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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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244. 対フロード1

 その後、僕たちはまた領主一家と共に夕食をいただいた。

ハーピーの為には立ったままで食べれる様に、少し背の高いテーブルが用意されていた。


 「デイヴィッドに言われて、ハーピーの方々には高さのあるテーブルを用意したのだが、本当に椅子は無くても良いのだろうか」


 領主様のちょっと困った様な問いに、エレオンが答えた。

 「はい、ご配慮ありがとうございます。

  ハーピーも椅子などに座れない訳ではないのですが、見てお分かりの様に鳥型のハーピーですと羽が邪魔になり、座ると余計に動きに支障が出るので、あまり椅子に座るという習慣がなくて、立食が普通なんです」


 アルフさんがちょっと食いついた。

 「今、鳥型のハーピーと言ったが、ハーピーには他にもいるのだろうか。

  私はハーピーとは空を飛ぶものだと思っていたのだが」


 「ハーピーはラミアとは違い、男性も女性も見ての通り居るので、ハーピーだけでも子孫を作ることはできるのですが、ハーピーは人とも交わりますので、ほぼ人と変わらない人型から鳥型まで、様々な形状のハーピーがいるのが本来で、ハーピーの文化はそれが前提で成り立っていました。 今は大火の後の影響で、人との交流が途絶えてしまい、ハーピーだけで交わってますと、鳥型のハーピーばかりになってしまい、人型が絶えてしまっている状況で、実を言えば文化的にも危機を迎えています。 本来ならば、今の私たちの様な完全な鳥型はハーピー族の1/3にもならない数で、他は飛べないハーピーのはずなのです」


 エレオンの言葉にウスベニメがちょっと言葉を足した。

 「ハーピーの中では、どちらかというと人型の方が憧れの存在なんです。 私は祖母が人型のハーピーだったので、特にその傾向が強いのかもしれませんが」


 「そうなのですか。 私たち人間は空を飛ぶことにこそハーピーは一番の価値を置いているのかと思っていました」

 タインさんもそんなことを言った。


 「大火が本当にラミアにもハーピーにも大きな影響を与えてしまったのだなと、つくづく感じることよ」


 ちょっと沈痛な感じで領主さんがそんなことを言ったので、気分を変える為だろう、ディフィーがちょっとからかう感じで言った。

 「ウスベニメとモエギシュウメは、さっきは何も着てないことを何か言われなかった?」


 「あら、ハーピーの皆さんは美しい羽があるのですから、着る物は必要ではないでしょう」

 奥方様がその言葉にのってきた。


 ウスベニメがちょっと恥ずかしそうに俯いてしまったので、モエギシュウメが答えた。

 「今は寒い時期なので、私たち鳥型のハーピーは冬毛ですので、衣類が着れないのです。 衣類を着ると特に空を飛んでいる時なのですが、羽毛が押さえられてしまって逆に寒いのです。 ただハーピーに衣類を着る習慣がないかというと決してそんなことはなく、羽毛の少ない人型に近いハーピーは飛ぶこともないので、1年中衣類を着ていましたし、私たちの様な鳥型のハーピーも夏毛になりますと体の線が透けて見えてしまいますので、衣類を着用します。 人からすれば反対の様に思うのかもしれませんが、私たちハーピーも冬毛の時以外は衣類を着用するのです」


