やっと春一番に採取できる秋に植えた豆が採取できるまでに育ったのだ。

 今までのラミアたちなら、この時期に一斉に起こされることになっていたのだ。


 ラミアの元の習慣だと、5日働いたら1日の休みが与えられるのだが、最近はそれが非常事態ということで、6日働いて1日休む形に改められてしまった。

 休みが減ってしまって文句が出るかというとそんなことはなく、今はみんなその休みさえ惜しんで色々なことをしようとしている。


 「できるだけの対処をしておきたいと焦る気持ちは解るけど、休む時は休まないと体が、いえそれ以上に心が保たないわよ。

  休みはきちんと取るようにして、せめてその日は何か楽しめることをするようにしなさい」

 イクス様のそんな鶴の一声で、休みはきちんと取ることになったのだが、ラミアたちは楽しむことをするというのが苦手になってしまったみたいだ。


 翌日に休日を控えた夕方、ナーリアがレンスとセカンを悪だくみに誘っていた。

 「ねえ、そろそろ森の鳥が卵を産んでもおかしくない時期だよ。

  卵があるかないか、夜、見に行かない?」


 「行かない。 まだ時期が早過ぎる。 見に行ってもほとんど見つけられない」

 レンスはあっさりとそう言ったのだが、セカンは別のことを言った。

 「この春は卵を取るべきじゃない。

  矢を作るのに鳥を乱獲したから、この春は増えるように我慢するべき」


 うん、そうなんだよね。 矢羽にするためにゴブとの戦いの前に鳥を乱獲したのだった。

 今現在も矢を作るのに羽根がなくて困っているが、鳥を獲るのは控えているのだ。

 卵好きなナーリアはシュンとしてしまったが、これはナーリアを庇ってやる訳にはいかない。


 僕たちの休日は寝坊することに決まっている。

 前にまだ寝ていたところをエーレアたちに起こされて、その時にナーリアがとても怒って機嫌が悪くなったので、流石にそれ以降は休みの日には朝早くにナーリアたちの姉妹は訪ねて来なくなった。

 ま、以前は休日の朝だけは簡単に出されるだけでなく、みんなで楽しんだりもしていたのだが、メリーが一緒になってからはそうもいかず、イクス様とティッタもいる今は全く無理だ。

 そんな訳で単純にいつもより朝寝を楽しむだけなのだが、それも最近はティッタが起きておっぱいを飲み、そのままではもう一度は寝ないで、メリーがティッタと少しの時間遊んであげるのが習慣になってしまった。

 そうなると、流石に僕らも眠ってはいられなくて、結局起きることになり、最近は休日の朝寝はほとんど出来なくなってしまった。


 「アレク、朝から悪いんだけど、助けてくれ」

 いつもとそんなに変わらない時間に朝食をみんなで取っていたら、珍しいことにバンジが家の中に駆け込んで来た。


 「おっ、バンジ、何だなんだ、何かあったのか?」

 「バンジ、落ち着いて、とりあえずお茶でも飲む?」

 僕とナーリアが声を掛けた。


 「ナーリア、ありがとう。 でもそんな余裕はないんだ。

  みんな、悪いけど、アレクを借りていくよ。

  アレク、悪いが俺と一緒にすぐに来てくれ」


 「ちょ、ちょっと、バンジ、ちょっと待ってくれ。 俺、まだ食べてる途中」

 「飯は俺のところにもミーレナさんが作ってくれてるのがあるから大丈夫だ」

 「大丈夫だって、おい、ちょっと・・・」


 僕は否応なく、バンジに腕を引っ張られて無理矢理連れ出されてしまった。

 バンジに腕を引っ張られて、僕は走らされた。 どこに行くのかと思ったらバンジの家だった。

 バンジの家に行って驚いた。 上位ラミアが僕らを除いて全員集合している。


 「バンジ、なんでナーリア以外の上位ラミアが全員集合しているんだ。

  もしかしてナーリアだけ連絡から外されていたのか?」


 「いや、違う。 朝になったら、みんな集まって来て、収拾がつかないんだ。

  お前、なんとかしてくれ」


 何の騒ぎかと思ったのだが、なんのことはない、みんなこの休みを家を建てることに使いたいと、その協力を求めてバンジのところに集まったのだ。

 それでも、流石に全員分9軒もの家を一度に建てられる訳が無いことは、誰もが分かっていたから、どのグループの分から立て始めるかで揉めていたのだという。

 で、まあ、ラーリア様たちもミーリア様も当事者の一人でもある訳で、強権発動という訳にはいかず、どうにも収拾がつかなくなって騒ぎが治らなくて困って、立場が少し離れている僕が呼ばれたらしい。


