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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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249. 対フロード5

 カモフラージュされていた人間の道との接続部分を抜けて、僕たちはあのフロードの盗賊擬きが使っていた大きな洞窟に入った。

 大きな洞窟とはいえ、流石にこの人数では狭いし、馬車を2台入れておけるスペースもない。

 ここまで一緒にやってきたアンとメリーは、それが指令ではあったのだけど、すぐにギュートが御者してきた、カモフラージュを取り除くための道具を載せた馬車で戻らなくてはならない。


 ギュートがアンに声をかけていた。

 「アン、すまないけど、急いで戻って、母馬と仔馬の様子を見てやってくれ。

  流石に今現在のラーリア様たちには馬の面倒を見させる訳にいかなくて、他はみんなこっちに来ちゃっているから、アンに頼むしかないんだ」


 「うん、ギュート、もちろん承知しているよ。 馬は私が責任持って世話するから、ギュートも気をつけて頑張ってきて」


 「ああ、頼む。 メリーも頼むぞ。 お姉ちゃんを手伝ってやってくれ」


 「うん、ギュートのお兄ちゃん、メリーにお任せ。 大丈夫、メリー頑張る」


 「おう、メリーは頼もしいなぁ」


 アンは急いでラミアの里に戻っていった。 メリーは来るときは僕が騎乗する馬に跨っていたのだが、帰りはアンの隣の御者席だ。


 僕たちは洞窟の中で、馬車に載せてきて身につけていない装備などを各自に配った。

 今回ラミアたちのほとんどは戦闘をする予定はないのだが、もちろん完全武装で弓も背負っている。

 僕たち人間は今回は弓も槍もない。 どちらも騎士たちが使うものとは違うから、というより盗賊擬きが使っていた物とは形が違うので、使う訳にいかない。

 剣も目立つ位置に居ることになる僕たち騎乗組などは、鹵獲しておいたフロードの剣を腰につけた。

 フロードの息子だったという、あのいけ好かない男の剣は、僕たちでは真似できないということで、アルフさんが真似することになり、アルフさんがつけている。


 そう、僕たち人間組と騎士たちは、フロードが化けていた盗賊に化けて砦を目指すのだ。

 ナーリアたちは盗賊が捕獲した馬車の中に隠れているという訳だ。


 僕たち人間と騎士たちには、フードのついたちょっと小汚い感じのマントも配られた。 みんなそれを被って、中の防具などが見えない様にという配慮だ。 実際に長い時間を野外で過ごす場合などは、こういったマントとかは良く使われる物なので、変には思われないだろう。 ハキの実家では、ちょっと小汚い感じのマントを急に30着も揃えるのには苦労した様だが。

 それと馬はアルフさんは自分の馬なので、6頭に増えてしまった。 ま、1頭くらい誤魔化せるだろうけど、先頭を駆けるアルフさんの鞍がフロードの物ではないのはバレやすいだろうと、鞍は交換した。 領主家の鞍はデイヴが使うことになり、デイヴはバレない様に最後尾を駆けることになった。

 あと、盗賊擬きには弓が二人いたので、騎士に二人だけ弓を持ってもらった。 これは騎士の弓だ。

 僕たちは準備を整えた。


 「今回の作戦で一番重要なのは時間を合わせることよ。 まだちょっと余裕があるから、少しだけ休憩にしましょう」


 ナーリアとセカンが先に立って、竃に火を点けて、お茶を沸かすことにした。

 この洞窟に入ってきて、すぐに気がついたのだが、僕たちが前に見た時には無かった竃が作られていて、その脇には綺麗に薪が積まれて用意されていた。 そして煙突の先には、煙を拡散して目立たなくする工夫までされていた。


