22. 本当に大問題
セカンが気を失った次の朝、驚愕の事態が起こっていた。
セカンが脱皮して、成長していたのだ。
尻尾は蛇なんだから、脱皮するというのも解らない訳ではないのだが、上半身の人間と同じ部分もしっかり皮が残っているのは、僕から見るとちょっと異様な光景だ。
でも僕が驚愕したのは、そこじゃない。
脱皮したセカンは尻尾も一回り太く長くなったのだが、問題は上半身で、今までより、胸もお尻も大きくなり、人間でいえば、思春期前半から一気に思春期後半のもうすぐ大人という体形に変化したのだ。
今までは子供体形に近いということで、ずいぶんと押さえられていた気がするのだ。 メリハリが出来ると目のやり場に困るというか、朝夕だけでなく反応しそうでマズイ。
部屋に居る時は基本裸なんだよ。 嫌でも目に入る訳で。
五人も真剣な声で話している。
「これは隠せないな」
「これは無理よね」
「私もまさか自分でも脱皮するとは思わなかった」
「そろそろ脱皮しそうな予感とかあったの?」
「いや、全く感じてなかった」
「ということは、アレクの精を口でなく、下で受けたからってこと?」
「ものすごくエネルギーを感じたのは確かだけど、どうだろう。 解らない」
「脱皮したことで、私たちがエネルギーを、精を受けていることがバレない?」
「と言っても、これは隠しようがないから、上の人がどう判断するかだな」
「うん、どうしようもない」
「ごめんなさい」
「謝まることはないわ。 こんな事態が起こることなんて誰も予想していなかったのだから」
「でも私がアレクにどうしても『気持ちいい』って言わせたくて、それまでしてなかったことにまで暴走した」
「それは別に良いんじゃないか、私だって下で受けてみたいと思っていたし、この結果を見て、余計に自分もと思っているしな」
「成長したことは、普通にびっくりした、驚いた、という感じでいくしかないよ。 本当にその通りだしね」
「この件は考えてもどうにもならない。なら変に気にせず普通にするしかない」
深刻な話し合いは決着がついたようだ。 僕は自分が悪い訳じゃないと思うけど、当事者の一方ではあるし、ラミアのことだから、口のはさみようもないし、無関係と無視もできないし、黙って小さくなっているしかなかった。
急に思い出したようにレンスが言った。
「私まだ今朝の分の精を受けてない」
自分のしなければならない役割を思い出してディフィーが
「私が食事を用意するわ。 えーとセカンはダメね」
「たまには私が行くわ」
サーブと目配せして、ナーリアがそう言った。
部屋の出がけにディフィーがレンスに言った。
「今朝はもう何も起きないように、普通に口で受けるだけにしときなさいね」
「ん、了解」
僕たちはその後食事をし、トイレに行き、身支度をし、
「普通に、普通に、昨日と同じ様に」と念じながらカウンターの部屋に入っていった。
ナーリアがカウンターに近寄る。
「おはようございます。 今日も普通に採取に行きます」
「はい、おはよう。
あなたたち、昨晩は随分と楽しんだ様だね」
「はい?」
「あなたたち、随分と匂うよ」
「あっ、昨日教えていただいて、昨晩早速となって、そうしたらみんな盛り上がって興奮しちゃって。 それが今朝一人が脱皮したんで、そっちに気を取られて、身体を拭いてくるの忘れちゃて」
ナーリアが顔を真っ赤にして、しどろもどろに弁解している。
「まあ、良いわ。
初めてだったみたいだし、慣れないうちは人間使って遊んだりしたら、興奮しちゃってそんなものよ。
まあでも、一人くらい脱皮して驚いても、明日からは身体くらいはきちんと拭いて来なさい。 あんたたちは周りから羨ましがられる存在なんだからね。 そんな匂いを撒き散らかして、他の子たちを刺激するんじゃないわ」
「はい、今度からしっかり気をつけます」
ナーリアは身を縮めるようにして、返答した。
きっとナーリア以外の僕らにも聞かせるためだと思うのだけど、カウンターのラミアの声は僕にも聞こえる。
ということは、多くの人に、いやラミアに聞かれているということだ。
何だかより一層、浴びる視線が痛い気がする。
「それじゃあ今日はもう少し奥に行って、鳥の卵でも見つけてきなさい。
小川があるから、そこで身体を流せるだろう。 匂いをそのままにずっと一日させている訳には行かないからね」
「配慮していただいて、ありがとうございます」
「どうということではないわ。 私にもそういった失敗の経験があるからね」
ナーリアはまだ真っ赤な顔のまま僕たちの所へ戻って来た。
みんなも顔を赤くしているけど、きっと僕も赤くなっていると思う。
僕たちはそそくさと、大急ぎでその部屋を出て、外に向かった。
用意してもらった道具には、身体を拭くための布まで入っていた。
もちろん僕は真ん中に挟まれているのだけど、ちょっとそのポジションがありがたかった。
「あー恥ずかしかった。 私たちみんな匂っているのね」
「身体を拭くのを完全に忘れてたわ」
「私たち自身はその匂いの中にずっと居たから感じなくなっていたのね」
「夜眠りにつく前にはこれは身体を拭かなければ、と考えてはいたのよ」
「あ、僕もそれは思った」
「なんで忘れるのよ」
「理不尽な、自分たちも忘れたくせに」
「アレク、言っとくけど、アレクからは私たち五人全員の匂いが匂って来てるんだからね。 全然他人事じゃないんだからね」
まあそうだよね。 あれだけくっ付いてなすり付けられたら、匂いも移って当然だ。
それによくよく考えてみたら、この部屋に入るまで「昨日の様に普通に」って頭の中で唱えていたけど、昨日はナーリアが匂い撒き散らしているんで、誤魔化すためにと一芝居したんじゃん。
全然普通じゃなかった。ダメダメだね。
仕事の前に先に小川に入って身体を洗う僕らって、ホント何やってんだろ。
小川で身体を洗って、少し冷えて冷静になったからだろうか。 僕たちは、身体を拭くのを忘れた原因であるセカンの脱皮について、カウンターのある部屋に入って、恥ずかしいと思った瞬間から、全く忘れて行動していたことに気がついた。
朝一であれほど真剣に悩んで話し合っていたのに、本当に何をしているのだろうか、僕たちは。




