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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
間の日々

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274. ハルオンの昔語り3

 さて、ここに居る者誰もがもう気づいているラミアのもう一つの問題について話そうか。

 ラミアはこの時点で、とても大きな問題を抱えていたのは理解できていると思う。 そうラミアは人間の男がいなければ数が増えないのだ。

 この時点ではハーピーは今と違ってラミアよりも余程数が多かったし、ハーピーはハーピー同士でも子供を作れるからな、ラミアに比べればとても恵まれていたと言えるだろう。


 ラミアがここの最初の家主、父祖様を人間の町に送ったのには、二つの意味があった。

 一つには父祖様が人間が他にいない環境に育つことには問題があると考えたというのは先ほども言ったな。

 もう一つ、ラミアは父祖様に妻となる人間の女とともに友として人間の男を、その者たちも妻がいればなお好都合、連れてきてもらうことを期待していたのだ。

 また、父祖様にラミアが2人付いて行ったのには、父祖様を心配してという意味の他に、出来れば人間の男を連れてきてもらいたいという気持ちもあった訳じゃ、ラミアを増やす為にな。


 当初ラミアは食糧不足が解消されさえすれば、大火以前の様に人間やハーピーと簡単に生活を共にできると考えていた様だ、以前と同じにな。

 ところが蓋を開けてみたら、町に行った途端に暴力を受けて、時の人間の領主に半ば秘密裏に送り返してもらう事態じゃ。

 その時の大人のラミアがどれほど途方にくれたかは、容易に想像できるだろう。

 何しろその時点では、大人のラミアが10人ほど、彼女らは今のイクス殿とラーリア殿位の年頃、それと子供が10歳を少し超えるくらいが10人と5歳が10人ほどじゃった。

 5歳の子というのは、大火の時に卵で生まれ、洞窟の奥に避難して生き延び、大火の後で孵化した子供たちじゃな。

 その30人がラミアの全てじゃった。

 そして残念なことに、怪我して戻ってきたラミアはその後ほどなく死んでしまったのじゃ。 今とは違って、その頃はまだまだ食料も不足していたしな。

 ただ、その時、その2人を助けようと、父祖様はその2人にまず精を与えたのじゃ、回復させることは出来なかったがな。


  つまりその時から、その時点では父祖様だけがラミアが種を絶やさないための希望となった訳じゃ。

 奴、おっと父祖様じゃな、あいつもそれは自覚しておったよ。

 「俺がラミアと子供を作らないとラミアが絶滅してしまう」と。


————————————————————————————————-


 「それで父祖様は大人のラミアと子供を作ったのですね」

 ミーリア様がそう言ったのだが、イクス様とラーリア様はちょっと難しい顔をした。


 ハルオン様は、その2人の難しい顔に同意をする様に視線を向けると、改めてミーリア様の方を向いて言った。

 「いや、そうはならなかった」


 その言葉に続いてイクス様が言った。

 「ミーリア、考えてみなさい。

  その時点で大人のラミアが卵を抱えたら、働き手の数が不足して、生活が成り立たないんじゃない。

  今の若い子たちと子供たちが10人づつで、これだけその当時より環境が整っていてもなかなか生活を成り立たせるのは大変だと思うわ。

  環境の整っていない当時としたら、無理じゃないかしら」


 ハルオン様はそれに肯きつつ、もう一つのことを言った。

 「ま、それが一番の理由ではあったのじゃが、他にも理由がある。

  父祖様はその大人ラミアに5年以上に渡り育てられたからな、大人ラミアにとっては自分たちの子供の様な存在であった。

  今と違い、大火以前はラミアが人間の子供を育てるのは普通のことだった。

  ラミアは同じ夫の人間の子を自分の子供と同じ様に育てていたし、逆に人間の妻もラミアの子を自分の子と分け隔てなく接していたりもしたのじゃ。

  子の方も人間の母、ラミアの母、両方、いや3人ともを同じ様に母としていているのが普通のことじゃったからな。

  それが普通の家族形態だった。

  つまり、大人のラミアにとっても、父祖様にとっても、互いを子を作る対象としては見にくかったのじゃ。

  それに、時の大人ラミアについて、私の口からは言いにくいのじゃが、今ここに居るイクス殿、ラーリア殿の2人と同じ年齢くらいだったはずなのじゃが、過酷な状況と苦労が彼女たちを蝕み、とてもここの2人と同じ年齢くらいとは思えないほどに、歳をとって見える姿であったのじゃ。

