221. ラミアも空を飛ぶ
ラーリア様、イクス様、ミーリア様に報告を終えて、次に僕はサーブに尋ねてみた。
「サーブ、頼んでおいた網はできたかな?」
「ああ、もうすぐ出来上がる。
ターリアたちがまだ寝ているから、都合の良さそうな蔓を取るのをどうしようかと思ったけど、アレア様とロア様が手伝ってくれた。
流石に2人とも巡回で森の中を巡っているから、どこに何があるかに詳しくて、すぐに都合の良さそうなのを見つけ出してくれたぞ。 その後で繊維にしてロープにするのも手伝ってくれたから、思っていたより早く仕事が進んだんだ」
「それは助かったよ。 僕が思っていたよりもずっと早く、すぐにでもその網を使わなければいけなくなっちゃったんだ」
「そうなのか、それじゃあ、早急に仕上げてしまわないとな。
ところで、この網は何に使うんだ」
「それは見てのお楽しみということで、期待してくれ」
網の仕上げをサーブに任せて、次はセカンに尋ねてみる。
「セカン、お前とディフィーの分の防寒着って出来た?」
「うん、防寒着は作り慣れたから、すぐに出来たよ」
「良かった。 それじゃあすぐ後で僕が呼んだら、ディフィーにも言って、2人とも防寒着を着て、尻尾にも毛皮を着けて、家の前の庭に出てきてくれ」
「そんな厚着をして何するの?」
「とりあえず実験。 そして上手くいったら練習」
僕はサーブのところに戻り、作業を手伝って、網の完成を確かめた。
そんなに時間もかからずに網は完成し、珍しく一段高い部屋に入って休んでいたハーピーたちに来てもらう。
「この網の前後の持つためのロープを、前側をアライムとハライト、後ろ側をウスベニメとモエギシュウメに持ってもらいたいのだけど、どうかな?」
ハーピーたちはそれぞれにロープの先を足で掴んだりしてみている。
「どうも、なんだか掴んでいてロープがすっぽ抜けそうで、頼りないな。
ロープの端っこに木の棒でも結んでくれ、その棒を持つようにした方が、ずっと気を使わずに持ちやすくなる」
「ああ、なるほど、確かにその方が良さそうだな」
僕とサーブは手分けしてロープの先に木の棒を結わえ付けた。
「折れないだろうな。 力をかけた途端に折れたら、目も当てられないぞ」
「大丈夫だ、丈夫な木を選んだから、そう簡単には折れない」
「ウスベニメ、後ろ側を持ってくれ。 一度これを持って飛んでみよう」
アライムがそう声をかけてウスベニメと網を持って飛んでみた。
ハライトとモエギシュウメも同様に試している。
「これ後ろ側は、前に合わせて飛ばないといけないから、結構大変かも。
私が前では駄目?」
「ああ、モエギシュウメ、たぶん前の方が重いと思うんだけど、それでも良ければ構わないぞ」
「そうなの、それじゃあ、ま、いいや。 重いのはハライトに任せるわ」
「なんとなく、何をしようとしているのか、想像がついてきたぞ」
サーブがとてもワクワクした感じで声をかけてきた。
「ちょっとセカンとディフィーを呼んでくる」
呼びに行ってみると、外の騒ぎを聞きつけてだろう、セカンとディフィーが防寒着を来て、毛皮を尻尾に着けていた。
尻尾に毛皮を着けるのは、小さな竹の板を鱗に何枚も挟んでいくので時間がかかってしまうのは仕方ない。 ナーリア、レンス、それにアンとメリーがその作業を手伝っている。
「尻尾じゃなくて足だったらと思うのは二度目」
セカンがそんなことを言ったのに、アンが反応した。
「セカン、他にも足の方が良いと思ったことがあるの?」
「うん、炭焼きで窯出しした時も、尻尾が邪魔と思った」