 そこからは和やかにおしゃべりと食事が進んだ。

 僕はやはりちょっとその場にバーバラさんだけがいないのが、気になった、というかちょっと可哀想に思ったりした。


 夕食後はちょっとだけ離れで、領主様たちと明日からの予定の最終打ち合わせをして、僕たちは眠りについた。

 ウスベニメとモエギシュウメには、ミーリア様とボブが使った部屋を使ってもらい、僕たちは一部屋で寝たのだが、なんだか久しぶりに6人だとなんとなく変な感じだった。


 翌日、朝食後、僕はヤーレンと共に馬車を用意していた。 するとキースがやって来た。


 「おっ、キース戻って来たのか」

 先に気がついたヤーレンがそう声をかけた。


 「ああ、参ったよ。 兄貴はともかく、お袋からさんざ連絡してなかったことを怒られて、本当に散々な目にあったよ」


 「そうか、俺も家に顔を出したら、そうなるかな」


 「当然だろ。 ま、心配をかけてしまったという自覚はあるから、怒られる程度は仕方ないけどな」


 「ま、そうだな」


 僕は二人のそんな会話を聞いていて、叔母さんも僕に会ったら怒るのかな、なんてぼんやり考えていた。


 「ところで、俺も馬車の準備とか手伝えば良いのかな?」


 キースの問いに僕が答えた。

 「いや、ここはいい。 馬車二台でハキを迎えに行くだけだから、物資を積むのも三人いれば用が済むだろうし、勝手がわかるキースはこっちでみんなの面倒を見てやってくれ」


 「アレク、ハキの家まで行けるか?」


 「馬鹿にするな。 俺は方向音痴じゃないぞ」

 三人で笑うと、キースは去っていき、僕とヤーレンはそれぞれに馬車を動かした。


 館の門番は僕たちが近づくとすぐに門を開けてくれた、ちょっと礼を言って、僕らは町中へと馬車を向けた。

 もう何度も領主様の館には来ているし、前には町中を歩き回ったりもしたので、僕の頭の中に地図は出来ていたので、ハキの家には迷わずに行くことができた。

 まあ、一番大きな商店を目指せばハキの家なので、誰でも迷わないのだけど。

 僕らがハキの店に近付くと、店先で僕らを待っていたらしいハキに店の裏側の物資の積み降ろし場に案内された。 そこには昨晩領主館の方に来たハキの父親と兄も待っていた。 僕は馬車を降り挨拶をする。

 「おはようございます。 ハキの迎えと、物資を受け取りに参りました」


 「おはようございます。 おや、もしかしてあなたは大鳥の羽根を売っていただいた方ではありませんか」


 「はい、その節にはお世話になりました。

  あの時はまだ、僕がハキの友人であることも、ハキが生きていることもお伝えできずに失礼しました。 ハキの友人のアレクと言います」


 「なるほど、そうでしたか。 いえ、お気になさらず。

  私は、あなたとあの時お話しして、より一層ハキの生存を強く信じていたのですよ。 明かせない事情があったことも理解しましたので、何も問題ありません」


 「はい。 ありがとうございます。

  同様に、こっちも友人のヤーレンです」


 「はじめまして、僕もハキの狩人学校時代からの友人のヤーレンと言います」


 僕たちがハキの親父さんに挨拶しているので、それにハキの兄も混ざろうとしたのだが、ハキに

 「ほら今日はそんなに悠長に挨拶している時間なんてないだろ。 すぐに物資を積み込んで、館に戻るぞ」

と言われて仕事に取り掛かることになってしまい、タイミングを逃してしまった。 ハキは多分に恥ずかしい気持ちがあった感じ。

 ま、とりあえず僕たちは用意してまとめられていた物資を馬車に積み込んで行く。

 かなりの量の物資が用意してあった。


 「随分な量だな。 馬車2台でということだったから、予想はしていたのだけど、こんなに何が必要なんだ」

 僕はハキに尋ねずにはいられなかった。


 「今、ラミアの里には騎士20人に三食食べさせるだけの余裕がないだろ。 だからその分の食料に、それから馬の糧秣の不足を補わねばならない、その二つが一番の場所取りかな。 でも一番重要なのは、30人分の盗賊の衣装だよ。 バレないようにマントというかフードも用意したのだけど、その用意が一番大変だったと兄貴は言ってた。 あとはまあ、その他色々だ。 今回の件以外の物も少しは買っているしな」

 ちらっとハキはヤーレンの方を見た。 ま、それは後からわかるだろうからいいや。


 「さ、とにかく積み込みが終わったら即座に大急ぎで館に戻ろう」

 僕たちはハキの親父さんたちへの挨拶もそこそこに館に戻った。


 館に戻り、僕たちは馬を厩舎に戻した。 馬車は厩舎の前に中の荷物と共にそのまま置いておく。 厩舎には館の人がいるから、何も心配する必要もない。


 僕が離れに戻ると、

「あ、やっと戻ってきた。 アレクも早く着替えて」とナーリアに言われた。


 見ればすでにみんな着替えて防具なども装備している。 流石にヘルメットは被っていないけど、それ以外は完全装備だ。


 「ウスベニメがさっき飛んで周りを見てみたら、もう町の東側の草地には人が集まっているみたい。

  私たちもこれから早めの食事をとったら、すぐに玄関前の広場に集合よ」


 僕は大急ぎで着替えて、防具を付けた。

 みんなは完全装備だが、ウスベニメとモエギシュウメはいつものままだ。 僕はちょっと気になって二人に聞いた。

 「お前らは防具を付けたりしないのか?」


 「うん、基本、ハーピーの女性はラミアと違って戦場に出ないことになっているから、私たちは防具の類を持ってないの。 エレオンたちは、男だから持ってきているから、装備していると思うわ」

 モエギシュウメが答えてくれた。


 そうこうしているうちに、メイドさんが昼ご飯を持ってきてくれた。

 僕たちはなんとなく落ち着かない気分で、そそくさと昼ご飯を食べたのだが、味なんて全く分からなかった。


 食べ終わって、出て行く時間を待っている。

 「そろそろ集まり始めたみたい。 ん、誰か来た。 デイヴかな」


 ドアが開き、デイヴが声をかけてきた。

 「おい、そろそろ出るぞ。 みんな用意はいいか」


 玄関前には、この前見た時より多く、総勢100名くらいの騎士が集まっていた。 僕たちが離れの入り口から出て行くのとほぼ同時に、宿舎から友たちも出てきて、騎士たちが集まっている中央に、僕らが並ぶ隙間が出来ていて、そこに並んだ。


