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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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238. ラミアも空を飛ぶ2

 翌早朝に簡単な食事だけを頂いて、僕たちは揃って領主様の館を出てきた。

 領主館の中はともかく、町でナーリアたちの姿が見られると騒ぎになりそうだから、人目につきにくい早朝を選んで出てきたのだ。

 夕方に出たのでは、ラミアの里に帰りつくのが夜遅くになってしまうから。

 来た時と同じ様に、二台の馬車に騎乗が5人で、僕は朝に目立つかなと思ったのだが、町の人は自分たちのすることに忙しいのか、気にもされず、あっさりと町から離れることができた。 ま、そんなものだよね。


 連絡は前日にハーピーに頼んでおいたけど、思ったよりも早く館を出れたので、僕はまだ森の入り口のカモフラージュは撤去されてなくて、入るのに作業が必要かと思っていたのだが、既にカモフラージュはミーリオ様たちの手で撤去されて、すぐに中に入れる様になっていた。


 「ミーリオ、ありがとう。 随分早朝の作業で悪かったわね」


 「ここに居るだけだと、暇ですることがないからね。

  それに現実的な話をすれば、まだ寒いんで体を動かして温めるために早くから作業を始めたんだよ」


 ああ確かにと僕は思った。 僕たちは暖かい館の中や宿舎の中にいたから寒さが問題になることはなかったが、ミーリオ様たちはまだ寒いこの時期に戸外で夜を過ごしていたのだから、いくら簡単なカマドを作ってずっと火を焚いていたとはいえ、きっとかなり寒かったことだろう。

 僕たちは馬と馬車を中に入れて、全員でミーリオ様たちの指示の下にすぐにまた入り口をカモフラージュした。

 洞窟の方の入り口のカモフラージュに友たちが驚いていたが、その時は僕は直接に見ていなかったので、今回のカモフラージュを見て、確かに凄いと僕も驚いた。

 僕はわざわざ一度森から出て、外から眺めてみたのだけど、全くどこが入り口なのか違いが分からなかった。


 そんなことをしていたらミーリア様に怒られた。

 「アレク、何をしているの。 そんな不必要なことをしていないで、すぐに行動するわよ」


 「はい、すみません。 でも、あまりに素晴らしいカモフラージュなので、なんだかきちんと眺めてみたくなっちゃって」


 「ああ、それ分かるよ。 ここまで完璧なカモフラージュだと、確かめたくなっちゃうよね」


 近くにいたエレクが僕の言葉に同意してくれたら、ヤーレンも

 「俺も前にシゲシゲと眺めていて怒られたよ」

と、人間たちの間で「このカモフラージュは凄いよな」と話が盛り上がりかけた。


 ミーリア様は何が凄いのか分からないという顔をしていたが、

 「ほら、そういう話は動きながらでもできるでしょ。 今はすぐに行動して」と僕たちを急かした。

 ま、当然のことだ。


 「メリー、そういうワガママ言わないの」


 「だって、メリーはお兄ちゃんと馬に乗っていると眠くなっちゃうから、それよりもモエお姉ちゃんかハトのお兄ちゃんとお空飛んで早く帰って、イクス母様に色々お話ししてあげたいのだもの」

 メリーは空を飛んで早く帰りたいと駄々をこねている様だ。


 「メリー独りだけ空を飛んで行ったら、みんなびっくりしちゃうし、お空に独りは寂しいよ。 結構距離あるし」


 「モエお姉ちゃんか、ハトお兄ちゃんとお話ししているから寂しくないもん」


 「それなら、このレンお姉ちゃんもメリーと一緒に空を飛んで帰ろうかな」


 モエギシュウメとハライトは、メリーを飛んで帰してあげたい気持ちだったみたいだが、姉妹の話し合いに口を挟まずにいたが、レンスが言い出したことには口を挟んだ。

 「レンス、お前、簡単に言うけど、大丈夫かよ。

  俺はディフィーみたいなのは、もうゴメンだぜ。 あれは飛んでいる俺たちもけっこう参るんだ」


 「断定はできないけど、あの二人よりはマシだと思う。 試してみる価値はある」


 その自信はどこから来るんだ、と思ったのだけど、確かに試してみる価値はあるな。 ディフィーとセカンの様子でラミアが空を飛ぶというのを諦めてしまったけど、二人が苦手だっただけで、他のラミアなら大丈夫という可能性はまだある。

