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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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218. 領主館での夜

 デイヴはメイドを呼んで、小声で話しをすると、僕とアンに向かって言った。

 「ちょっと待ってくれ、今、三階に部屋を用意するように言いつけたから」


 「なんだか、そういうところを見ると本当に領主家の三男なんだな」


 「なんだ疑っていたのか?」


 「そんな訳じゃないんだけど、なんか実感が伴ったというか。

  あ、お前、今、三階って言ったか。 三階は領主家のプライベート空間じゃなかったのか」


 「ああ、そうだが、他から隔離する意味でも、その方が良いだろう。

  それに親父に後から呼ばれて言われたのだが、アンとメリーのことは領主家が後見するとのことだ。 だから三階でも問題ない」


 「確かにアンのために安全性が増すのは嬉しいけど、そこまで世話になって良いのか迷うよ」


 「いや、そのくらいの事はさせてくれ。

  アンには本当に辛い思いをさせた。 このくらいは当然だ」


 「アレク、領主様もデイヴと同じ様に思っているみたいだ。 だから良いんじゃないか」


 キースもそう言うので、そのまま甘えることにした。

 アンは自分のことが話されているのだが、まだ頭が回っていない様で、良く理解していない様だ。


 「アンはともかくとして、アレクは気をつけろよ」

 デイヴが急に、全く雰囲気を変えて、ニヤッとした顔をして言った。


 僕がどういう意味だろうと考えようとしたら、キースが教えてくれた。

 「デイヴはお前に、裸で出歩いてメイドなんかに見られる様なことを起こすなよ、と言っているのさ。

  俺たちもだけど、アレクもラミア流に慣れきっちゃっているからな。 気が抜けて油断してると、つい裸でも構わずにうろついたりしちゃうだろ。 それを気を付けろということさ」


 あ、なるほど、そういうことか。 確かに気をつけないといけないなと思った。


 「ほら、メイドが来たみたいだ。 会議の方はとりあえず俺とキースに任せてくれ」


 部屋に案内されると、メイドさんは大きな桶にお湯を入れて、布と一緒に持ってきてくれた。

 「こちらはご使用後は扉の脇にでも放置しておいていただければ、私どもが片付けますのでそれで構いません。

  明日の朝、朝食の用意が整いましたら、お声をかけさせていただきます。

  それではごゆっくりお過ごしください」


 メイドさんはそう言って部屋を出て行った。

 こんな風に人にかしずかれるのは、僕もアンも慣れないので、妙に緊張してしまった。


 「ふうっ、なんだか人に世話してもらうのって慣れなくて、僕は逆に肩が凝っちゃったよ」


 「はい、私もです。 私の様な単なる商人の娘が、親とか以外の他の人に世話してもらうなんてあり得ないですから」

 ちょっと同類意識を共有して、アンも少しだけ表情がほぐれた。


 「でも、さすがにデイヴの実家でも、風呂はあまり使わないんだな。

  お湯が冷めないうちに、布を浸して体を拭くか。

  あ、僕と一緒だと、アンは体を拭いたりできないよね。 部屋の外に出てようか」


 「いえ、もう今更というか、慣れちゃいました。

  さすがにまだ他の人だと抵抗ありますけど、アレクは別にもう構いません。

  一緒に服を脱いで、体を拭いてしまいましょう」


 アンはそう言うと、さっさと服を脱いでしまい、布で体を拭き始めた。 僕も遅れじとそれに続く。

 そうだよなぁ、いい加減慣れちゃうよな。

 ラミアの里に来た最初の晩が、僕とナーリアたちは戦闘の後で神経が高ぶっていてはちゃめちゃだったのを近くで見られて、それが誘発したのか、メリーの前で耐えていた感情が爆発して、裸になって僕にくっついて泣いて、泣き疲れて眠ったんだった。

 それで、ナーリアたちがどう思ったのか、朝の順番には入れられなかったけど、夜の順番にはちゃんと入れられて、アンは断れなかったのか、順番の時には僕にくっ付いて寝ている。