 「ナーリア殿は指揮官だから、こちらに来て欲しい」

 領主様に呼ばれて、ナーリアだけは領主様、アルフさん、タインさん、それにカーライルさんとストームさんが並ぶ全体の前の場所にならばされた。

 ナーリアは一瞬、えっという顔をして、セカンやディフィーの顔を見たが、二人とも「当然でしょ」という顔をしたので、何も言わずに前の列に並んだ。


 「皆の者、ご苦労。

  これより、もう皆も知っている、予てよりの懸案であるフロードを、速やかに排除する。 今回の行動はこれから二日に渡る行動だが、各自それぞれの指揮の下に迅速かつ冷静に行動してくれ。

  まず第一に、集まった諸公に今回の事態の説明をし、また作戦を伝え、それぞれの役目を命令しなければならない。 今回の事態の説明は、儂が直々にあたる。 その後、ラミア・ハーピーとの同盟がなったことも伝え、今回の作戦は共同で行うことも儂から伝える。

  その後、諸公へ作戦を伝えたり、命令を伝えたりは主にカーライルとストームで当たる。 そしてそちらの隊の指揮官はバンタインとする。

  また、別働隊は途中からその場を離れ、こちらに戻り、それ以降はナーリア殿の指揮の下、速やかに行動せよ。 こちらの隊にはアルフレッドも、元からこちらに所属するデイヴィッドと共に加わる。

  儂は直属の30名と共にここに残り、其方達の吉報を待つことにする。

  以上、何か質問はあるか?

  よし、それでは全員、行動に移れ!」

 領主様の命令の下に、騎士たち全員が動き始め、領主様たちのところには馬が引いて来られた。


 「それではナーリア殿、その時が来たら使いを寄越すので、そうしたら打ち合わせ通りに東の平原に来てくだされ」

 「はい、領主様、了解しました」


 玄関前の広場には僕たちだけが残った。

 「何よ、デイヴ。 私だけ前に並ぶなんて聞いてなかったわよ」

 ナーリアが真剣に怒っている。


 「いや、教えておこうと思ったのだが、セカンとディフィーに止められたんだ」


 「ナーリアにもし先に教えておいたら、ナーリアは絶対嫌がるのが分かっていたから、わざと教えないでおいた」


 「セカン、それ酷くない?」


 「ナーリアは指揮官なんだから、それも私たちだけじゃなくて騎士たちもアルフさん含めて20人も率いるのだから、前に並ぶ必要があった。

  そこをゴネられても困るから、苦肉の策よ」


 「先に言ったら、ナーリア、ゴネたでしょ」

 ディフィーとセカンの言葉にみんな「ウン、そうだね。」と納得の顔をしていたので、ナーリアは余計に膨れたが、それ以上は何も言わなかった。


 僕たちは少しだけ時間が空いた。

 馬車の用意はハキとヤーレンが行ってくれたので、僕はちょっとエレオンたちに声をかける。

 「ふーん、ハーピーの防具って、そんな形なのか、ちょっと変わっているな」


 「ああ、ハーピは上から攻撃するからな、逆に防具は下からの攻撃に備える形になるんだ。 ただこれ着けてると、重いし、風を変に孕んで飛びにくいし、あまり着用したいものではないのだけどな」


 「それに、これ着けてると、実は飛ぶと逆に寒いんだよ。 今の時期はだから嫌だな」

 エレオンとハライトがそんなことを答えてくれた。


 「うん、確かにカッコ悪くて、私もそれは着けたくないかも」


 「レンス、カッコ悪いなんて言うな」


 「え、だって、ウスベニメもモエギシュウメも着けないからさ、なるほどなと思って」


 「いや、ハーピーは女性は戦場に出る伝統がないからだぞ」

 アライムが真剣に反論している。


 「でも、これからは変えていかないといけないと思う。 ラミアが戦場に出るのだから、私たちが出ないのは問題があると思う。 それを考えると私も防具が欲しいわ」


 ウスベニメがそんなことを言うと、モエギシュウメも

 「そうね。 私たちだけ、安全なところにいるのは嫌だわ。」と同調した。


 「アレク、大鳥の革を使えば、もう少し良いモノができる気がしない?」


 セカンの言葉に僕は

 「うん、確かにもう少しどうにかなりそうな気はするな。 あいつらの着けている防具は革製みたいだけど、いかにも重そうだし着けごこちが悪そうだもんな」


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