「そっか、足も尻尾もやっぱり一長一短なんだね」
庭に出てきたセカンとディフィーを見てウスベニメが言った。
「セカン、ディフィー、完全装備だね」
「ラミアは人間よりも寒さに弱いから、これでも足りないくらいよ」
これからしようとしていることの見当がついたのだろう、ディフィーがそんな風に言った。
「よし、それじゃあセカンとディフィーは網の上に乗ってみて」
「とりあえず試しだから、危なくないようにほんの1-2mの高さで飛んでみろよ」
今回は担当のないエレオンがそう言った。 エレオンには僕を運んでもらわないとならないからね。
4人のハーピーは、慎重にそおっとという感じで空を飛んだ。
「意外にどうということでもないな。 これならキースを最初に掴んで飛んだ時の方が怖かったぜ。 あいつ怖がって、意識せずに暴れるから」
ハライトがそんなことを言って笑った。
「うん俺も大丈夫だな。 これなら問題ない。 問題は女性陣か」
「私も大丈夫。 乗っている方が網が安定するから飛びやすいわ」
「うん、そうね。 問題ないわ」
軽く飛んで、一回りして、元の場所に降りた。
「セカンとディフィーはどう? 何か問題があった?」
「大丈夫。 キースが怖がって大変だったって聞いてたから、飛ぶのってすごく大変なのかと思っていたけど、これなら私はモエギシュウメとおしゃべりしながら、飛んでいけるわ」
ディフィーがハライトが口にしたキースを引き合いにして、そんなことを言った。
「私も問題ない」
うん、セカンは簡潔だね。
もっと高くまで上がってみるか、という話にもなったのだが、高さが上がってもそんなに変わらないし、寒いからということで、高くまで上がるのは本番の時で良いだろうということになった。
「ところで、ハーピーのみんなには悪いと思うのだが、私も空を飛ぶというのを味わってみたい。 頼むから、私も飛ばしてほしい」
サーブがそんなことを言い出して、実験を眺めていたラミアがみんな我も我もとハーピーに頼んできた。
何人か飛んだ時にメリーが言った。
「ハトのお兄ちゃん、メリーもお空飛んでみたい」
「そうだな、メリーも飛んでみたいな。
でもメリーは人間だから、人間の飛び方をしよう。
おい、エレオン、ちょっと代われ。 俺はメリーと飛ぶから」
メリーはハライトにちょっと長く飛んでもらってご機嫌になった。
まあ、今回は低空飛行だから問題ない。
こうしてサーブだけでなく、ナーリア、レンス、それに網を作るのを手伝ってくれてそのまま居たアレア様、ロア様、そしてミーリア様まで低空だけど空を飛ぶのを楽しんだ。
ハーピーはご苦労様だね。
ラーリア様、イクス様、そしてミーレナさんまでもが飛んでみたがったけど、僕が断固阻止しました。
もしか何かあったらいけないからね。
次の日の夕方に森の際まで馬車が迎えに来てくれることになっているのだが、僕は少し早めに迎えに来てくれるように言って、ハーピーたちには今日は早めに帰ってもらった。
ハーピーたちも連日のこととなっていて、疲れているはずだから。
特にモエギシュウメなんて一晩中、アンを心配して樹上で町を監視してくれていたのだ。 疲れていない訳がない。
イクス様が奥の自室に戻る前に僕に声を掛けてきた。
「そうそう、アレクくん。 アレクくんにも話しておくわ。
上位を全員起こすことになったわ。
起こしたら、まず一番最初に道を延ばして、領主の町まで通す仕事をすることになっている。
人数が一気に増えるから、工事はどんどん進むはずよ」
「え、でもイクス様。 そんなに多人数が起きたら、食べ物に困るのではないですか?