 それにこれはメリーも含めてだが、夜はラミア流になってしまい、裸になって寝る様になってしまってもいる。

 そんなだから、メリーがみんなで温泉に入りたがるのもあって、温泉も一緒に入っている。

 確かに、今更というか、慣れちゃうよなぁ。

 僕がアンの背中を拭いてあげると、アンも僕の背中を拭いてくれた。


 部屋には大きなベッドが二つ用意されていたが、アンは言った。

 「今日は本当は私の番じゃないですけど、他に誰もいないですから、私がアレクにくっ付いても構わないですよね?」


 「うん、別にそれは構わないと思う」


 アンは裸のまま、僕にくっ付いてきて、一緒にベッドに転がった。


 「私、あの最初の日、ラミアってこういう種族なんだって思ったんですけど、それって違っていました。

  今になって、やっと、ああこういう事だったんだって分かりました。

  精神的に目一杯緊張すると、こんなに気が昂ぶっちゃって、大変になるんですね。 ナーリアがあの時言った、『今日は我慢できないの』って意味が今はよく分かります」

 アンはそういうと僕にキスしてきた。

 それから少しの間、ラミアに感化されてしまっているアンは、その真似をして僕をまさぐり、攻撃して来た。 僕も負けずに優しくアンを攻撃する。

 アンが裸でくっ付いて寝るだけじゃなくて、そこまで積極的に行動するのは初めてのことで、僕はそれに興奮もしてしまって、ついナーリアたちと同じように、アンの口に出してしまった。 アンはちょっとドギマギしていたが、それがきっかけになったのか、異常な精神の興奮が治った。 全然別のことに、完全に気を取られたからかな。


 やっと心の中の暴風雨が静まってから、とめのない話をしていたのだけど、アンが言い出した。

 「セカンとディフィーと話していたら、本によると今は廃墟となっている町では昔は、人間の男1人に人間の奥さんが1人とラミアの奥さんが2人っていう組み合わせが一番一般的だったんですって。

  ほら人間は子供を産むと男か女かが半々だけど、ラミアは全部女だから、結婚するのにその割合が一番問題がないことになるっていうことらしい」


 なるほど、確かに数からいけばそうなのかな。

 いや、待てよ、男1人に人間の女1人にラミア2人だと、どんどんラミアの方が数が増えていかないか。

 そう疑問を考えていたら、アンが僕が何を考えているのか察したらしく、話を続けた。


 「もう一つ、取り決めというか、暗黙の決まりがあって、ラミアは受精を自分で調節できるから、人間の奥さんが妊娠したら、それに合わせてラミアの奥さんの一方が妊娠する決まりだったらしいの。

  そうして人口構成を調節していたということらしいの。

  ラミアばかり増えても困るというか、人間の男の数が足りなくなって争いにならない様にということだったみたい。

  でも人間の奥さんは大変だったみたい。 妊娠してない方のラミアの奥さんから早く次を作れとせっつかれて。 次は自分の番だから、と」


 僕がそれを聞いて、ちょっと笑うと

 「でも、人間の奥さんは、子育てや家事労働は割と免除されていたらしいわ。

  それはラミアの奥さんがするから、早く次の子作りを頑張れって、ことだったらしいわ」


 僕は本格的に笑ってしまった。


 「でもまあ、それが標準であって、もちろんモテない男性もいたし、事業が成功していた男性なんかはもっとたくさんの奥さんを人間もラミアも持っている人もいたらしい。

  まあなんていうか、基本的に男性は常に不足していることになるから、経済的に問題がなく、当事者が良いなら、何人奥さんがいても良い社会だったみたいね。

  男性にとって良いのか悪いのかは、私には分からないのだけど」


 うーん、どっちなんだろう。 そう言われると僕にも分からない。

 実感としては多くのラミアの奥さんを抱えるのは結構大変な気がするのだけど。


 「それでまあ、中には定期的に訪ねてくる商人だとか、旅人だとかを専門に相手にするラミアの人も結構いて、それも私たち今の人間の常識とは違っていて、別にいけない事というか、後ろ指差される様な事ではなくて、堂々と普通の仕事になっていたんだって。

