247. 対フロード3
僕たちは奥で、いくつかに別れた。
奥にはラーリア様、イクス様、ミーリア様、そしてアレア様、ロア様、アリファ様が待っていた。
その場ですぐにハキの家で仕入れた飼料など馬のための荷物を下ろすと、ヤーレンとケンは厩舎にいるギュートを手伝いに向かった。
エレクとハキは、馬車に積まれたているハキの家で仕入れた諸々をとりあえず里の倉庫に収納する為にアリファ様の手伝いに回った。
ボブとダイクとバンジはとりあえず里に向かわされる騎士たちの案内をアレア様、ロア様と一緒にする係だ。
残ったデイヴとキース、そして僕たちナーリアは、ラーリア様、イクス様、ミーリア様ととりあえず報告を兼ねて一緒に家に向かう。
話をしながら家にたどり着くと、家ではミーレナさんとアンとメリーが、騎士たちと僕らのための食事を作っている真っ最中だった。
デイヴとキース、そして僕とナーリアは、そのまま報告と今後についての話をし続け、他は馬の世話などをすることになった。
程なくして、ミーリオ様たちが姿を見せた。 どうやらミーリオ様たちは僕たちが来る前に一番最初に温泉に入ったらしい。
「ミーリオ、もう騎士たちがすぐにここに来るわ。
今日はここは騎士たちの食事の準備に使っている。 あなたたちの食事は今日は奥でラーリオ様たちが準備してくれているはずよ。 悪いけどそっちに向かって」
「ああ、了解だ。 明日の打ち合わせは明日になってからで良いのか」
「今晩、これから少し細かいところを検討するから、明日になってしまうわね。
何しろ、セカンとディフィーも交えて話さないとダメだから」
「わかった。 そっちも了解だ。 それでは私たちだけでなく、ミーレア以下もそうなるな。 伝えておこう」
「お願いするわ」
ミーリア様と簡単にそう打ち合わせをして、ミーリオ様たちは去って行った。
それと入れ替わるように外が騒がしくなって来た。
ボブが中に入って来た。
「騎士たちを連れて来ました」
「ああ、ボブ、もうすぐ食事の準備が終わる。 先に騎士たちを温泉に案内してやってくれ、町からここまで自らの足で来たのだから、まだ寒いとはいえ汗もかいただろうし疲れていることだろう、温泉で先にそれを癒してもらってくれ」
「わかりました。 それでは案内して来た僕たちも先に一緒に入ってしまいます」
たぶん一緒にやって来たのだろう。 アリファ様がエレク、ハキに指示して、騎士たちが身体を拭くための布を持たせていた。
館の騎士たちが温泉に入っている間に、馬の世話を終えたみんなと、アレア様、ロア様も加わって、ミーレナさんの指示の下に騎士たちの食事が、元は作業場だった現時点では食堂に用意された。
うさぎの肉と根菜のシチューも用意されていたから、きっとエーレアたちがうさぎを獲って来たのだろう。 もうワナにポツポツうさぎが掛かる季節になって来たのだ。
騎士たちは温泉から出て、食堂に案内されると、まともな食事が用意されていることに驚いたようだ。 どうやらこの作戦中は干し肉などの携帯食を食べるだけだと思っていたようだ。
「お前たちもこの時間に温泉に入って来い。 もうすぐ工事に行っていた者たちが戻ってくるぞ。 そしたら落ち着いては入れないぞ」
ラーリア様の言葉に、僕たちとアレア様、ロア様、アリファ様、それから厩舎からやって来たギュート、ヤーレン、ダイクも急いで温泉に入った。
僕はギュートに馬がどうなったのか聞いてみた。
「ああ、思った通りで、俺はこっちに残って正解だったよ。 あれからすぐにもう一頭の方も産気づいて、すぐに割と安産で生まれたんだ。
今はミーレオ様たちが見ててくれてる。 2頭目でいくらか慣れたからかな。 任せても大丈夫そうだ」
僕らが温泉から出るとミーレナさんが、
「ナーリアたちとアレア、ロア、アリファはこっち。 アレク以外の人間たちの分は食堂に他のみんなと一緒に用意してあるわ、そっちに行ってね」
と僕たちを誘導してくれた。
流石に食堂のキャパシティーを超えた様で、僕たちの食事はいつものテーブルに用意されていた。
僕たちは急いで食事をした。
