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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
過去をただす

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193/232

193. 報告

 戻るとラーリア様たちやイクス様、ミーレナさんは揃って僕たちの家で待っていた。

 とりあえずの報告をして、わざわざ洞窟の方に戻ってきたアレア様がミーリア様にそのことを報告していたから、僕たちは何も迷わずに家へとやって来た。

 まあ、ラーリア様たちにしてみれば、今は臭くて寒い奥の家にいるより、僕らの家にいる方が余程快適ではあるだろうしね。

 ミーリア様たちは途中で集落に少しだけ立ち寄った。

 急に起こされて集落の警備をさせられていた、ミーレオ様、ミーレド様、ミーレファ様、ミーレル様に、今回の事態を説明するためだ。

 だけど実際はそれだけじゃなかったようだ、ミーリア様たちはそのついでにちゃっかりと集落の中の自分の私室に立ち寄って、着替えを取ってきていた。


 「ラーリア様、一応とりあえず洞窟に巣くった者どもは全て退治してきました。

 こちらの損害はありません」


 「うん、ご苦労だった。

  人間の数が足りないみたいだが、どうしたんだ?」


 「はい、彼らは捕獲した馬や馬車、その他のモノのために、今日はその洞窟に泊まってくれることになりました。

  馬がラミアに馴れていないので、人間に任せることになりました」


 「そうか、人間がいるのに、馬に無駄なストレスを与えることはないしな。

  それでは明日は道を開くことになるか」

 「はい、そうすることになります。

  それで、残念ながら、この二人を除き、今回駆け付けるのが遅かったため、商隊の商人や護衛を助けることができませんでした」

 ミーリア様の言葉とともに、ラーリア様たちの前にアンとメリーは連れて行かれた。


 アンがラーリア様に挨拶した。

 「私はアンナと言います。 こっちは妹のメアリーです。

  私たち二人、皆様に盗賊から助けていただきました」


 ラーリア様も二人に声を掛ける。

 「私がこのラミアの里のリーダーのラーリアだ。

  他の者を助けてやれなくて残念だった。 とにかく今は少し体を休めるが良い。

  落ち着いたら、少し話を聞かせてくれ」


 ラーリア様はそういうと顔を僕らの方に向けて言った。

 「ナーリアたち、この二人の世話を頼むぞ。

  まずは温泉に浸かって、リラックスして、食事を摂るように。

  食事は中でミーレナが作っている。

  そうして少し寝かせてやれ。 きっと疲れているだろう。

  ただし、ナーリアとアレクはまだここに残れ」


 サーブたちが二人を連れてラーリア様たちの前から離れた。


 「さて、ミーリアたち、後でゆっくりと話を聞こうと思うが、早急に報告しなければならないことがなければ、温泉に行って良いぞ。 どうやらそのつもりで着替えを持ってきたようだからな。

  アレア、アーロア、アリファも温泉に行って良いぞ」


 「あ、アーロアは残ってください」


 アーロア様はミーリア様に温泉に行くのを止められてしまった。

 アーロア様は、げっ、という顔をして、アレア様、アリファ様の顔を見たが、アレア様はちょっと頑張ってという顔をしたが、アリファ様は気付かない振りをして、二人とも急いで立ち去ってしまった。


 「さて、ミーリアは当然だが、人間たちも今回は話に加わってもらうぞ。

  中で座ってゆっくりと話をしよう」


 僕たちはみんな、もうほとんど食堂になっている作業室に向かった。


 中に入ると、話を始める前にまずお茶をミーレナさんが配ってくれた。

 それから、ラーリア様たちが手分けして、熾を載せるのに作った台に、炭を載せて部屋に持ってきてくれた。


 「今朝になったら、少し臭いが薄くなっているのに気がついた。

  もう噴出は止まっているのだろうと思う。

  昼になってから、一度奥に行ってみたのだが、もう大分朝よりも薄くなっていた。 そこでもうここでなら大丈夫だろうと思ってな」


 ラーリアの方たちは僕たちに、ミーレナさんが作った食べ物も並べてくれている。

 そう言えば朝から今日はほとんど食べていない。


「構わないから、食べながら話をしよう」

 ラーリア様がそう言ってくれたので、僕たちは並べられた物を遠慮なく食べ始めた。 我慢できる訳がない。


 「では、もう少し詳しく話を聞こうか」


 「はい、私たちが現場近くの集合地点に集まった時には、懸念していた通り戦闘はもう始まっていました。

  ハーピーからの報告で、盗賊どもの人数も武器も配置もわかっていましたし、戦闘の起こっている場所も、事前に私たちが想定していた場所の一つでしたので、即座に行動に移りました。

