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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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226. 次兄

 朝になり、朝食となったが、セカンもディフィーも飲み物を飲んだくらいで、ほとんど何も食べなかった。


 「昨日は夕食の時は、私たち用にと水に浸しただけの米がたくさん出たので、残すのも何だか悪いので、頑張って食べ過ぎた。

  それに私たち二人だけだから、昨晩は私、今朝はディフィーが精をもらったから、今はお腹いっぱい」


 「うん、ま、そうなるよな。

  キース、俺たち戻った時は、起きている人数も増えているんだろ。 俺たちは溜まっているはずだって、きっと搾り取られるな」


 「ま、そうなるな。 でも心配もかけているのだから、それくらいは当然だな」


 「ま、そうだな。 それは良いんだよ、それは。

  セカン、お前、昨日、何で母上の前で、ラミアの婚姻事情なんて話すんだよ」


 「婚姻事情って、何か言ったかな」


 「昔は人間の男一人に人間の女一人とラミア二人っていう話だよ」


 「ああ、あの話。 だって、ラミアのことを誤解されているのも嫌だし、アンだって変に思われたら可哀想でしょ」

 ディフィーがそう言った。


 「確かに、まあ、それは分からなくはないんだけど」


 「デイヴ、前にもう領主様と奥方様にはラミアとの婚姻事情の話は聞かれたんじゃなかったっけ?」

 僕はセカンが責められているのが腑に落ちないので、デイヴにそう言った。


 「確かに、前に扉の外から母上も聞いていたみたいだし、その後問い詰められもした。 ただ、あの時点ではまだラミアだけの話だし、それに人間が絡んで今のラミアがどう思っているかは分かっていなかった。

  母上としては、俺に人間の嫁も娶らしたいけど、ラミアの手前それを勧めて良いかに、まだ確信が持てなかったはずなんだ。

  でもセカンの話を聞いて、ラミアも人間の妻を持たすことを望んでいると知ってしまった。

  それを聞いた母上は絶対に俺に人間の嫁も取りなさいと、すぐにでも誰か探して押し付けてくる」

 デイヴはため息をついている。


 「何か問題ある? ラリオ様たちも歓迎することはあっても邪険にすることはないと思うけど」


 「いや、俺はラリオ様たちのことは全く心配していない。 もう一度言うが、心配なのは、母上がすぐにでも誰か見つけて来て、俺の人間の嫁にしようとするんじゃないかということなんだ」


 「別に良いじゃない。 デイヴだってラミアだけじゃなくて、人間のそれも男の子供も欲しいと思うでしょ」


 「確かにそう言われれば、全く実感がないけどそういう気持ちもあるかもしれないけど、そこまで行く前に色々あるだろ」


 「デイヴ、よく分からない。 奥方様が見つけてきた人間の女がデイヴのことを好きになって、デイヴも良いなと思えば仲間に入れる。 どちらかがそうでなかったら、仲間には入れない、ってただそれだけのこと」


