246. 対フロード2
領主様の姿が見えると、草原に集まっていた諸公たちは、それぞれ決まっている位置に整列を始めた。
その彼らの列の真ん中に館から来た者たちは並び、領主様たちは前に立つ。
カーライル様とストーム様が列の間を馬で周り、参集していない者がいないかどうかを確認している。
2人が確認を終え、領主様に報告した。
「誰1人欠けることなく、どうしても参加できないと事前に連絡のあった者以外全員揃っております」
「了解だ。 確認ご苦労。
われらも馬を降り、頭の位置を皆と同じにして話をしよう」
領主様たちも馬を降り、前に並んだ。 領主様の話が始まった。
「集まってくれた諸公たちよ。 急な呼び出しに応じてくれて感謝している。
また、呼び出しに応じない場合は、それに応じた対応がなされるだろうなどという脅しめいた言葉を使ったことをここに謝ろう。 すまなかった。
だが、そのように強い言葉を使ったことには理由がある。 それはゴブの脅威に曝されている今、どうしても今、諸公らに知ってもらいたい事があるからなのじゃ。
今から儂が話すことは、今までの皆が信じる常識からすれば、信じられないことかもしれない。 しかし最初に断っておこう、これから儂が話すことは全て真実であり、嘘偽りは儂の名誉にかけてない。 まずそのことをしっかりと認識して、儂の話を聞いてくれ」
こうして始まった領主様の言葉は全てが信じられないようなことであった。
そしてそれらが何故今まで知られなかったのか、その理由も一つ一つ説明されたのだが、それでも半信半疑の気分が全体に蔓延していた。
それが一気に領主様の言葉を信じることになったのは、つい最近商隊が襲われた話が出てからだ。
諸公の中にも無理をして商人との取引を契約していた者も多くいて、それを領主様の方で把握していて、フロードの剣という証拠を見せられ、生き残りの証人もいることを告げられたことだ。
集まった者たちの中で、一気に領主様の言葉を完全に信じる者が増え、「フロード許すまじ」の気分が膨れ上がった。
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馬に乗ったブマーが、館の玄関前の広場に残っていた僕らを呼びに来た。
「みなさんそろそろ出番ですので、お願いします」
今回はナーリアたちは馬車に乗り僕が御者を務める。
友たちは馬車を守るような形で、完全武装して周りを行く。
「それじゃあ、エレオン、なるべくかっこ良くナーリアたちの横に並べよ。
タイミングを見計らって、空から降りてこいよ」
「ああ、任せとけ。 集まっている奴らに気付かれない高い位置から、急に降り立って、驚かせてやるよ。
お前らが驚くなよ。 お前らが驚いたらカッコがつかないからな」
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「そして今、我々はゴブに対処するために、ラミア・ハーピーと同盟を結んだ。
おお、ちょうど到着した。
そのことを皆に証明するために、この場にラミアとハーピーを数名ずつ呼んである」
僕は領主様たちから少しだけ離れた位置に馬車を停める。 そして僕も馬車の中から渡された槍を持って御者席から飛び降りる。
馬車の後方からはナーリアたちが次々と馬車を降りた。
諸公たちはラミアを見るのがもちろん初めてなのだろう、全体がどよめいている。
ナーリアが号令をかける
「領主様たちの横に整列!!」
僕たち人間は槍を立てて左右に並び、その間にナーリアたちが並ぶ、並び終えたと思ったところでナーリアは、自分の金の槍をサッと一振りした。
次の瞬間、空の上からハーピーが降ってきて、ナーリアたちの横の空いた空間に並び、列をしっかりと埋めた。
諸公はまた大きくどよめいた。
領主様はまた話をした。
「このラミアとハーピーの方々を見て、諸公らはより一層、儂の言葉を信じる気持ちになったであろう。
そして今までの儂の言葉が理解出来たなら、今第一にしなければならないことも分かるであろう。
我々は、フロードに正義の裁きを与えねばならない。
儂が諸公らをこうして集めたのは、一つにはその正義の裁きに自ら加わって欲しいからである。 そして一致団結して、我らはゴブに備えなければならない。