確か、ミーレオ様たちが全員起きるという時でも、ミーリア様がそれを理由に渋っていたと思うのですけど」
「それなんだけど、見落としがあったのよ。
確かに、例年より米をしっかり収穫して貯蔵してきたといっても、そんなにたくさんを食べさせる量はないわ。
でもアレクくんも忘れているけど、その後かなり大量に食物を手に入れたでしょ」
「あ、そうか。 洞窟にあった食料ですね」
「そう、それに、商人が積んでいた荷物の中にも食料があったわ。
その貯蔵用食料の多くが、やはり貯蔵性からだと思うけど、穀類だったのよ。
洞窟には30名で、春まで以上にもっと多くの食物が運び込まれていたみたい。
今、アリファとハキくんが綿密に調べているけど、ラミアは人間よりも何ていうかエネルギー吸収効率が良いというか、あなたたち人間から精をもらっていると小食で済むということもあって、十分に食料が足りそうなのよ。
それなら懸案の道の復旧をさせたい、というのがラーリアの意向なの」
「そうですね。 道が通れば、空を行かなくても町とも行き来が簡単にできるようになりますから、とても便利になります。
セカンとディフィーがとても喜ぶんじゃないかな、策を練るのに幅が広がりますから」
「あら、アレクくんも色々考えているのね。 策を練るのは完全にセカンとディフィーにお任せなのかと思っていたわ」
「もちろん、基本はそうなんですけど、セカンとディフィーはラミアで僕は人間です。 セカンとディフィーには見えない部分がもしかしたらあるかもしれないと思って、一応常に考えようとはしているんですよ」
「確かにそれは重要なことね。」
夜になって、メリーが寝てから、レンスが言い出した。
「アレクは昨晩と今朝と2回も出してないから、今晩は2回は最低でも出せるはず。
明日、セカンとディフィーは一緒に行くのだから、今日は順番からいって、私とサーブの番」
「え、私はないの」
ナーリアがすごく残念そうな声を出した。
「ナーリアは明日の朝、いつものように咥えれば良い」
「ん、順番だから仕方ないか」
ナーリアがそう言って諦めて、サーブがニコニコして、レンスが僕にまず抱きつこうとした時に、アンがおずおずと言った。
「昨晩は、順番じゃなかったのだけど、私がアレクを出さしちゃいました」
ちょっとそれは考えていなかったのか、みんなの動きが止まった。
「アン、人間はラミアの様に子供を作るか作らないかを、自分の意思では選択できないよね。 それって構わないの?」
ディフィーが真剣な声でアンに聞いた。
「あ、流石に私は人間だから、中に出してもらうという選択肢はまだ取れなくて、昨晩はみんなが朝してる様に、口に出してもらって飲んだの」
「まあ、それなら、赤ん坊はできないから、構わないんじゃないか」
サーブがそう言った。
「ん、アンもアレクに裸でくっついて寝るだけでは可哀想。 子供を作るのはタイミングを計って欲しいけど、口でするのは良いと思う」
セカンがそういうとレンスが
「でも人間て、男の精を飲んでも大してエネルギーにらないよね。
なんか勿体無い」
「でもアンは人間だから中に出してもらうのは我慢しているんだ。 口に出すのまで我慢させるのは不公平が過ぎるだろう」
サーブがそう言った。
「じゃあさ、アンの口にアレクが出したら、アンは飲み込まないで、私にそれを飲ませてくれれば良いよ。 そうすれば、アンもアレクに出してもらえるし、アレクの精のエネルギーを無駄にしないで済むじゃん。 そうしよう」
「え、私も欲しい、飲みたい」 レンスがそう言った。
「ナーリア、独占しようとするのは良くない。 アンが口に出されたアレクの精も公平にみんなに分けるべき」
「セカン、もしかして、口に出されたアレクの精を、私が口移しでみんなに公平に分け与えるべきって言っているの」
アンがセカンに聞き返してる。
「うん、そう。 別に女同士、口移しで分け与えても、何の問題もない」
「なんかラミアにとって男の精って、そこまで貴重なものなんだ。
改めて認識しちゃったよ」
「アン、ちょっと違う。 私たちにとっては、男の精ではなくて、アレクの精が貴重。 私は他の男の精なんていらない」
「あ、そういえば、アンがアレクの精を口で受けることにしたなら、アンも朝の順番にも入った方が良いよね」
ナーリアが思い出した様にそう言った。
「そうだな、ちゃんと公平にしないとな」
サーブが賛成した。
こういう時、もう一方の当事者である僕は、誰からも意見を求められない。