 「ま、セカン、そう言われればそれだけのことなんだけど。

  キース、お前も何とか言え。 他人事じゃないんだぞ」


 「確かに、奥方様はウチのお袋にもその情報を流しそうだよな。

  そうしたら俺もデイヴと50歩100歩だ」

 キースも渋い顔をしている。


 僕は男二人にちょっと助け舟を出した。

 「セカン、ディフィー、ちょっと考えてみてあげてくれ。

  例えばイクス様がレンスに対して、もし『この男良さそうだから、この男と結婚しなさい』って言ったら、レンスがどんな反応するかを。

  それと、同じことなんだよ」


 「なるほど、デイヴとキースの窮状が理解できた。

  デイヴ、キース、悪かった。 そこまで考えてなかった。

  確かに、もしアレクに出会うことがなくて、イクス様がレンスにそう言ったとしたら、レンスはすごく嫌がりそうだ」


 「そうね、大喧嘩は必至ね」


 「レンスはまだイクス様と喧嘩できるから良いけど、俺なんて母上に言われたら、喧嘩にもならないぞ。

  そういう時の母上は、親父にも誰にも止められないんだから」


 デイヴが絶望的な顔でそう言ったものだから、セカンとディフィーも理解が追いついたようで、今度はとても済まなそうな顔をした。


 「ごめんなさい。 私たちは親がとっくにいないから、どうもそういう感覚が分からなくって、何だかデイヴとキースにすごく迷惑をかけたみたい」


 「ま、仕方ないよ、それは。

  でも俺たちで収まるかな、少なくともハキのところにも飛び火しそうな気がするな」

 キースが嫌な予言をした。


 食後にそんな話でワイワイしていると、領主様、カーライル様、ストーム様、今朝はデイヴの長兄のアルフさんもやって来た。 それからブマーも付いて来ている。


 部屋に入って早々ブマーが言った。

 「私は、一応昨晩承った仕事は無事完了したとだけ報告に来ました。

  私がここに長々といると怪しまれるので、すぐに元の場所に残念だけど戻っています。 何かあったら、また呼んでください」


 それだけ言うと、すぐに出て行った。 うん、何となく、ご苦労様。


 「デイヴィッド、ブマーが請け負った仕事って何だ?」


 「ん、兄貴、後でゆっくり説明してやるよ。

  今は親父たちが話を進めたがっているようだ」


 「アルフレッド、お前は昨晩なんでここに来なかったんだ?」

 領主様が息子二人の会話を聞いていて、どちらかというと叱責する感じで言った。


 アルフさんは苦い顔をして

 「私は母上に捕まっていたのです。

  『デイヴィッドに人間の嫁も早急に見つけなければなりませんが、それでもデイヴィッドはラミアにもう子を持ったということです。 それなのに長兄のあなたはまだ一人の嫁もいないのはどういうつもりですか』と問い詰められて、逃げるに逃げれなかったのです」


 デイヴだけでなく、領主様も苦い顔をした。 セカンとディフィーも「あ、こんなところにも影響が出ちゃったのか」とちょっと困った顔をした。


 「うん、そうか。 それは、ま、仕方ないな」

 領主様はさっきの叱責調ではなく同情を込めた様な声で言った。


 「ま、今は時間が惜しい、儂があまり長くここに居るのも、いらぬ警戒心を生むからな。 午前中に一回、午後に一回、そして夜と時間を区切って細切れの時間で話を進めねばならないからな。

  早速、話に入ろう」


 その言葉を聞いて、カーライル様が即座に話を始めた。

 「先ほどのブマーの報告で、そなたらの策が上手く進む可能性が高まったが、今後についてはどの様に考えているのだ。

  まずは意見を聞きたい」


 「はい。 私たちが即座の強硬策を取らない大きな理由は、失礼かもしれませんがデイヴの次兄のバンタイン様の存在があるからです。

  私たちはバンタイン様にお会いしたこともないので、どの様な方なのか、全く存じ上げません。

  ただ、ここでバンタイン様とアルフさんおよびデイヴの間に禍根を残す様な事態になりますと、ゴブに対するのにこの地方の人間が一枚岩になって対処することができなくなるかもしれません。

  そういった禍根を残さないで、今回フロードを排除できることが一番望ましい事態だと思うのです」


 セカンがまずそう言うと、次にディフィーが

 「昨晩お会いしたバンタイン様の奥方はフロードの娘ということですが、バンタイン様とフロードは一体化していると考えた方が良いのでしょうか。

  それともバンタイン様はフロードとの融和を図ろうとして、その様な結婚をなされたのだと考えれば良いのでしょうか」


 「ディフィー、もう1つ可能性があるぞ。

  バンタイン兄貴と義姉上が、純粋に好きあって、結果として結婚したというのもある。

  バンタイン兄貴と義姉上は幼馴染でもあるしな。 俺はそうであって欲しいと思っているのだが」

 デイヴがそう言った。


 難しい顔をして、長兄のアルフさんが答えた。

 「デイヴィッドの様にこうであったら良いなという願望を言っても仕方がない。

  確かにフロードは我々に、特に私にだが、対抗するために、バンタインに自分の娘バーバラを嫁がせようとしていた、それは確かだ。

  だが、だからといってバンタインがそのフロードの策略に乗せられて、フロードの娘であるバーバラを妻にしたという訳でもないと私は思う。

  そう二人が子供の頃から仲が良かったことは、私はデイヴィッドより良く知っているからな。 フロードが嫁がせようとしなくとも、私は二人が自分らで結婚しようとしたんじゃないかと思っている。