  ま、その中で一番若く見える2人が父祖様に同行して町に行き、戻って亡くなってしまう結果となってしまったのは、痛恨のことであった。

  大人のラミアたちは以上のことから、自らが父祖様の相手となって、子を持つということは無理だと判断したのじゃ。

  子を産んだら、体が持ちそうに無いという判断をしたというのもあるがな」


 聞いている者は皆、また暗く深刻な顔をして沈黙してしまった。


—————————————————————————————


 ま、そんな訳で、ラミアはその時に10歳を超えた程度の子供に期待するしかなかった。

 大人のラミアは、精の出るような歳になっていた父祖様に、成長のためのエネルギーが不足しない様にとその子たちに精を与えることを要請した。

 まぁあいつは、いや父祖様はそのことにも違和感を覚えるというか、最初は抵抗感があった様じゃがな。

 亡くなってしまった2人に精を与えた時は、助けたい一心で何かを感じている余裕も考えている余裕もなかったのじゃろうが、今度は妹のように接していた者たちに次々と与えるのは勝手が違ったのじゃろう。


 とはいえ、それからまたしばらくの間、ラミアたちはそのままの状態で、少しづつ生活環境を改善しながら、何年間か過ごしていった。

 ま、何というか、その時が父祖様も私も一番心穏やかに過ごした年月かも知れないな。

 森がやっと復活してきたし、食糧事情も毎年木が大きくなるに従って、どんどん好転していったからな。

 川に魚が戻ったのを見つけた時は、それは嬉しかったものじゃ。


 森に人間が入るのは領主殿が禁止したので、そこに問題はあるのじゃが、とりあえずラミアが身の危険を感じる様なこともなかった。

 この時はまだ人間との間も、完全に切れた訳ではなく、先の領主の側近、1人はそなたの祖父だったとのことだが、彼らが年に1・2度尋ねては来ていた。

 結果的には町を訪れたラミアを死なすことになったからか、領主殿は表立ってのことはできないが可能な限りラミアを援助するつもりでもあったのだろう。

 この時期にラミアが手に入れた物はかなり多い。

 ま、ラミアが一番欲した物がなんであったかは、みんな分かるであろう。

 そう、ナイフや剣などといった物じゃな。

 領主殿も秘密裏にそれらを集めることは、きっと苦労したであろう。

 何しろ当時はまだ木材が不足していたから、人間の町でも鍛冶がほとんど行われていなかったからな。


————————————————————————————————


 「あの、一つ質問しても良いですか?」


 「ああ、アレクだったな、もちろん構わないぞ」


 「はい、ハルオン様は父祖様と同い年だったと聞きました。

  だとしたら父祖様がラミアに精を求められた時、ハルオン様も求められたのでは無いかと思うのですが」


 ラミアたちと人間たちは僕の質問を尤もだと思った様だったが、ハーピーたちは「あ、なるほど、考えてみれば」という様な意表をつかれた様な顔をした。


 ウスベニメは「ハルオン様になんて事を訊ねるの」という感じで、顔を赤くしながら僕を睨んだ。


 ハルオン様はそんな周りの反応を、ちょっと面白がる様に軽く顔を崩して答えてくれた。

 「私がラミアに精を求められることはなかった。

  まず第一に、アレクは知らないみたいだが、ハーピーの男は人間ほど精を出せない。

  まあ、その点は生物として人間が特別なのであろう。

  繁殖力に長けているのが、人間の特徴だな。

  人間は数が多いから、それが普通に見えていて意識することがないのだが、珍しい特徴だと私は思うのだ。

  人間は一年中いつでも子を為すことができるが、ハーピーは春夏の二回しか繁殖期がなく、ハーピーの女に卵が出来るのも、ハーピーの男が精を出せるのもその時だけじゃ。

  それではほとんどラミアの役に立たないし、それにラミアとハーピーでは子は出来ん」