 レンスが試してみたいと言うなら、試してみる価値はある気がしてきた。


 「アン、メリーはちょっとイクス様が恋しくなって来ちゃったんだよ。

  レンスが飛ぶのを試してみたいと言うなら、それは意味があるから、そのついでということでメリーも先に空を飛んで帰っても構わないんじゃないか」


 「モエギシュウメ、ハライト、迷惑じゃない?」


 「私は別に構わないわよ」

 「俺も構わないぞ。 大したことではないしな」

 モエギシュウメとハライトがそう言うとウスベニメも

 「私も構わないわ。 レンスが飛ぶなら、私も必要でしょ」


 「メリーだけ先に帰ったら、イクス様たちに迷惑じゃないかしら?」


 「それは大丈夫、お母さんはメリーが先に帰ってきたら、喜ぶだけ。

  それに私も一緒するから、アンは心配する必要ない」


 「確かに、レンスも一緒に行くなら、別に問題ないか」


 「やったー。 お姉ちゃん、ありがとう」

 メリーは場の空気を読んで、もう結論を先取りしてウキウキしている。


 「それじゃあ、私が二人の防寒着や、ラミア用の網とかを取ってくる」

 「モエギシュウメ、私も付き合うよ。 レンスの防寒着はどうする?」


 ウスベニメがそう言うとレンスが

 「セカン、防寒着貸して」


 「私はきっともう空を飛ぶための防寒着は使わないから、好きに使って構わない」


 「分かったわ。 セカンの防寒着を持ってくるわ」

 ウスベニメはちょっと苦笑しながらそう言った。


 「ウスベニメ、今、何か変な想像したでしょ」

 セカンがちょっとウスベニメを睨んでそう言った。


 「んーん、何も想像したり、思い出したりしてないよ」

 ウスベニメが焦ってそう言った瞬間、モエギシュウメが吹き出し、僕も、あ、そういうことかと気がついて、吹き出しかけたが堪えたのだが、レンス、ナーリア、サーブも吹き出している。 ディフィーは苦い顔をして言った。

 「レンス、笑っていられるのも、今のうちよ」


 他の者は、何を笑っているのが分からないので、疑問に思ったみたいだ。

 ギュートが聞いてきた、

 「なあ、アレク、一体何が可笑しかったんだ?」


 僕はセカンの名誉のためにも言葉を濁した。

 「いや、ちょっとな。 ま、大したことじゃない」


 モエギシュウメとウスベニメが物を取りに飛び去ったあと、僕らはミーリオ様たちを馬車に乗せて、僕たちは全員馬車を降りて歩いてラミアの里に向かうことにした。

 馬車が2台しかないので、ミーリオ様以下の9人しか乗れないのだ。 寒い外で一晩過ごしたミーリオ様たちを労ってのことだ。

 ミーリア様は馬車にそのまま乗っていてくれても構わなかったのだけど、それはちょっと優遇が過ぎると、自分から降りてしまわれた。

 御者はアンとギュートが務めたのだが、僕を含めた騎乗組は替われる者がいないので、そのままだ。 なんだか一番優遇されているみたいで、ちょっと居心地が悪い。 男のハーピー3人は一人がそれでも領主の町と砦の監視のために飛んで、交代しながら少し待機という感じでゆっくりしている。