  そして、バンタインはその自分の結婚で、我が領主家と男爵家の融和を考えもしただろうとも思う」


 「つまり、アルフさんの考えでは、バンタイン様は全てに当てはまるということですか。 一体化しているという言い方は語弊がありましたが」

 セカンが尋ねた。


 「そうだね。 私はそう思うよ。

  それから付け足せば、バーバラは純粋にバンタインと結婚したくて結婚したのだと思うよ。 あの娘は裏で何かするなんてことが出来る性格ではないからね。 幼い時から知っている者には、感情がバレバレなんだよ。 そこは安心してというか、わかってあげて欲しいかな」

 この言葉を聞いて、セカンもディフィーも渋い顔をしている。


 「困ったわ。 全てに当て嵌まるとなると、どういう方針を取れば良いのか、考えようがないわ」

 ディフィーがそう言った。


 僕はそれを聞いていて、デイヴに尋ねた。

 「デイヴ、次兄のバンタイン様は、大火の原因がフロードにあることも、その後のことも全く知らないのだよな」


 「ああ、それは儂が保証しよう。 バンタインは何も知らない。

  アルフレッドには儂から教えて、儂にとっては祖父の証明書も見せてあるが、バンタインには知らせていない。

  完全にタイミングを逸してしまってな。 知らせる前に結婚が決まってしまい、その後告げる時がなかったのだ。

  それに、大火の件に関しては、仕方ない部分があるのだが、祖父から始まり、私の父、この二人からすれば祖父も、儂も、その後のことをラミアではなく、フロードの仕業ではないかと疑っていたからな、バンタインにはそれを告げるに告げられずに来てしまったのだ。

  全ては儂の落ち度である。」

 領主様はちょっと悲しみに満ちた声でそう言った。


 「でも今回の件で、それをバンタイン様に告げない訳にはいかなくなりました。 バンタイン様はそれを聞いた時に、どの様な態度を取ると考えますか。

  フロードの悪事を知っても、フロードの側に立って事に当たると思いますか」


 「アレク、俺はそんなことはないと思っているよ。

  バンタインの兄貴は正義感がとても強いし、庶民の迷惑になる様なことをすごく嫌う。 だから義理の兄にあたる訳だが、死んだあのフロードの長男とは物凄く仲が悪かった。

  そんな兄貴が、今回のことを聞いて、それでもフロードの側に立つとは俺には思えない」


 「そうだな。 デイヴィッドの言う通りだろう。

  私もバンタインが、今回の事実を知って、フロードを許すとは思えない」

 アルフさんがそう答えた。


 とりあえずここまでで、午前中の時間が尽きたのか、領主様たちは帰っていった。


 この場に残ったアルフさんが言った。

 「とにかく一度バンタインにこの事実を知らせる機会を作らなくては話にならない。

  私はバンタインを信じるが、それは私が信じたいからだけであって、考えたくはないが、バンタインがフロードと既に一体化しているという可能性もない訳ではない」


 「俺も兄貴と同じ考えだ。

  とにかくバンタイン兄貴と会って話をしないと、決められない」


 デイヴもそう言うと、少し意を決した様な感じでセカンが言った。

 「デイヴの次兄のバンタイン様をここに呼んで、話をする機会を得るのは簡単に出来ると思います。

  ただ領主様から『重大なことを決めなければならなくなった。 お前も会議に参加するために戻ってこい』と連絡し、その連絡に、奥さんの手紙を添えてあげれば、まずは確実に戻ってくるでしょう。

  もしそれで戻って来なければ、完全に敵対していると見做して構わないという事になります。

  でも問題は戻ってきて、こちらの立場に立たないとなった時のことです。 その場合、最低でも幽閉してしまう必要があります。 その覚悟を持って事に臨めますか」


 アルフさんが厳しい顔をして

 「バンタインを幽閉か。 確かにその場合は、最低でもそれくらいのことはしなければダメだな。

  弟にそんなことをするのは、兄としては嫌だし、そうしたらバンタインはあれで誇り高いから自害する可能性もある。

  だが、これは避けられない。 避けてはいけない事柄だ。 当然親父に相談しなければならないが、私から進言しよう。 私もこの地を守る責任のある領主家の長男だ、覚悟を決める」


 「兄貴、わかった。 俺も覚悟を決める」


 デイヴがそう言うと、ディフィーが

 「もう一つ問題があります。 フロードの下にいる者たちは、どれ程の人がこのフロードの悪事について知っていて、従っているのでしょうか。

  この悪事が公になってもフロードに従う者がどのくらいの人数になるのでしょうか。 その内、砦にいる人数は?」


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