大急ぎで食事を終えて、食堂に向かうと、食堂の中はやはり人数が多すぎるため、もうテーブルは片付けられて、少しでも広さを確保しようとされていた。
気が付いたら、アルフさんがアンとメリーの二人と話している。
「メリー、デイヴお兄ちゃんのお兄ちゃんなのは確かだけど、お兄ちゃんもちゃんと名前で呼んでほしいな。 アルフお兄ちゃんと呼んでくれ。」
「アルフお兄ちゃん?」
「アルフレッド様、それでは上下の区別がつかず、示しがつかないのではないでしょうか」
アンはその呼び方をメリーがするのは反対の様だ。
「アン、お前も様なんて付けずに、アルフさんと呼んでくれ。
そもそもデイヴィッドのことはデイヴと呼んでいるのだろ?」
「はい、確かにそれはそうですが、それはここではそれが普通だからです」
「なら、良いではないか。
そもそもお前たち姉妹はうちの親が後見人になっているのだから、私はお前たちのことは妹の様に接すると決めている。 妹に様付けで呼ばれて喜ぶ兄がいるものか。 いいな、アルフさんだぞ。
メリー、もう一回呼んでみてくれ」
「アルフお兄ちゃん」
「うん、それで良い。 メリーは物覚えが良いなぁ」
「アン、それで構わないから、というか諦めてくれ。 兄貴はその方が嬉しいんだから、付き合ってやってくれ」
アンはデイヴにもそう言われたが、それでも良いのかな、という顔をしている。
ラーリア様が部屋の中全体に声を掛けた。
「さて、騎士諸君。 温泉と食事で少しは今日の移動の疲れが癒されたかな。 あとはゆっくり休んで明日への英気を養ってほしい。 ただし、明日の打ち合わせをここでもう少ししたいので、主だった者数人は残ってほしい」
そして、友たちとアレア様、ロア様に言った。
「騎士たちを案内してやってくれ。
ただし、デイヴとキースは当然だがボブとハキ、それからアリファもここに残ってくれ」
騎士たちと友たちは動き出した。 僕はちょっとエレクに声を掛ける。
「もう里の中は真っ暗で、慣れてない騎士たちは困るんじゃないか」
「ああ、大丈夫だ。 ミーレアがみんなで準備をしておいてくれた様で、要所にランプが点けられることになっている。 奥のあの部屋が寝れる様に準備されているし、騎士たちも安眠できると思うよ」
「そうなのか。 それなら大丈夫だな」
「それにそろそろミーリオ様たちも里に戻っているだろうし、問題ないさ」
ミーレナさんもバンジを捕まえて話していた。
「もう少ししたら、私も帰れると思います」
「うん、わかった」
「もし、まだラーリナ様が忙しくしているようでしたら、手伝ってあげていてくださいね」
「ああ、わかっている。 ミーレナさんも帰りはたぶん一人になっちゃうから気をつけてね」
「ふふ、大丈夫ですよ。 私はバンジより夜目が利くんですから」
騎士たちで残ったのは、アルフさん、クラッドさん、ブマーの3人だった。
「ラーリア様、イクス様、あらためて紹介します。
こっちが俺の長兄で、アルフレッド、次がキースの兄であるクラッドリング、そして最後がキースの幼馴染のブマーです」
「兄貴たち、こちらはラミアの長、ラーリア様、そして先代にあたるイクス様だ」
デイヴの紹介にアルフさんから自己紹介する。
「この地方の領主家の長男で、このデイヴィッドの兄のアルフレッドです。
領主である父より、今回のこの同盟を心から喜んでいること、そして大火以降人間がラミアとハーピーに与えてしまった苦痛を心から謝罪している、と伝えてくれと言付かってきました」
「アルフレッド殿、我らラミアと今ここにはいないがハーピーは、今回の同盟をあなたたち人間と同様にとても喜んでいる。 それからミーリアも言ったと思うが、大火のことは仕方のない事故だと思っているし、その後の領主家の苦衷も理解している。 何も謝る必要はない。 互いに辛い時間があったが今はこうして手を取り合うことが出来ている。 それが全てではないか」
「はい、ありがとうございます」
「私はクラッドリングといいます。 そこにいるキースリングの兄ですが、今回は騎士たちを纏める役を仰せつかって一緒にやってきました」