まずは諸公らは正義の裁きを加える本隊として行動して欲しい。
本隊はバンタインを指揮官とし、カーライルとストームを作戦担当、および副将とする。
また別働隊も組織し、そちらはアルフレッドとその直属の者たちと、ラミア・ハーピーの合同隊とする。そちらは指揮はラミアのナーリア殿に任せる。
それではそれぞれに行動を始めてくれ」
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僕たちは館に戻ると即座に防具などを外して、馬車に仕舞う。
アルフさんをはじめとした騎士の人たちも同様だ。
同じように防具を外して仕舞ったエレオンが
「それじゃあ、俺たちは先に行って連絡しておく」
そう言ってハーピーたちは先に飛び立って行った。
「それでは私たちは出発します」
僕らが先に戻ってきて、順番が後になったので、草原から戻ったばかりの領主様にナーリアがそう声をかけて、僕たちはまた館を後にする。
さっきと同じように、僕の馬車にナーリアたちが乗っているのは、町中をわざわざ驚かしながら通ることはないからだが、今度は荷物がかなり乗っているので、ちょっと無理して乗っている。
馬も重いので大変そうだが、町を抜けるまでは辛抱してもらおう。
あと2台の馬車はハキとヤーレンが御者をして、他は騎士の人たちも含めて徒歩で、馬車の前後を歩いている。
例外はアルフさんで1人先頭で馬に乗っていて、その横をデイヴが歩いている。
町を外れ草原に入ってすぐに、僕はナーリアたちに声をかけて馬車を降りてもらう。 ちょっと馬も大変そうだし、ナーリアたちも窮屈なのを無理して乗っている必要もない。
僕たちは急いで草原を横切り森への入り口を目指した。
森の入り口はエレオンたちが連絡しておいたからだろう、カモフラージュが取り除かれ、すぐに中に入ることができる様になっていた。
カモフラージュを取り除くのは、ミーリオさまたちとエーレアたちが担当してくれていた。
「ミーリオ様たちが来てくださっていたのですか」
ナーリアがミーリオ様に労いの言葉をかけた。
「ああ、馬のお産でてんやわんやしているからな。 馬の世話にミーレオたちが忙しいので、我らがここは買って出た」
「馬車全部使ってしまっているから、移動だけで大変ですよね。 ありがとうございます」
「気にするな。 それはお前たちも同じことだろう。 さ、人間たちが待っているぞ。 お前たちは先に行け。 私たちもカモフラージュをし直して、すぐにあとを追う」
「はい、よろしくお願いします」
ナーリアがミーリオ様と話している間、ミーリド様以下は友たちとちょっとおしゃべりをしていた。
僕たちはエーレアたちとちょっと話していた。
「あれ、エーレアたちが来ているの」 ディフィーが声をかけると、
エーレアが
「ああ、私らは志願して来たんだ。 カモフラージュをしたりの技術は私たちは知らないから、覚える良い機会だと思って。
それに、ここまで大急ぎで半ば走っての往復となるから、道路工事より体力増強に良いかなと思って」
「近接戦闘訓練で、戦闘技術以前に私たちはまず体力が足りないと感じたのよ。 だからそれを補うことをまず考えているの」
エーレルが補足した。
「確かに早く歩いたり、軽く走ったりを少し長い距離することが、一番体力を増強するのに手取り早い手段だそうだ」
サーブがそういうと、エレドが
「あら、そうなの」
「ああ、図書館の本にそう書いてあったから、確かだと思う」
「そういえば、ナーリアは全員、字をきちんと読み書きできるのよね」
「うん、そのことに関してはお母さんがもう手ぐすねを引いて、春から本格的にやらせると準備している」
「レンス、そうなの。 私たちも早く読み書きを完全に覚えなくっちゃ」
エレオ、エーレファも色々やる気に溢れているみたいだ。
なんだか、エーレアたち、いやまだ起きてないターリア、ワーリア、ヤーレアを含めてだが、ナーリアたちの姉妹は秋以降とてもやる気に溢れている気がするなあ、なんて僕は思った。
