267. 馬を受け取る
一日に二話の更新をしてきたのですが、改訂版とはいえ、さすがにちょっと苦しくなってきました。
8月からは一日一話にします。
進みが半分の速度になりますが、よろしくお願いします。
アルフさんとブマーが帰ってからは、とりあえず僕たちの日常は普通に戻った。
ラーリア様たちとミーリアの上5人、それにイクス様も加わって、正式な同盟の調印に向けて忙しく動いていて、ハーピーの5人は結構そのために連絡で飛び回っているようだ。
ま、しかし僕らには直接関係はなく、僕らは担当した紙作りの為に、大急ぎでせっせと原料となる低木の枝を伐って、どんどん倉庫に積み上げている。
途中で倉庫に積み上げたのでは、倉庫が使えなくなり問題があるので、馬小屋の近くに、もう得意となった竹で倉庫にする小屋を建てたのだが、すぐに後からその原料の枝を使う時には、水を使う作業になり、その作業は温泉や洗濯場より下の位置の川に近い場所でないと都合が悪いのではと気が付いた。
この忙しいのに、と思いながら、小屋を一度壊して移築した。
そんなことをしている最中にも、レンスはボブを連れて鉄鉱石がある場所を見に行き、僕はハキを連れてアスファルトが取れる燃える水が出ている泉を案内した。
ボブもハキも、想像していた以上だと喜んでいた。
他の者は、基本的には道を昔通りの広い道に復旧させる作業に集中していたのだが、思ったよりもそれは進み方が遅くなってしまった。
埋まっているのを掘り出すだけの作業は簡単に進むのだが、壊れていて直さねばならない箇所はなかなか思ったように進まない。
直すためには新たに石を切り出してこなければならないのだが、まず第一に石を切り出す作業、その切り出した石を整形する作業に時間が掛かる。
そして今度はその石を運ぶのがまた大変だ。
馬がいるので、馬車に乗せて運ぶのだが、それだって一度にそんなに何個も運べる訳もない。
ということで、道作りに必要とされる人数が減ったので、ギュートとハキの強い要望で厩舎の拡張が一番にされることになった。
ギュートは早く20頭の馬を引き取りたいとの考えだが、ハキはその馬を使って早く人間の町との交易がしたいようだった。
ラミアたちは厩舎が終われば次は自分たちの家が作れると、バンジの指示に従って、木を伐ったり、竹を伐ったりの作業を積極的に進めていた。
厩舎を建てる作業は、以前にした時はラーリア様たちが手伝ってくれたのだが、今回は主にミーレアが手伝っている。
ミーレオ様を中心にして道の復旧を行うことになっていたから、何も厩舎作りをミーレアが手伝わなくても良いと思うのだが、ミーレアは馬の世話を一番積極的にしていたので、厩舎作りにも関わりたいとのことだった。
馬の世話はしているのだけど、アレア様、ロア様、アリファ様とは違って、まだ御者の仕方も覚えていないので、馬が増えたら、まず一番最初にミーレア全員が御者ができるようになることが目標だそうだ。
ギュートもそれを聞いていて、馬が来たら一番に教えることを約束していた。
今現在は僕らのところの馬車も含めて4台の馬車が、常に作業に使われていることもあり、御者の仕方を教えている余裕がないのだが、今度20頭の馬がやって来る中に、馬車も3台含まれているとのことで、今よりは馬車に余裕が出来るだろうから、御者の仕方を教えることにしたのだ。
それにぶっちゃけ、馬車の御者ができる人数が少な過ぎる。
僕たちは紙作りを担当したので別行動だし、友たちもそれぞれに仕事を別に抱えている者が多いし、アリファ様も物品係の仕事で動けないことが多い。
御者できる人数を増やさないと、今はギュート自身とロア様、アレア様が大忙しで、それを友たちの誰かが時々替わる感じで、無理があるのだ。
「アレク、お前たちの家の方でも2頭世話をしてくれ、アンとメリーも馬の世話は上手だからな、そのくらいは余裕だろう。
だからなんとか時間を作って厩舎をその分広げておいてくれ、早急に頼む」
「分かった。 まあ、2頭ならなんとかなるだろう」
「そういえば、ナーリアたちはみんな御者が出来たよな。