 しばらくすると、ウスベニメとモエギシュウメがかなり急いだ感じで、戻ってきた。

 僕もどうしたんだと思ったのだが、ハーピーの男3人も異変を感じたのか、集まってきた。


 「大変大変。 ギュートを大急ぎで連れて来てって頼まれちゃったわ。

  それでアレクの防寒着も持ってきたわ。 ギュートはそれを着て」

 「え、俺?」


 モエギシュウメがそう言って、ギュートに防寒着を渡して、早く着ろと急かしている。

 こっちではウスベニメに渡された防寒着をアンがメリーに大急ぎで着せて、レンスも防寒着を着ている。 尻尾に着ける毛皮をナーリアたちが手伝っている。


 「エレオンかアライムか、どっちかがギュートと飛んで」

 ウスベニメの言葉に

 「じゃ、エレオンが監視の番だから、俺がギュートと飛ぶよ」

とアライムが役目を買って出た。


 「で、何があったの?」

 ミーリア様が二人にちょっとだけ切迫した声で尋ねた。


 「あ、すいません。 馬が産気づいたんで、大急ぎでギュートを連れて来いとラーリア様に言われたんです」


 「あ、そういうことか。

  ハキ、ヤーレン、お前ら二人も馬を駆けて、先に行ってくれ。 俺だけじゃ、手に余る可能性もあるからな」


 ギュートの言葉にハキとヤーレンは

 「「分かった。 俺たちは先に出るぞ。」」と馬を駆けさせて先に出発した。


 「馬がもう臨月だったのを忘れてたな。 無事に生まれるといいな」

 ボブがそう言った。


 僕たちはみんな少し緊張が走っていたのだが、その緊迫感は薄れ、ちょっと違う気持ちが生まれた。

 僕は、今回は馬だったけど、もうすぐ自分の子供も生まれるんだった、と改めて思った。 友たちもちょっと神妙な顔をしているから、きっと同じことを考えたのだろう。


 安全のためのロープで、レンスを網に縛りつけ終わると、ハライトが言った。

 「よし準備は終わった。 俺たちもすぐに出発しよう」


 ギュートは急に空を飛ぶという現実に直面したことに気がついたみたいだ。

 「ちょ、ちょっと待ってくれ。

  俺は今まで一度も空を飛んだことなんてないぞ。 一体どうすればいいんだ」


 「ギュート難しくはない。 腕を水平に開けば良いだけだ。 あとは俺に任せて静かにしてろ」

 アライムがそう言うと、ギュートは同じ格好をしているメリーを見て、同様のポーズをした。


 「それじゃあ、メリー行くよ」

 「はい、モエお姉ちゃん」


 「レンス行くぞ。 喚くなよ」

 「ハライト、私は二人と違う」

 「レンス、大丈夫だからね」


 メリーとレンスは静かに空に上がっていった。


 「じゃ、俺たちも行くぞ」

 「ああ、よろしくお願いします」

 アライムはそれでも気にして、ゆっくりと高度を上げていった。


 「うおっ、うおっ、うわーっ」

 野太い悲鳴が、辺りに響いた。


 「こらっ、喚くな。 暴れるな」

 「ギュート、うるさい」

 「ギュートお兄ちゃん、怖いの?」


 アライムと、上空で待っていたレンスに叱られ、メリーにも怖いのかと質問されたギュートは青い顔になりながらも、

 「すまん、初めてのことで、ちょっとパニクった。

  もう大丈夫だ。 少なくとも暴れたり、喚いたりはしない。

  メリー、ギュートお兄ちゃんはお空が初めてだから、ちょっとびっくりしただけで、もう怖くないぞ。 一緒にお空を行こうな」

 そう言って大丈夫なことをアピールした。


 「よし、それじゃ、先行くぞ」

 ハライトの一声で、ハーピーたちは飛び去って行った。 ギュートもレンスも悲鳴は上げなかった。


 「ギュートの奴、メリーにああ言われたら、流石に悲鳴は上げられないよな」


 珍しくバンジがそう茶化すとキースが言った。

 「いや、大したもんだよ。 何も予期してなくて急に飛んで、最初声が出たけど、すぐにやせ我慢でも普通に話せれば十分だよ」


 「そんなもんなのか?」

 ケンがそう言うと、デイヴが

 「ああ、あれは体験してみないとわからないが、足の下に何もないのはすごく不安になるんだ。 水でも深いところだと不安だろ。 あれよりも何も感じないから、慣れないとすごく怖いんだ」


 僕は言った。

 「こういうこともあるから、ハーピーに頼んで全員空を飛ぶ経験をしておいたほうが良いな。 もしもの時に怖くて飛べなくて後悔したくない」


 ここまでに人間である友たちに対しての言葉だったのだが、次にはナーリアたちに向けて言った。

 「レンスは、ディフィーとセカンに比べると大丈夫そうだった。 僕はラミアは空を飛ぶのはダメかと諦めかけていたのだけど、人によるのかもしれないと考え直したよ。

  人間だけでなく、ラミアももっと試してみて、飛べるか飛べないか調べてみようよ」


 「うん、レンスが大丈夫そうに見えたから、私もやっぱり飛んでみたいぞ」

 サーブがそう言った。


 「私も、ディフィーとセカンの話で諦めていたけど、試すくらいはしてみたいかも」

 ナーリアもそう言った。


 「はいはいはい、私もちゃんと飛んでみたいわ。 立候補する」

 「私ももっと高いところを飛んでみたいかな」

 ロア様とアレア様もそう言った。


 「アレク、私もとりあえず一度もっと高いところも経験しておきたいわ」

 ミーリア様も乗り気だ。


 「ミーリア、あなた飛んでみたことあるの?」

 ミーリファ様がミーリア様に聞いた。


 「えっ、ほんの低くちょっとだけよ」

 「何それ、ずるい」

 なんか非難轟々だった。


 あれっ、ロア様とアレア様もアリファ様に問い詰められていた。


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