ミーリオ様がナーリアとの話を終えて、ほんのちょっと話すつもりでデイヴのところに言った。 デイブの近くにはアルフさんもいたので、ミーリオ様がデイヴに声をかけたところで、デイヴがアルフさんをミーリオ様に紹介することになった。
「ミーリオ様、これ、俺の兄貴でアルフレッドといいます。 兄貴、こちらは俺の、なんていうか、うん、妻の1人のミーリオ様」
「妻、うん、そうだな、私はデイヴの妻の1人だな」
ミーリオ様は、妻と言われたことに急に顔を赤くしたがアルフさんに挨拶している。
「私、デイヴの妻の1人のミーリオといいます。 デイヴの兄上とのこと、よろしくお願いします。
私の他にデイヴにはあと4人のラミアの妻がいます。 後ほどラミアの里でゆっくりと紹介させていただけると嬉しいです」
「丁寧にありがとうございます。 私はデイヴの兄のアルフレッドといいます。 実はデイヴの妻となったラミアはどの様な方なのだろうと思っていました」
「今は時間がないので、それでは後ほどゆっくりと」
実は同じ様なことがキースのところでも行われていたことに僕は気づいていた。
ナーリアはデイヴとミーリオ様の話が終わるのを待っていた様だ。
それを見届けると即座に、
「なるべく急いで、ラミアの里に向かいます。」と言ってすぐに出発させた。
僕たちはゆっくりした駆け足程度のスピードでラミアの里に向かっている。
正直に言えば、僕たちとナーリアたちだけならば、本気を出せばもう少し早い速度で走れるのだが、騎士の人たちはこれでも精一杯なのだ。
最初騎士の人たちは、
「こんなにたくさんのラミアに初めて会ったが、みんな普通に気楽に話したりしているんだな」
「ラミアって怪物なのかと思っていたが、足が尻尾になっているだけで、全然人間とやっぱり変わらないんだな」
「館に来たラミアたちが特別という訳じゃないんだな」
なんておしゃべりをしながら走っていたのだけれども、すぐにその余裕はなくなった。
途中を休憩を挟みながらの移動となっているのだが、何度目かの休憩をしているとミーリオさまたちに追いつかれた。
「あら、追いついてしまったわね」
ミーリオ様は疲労困憊な騎士たちを見て、事情を察した様だ。 僕はエーレアたちがいないので、それを聞いた。
「ミーリオ様、エーレアたちはどうしました?」
「うん、エーレアたちは流石に私たちにはついてこれなくて、道もはっきりしているし、置いてきちゃったの。 まあ、彼女たちなりに一生懸命走ってきているはずよ」
クラッドさんがキースに聞いている。
「もしかして、お前たちや指揮官のラミアたちも、本当は今追いついてきたラミアたちの様なペースで進めるのか」
「ああ、俺たちもナーリアたちもミーリオ様たちと同じ速度で進めるよ」
「俺たちも騎士として鍛えていたつもりだが、まだまだということだな」
「この前のゴブとの戦いが、本当に厳しいものだったんだ。 だからその後俺たち人間も含めて、とても厳しい訓練をしていたんだ。 少しでも生き残れる可能性を高めたいって」
「そういうことか。 俺たちは騎士なのに、ぬるま湯に浸っていたんだな」
ミーリオ様たちは僕たちを追い越して先に進み、また僕たちは途中で最近起こされた上位が今日も道を拡幅する復旧工事をしている場を通る。
その様子や、拡幅された道幅を見て、アルフさんが驚いてデイヴに尋ねている。
「おいデイヴィッド、すごい幅の整備された道だが、ラミアはこんな広い道を町まで通そうとしているのか」
「いや、兄貴そうじゃない。 ラミアは元々あった昔の道を復旧させているだけだ。 昔はこんなに広い立派な道が、俺たちの家のある町までしっかりと通っていたんだよ」
「昔と言っても、私たちの祖父が知っている時なのだから、そんなに大した時間ではないのだが、忘れ去られてきたという訳か」
アルフさんがしみじみと言っている。
ちなみにアルフさんはずっと馬に乗っているから余裕があるのだが、僕も含めて御者はナーリアたちも含めてどんどん交代して勤めている。
馬車は乗り心地が良い訳ではないので、少し速度を速めて進ませると、御者はなかなか辛い。 かえって走っている方が楽だったりするのだ。 いつもの歩くよりは少し早いかなというスピードでなら馬車の方が楽なのだけどね。
僕たちは何とかまだ暗くなり切らないうちにラミアの里に着いた。