  そう考えると、私の今まで普通だと考えていた常識なんて、本当に限られた条件の中でのことなんだと、つくづく思ったわ」


 確かにラミアにとって人間の男の精を得るということは、エネルギーを得るということでもあり、食事的な意味合いもある。

 何も食事することが、後ろ指差される様なことである訳が無い。

 でもまあ、実際にラミアの中で暮らしていると、ラミアって変な言い方だけど、身持ちが固いというか一途なんだよなぁ。

 例えばナーリアたちが僕以外の誰かから精を得ようとするなんて考えられないし、他のみんなも自分の決まった相手以外はあり得ないだろう。


 「それでね、セカンとディフィーが言うの。

  人間1人にラミアが2人という原則からいうと、私たちはラミアが5人だから逸脱しているし、今はラミアの絶対数が全然足りてなくて種族滅亡の危機にまだ瀕した状態だから、私たちが何人も一緒に子供を作ることを許してねって。

  なるほど、ラミアはそういう大きな問題も抱えているのかと思ったら、ハーピーはもっと酷いから、もしウスベニメやモエギシュウメがアレクに求めてきたら、それも寛大な気持ちを持って欲しいって。 ま、これは本当にもしもだけど」


 ええっ、興奮してしまったアンの相手をして、何気ない気分でアンの話を聞いていたのだけど、何だか凄い話になっているのに気がついた。


 「えーと、ちょっと待って。

  とりあえずハーピーの2人は、もしもっていう話だから、横に置いておいて。

  今の話だと、アンも僕たちに完全に加わるということで良いの。 ナーリアたちのことは、来年には僕と卵を作ることが決まっているから、その意味では僕の結婚相手というか奥さんたちと言えるのかも知れないのだけど、それにアンも加わる決意をしたっていうこと?」


 「うん、もちろんそういうことだよ。

  一番最初の日は、私もちょっとおかしかったからともかくとして、それ以降も順番の時には裸でアレクにくっ付いて寝ていたんだから、当然そういう覚悟というか決意はするよ。

  そうでなかったら、そんなこと続けてないよ」


 そうか、そうだよね。 確かにその通りだと思った。

 だからセカンもディフィーもそれが当然の前提として、アンと普通にそんな話をしていたのか。


 「アレクは私が加わるのは嫌なの?」


 「いや、もちろん歓迎するというのは変な言い方だけど、アンが僕の奥さんになってくれるなら嬉しいよ」


 他に言いようはないよね。 ま、アンのことは嫌いじゃない、というか、とても優れた女性の気がするから、大歓迎なんだよね。

 ただ、今までそういう風に考えたことがなかったから、ちょっと戸惑っただけで。

 それに僕なんかが、ナーリアたちに加えてアンまで相手になってしまって良いのだろうかという気持ちもある。


 「あ、そうそう、もう一つあった。

  セカンとディフィーは私たちは5人だけど、と言ったのだけど、私はイクス様は良いのって聞いたの。

  だって、今イクス様が抱えている卵ってアレクの子供でしょ。

  そうしたら、レンスが、あれはイレギュラーな事態だから子供はともかく、お母さんは勘定に入れなくていいって。

  ま、勘定には入らなくても、勝手に向こうから関わってくると思うから、悪いけど寛大な気持ちで接してやっくれると嬉しいって、レンスに謝られちゃった。

  イクス様はメリーがお母さんみたいに慕っているし、私も大好きだから同じ奥さんの立場っていうのとは違う気がするけど、私も全然構わないわ」


 そうだった、イクス様もいたんだった。

 イクス様には僕の子供を産んでもらうんだから、奥さんの1人と言えないことはないのだけど、ナーリアたちとは違って、そんな風な感じにはやっぱり思えないんだよな。

 イクス様を好きだと思う気持ちは、かなり強いものがもちろんあるのだけど、ずっと年上だし、ナーリアたちの様に対等な関係ではなくて、やっぱり自分よりずっと上の立場の人というイメージが強いからかも知れない。


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