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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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213/366

213. 人間との本格的な話の前に

 道を延伸させている工事現場に、アライムが飛んで来た。

 「デイヴ、アレク、キース、窓の3箇所に白い布が垂れ下がったぞ」


 待っていた、特にデイヴが待ち焦がれていた知らせが届いた。

 僕たちだけではなく、アライムが飛んで来たのに気がついたセカンとディフィーも僕たちのところへやって来た。


 「やっと合図が示されたのね。 で、どっちなの」

 ディフィーがそう言って来た。


 「良い方の知らせだ。 今度はデイヴも一緒に行くことになる。

  とりあえず、まず第一にラーリア様たちへ知らせて、今後の方針の確認だな」

 僕がそう言うと、セカンが

 「ミーリア様はこっちに来ているから、呼んで来ないと。 あ、来た」


 ミーリア様も気がついて、こちらに向かって来た。

 「合図が示されたのね」


 「はい。 良い知らせです」


 「今日はもう戻りましょう。 今後のことについて人間たちとナーリアを含めて確認をしたいわ。

  人間も全員戻ると、馬車で帰れなくなるから、ラミアも今日はおしまいにしましょう」

 ミーリア様の号令で、その日の作業は打ち切りとなり、全員戻ることになった。


 作業が打ち切りとなり、みんなで家に戻り、僕らと友たち、それにミーリア様は優先的に先に温泉で作業の汚れを落とした。

 この地方の領主つまりデイヴの父親との交渉の進展や、今後についてはラーリア様たちとミーリア様、イクス様、そしてナーリアたちとで話すことにミーリア様が決めてしまったからだ。


 「人数を増やしても、ただ話を聞くだけの人数が増えるだけだし、意味はないわ。

  ラーリア様たちには当然参加してもらわなければなりませんけど、あとはナーリアたちは作戦を考えるのがセカンとディフィーなのだし、場所がナーリアたちの家なのだから加わらねば余計に面倒だわ。

  それと当然当事者である人間たちは参加よ。 そこまでね」


 今はほぼ食堂になっている作業場に僕たちが入ると、すでにラーリア様たちとイクス様、そしてアライム、ウスベニメ、モエギシュウメのハーピーも居た。

 僕たちが作業場に入り、それぞれに適当な位置に座ると、ミーレナさんがお茶を出してくれて、場から去ろうとした。


 「ミーリア、ミーレナも構わないだろ。

  ミーレナを場から外さねばならないと、色々面倒だし、不便でしょうがない」


 「そうですね。 ミーレナを参加禁止にするのは現実的ではないですね。 ミーレナ、あなたも構わないわ」

 ラーリア様の言葉にミーリア様も同意した。


 「アライム、エレオンとハライトはどうした? 二人も当然いるかと思ったのだが」

 僕がそう疑問を口にすると、

 「二人は、領主のいる町と砦を監視中だ。 夜は夜目が利く者に交代してもらっているから、今の時間はなるべく俺たち3人が交代で見張っているんだ」


 「そうなのか、苦労をかけるな」


 「ただ見ているだけだ、大したことではない。

  この前みたいな醜態は晒したくないからな」


 ハーピーたちの中では、この前の野盗擬きとの戦いの時に、陽が出る前の動きを見過ごして、商人たちをほぼ全滅させてしまった事が問題になったようだ。

 ラミアと同盟しての初仕事で大失態をしでかしたということになったのだ。

 それで今現在の領主の町の監視と砦の監視はとても厳重にされることになったようだ。


 「それで現時点の状況を詳しく説明してくれ」

 ラーリア様の言葉にキースが答えた。


 「前回、俺一人で行った時にデイヴが生きていることを伝え、領主様と会う段取りをつけました。

  それを受けて、今度は俺とアレクで領主様と話をして来たのですが、領主様は俺たちが考えていたよりも多くのことを知っていました。

  フロードの件は、商人を定期的に襲っていたらしいことは知りませんでしたが、それ以外のことは全て知っておられました。

  それからゴブのことについても、人間でも情報を集めているようです。

  ゴブがこの地方に侵入して来たことは、領主様だけでなく、狩人も知っていました。 ただ、侵入して来たゴブをラミアが壊滅させたことは知らなかったみたいですが、ラミアが壊滅させたことを伝えると、領主様はラミアに礼を言っておいてくれと言われました。

