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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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229. 戻った夜

 「それにしても、みんな何事かってすごく驚いて、上を見上げていたわよ」

 ナーリアがディフィーにそう言うと、ディフィーは、「えっ、何の話」という感じで一瞬びっくりした顔をした。


 「ま、あれだけ絶叫が響いたら、誰だって驚いて何かと思うよ」

サーブもそう言った。


 「ロア様が笑い出したら、なんか可笑しくなって、私たちはみんな笑ってしまったけど、訳がわかっていない人は何事かと思ったみたい。

  でも、私はあんなに笑っているアレア様を初めて見た。 普段あまり感情を表さないタイプだから、なんか新鮮だった」


 「そうだな、私もあんなアレア様は初めて見た。 『笑いすぎ』ってアリファ様に背中を叩かれて、『痛っ!! もう少し手加減して』と言いながらまだ笑っていた」


 レンスとしては長い言葉を話したが、それにまたサーブが補足した。 どうやら空を飛んでみるのを試した組は、すぐに状況を理解して大笑いしたようだ。


 ディフィーは油切れを起こした道具のような調子で

 「もしかして、私が恐怖で空の上で絶叫していたの、聞こえてた?」


 「ディフィー、聞こえるも何も、木の上ギリギリくらいを絶叫しながら飛ぶんだもの。 聞くなって言われたって、聞こえちゃうわよ」

 ナーリアがそう答えると、ディフィーはがっくりと肩を落とし、

 「恥だわ。 恥をみんなに晒してしまった」と呟いた。


 「ディフィー、そんなに落ち込まないで。 私も初めてウスベニメと飛んだ時は、恐怖で絶叫して飛んだのをみんなに聞かれたから」


 「でもあの時はまだ、聞いてたのはたぶん、ミーリア様たち、ミーレオ様たちとラーリア様たちの一部、ま、あと人間たちもいたけど。 でも今回は、アーリア、アーレア、アーロアの人たちにエーレアたちもいたのよ。 上位全員に聞かれちゃったのよ」

 もう最後の方は聞き取れないくらいになっている。


 「でも、ディフィーは悲鳴が出ただけ偉い。 私なんてすぐに完全に固まって、声も出なかった。 今回ほどラミアが下に履くのがズボンでなくて良かったと思ったことはない」

 セカンが変な慰めの言葉をディフィーに言った。


 どういう意味なのかな、と僕が思っていると、サーブが聞いた。

 「セカン、何を言ってるのか全然分からないぞ」


 「私は、空を飛んで高度が上がったら、恐怖で声も出なかったし、ウスベニメにしか気づかれなかったけど、実は出てしまった」


 「出たって何が」


 「サーブ、最後まで言わせるな。 恐怖のあまり漏らしてしまった、ということだ」

 セカンも流石に恥ずかしかったのか、横を向いてサーブに言った。


 「あ、そういうことか、確かに人間だとズボンだから大変なことになるが、ラミアは巻いているだけだし、少し腰から下を動かせば、飛んでいる時は下は網だからほぼ空中に振りまいただけか」


 「サーブ、そこまで念入りに解説しなくてもいい」

 セカンが真っ赤になってサーブに抗議した。


 「もしかして、私たち気づかずにセカンのオシッコ上から浴びてたの?」

 ナーリアがすごく嫌そうな声で言った。 セカンは大慌てで否定した。

 「流石に下に誰もいないところまでは、なんとか必死に我慢した」


 僕は思わず吹き出してしまった。 大きな声で僕が笑ってしまったので、僕は口をレンスに手で塞がれてしまった。


 「アレク、そんなに大声で笑ったら、メリーが起きちゃう」

 「ごめん、つい可笑しくて」


 すごく恨めしそうな目でディフィーとセカンが僕の方を見るから、またつい吹き出しそうになったのだけど、レンスに口を塞がれているので、声は出さずにすんだ。


 レンスは僕の耳元に口を持ってきて言った。

 「アレク、そろそろ集中して、出して。 私、もういっちゃいそうだから」

 レンスはこの話をしている最中、途中からはずっと、そしてさっきからは真剣に腰を振り続けていたからだった。


——————————————————————————-


 「デイヴ、今晩はとりあえず頑張れ」


 「ああ、ボブ、分かってる。 しかし、何なんだろう、この気分。 数日珍しく間が空いたからか、やっぱり楽しみにしちゃって張り切る気分と、今晩は大変だぞって、ちょっと逃げ腰気分が混ざっているんだ」


 「あははは、わかる気がするぜ。 俺は元からみんな起きているから、あまり関係ないのだけど、他の奴らは、お前らが街に行った日からはまず起きたばかりのアーリア、アーレア、アーロアを相手しているからな。