 「ここはやはり、ラーリア様、ミーリア様が共に使うボブの家から建てることが順番からいって当然でしょう」

 ロア様が主張した。


 「いや、ロア、ラーリア様とミーリアは昼間はアレクの家に今は入り浸っている。 だからそんなに家の必要が切迫している訳でもないし、恵まれてもいると思う。 それに比べて、我らはエリーゼもいるし、家の必要度は高い」

 ミーリオ様が反論した。


 「それなら私たちも一緒です。 私たちにもマリアンヌがいます」

 ミーレン様が負けてない。


 「もうすぐ、人間の妻はみんなここに来るのでしょ。 条件はみんなおなじよ」

 ミーリベ様が即座にその意見を潰しにかかった。


 ラーリア様たちやミーリア様はその論争を渋い顔をして見ていたようだが、僕が来て状況を把握したのを確認すると言った、

 「これではいくら論争しても結論は出ないように思う。

  私やミーリアは一方の当事者であるから、私たちが決めたのでは納得がいかないと思う。

  そこで、アレクはこの問題の当事者ではないから、アレクにこの件は決めてもらうことにしたい。

  みんな、それで良いな?」


 集まっていた上位ラミアは、確かにこのままでは埒が明かないと思ったのか、渋々という感じで同意したみたいだけど、え〜っ、ラーリア様、僕に丸投げですか。

 バンジもやれやれという顔をしている。


 僕は仕方なしに言った、

 「これはもう何かの理屈で選ぶというのは難しいと思うので、公平にくじ引きにしましょう。

  誰かくじを作ってくれませんか」


 ラーリド様がくじを作ってくれて、それぞれのグループの代表者が選ばれた。

 僕が面白いと思ったのは、ボブのところは、ラーリア様とミーリア様がその代表にならないのはなんとなく解るが、論陣を張っていたロア様ではなくアレア様が代表だった。

 なんとなくロア様が悪い番号を引いた時のことを考えて、アレア様に押し付けたような気がする。 案の定、アレア様は6番目という微妙な数を引き当てた。

 そして1番を引き当てたのはミーレト様で、思いっきりガッツポーズをしていた。

 ギュートの家が1番最初か、厩の近くに建てるのかな、と僕は思った。


 そんな風にくじ引きで盛り上がっている時に、バンジとハキとダイクそしてケンは何やらヒソヒソと相談していた。

 後で何を話していたのか聞いたら、瓦を焼くことを相談していたとのことだ。

 竹屋根は厩や倉庫程度なら良いけど、流石に住むにはということらしい。

 屋根材としては他に石の板や、藁などの草葺きもあるが石の板は重くなってしまって骨組みが大変になるし、藁などは今使える材料がない。

 ということで、屋根材として瓦が欲しいという話なのだ。

 バンジはハキが前に良い粘土が森の中にあったという話を覚えていたらしい。



 とりあえずバンジの家の前での騒動が収まって家に戻ったら、もう昼近くだった。

 家に戻ると、ウスベニメとモエギシュウメが来ていた。

 何だか知らないが、ナーリアの機嫌がすごく良い。


 僕は何があったんだろうかと近くにいたディフィーに聞いてみた。

 「何だかナーリアがすごい上機嫌なんだけど、どうしたの?」


 「ああ、あれはね、ハーピーの二人が卵を持って来たのよ」

 ふーん、卵が手に入って、それでナーリアはあんなに機嫌が良いのか。 僕は納得した。


 「ウスベニメ、卵取って来たんだ。 羽根も手に入れた?」

 ウスベニメが一瞬言葉に詰まった感じで、次はちょっと赤くなって横を向いた。


 「アレク、ハーピーが卵を持って来るとしたら、ハーピーの卵に決まっているじゃない」

 モエギシュウメが代わって答えてくれた。


 僕は、へっと思ったが、そう言えば確かにハーピーが妊娠するのは春と秋の2回の時期のみと聞いた。 えーと、つまり誰かが産んだ無精卵ということか、と頭の中で筋道を追っていると、