 僕もすぐ気がついたのだが、アリファ様が言った。

 「どうやらアーリアとアーリルが、私たちのためにこれだけの用意をしておいてくれたみたい」


 「二人でこれだけ準備するのは、ちょっと大変だったかもね」

 言い方は軽いが、ちょっと涙ぐんでロア様が言った。


 淹れられたお茶は、ナーリアたちに加え、エーレアたちの手によってみんなに配られていく。 今回は食料は持ってきてなくて、お茶だけだ。

 お茶を配り終えようとしたところで、ウスベニメとモエギシュウメが洞窟に入ってきた。


 サーブが声をかけた。

 「二人ともいいタイミングだな。 ちょうどお茶だぞ。 エーレア、二人にもお茶を持ってきてやってくれ」


 ウスベニメが言った。

 「サーブ、嬉しいけど、報告が先よ」


 ウスベニメとモエギシュウメは、急いでミーリア様の元に向かった。

 「ミーリア様、報告します。

  もう一方の方はすでにだいぶ砦に近づいてきています。 頃合いになったら、知らせが来ることになっています。

  それから砦の方ですが、目立った動きは何もありません。

  あと砦にいる弓兵ですが、位置を確認しました。

  エレオン、アライム、ハライトの3人は今も監視を続けています」


 「了解、ご苦労でした。

  弓兵の位置はナーリアに伝える様に。 そしたら二人もお茶でも飲んでとりあえず休憩して」


 「はい。 ありがとうございます。」

 ウスベニメとモエギシュウメの報告は、静かになった洞窟内全体に聞こえ、全員に共有された情報となった。


 ウスベニメとモエギシュウメはセカンとディフィーが広げた砦の内部の地図を指さして、弓兵のいる位置を指し示した。

 「今のところ確認できている弓兵の位置はこの2箇所。 二人づつ配置されているわ」


 「ありがとう。 了解したわ。

  クラッドさん、ブマー、砦の内部に突入したら、あなたたち二人の隊は、私の指示を待つことなく即座にこの2箇所の制圧に向かってください。 考える暇を与えることなく、制圧してしまうことが理想です」


 「はい、指揮官、了解です」

 クラッドさんがそう答えると、ブマーとそれぞれの隊の騎士たちも頷いて、了解の意を示した。

 しばらくして、アライムが少し急いで洞窟に入ってきた。


—————————————————————————


 なんとなく胸騒ぎがする。 イライラする。 上手くいっていない。

 そんな鬱陶しい気分にワシは苛まれている。

 今日1日もどこからも何の報告も来ない。

 商隊の仕事をしに行った息子たちの報告も、こんなにも長く来ないとは思わなかったが、領主のところにいる者からも、バンタイン様に付けている者からも領主の町に戻ってきたという報告以来、何の音沙汰もない。

 何も報告することがなく、数日報告がないことも別に少なくはないことなのだが、それでもやっぱりゴブの騒ぎがあったばかりで、何の音沙汰もなくなってしまうのは不自然な気がするのだ。

 バンタイン様がワシの代わりに有力者を回ったのも、それが理由だったのだから、尚更のことだ。


 ワシの不機嫌を察してか、今日はほとんど誰も近づいてくる者もなく、1日が終わりそうだ。 夕方に近づき、日が少し陰ってきたのにワシは気がついた。

 急にドタドタと慌てた足音が近づき扉をノックされた。


 「何だ? よし、入れ。 入って素早く報告しろ!」


 伝令が慌てて部屋に入ってきた。

 「報告します。 見張りから、こちらに向かって兵が近づいてきている、という緊急報告です」


 「どっちの方向から砦に向かってくるのだ?」


 「町の方向からです」


 「町というのは、この地方の入り口に当たるゴブに破壊された町の方角か?」


 「いえ、違います。 領主の町の方向からです」


 一瞬ゴブが攻めて来たのかと、驚いたが、領主の町の方向からだとしたら、そんなことはないだろう。

 「分かった。 一応警戒のため、第3級警戒配備を全体にとる様に命令を伝えよ。 そしてその兵についての続報を待つ」


 「了解しました。 命令を伝えます」


 急に砦の中が慌ただしくなったが、ワシにとってそれは不愉快なものではない。 むしろワシの命令が忠実に実行されているということなので、少しの満足感を味わっている。

 ワシはまだ部屋から出るべきではないと思っている。 早々に自室を出て行っては、砦内の者にワシが急な事態に慌てていると思われてしまう。 何が近づいで来るのか、自分の目で確かめたい気持ちが湧き上がったが、それを押さえつける。