  ま、お前は今日は最低限は2人だろうけど、キースは最低限3人になるんじゃないか。 明日のお前らの顔が楽しみだよ」


 「ボブ、それ今は冗談に聞こえねぇよ」


 「あはははは・・・」

 ボブは笑いながらアレア様の部屋のドアをノックすると中に入って行った。

 「あれ、ロア様も来ていたんですか?」


 「ボブだけ相手が一人だと可哀想だから来ててあげたのよ」


 立ち止まっていても仕方ない、俺はこの通路の反対側の一番奥から2番目のドアをノックして入る。

 「今日はこの部屋にラリオ様を除いて全員集合ですね」


 「ああ、今晩はアレオとローが起きて、デイヴがいる初めての夜だからな。 ラリオ様も含めてラーリア様たちはみんな配慮してくれて、人間をみんなこっちに寄越してくれたからな。

  さあ、アレオ、ロー、昼間は忙しくてできなかっただろうが、良いぞ触って確かめてみろ」


 ミーリオ様がそういうとミーレオ様も

 「ほんとびっくりしちゃうわよね。 私も起きた最初、デイヴが見つからなくて、何かあったのかと焦っちゃたわ」


 「えっ、ミーレオ様、そうだったんですか」


 「当然よ、人間は脱皮しないことを知っていたから、まさかこんなに体型が変わっているとは想像したこともないもの。 顔をよーく見て、触って確かめなくては信じられなかったわ」


 俺はそんなことを話しながらのミーリオ様とミーレオ様に服を脱がされて裸にされてしまった。


 「はい、アレオ、ロー、今日はあなたたち二人が優先よ。 とにかく、まず触ってみたら」

 何だか珍獣扱いされている気分だ。


 「アレオ、譲ってもらっているんだから、とりあえず触ってみよう」

 「そうね、ロー。 どうも今一つ確信が持てない気分だわ」


 アレオ様、ロー様が左右から俺の体をペトペト触ってくる。

 俺も二人のことを前と同じに触り返す。


 「うーん、前はこんなに引き締まった身体してなかったから、何だかちょっと違和感があるわ。 でもこの私の身体を触ってくる感じは前と同じだよ、アレオ」

 「うん、そうね、ロー。 それに注意して匂いを嗅ぐと確かにデイヴの匂いだよ」


 「そんなに疑わないでください。 本当に俺ですって。 それに俺の友たちはみんな近接戦闘訓練で引き締まった身体になっちゃってますから」


 「うん、あれは酷い。 あれだけのことをしてたら人間だって体型が変わってしまうのも納得だ」

 ミーレオ様は近接戦闘訓練を思い出しているようだ。


 ミーリオ様が肩を叩いて同情するのかと思ったら、

 「ミーレオ、まだまだこんなもんじゃないよ。 今はまだお前たちがついてこれてないから、ラーリア様も手加減してくれているんだよ。 まだこれからだから頑張ろうね」


 ミーレオ様が「ええっ、もっと厳しくなるのですか」というもの凄い嫌そうな顔をしたのを見たアレオ様がちょっとだけクスッという感じで笑った。


 「アレオ、ロー、笑っていられるのも今のうちよ。

  道の復旧が一通り終われば、あなたたちも訓練に参加しろと命令されるわよ、きっと。

  そうすれば、この私の絶望の深さを身をもって知るでしょう」


 「何だかミーレオ様、不吉な予言ですね」


 「ロー、これは予言ではないわ。 ほんの少し先に起こることが確定している事実よ」


 アレオ様とロー様は実感を持てないからだろう、ちょっと困惑した笑みを漏らした。


 「ミーレオ、そんなに二人を怯えさせようとするな。 ま、確かに、デイヴがこれだけ体型が変わってしまうくらい厳しいのは確かだがな。

  そういえば、二人はアレア、ロア、アリファとも仲が良いのだよな」


 「はい、元々子供の頃はアーリルも入れて6人でグループでしたから」


 「ああ、アリファ、あいつは化け物か」ミーレオ様がそう呟いた。


 「えっ、アリファがどうかしましたか。

  確かに起きたらアリファが物品係になっていたのにはびっくりしましたけど、でも考えてみたら物品係なら片手でも出来る気がしますし、やはり上の人はしっかりと色々考えてくれるんだな、って私、思いました」


 「アレオ、お前、今、物品係なら、戦闘をすることもないし、片手でも出来るだろうからアリファに良いと思ったのだろう」


「はい、違うんですか」


 「ああ、お前らが寝ている間に人間との戦闘があったのだけど、アリファはその戦闘に参加して、しっかり戦功を挙げているぞ」


 「ミーリオ様、そうなんですか。 そこら辺は私もよく知らないのですけど」


 「ほら、ナーリアが言っただろ、『身近でアリファの実際の戦闘を見た私たちには、アリファと戦うのは自殺行為にしか思えない』って」


 「ああ、そうでした。 それって人間と戦ったのですか」


 「えーと、どういうことですか」


 「ああ、アレオにはわからないな。 アリファはな、このミーレオが『自分が下がるからミーレアになれ』と言うほどの実力なんだ。 ま、正直私もナーリアたちと一緒で、もしあれと敵対したら戦闘を避けるな。 負けるまでは言わないが、勝てる気は全くしないからな」