  それから、新たに判明した状況としては、ここに来たゴブはここに来る前に、この地方に入る手前の村を壊滅させていました」


 キースが一息ついたので、僕が続いた。

 「領主様は僕たちの話を聞いて、同盟とかの話よりも、まずはフロードに対処することに前のめりになったようでした。

  あまりに積極的だったので、供の者が領主様を止めに入り、少し落ち着きを取り戻すという感じでした。

  ただ、当然のことですが、僕たちの言葉の裏づけを取る必要があるということで、時間的な猶予を求められました。

  それは僕たちも予想していたことなので、裏づけを取るためにセカンとディフィーが考えた方法を記した紙に書いて渡して来ました」


 ここまでのことはラーリア様、ミーリア様、イクス様には伝えてあるのだが、他のラーリア様たちのために一応振り返って説明した。


 「それで、その方法とはどういうモノだったんだ」

 ラーリア様の続きを促す言葉に今度はセカンが答える。


 「人間の間でもゴブの脅威が認識されているなら、軍事を平時からその脅威に向けて準備していかなければなりません。

  デイヴやキースの話によると、人間の兵力は領主が統率することになっているけど、実質的な権限の多くをフロードが握っているとのことでした。

  そこが今回人間と同盟を締結するにあたっての一番の問題点だと考えるのですが、とりあえず名目的な指揮権は領主の方が上なので、フロードにゴブに対応するために、この地方の有力者を周り、兵力を出すことへの協力を求めると共に、確認をしてくるように、という命令を出してもらうことにしました。

  この命令はフロードの立場では、普通なら断ることができない筈です。 フロード本人か、本人の代行として息子が有力者を周り、もう片方が砦に残れば良いのですから。 フロードも領主が当然そう考えたと考えると思います。

  この命令を出すことにより、それを普通に受けて実施できれば、フロードの嫌疑は晴れますが、そうでない場合は問題があったことが明白になります。

  また、砦に正式に使者を出すことになりますので、その使者の目からも砦の中の様子が知れて、領主の耳に入ると思います。

  私たちには、フロードの息子が突然消えて、砦の内部が混乱しているであろうことは明白なのですが、フロードにしてみれば、そのことを領主に知られたくない筈です。

  だとすると考えられるのは、領主の息子が不在の原因を我々ラミアの仕業とすることと、命じられたことを娘婿であるデイヴの次兄に代行してもらうことです。

  そうなると、領主の館では、フロードの息のかかる者は、デイヴの次兄と結婚したフロードの娘の周りくらいになり、デイヴが領主の館に交渉に行っても危険はあまりない状態になるのではないかと策を練りました」


 「そんなに上手く、領主の館からフロードの手の者が減るの?

  まだまだ残っている可能性も大きいのではない?」

 ミーリア様が疑問の言葉を入れた。


 「砦の普段の兵力は100名程度だということです。

  この前の人間との戦闘で、フロードの息子をはじめとして30人以上討ち取りました。

  その人数は砦の兵力の約1/3ですし、その中にはフロードの紋入りの剣を持った者が5人も居ました。

  30以上という人数もですが、剣を与えた者が5人も居なくなったことの方が、フロードにしてみればもっと問題となり、信頼できる者を砦の自分近くに戻さねばならない状況に陥ったと推察できます。