「私はブマーといいます。 まだ騎士見習いの身分ですが、キースの幼馴染という縁で、町では一番最初から今回の件に関わっているので、こちらにこうしてやって来ることになりました」
「先ほど、ちょっと自己紹介前に話をしてしまったが、私が今現在このラミアの里を代表しているラーリアという。
代表しているといっても、人間の領主という立場とは違い、私の場合はただ単にこの里で一番上位であるラーリアグループのリーダーであるというだけのことだ。
私も含めてラーリアグループに属する者は皆卵を抱えているため、今回の作戦には参加できないのが心苦しいが、サポートできるところは何でもしていきたいので、気がついたことがあったら遠慮せずに言ってくれるとありがたい」
「私はイクスといいます。 こんな場に出てしまっているけど、もう引退した身だから、何でも気楽に話してくれると嬉しいわ」
「あとは、この場にいる者はみんな顔を知っているかな」
ラーリア様がそう言って、本格的な話を始めようとした様だが、3人の視線がアリファ様の方に向いた。
「ああ、そうだった。 右手を吊っているのはアリファという。 この里の物品の管理を任されている」
「アリファといいます」
アリファ様が簡潔に自己紹介した。
「失礼ですが、右手は如何されたのですか?」
アルフさんが礼を失しないだろうかと気にする感じで尋ねた。
「はい、先のゴブとの戦いで、不覚をとりました」
「そうなのですか。 激しい戦いだったと聞きました。
そうでした、先のゴブを殲滅していただいた礼を言うのを忘れていました。
ラミアの皆さんが殲滅してくれなければ、大変なことになっていたところでした。 ありがとうございました」
「いえ、それは前にも言いましたが、ラミアは自らに降りかかった火の粉を払っただけですから、お礼を言われる様なことではありません」
ミーリア様がアルフさんにそう言ったが
「いえ、そうなのかもしれませんが。 人間は情けなくも、ゴブの侵入を知っても何の対策も取ることが出来ないでいました。
それを考えると、お礼を言わずにはいられません」
それからはセカンとディフィーを中心として、明日の行動の詳細が検討された。
騎士たちはここまでで、ボブ、デイヴ、キースの3人も送りがてら帰ることになった。 アリファ様だけはまだ食料などの物資をどう運ぶかなどの打ち合わせのために残っている。 ミーレナさんは話が始まる時にお茶の用意をして、すでに帰っている。
里へ向かう道の途中、クラッドがキースに言った。
「キース、あの片手しか使えないというアリファといったか、あのラミアは相当に強いのではないか?」
「兄貴、良く分かったな。 本当に強いぞ。
戦いとなったら、俺でもどう攻撃して良いのか分からないよ、アリファ様は」
「もう一人、片手が不自由そうなラミアがいたな。」
アルフがそう言った。
「ああ、ミーレナさんか。 ミーレナさんは自分から『さん』付けで呼んでくれと言うので、俺たちも『さん』付けで呼ばせていただいているけど、先のゴブとの戦いの時の英雄だよ。 崩れて崩壊しそうだった戦線を一人で戦って防いだんだ」
デイヴがそう言うと、キースも、
「ミーレナさんは強いぞ。 今日は食事を作ったりお茶を出してくれたりしていて、その雰囲気を感じさせなかったけど、いざ戦いとなれば、片手が不自由な今でも俺より確実に強いな」
「そうなのか、それは凄いな」
ブマーがそう言うと、
「ラーリア様たちは、剣でという限定なら、俺も互角にやれるけど、それぞれの得意武器を使われたら、みんな俺より強いんじゃないか」
「それだけじゃないな、ラーリア殿、イクス殿、ミーリア殿もだが、知識も見識も素晴らしいし、その知恵も素晴らしい。 あの3人を前にして、セカン殿とディフィー殿は作戦を任されている。 いかにその面であの二人が優れているかを、今夜は余計に感じたよ」
「兄貴、だから前に言っただろ。 あの二人は策を考えることに関しては天才だと。 ラミアの中では、それはみんなに認められているんだ」
「ああ、本当に、そうだな。 俺もあの二人は天才だと思うよ。」




