24. 肉が食いたい
数日が経った。
数日といっても、あれから毎日一人づつ脱皮し、今朝最後のサーブの脱皮が終わっただけの日数しか経ってない。
一日に、朝と夜と2回精の放出を何となく義務付けられた僕なのだが、セカンと同じ行為をするのは夜だけになった。 理由は単純で、セカンのその行為後の気を失ったことから始まり変化が大きかったので、朝はすぐに仕事が控えていることもあって、単純に控えようということになったからだ。
それで順番を守っていると、最後がサーブになったというだけのことだ。 それでも対して日数がかかる訳もない。
結局、僕が夜にセカンと同じことをした順に脱皮したから、脱皮はそのせいと言えるかも知れないけど、他のラミア、特に上位のラミアやカウンターの元ラーリアさんも、そこについては何も言わないから、ナーリアたちがそういう時期にきていただけだったのかも知れない。
結論が出ない。
でも、全員が脱皮するという大きな変化を起こして、どうも自分たちの変化が激し過ぎるのではと、怖くなったのか、目立ち過ぎをより深刻に考えるようになったのか、しばらくの間はもう危険なことは止めておこうということになった。
僕は心には変化が起きた。
エネルギーとして採取されているだけ、と思っていた時は、ラミアに精を搾り取られているという、なんていうか被害者意識みたいなものだけで、快感を感じてはいたけど、それを与えてくれるラミアに心は動かなかった。
ところがセカンとの行為では、セカンに「気持ち良いって言って!」なんて懇願されたせいもあるのだろうけど、僕はラミアに精を搾り取られているという意識よりも、もっと普通に女の子を愛する行為をしているという意識になってしまった。
他のみんなにもセカンと同じ行為を求められ、もちろん僕はそれを拒否できなかった訳だけど、みんなその行為に期待と不安と、それと少しこれは僕の希望かも知れないけど、快感に震え、僕の精の放出を受けると、程度の差はあるけど気を失った事によって、僕は、搾り取られているという意識ではなく、何だか与えているというような意識に認識が変化してしまった。
セカンの時にその変化の兆しはあった気がするが、ディフィーの時にはもう明らかにその認識の変化を意識してた。
ナーリアの時にはその行為が嬉しくなっていた。
レンスの時にはレンスが本当に愛おしく思えた。
サーブの時にはサーブが自分もと欲しがるより、僕が早く与えたくて仕方なかった。 そして、自分もと求めてくるサーブが可愛くて仕方なかった。
だから、その行為はしばらく止そうと話し合いで決まったのは、ちょっと、いやかなり残念だった。
5人とも体が成長して魅力が増しているんだよ、残念に思うでしょ。
自分でもラミアに対して、こんなに簡単にこんな気持ちになって良いのだろうかと思う。
女、恋愛、セックス、そんなことに費やしている時間も余裕もなかった僕は、全くそれらに耐性がなかったからかも知れない。
でもこの部屋のラミアたちの視線や態度は、明らかに僕に対しての親しみを増していて、暖かいものになっている。
最初の頃は感じられた警戒感も今は全くない。
まだ一週間なのに、こんなに馴染んでしまって良いのかと、本気で自分を疑う。
それでもなんだか今を幸せに思ってしまう、良いのかそれでと思いながらも。
「僕の人間社会での仕事はなんだったか分かる?」
休憩時間のおしゃべりに僕はそう言ってみる。
「なんだっけ、学校に行っていたって言ってたよね。 学校というのがよくわからないけど」
ディフィーが答えてくれた。
「うん、そうなんだけど、狩人になるところだったんだ」
「狩人って?」
レンスが訊いてきた。
「森で獣を獲る仕事なんだ」
「そうか、なら獲っていいぞ。 ラミアだって獣も獲る」とサーブ。
「ラミアは何で獣を獲るの?」
「そんなの毛皮が欲しいからに決まっているじゃない。他に何の必要があるの」
ディフィーが決めつける様に言った。
「人間はそれだけの為じゃなくて」
「食べるためよね。 食べているのをこの間遠くから見た」
「よく見てたな、セカン。 そう食べるためでもあるのさ」
「いいんじゃない。 私たちは食べないけど、アレクは人間なんだからラミアとは違うのだから構わないんじゃない」
ディフィー、言い方が投げやり。
「そう僕は獣の肉が食べたくてしょうがないんだけど、食べるためには火で焼いたり、煮たりしなければならないんだ。
だけど、とても不思議なんだけど、僕はラミアの集落に来て、火を使っているのを見たことがないんだ」
「ラミアは火を使わないもの」とレンス。
「えっ、ラミアって火を使わないの、全く?!!」
僕はとても驚いた。 ラミアが精以外は主に種を食べる事はよ〜くこの一週間でわかったけど、まさか火を使わないとは思わなかった。
だってこうやって普通に喋って、社会を営んでいる生物だよ。 住処や武器を使っていることなんかからも、火を使わないなんて文明的におかしいでしょ。
サーブが説明してくれた。
「ラミアは火に弱いんだ。 上半身も強いとは言えないが、尻尾の部分は火の粉が少しかかるだけで傷を負う。
だから人間との争いの時には、ラーリア様たちが火に近い場所を請け負う。 一番危険度が高いからな。
アレクたちが捕まった時もそうだったろ」
えー、ラミアってとても強いイメージなんだけど、そんな重大な弱点があるの。
でもそんなこと人間である僕にしゃべっちゃって良いのかな。
あ、セカンがびっくりした顔してる。 やっぱり話して良いことではなかったのかも。
「それなら火の粉がかからない所に離れてもらって、僕だけが火を使うのはダメかな。
離れるのがダメなら、煙突を付けた竃を作れば、ほぼ火の粉は防ぐことができるから、それならどうかな」
「これは私たちには決められないよ。 重大なこと過ぎるもの。 かなり難しいと思うけど」
ここでナーリアが口を挟んできた。
「ダメかなぁ。 人間にとっては獣の肉が食べれないとしたら重大問題なんだけど」
「どういった問題なの?」とディフィー。
「必要な栄養が取りきれず、体が弱くダメになってきちゃう」
「精を出すのにも影響する?」
そこはブレないのね、レンス。
「ああ、嘘じゃなくモロに影響すると思うぞ」
急にナーリアたちの顔のが深刻になった気がする。
「ミーリア様に相談してみようよ」
ナーリアが決意を込めた様な声で言った。