 えっ、そうなの、あれっ、温泉であいつら困っていたよね。

 僕が視線を向けるとハライトが答えた。

 「そろそろ春の繁殖期だから、勃っちゃったんだよ」


 「やっぱりハライトはそういう目で見てたのね」

 ハライトの言葉にウスベニメがそう言って真剣に怒った。


 「いや、あの時はちょっと特別な状況になったからで、男の反応としてそれは仕方ないことだったんだ。

  ウスベニメ、その時のハライトの反応を怒るのは、男としてちょっと可哀想だからやめてあげてくれよ」

 キースがそう言って、ハライトを庇った。


 「ウスベニメ、今はそんなことでハライトを怒る時じゃないでしょ」

 モエギシュウメもウスベニメを嗜めた。


 ハルオン様が笑いながら言った。

 「ウスベニメ、まあハライトを許してやりなさい。

  私にも若い頃には覚えがある」


 「あなたたち2人、特にウスベニメは変な意味じゃなく、もう少し男というモノを知る必要があるみたいね」

 シロシュウメ様までがそんなことを言った。


 僕は話を戻すためもあって、また質問した。

 「あの、今、ラミアとハーピーでは子供が出来ないと言われたのですが、それは本当ですか。

  確か人間とハーピーの間でも子供は出来ると思ったのですが」


 「おや、アレクは知らないのか。

  他種族と子供が出来るのは人間だけだ。

  女性型しか生まれないラミアはちょっと事情が特殊だが、他の種族も同族同士か人間との間でしか子は生まれない。

  まれにそれ以外の組み合わせで生活を共にすることもあるみたいだが、それでは子は生まれない」


 「そうなのですか。

  人間の間には、今は見ませんが、色々な種族との間に生まれた子供の話などが伝わっています。

  若者だけでなく、私も人間以外の異種族間では子が出来ないというのは初めて知りました」

 カーライルさんも知らなかったなら、僕が知らなくても当然だよね。


——————————————————————————————


 まあ、人間以外の異種族間では子が出来ないのは、そういう物だという理解しか出来ない。

 話を戻そう、ラミアが私に対して精を求めなかったことには、もう一つ理由がある。

 ハーピーもその当時、男の数が不足していたのじゃよ。

 ハーピーは少し前に触れたが食糧難の時代に同族間で激しい争いが起こってしまった。

 ハーピーは元々、男のみが戦いに出る風習があったから、青年から壮年にあたる男がとても数を減らしてしまったのじゃ。

 実のところ、ここの父祖様ほどではないが、私も複数の女性を抱えていて、とてもラミアに精を与える余裕もなかったのじゃよ。

 ウスベニメには幻滅されるかも知れないが、私も父祖様と同じ様に、種族を絶やさない為に、複数の女性の相手をすることが求められていたのじゃ。

 正直に言って、その様な状態は今もまだハーピーもラミアも抜け出していないがな。


 私と父祖様が20歳になった頃、やっと子供だったラミアが今のそなたたちよりは小さかったが、子を作れる様な年齢になった。

 その時私の方はもうすでに何人かの子を持っていたのじゃが、ラミアはとりあえず体が大きい5人に子を産ませることにした。

 ラミアもまた特殊じゃから、自らの意思でいつでも子を作ることができるのじゃが、育てる時の事を考えて春に生まれる様に調整された。

 それはラミアの伝統になった様じゃな。


 えっ、なんで春かと。

 それはその時期なら、生まれた後で穀物がすぐに取れるからな。

 もし栄養の問題で乳が不足しても、取れた穀物の外側を剥いて、内側だけを細かくすりつぶして水に溶いて与えれば、ラミアの子は育つからな。

 じゃからラミアの間では穀物を命の実と呼ぶ習わしがあるのであろう。


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