 「アリファはな、今では何て呼ばれていると思う。 不死身のアリファ、鉄壁のアリファだぞ。 全く勝てる気がしない。

  ま、あのナーリアたちが逃げると公言しているんだから、我らが敵うはずがない」


 「ナーリアたちが逃げると言うのが、そんな評価を生むのですか」


 「あ、そうか、分からないよな。 私たちミーレアは誰一人として、ナーリアたちの誰にも全く勝てない。 おっとただし、アレアとロアを除いての話だがな」


 「ああん。」

 場違いなロー様の声が響いた。

 だって、なんか色々考えたり覚悟してきたのに、みんな話に夢中になって手持ち無沙汰だったので、俺は途中からロー様を後ろからずっと愛撫していたのだ。


——————————————————————————


 俺が部屋を訪れると、中ではミーリン様が他のメンバーに寝ていた間のことを教えていたみたいだった。


 「ああ、キースも来たから聞いてみるといい。 私が起きる前のことも、私は聞いたことを話したのだが、キースは実際に見聞きしているのだから」


 「でもやっぱりまず一番気になるのはキースのことよね。 キースが剣がとても強いって本当なの?」

 アーリン様がそう聞いてきた。


 「ま、ある程度使えますけど、俺より強い人もいますし」


 「えっ、キースより強い人がいるの。 それは初耳だわ」

 ミーレン様が驚いた声を出した。


 「私もラーリン様からキースはラリオ様と互角で他はラーリアでも歯が立たないって聞いたわ」


 「そんなことないです。 俺は立ち合ったことないですけど、多分イクス様には勝てないし、ラリオ様だけでなく、ミーレナさんやセカンでも互角だと思いますよ。 サーブもそんなに変わらないかな。 サーブはデイヴと互角というところかな。 人間はみんな強くなってそんなに変わりません」


 「それじゃあ、今キースが言った、俺より強い人っていうのはイクス様のことなのね」


 「いえ、パッと頭に浮かんだのは別の人です。 俺の剣の師匠の人間です。

  師匠にはまだ全く敵わないですね、俺は」


 「ふーん、そんな人もいるのね。 まさか敵対しているんじゃないでしょうね」

 ミーリン様はそんな心配をした。


 「大丈夫です。 俺の剣の師匠は味方です」


 「それならよかったわ。 今のあなたたちに私たちは敵わないのに、あなたより上の人と戦うなんてことにはなりたくないわ」


 「何を言っているんですか。 得物が違えば話は別じゃないですか。 俺たちはまだいつも槍では叩き伏せられているんですから」


 「あれは訓練だからよ。 実戦であなたたち人間に勝てるなんて私たちは自惚れてないわ」


 「あのミーリン様、人間たちはそんなに強いのですか?」


 「そうね、アーレン、本気で戦ったら、ラーリア様たちでも勝てるかどうか。 今なら経験の差で互角に持ち込めるかな、ってくらいに強いわよ」


 「もうすぐ訓練がお前たちも始まるから、その時に感じるといい。 最初は絶望を感じるぞ」


 「ミーレン様、それは大げさですよ」


 「そうだキース、私が起こされるきっかけになった話を聞かせてくれ。

  ミーリドたちに聞いたのだが、やはり本人にも聞いてみたい」


 「温泉での話ですか」


 「そう、その話だ」


 「人間の野盗擬きと戦うことは、デイヴが決心したんです。

  最初ミーリア様は放っておこうかと迷っていたみたいで。

  その時に、ラリオ様とラーリン様が、『それならば、私は卵で産んで、デイヴと俺を手伝う』と言ってくれて、それでミーリア様がミーリアの下も起こして戦う決意をしてくださったんです。

  あ、ダメだ、その時のことを思うと、今でも涙が出てきちゃう」

 ちょっと恥ずかしいけど、俺にとってはそのくらい、嬉しかったし、忘れることのできない衝撃的な出来事だったんだよな。

 みんなシーンとしてしまった。


 「ラーリン様がそこまでの決意をするのは、キースに対する愛情と、その時の情勢とか色々考えることがあったのだろうと思うけど、私だって、少なくともキースへの愛情は負けてない。

 みんなもそうだよね。 ラーリン様も含めて、みんなでキースを支えるわよ」


 「「「「はい、ミーリン様」」」」

 あれっ、なんでこうなった。


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