 「私が昨日、ウスベニメが今朝、無精卵を産んだから持って来たの」


 「モエギシュウメ、そこまであからさまに言わなくてもいいでしょ」

 ウスベニメがモエギシュウメに抗議した。


 なんとなく僕は複雑な気分がして、ハーピーの二人に聞いてみた。

 「自分が産んだ卵をナーリアたちに食べさせちゃって良いの?」


 「えっ、アレク、流石に自分で産んだ卵を他のハーピーに食べさせるのはちょっと嫌じゃん。

  だけどラミアはそういう種族だから、捨ててしまうんだったら、ナーリアたちにあげた方が良いと思ったのよね」


 「えーと、ハーピー同士だと嫌だけど、ラミアなら構わないってことなのかな」


 「自分が出したモノを自分が食べるというのは嫌じゃない。

  その延長で、他のハーピーに食べさせるのはなんとなく嫌なのよね。

  だから、別種属だし、有効利用だから」

 モエギシュウメはあっさりと会話してくるけど、ウスベニメは何も言わないが、反論しないので、同じように思っているのだろう。


 「アレクが何を考えているのか、私には全く分からない。

  アレクはいつも私たちに精をくれるのだけど、それと同じことをハーピーの二人がしている訳で、何が問題なのか分からない。

  もしアレクが、私たちがアレクの以外の精や卵を食すことが許せないとしたら、まあ、他の人間の精をは許せない気持ちは分かるし、いらないけど、鳥の卵や魚の卵と白子もダメということになる。

  それにアレク自身もそういうのを食べている」

 セカンが冷静なツッコミを入れてきた。

 ああそうか、確かに言われてみれば、そういうモノだなと納得した?


 「でも同属に食べさせるのはって、そう考えると、アンは凄いね。

  アンは自分と同じ人間のアレクの精を飲んでいる」


 「レンス、そんなことを言わないで。 そんな風に考えたことないよ。

  アレクの精だよ、飲まないなんて選択肢はないでしょ」


 「分かるぞ、アン。 私もそう思う」

 サーブはそうアンに同意したがナーリアは別のことを言った。

 「だからアン、口に受けたら、私に口移ししてくれたら良いのよ」


 「ナーリア、それ最初に失敗して、もうやめようって言ったじゃん。

  それに私、もうアレクの精飲むの好きになっちゃったから、絶対に嫌よ!」


 なんとなく、アンの言葉の勢いに気圧されたナーリアたちを代表する感じで、セカンが言った。

 「うん、分かっている。 その提案はもう完全に諦めている」


 「でもさ、そもそも同属が出したモノを食べるのが嫌っていうのは、そもそも考えれば変じゃない。 みんな母親のおっぱい飲んでいるのだから」


 「あ、確かにそう言われてみればそうね」

 アンの言葉に、この話題になってから黙っていたウスベニメが感心したように言った。


 僕はこのウスベニメの言葉で、疑問に思っていた(?)ことが一つ解決してしまった。

 うん、ハーピーも生まれた子供を最初はおっぱいで育てるのだな、と。

 ほら、だって、確かにウスベニメにもモエギシュウメにも胸はあるけど、羽毛でよく分からないし、鳩胸って感じでエレオンたちだって胸囲はあるしさ。

 それに卵は結構大きいから、鳥よりの感じなのかな、とも思っていたのさ。

 うん、みんな哺乳類だね。


 「それにさあ、ナーリアは私に感謝すべきだと思うのよ。

  私がウスベニメとモエギシュウメに、ナーリアは卵が好きだから、産んだらというか、排卵したら持って来てって言ったんだから」


 「えっ、アンがそれを勧めてくれたの」と、ナーリア。


 「そうよ。 温泉で、二人に卵が出来ていたのは分かっていたから、そろそろその時期だと思ったから」


 「あなた良くそんなこと気がついたわね」と、ディフィー。


 「そりゃ、あの大きさの卵がお腹にあったら体型に出るから判るわよ」


 「あ、もしかしたら、ラミアって、定期的に排卵するってことないんじゃない。

  前に何だかラミアは自分の意思で卵を作るかどうか決められるっていうような話を聞いた気がするわ」

 モエギシュウメがそう言った。


 「そう言われてみれば、ラミアって生理ないよね。

  私、最初ちょっとその部分の話が全くできずに戸惑ったもの」


 「生理って、あれだろ。 アンが月に一度定期的に出血する人間特有の症状だよな」

 サーブが気の毒そうに言った。


 「サーブ、症状って別にあれは病気じゃないからね。

  ほら、やっぱりそうよ。 ラミアは定期的な排卵がないのよ。

  私、エリとマリが来て、1番嬉しいと思ったのは、この点よ。 ナーリアたちには理解できないことだから」

 最初の言葉以外はハーピーの二人に向かって、アンは言った。


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