それに加えて馬車も1台も頼もうか」
「いや、ギュート、それは無理だ」
「別に2頭増えるのが4頭になったって、馬の世話は大丈夫だろ。
人手が足りなければエーレアたちに手伝わせれば大丈夫だろうし」
「そうじゃなくて、馬車の置き場を作れないんだよ。
家の周りは今でも、温泉作ったり、洗濯場ができたりしているし、紙作りの作業場もこれから作らなければならない。
家の周りが最初から比べるととても色々ごちゃごちゃしてきて、これ以上何か作ると色々問題が出そうなんだよ」
「うーん、確かにそれはそうか」
「やっぱり、ミーレアのみんなにすぐに御者が出来るようになってもらうのが最善だよ」
「うん、そうだな」
厩舎作りという予定外の作業が増えたが、厩舎を作るのは慣れてきているし、今回はエーレアたちの手もある。
それに何より、今回もまた材料調達の問題で竹を使うことにしたから、竹を使うことになると何故か張り切るサーブがいて、厩舎作りはそんなに時間を取られなかった。
それでも紙の原料となる枝を伐る時期はもう本当におしまいの時期にきていて、枝からは新芽が出始めて、もう時期が終わってしまった。
原料の枝は、エーレアたちにも目一杯手伝ってもらったのに、新たに倉庫として作った小屋の1/3をやっと満たす程度しか採取できなかった。
うーん、小屋を作る場所を間違えたり、採取より先に小屋を作ろうとしたり、判断のミスが重なったからでもあると思う。
「この木の枝を原料にするのは、上質な紙が出来るからで、紙の質を問わなければ、最悪藁を使っても紙は作れますから、大丈夫です」
アンはそう言って、大した問題ではないと慰めてくれたけど、僕たちは他の仕事を免除されて任された仕事なのに、と思うと、ちょっとみんなに申し訳ない気分だ。
奥の厩舎が出来上がったら、即座にギュートとハキが馬を取りに行くと宣言した。
馬を取りに行くと言葉では一言なのだが、結構大掛かりな出来事で、僕たちナーリアは全員、そしてアレア様、ロア様、アリファ様の3人組も、そして友たちもギュートにハキだけでなく、デイヴ、キース、ヤーレンも馬を取りに行くメンバーとなり、一緒に行くと駄々をこねて権利を勝ち取ったメリーを入れると総勢16人の大勢で馬を取りに行くのだ。
どうしてこんなに大勢になるかというと、行きにも荷物や人を乗せて4台の馬車が行かねばならないことになり、帰りはそれに加えて馬車が3台、馬が14頭にもなるからである。
ずっと1人で馬車を御すのは現実的ではないので、交代する必要がある。
その上、帰りは馬も引いて来るので、何人かは馬に乗らねばならない。
これでも行きはまあ良いけど、帰りは2人で交代で馬車を御すという人数にも足りないのだ。
行きの馬車には、樽に詰めたアスファルトも馬車一台分積んで行く。
ハキに言わせれば、これだけで今回買って来る気でいる穀物などの食糧の代金は十分賄えるはずとのことだ。
その上、今回はアスファルトを薄く塗った布の、使用感というか性能検査をしてくることになっている。
というと堅苦しいが、要するに、アスファルトを塗って防水した布で屋根を作ったりしての野営のテストだ。
町へ行って戻って来るのは、一泊二日となる訳だが、その泊まるのを町に近い森の中の例の広場でして、テストとする訳だ。
前に同じ場所でミーリアとミーレアは寒い思いをしたとのことだが、気候がもう大分暖かくなっているし、布の屋根があるのとでは違いがきっとあるだろう。
その差はアレア様たちが実感として教えてくれるだろう。
ハキはその使用感を自分で確かめて、防水布もラミアの里からの売り物にする気らしい。
メリーがどうしても一緒に行くと駄々をこねたのは、その野営するという行為がとても楽しそうだからだ。
「みんながお馬を取りに行くのに出かけちゃうから、メリーは赤ちゃんの面倒を残って見ててくれると良いと思うの」
というアンの言葉にメリーは迷ったようだが、野営の魅力が勝ってしまったようだ。
そんな訳で家にはイクス様とラーリア様が残されて、それをミーリア様1人で世話をすることになる訳で、ちょっとというか大分心配である。