  ただ、ボブから申し入れがあり、人間が先鋒を務めたいとのことでしたので、計画のミーリアとそれ以外の役割を入れ替えました。

  ま、一つには、まだミーリアの持つ槍の補修が遅れて間に合っていないことも、私の頭にはあったのですが。

  それと、それに伴い先鋒の指揮を、予定より早いなと思ったのですがナーリアに任せました。

  流石に無理がある可能性も高いので、アーロアとアリファを補佐に付けました。

  野盗の飛び道具は矢を使う者が、見張りを兼ねてでしょうか2名戦場の外側に配置されていましたので、その2名はあらかじめ、アレアとレンスに排除を命じておきました」


 ミーリア様に目線で促されて、アーロア様が報告する。

 「先鋒の指揮はナーリアがしっかり務めました。

  もっと緊張して慌てるかなと思っていたのですけど、戦闘の開始も分けておいた人数を脇から突っ込ませるタイミングもしっかりと図って指揮していました。

  流石です」


 「でも、私、その後何もしていません。

  私も戦いに突っ込もうとしたところを止められて、その後は迫ってきた敵はアーロア様とアリファ様が処理してくれて、指示もアーロア様が出してくださいました」


 「ナーリア、ディフィーもちゃんと一人斬っているでしょ。 私たちだけじゃないよ。

  それに戦場で指揮するのが初めてで、あれだけ落ち着いて指揮が出来れば十分だよ。 指揮した後で、自分もその場に突っ込んで行こうとしてしまうのは、それは仕方ない。 指揮したことのある者なら、誰でもその気持ちは分かるから、流石にそれは年上の私としては経験者として止めるくらいのことはするし、補ってあげようとはするよ」


 ナーリアの言葉にアーロア様が答えていた。

 僕はアーロア様とアリファ様が僕たちと一緒だったのは、最初からそういう意図があったのだと初めて気が付いた。 僕はそこまで全く気が回っていなかった。


 「ナーリア、自分で実際に戦闘の指揮をするというのは、経験してみると凄いものだろう」


 「はい、あんなに戦闘開始を指示するのが緊張して大変だとは、作戦のタイミングを待つのが長いとは、そして自分がただその場に居なければならないことが、こんなにも難しくて、辛いものだとは思いませんでした。