 また扉がノックされた。

 「入れ!」


 「報告します。 近づいて来る兵の旗が確認できました。

  バンタイン様の旗です」


 ワシはそれでも少し緊張していたのだろう、この報告を聞き、肩の力が抜けるのを感じた。

 「分かった。 第3級警戒配備はそのままに、バンタイン様をお迎えする準備を進める様に関係部署に伝える様に」


 ワシは落ち着いた声でそう命令し、今まで座っていた机の椅子から立ち上がり、もっと楽な体勢をとれる、ソファに体を投げ出した。

 バンタイン様に会うには、着ている物も改めねばならないが、報告からすれば到着まではまだ少し時間がある、少しリラックスした時間を持っても良いだろう。

 そう考えていて一つ思いついてしまった。

 バンタイン様には妻も会いたがるであろうから、バンタイン様が来られることを伝えておかないのはまずい。


 仕方がない、ワシはせっかくソファに投げ出した体を起こし、声をあげた。

 「誰かある。 バンタイン様のご来訪を奥方に告げよ。 それからワシもお迎えするために着替えをする。 手伝いの者を寄越せ」


 側付きが、ワシの言葉を実行しようと動こうとした時に、またしても大慌てで近付いて来る足音が聞こえた。

 荒々しくノックされた。

 「入れ!」


 「報告します。 先ほどの報告とはまた別の方角から集団がこちら向かって来ます」


 「今度はどっちの方向だ?」


 「はい、今度は壊滅された町の方向、ラミアの森の方向からです」


 流石にこの報告にはワシも驚き、一気に立ち上がった。

 「どの様な者たちが向かって来ているのだ?」


 「ラミアの森の陰になり、まだ詳しくは確認できていません」


 ワシは焦れったいと思った。

 「よし、ワシもこの部屋を出て指揮所に入る」


 ワシが自室を出ると、やはりただ事ではないと思ったのだろう、家宰が慌てて駆け寄って来た。 ワシはその姿に、頷いてはやったが何も言わずに指揮所に向かった。

 指揮所に入ると、すぐにまた報告が来た。


 「新たな集団は、馬車1台の周りを数騎の騎馬と20名少し程の徒士が囲んでいる集団と判明しましたが、かなり慌てていて急速にこちらに向かっています」


 一体どういうことなのか、まだワシには何も分からない。 次の報告を待っていることしか今はできない。


 次の報告は本当にとても慌てたモノだった。 報告に来た者は扉をノックもせずに飛び込んできた。

 「見えました。 慌ててこちらに向かって来る集団の後方にラミアの集団がいることが確認されました」


 ワシは慌てて、大声で怒鳴った。

 「第1級戦闘配備!! 大急ぎだ!!」


 非常用の鐘が打ち鳴らされ、砦の中は一瞬にしてものすごい喧騒に包まれた。


 「男爵様、逃げている集団は、もしかしたら若様たちではありますまいか?」


 「そんなことはまだ分からん。 ただ大急ぎでこっちに近づいて来ている集団は、ラミアに追われているのだけは確実であろう」


 「男爵様、それにしてもまだこんな寒い時期にラミアが活動するものなのでしょうか?」


 「普通にはあり得ん事態だが、現にこうして起こっている。 もしかすると、ゴブの騒ぎでラミアも普段とは違うことをしているのかも知れん」


 「私もそうかも知れないとは思いますが、これは計算外の事態でございます。 逃げて来ている若様にとっても、計算外のことだったのでしょう。 仕方ございません。 若様に非のあることではありません」


 「そんなことは今はどうでも良い」

 ワシが家宰を叱りつけていると、次の報告が来た。


 「報告します。 バンタイン様の兵と思われる兵たちも、別方向からの集団に気が付き、ラミアを確認したかの様です。

  バンタイン様の兵と思われる兵たちも大急ぎでこちらに向かって来ています」


 すぐに次の報告が来た。

 「報告します。 バンタイン様の兵と思われる兵の集団が到着し、砦の外に陣を布き始めました。 この砦を守る態勢を整えようとしている様です」


 流石にバンタイン様だ、一朝事が起こった時には実に的確に事態に即した行動をとってくれるものよ。 やはり次の領主にはバンタイン様になっていただかねばならないとワシは思った。


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