そう思うのは僕たちだけではないようで、一晩ミーレナさんが僕らの家に泊まってくれるそうだ。
アーレナ様がそれなら私もとミーレナさんについて来ると言ってくれたみたいだが、慣れないアーレナ様が気疲れして大変だろうから、無理をしなくて良いとミーレナさんが断ったみたいだ。
ま、ミーレナさんがついていてくれれば何の心配もいらない。
エーレアたちもなるべく遅くまで手伝って、朝早く家に来るようにしよう、と話し合ったみたいだし。
アスファルトを塗った防水布のテストは、残念ながらと言って良いのか、それとも幸運にもと言って良いのか、雨が全く降らなかったから完全なものとはならなかった。
だがアレア様たちが言うには、その屋根の下では夜露に濡れないだけでも大きく違ったとのことだ。
僕たち人間は狩人としての訓練を受けているから、野営は慣れていて何とも思わないのだが、ナーリアたちも、アンとメリーも全く問題なく次の日も元気だったので、テストとしては成功だったのではないだろうか。
「今回は私たち以外は相手がいなかったし、メリーが興奮していてなかなか寝ないし、朝は早くから起きたから、アレクから精を受けれなかったけど、私たちだけで遊びで野営したら、それも楽しめると思う。」
「うん、今回は少し損した気分だけど、それは十分可能だと今回のことで思った。
たまには家ではなく外に出て、よく知らない違う場所でするのも楽しそう」
「そうだな、それでは具体的にいつするかを、早めに決めよう」
レンス、セカン、サーブ、馬車の隅で固まって話していても、聞こえているからな。
アンがメリーに聞かせないように、一生懸命他のことを話しかけているし、ナーリアは3人を窘めようか、それとも具体的な日程の相談に混ざろうか迷っている。
ディフィーは馬を御するのに一生懸命で、気づいてないみたいだけど。
領主の町で馬と馬車そして馬の糧秣を受け取ったり、アスファルトを売って食糧を買ったりということは何の問題もなく、スムーズに用が済んだ。
今までは町中ではラミアの姿を見せなかったのだが、今回は見せないのは無理があるし、それ以前にアルフさんが町に来た時には馬車の中に隠れずに堂々と姿を晒してくれと言っていたので、何の小細工もせずに町に入って行った。
町の人たちは最初やはり少し身構えている感じだったが、荷物の上げ下ろしなどを館の騎士たちが手伝っていて、全く気軽にラミアとしゃべっているのを見て、何だか安心したようで雰囲気が和んだ。
まあ、これは単なる馴れだから、時間が解決することだろうと思う。
さすがに急に変われといっても無理がある。
ナーリアたちも自分たちにも覚えがあるから、仕方がないと受け入れている感じだ。
館にアルフさんは居なかった。
もう砦の方に行っているとのことだ。
タインさんがバーバラさんと共に僕たちに挨拶に来てくれた。
バーバラさんに元気がないのは少し気になったが、それは仕方ないことだろうと思った。
デイヴは領主様と奥方様と話をしている。
いつ領主様たちがラミアの里に来るかという多分に政治的なことが絡む話なのだが、デイヴが話しているのを側から聞いていると、そういう政治色が褪せてしまい、「早く孫娘を見せなさい」「今大急ぎで準備している」という母子の単なる言い合いに聞こえる。
僕自身もえーと良いのかなと思いつつ距離を取ってしまった。
家族の話を聞いているのは良くないという気持ちが働いてしまったのだ。
気がつけば、ナーリアたちもアレア様たちも友たちも、みんな離れてしまっているのだけど、うーん、報告は誰がするのかな。
ハキは兄に呼び止められて、大鳥の羽根の調達を求められた。
メスのでかまわないので、どうしても尾羽が早急に欲しいとのことだった。
ハキが言うのに
「兄貴があんな風に強硬に言ってくることは珍しいから、何か理由があるのだろう。
仕方ないから、大急ぎで大鳥を獲らないと」
「領主様たちがラミアの里に来るのだから、領主様たち用の布団が必要になるだろうから、そのために獲ることにすれば、それこそ一石二鳥だよ」