  領主の館に、デイヴの生存が知られていないなら、娘の護衛を除いて残す余裕はないのではないかと考えます」

 ディフィーが答えた。


 「なるほどね、確かにその可能性の方がずっと高いでしょうね」

 ミーリア様も納得された。


 「それで、アレクとキースが領主の町を離れてからなのですが、次の日に早々に使者らしき者が砦に向かいました。

  数人で向かいましたが、主には二人だと思われます。

  それで砦には一日居ただけで次の日にはもう元の領主の町に戻りました。

  移動は馬で、少し急いで走らせていましたから、移動には半日かかっていません。

  それから昨日になって、今度は少し豪華な馬車と、その護衛らしい騎馬が10騎ほど、砦とは違う方向に向けて出て行きました。

  そして今日、待っていた合図の布が領主の館の窓に三枚垂れ下がりました」


 アライムの報告を聞いて、ラーリア様は

 「デイヴ、キース、今の話からどの様に考える。 領主の館でどの様なことが起こったか、その推察を述べてみよ」


 デイヴが答えた。

 「はい、たぶん砦に向かった主な二人というのは、片方は父の手の者で片方は私の次兄のバンタインの手の者だと思います」


 ミーリア様が口を挟んだ。

 「デイヴの次兄というと、その砦のフロードという者の娘を妻にした方ね」


 「はい、そうです。

  父はそれを考慮して次兄の手の者の中から一人を使者にしたのだと思います。 いや、これはセカンとディフィーの策の内かな。

  それで、砦に行って、砦の内部がてんやわんやしていて、それですぐに元の町に戻ったのだと思います。

  父親の手の者は、その状況を早く伝えるため。 次兄の手の者は砦の内部事情を父の手の者にあまり見せない様に、次兄への手紙でも持たされて早々に戻されたのでしょう」


 「キースはどう思う。」

 ラーリア様はキースにも訊ねた。


 「デイヴの推察の通りだと思いますし、セカンとディフィーの予想通りの動きをしていると、改めて驚いています」


 「だとすると、昨日馬車で出て行ったのは、デイヴの次兄ということか」


 「護衛のついた、ちょっと豪華な馬車ということは間違いないかと思います。

  ただ、次兄の警護の騎兵の数が、俺の記憶だと6人だったと思うのですが、10人だったということですから、多くなった分はフロードの手の者かと思います」


 「なるほど、確かにそれは考えられるな。

  でもそこにそのフロードの手の者が加わったのなら、館のフロードの手の者は少なくなったということだな」


 「はい、そうなりますし、セカンとディフィーの読みでは、まだこれからすぐに館や町からフロードの手の者が砦に向かうだろうということです」


 セカンとディフィーはその言葉に頷いた。


 「で、俺とキースとアレクはその動きが確認できたら、即座に親父のいる町に向かい、話をすることになります」

「今回は夕刻に、領主の館に狩人が招待されたという体裁をとります」


 「そういうことは普段にもあるのか? そうでないと目立つ行為な気がするのだが」

 ラーリア様がちょっと心配してくれた。


 「大丈夫です。 そういうことは俺が子供の頃からちょくちょくあることですから、町の者は誰も気に留めないと思います」


 それからの話は、セカンとディフィーも加わり、どの様にしてフロードを排除するかという策が練られた。

 あらかじめ考えていたのだろう、こういう作戦に関してはセカンとディフィーの独壇場で、周りの者はみんな、その作戦の細かいところの意味や、疑問点を二人に聞くだけであった。

 僕もだが、みんなも考えているのだが、二人の作戦以上のことは何も思い浮かばない。


 「全くもって、こういうことはセカンとディフィーの二人に任せるのが一番だな。

  それにしても俺は二人が味方で良かったと思うよ。 全然敵う気がしないよ。

  フロードの滅亡は、この二人を敵にした時に決まった様なものだな」


 ボブが、観念したという感じでそう言うと、二人は嫌そうな顔をしたが、僕を含めた人間たちとナーリアたちは、ボブの言葉をもっともだと思った。 ラーリア様たちは苦笑している。


 「ま、ボブ、私もそう思うよ。 策を練らしたら、この二人に敵う者はまずいないな」


 「ええ、本当に。

  この二人は図書館で何をしているのでしょう。

  兵法書ばかりを読み耽っている暇はないはずなんですけど」

 ラーリア様の言葉に、ラーリド様が変な同意の仕方をした。


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