  ミーリア様の姿を見ていて、十分に分かっていると思っていたのですが、自分で体験してみると全然別物でした。

  アーロア様がいらっしゃらなかったら、私、絶対に我を忘れて戦いの場に突っ込んで行ったと思います」


 「アーロアも言っていた通り、その気持ちは指揮をしたことのある者なら誰でも理解できる。

  実際、私はそれがどちらかというと我慢できない質だからな、だから何とかだが我慢できるミーリアやお前の方が、私より指揮官としては上だということだ」


 「それは違います。

  ラーリア様の圧倒的武勇が戦場には必要だったため、ラーリア様は指揮することだけに専念できないだけのことです。

  私が指揮に専念できるのは、そこまでの圧倒的な武勇が私にはないことの証明でもあります」

 ミーリア様がそう訂正したが、確かにミーリア様の言う通りだろう。


 「ま、それはともかく戦闘はどうだったのだ」


 「戦闘は全く問題がありませんでした。 ミーリアは逃さないために包囲陣を敷いていたのですが、全く必要なく、戦闘自体はほとんど人間たちが簡単に済ましてしまいました。

  例外は先ほど触れた弓の二人と、ナーリアを狙ってアーロアたちに討たれた4人だけです。

  ただ最後まで残った5人が卑怯にも降伏の真似をして騙し討ちしてきた時だけ、人間たちが実戦に慣れていないこともあり、ちょっと危なかっただけです。

  しかし、最後に私が失敗を犯してしまい、最後の一人をつい感情に任せて殺してしまいました。

  最後の一人は後々のことを考えて生かしたままに捕らえておくべきでした」


 「いえ、ミーリア様、あの男は駄目でしょう。

  私もイラッときていましたけど、他のミーリア様たちも今にも槍を突き入れそうな感じでしたから。

  あの場でミーリア様がサクッといかなかったら、次の瞬間にはあの男は絶対に槍でめった刺しになっていたと私は確信できます」


 確かにあの時に膨れ上がったラミアの怒気は凄まじかった。

 ミーリア様の圧倒的な冷気が場を押さえつけていたから誰も動かなかったけど、そうで無かったら、あの男は全身切り刻まれていたことだろう。

 ラーリア様もなんとなく状況の想像がついたようだ。


 「まあ生かしておくことの難しい、如何しようも無い者も世の中には多い。

  そこまでの者だったのだら、それは仕方ないであろう」


 ここでエレクが声を出した。

 「この後でも、まだ関係する者を捕えることは、きっと出来るのではないかと思います。

  この結果を、あの洞窟にいた野盗どもの仲間は知りません。

  きっと今まで通りに、というか連絡が行かなければ、結果を知ろうとしてまた連絡員が現れると思います。

  その現れた者を捕まえれば良いのではないでしょうか」


 「エレク、言っていることは理解したが、少し話が跳んだな。

  まずは経過を最後まで聞こう」


 ミーリア様が続けた。

 「はい、それで結局野盗は全て退治してしまったのですが、残念ですが先程の通り、馬車の中に隠されていたあの二人を除き、商隊の商人も護衛も助けることができませんでした」


 「野盗どもは最初から皆殺しにするつもりだったみたいで、野盗に殺された護衛や商人は、ほとんどが無慈悲なとどめを刺されていました」

 ケンが言葉を付け加えた。


 「戦闘自体の話はここまでなのですが、その後、死体の処理をして、残された馬車や馬を接収して洞窟へと向かいました。

  洞窟内には馬が5頭いたのを始め、食料や馬のための糧秣、生活用具などがかなり多量にあり、洞窟がほぼアジトというか、半ば前線基地の様に整備され始めた感じになっていました。

  私たちはとりあえず一度こっちに戻ることを考え、馬の世話と、馬車を持って来ることができないことから、デイヴ、ハキ、ギュート、キースが洞窟に残り、他は戻ってきました」


 「その人選には何か意味があるのか?」


 ボブが答えた。

 「ギュートが馬に関しては一番詳しいので、まず第一に。

  ハキは馬の世話も出来ますが、馬車の積み荷を調べるために。

  デイヴとキースも馬の世話も出来ますが、商人の持っていた書類などを調べるつもりとのことです」


 「なるほどな、それぞれに意図があって洞窟に残ったのか。

  ところで、今回のこの洞窟に巣くった野盗どもに関して、人間たちはどの様に考える」


 「俺たちは、この野盗たちは野盗ではなくて、砦にいる人間が野盗に偽装した者だと思っています。

  その証拠としては、ハーピーの監視により、砦との間に連絡のやり取りをしていたことが明白であることがわかったこと、ミーリア様に最後に殺された者が、自らを高貴ななどと称していたこと、その者が投げ寄越した剣にも特徴があるとデイヴとキースが言っていました」


 「そして、僕たちが今まで知っていたラミアの起こした事件のほとんどにラミアが関与していないこと、大火の原因が故意にラミアのせいになっていること。

  その者が、『ラミアが冬も動けるとは思わなかった』と言ったことも、今までのことに関与していることの裏付けかもしれません」

 ボブとエレクが答えた。


 「なるほど、ラミアからしてみると、かなり腹立たしいことになっている訳だな」

 ラーリア様はそう言った。


 「デイヴとキースはもしかするとこの件に関しての、何かしら証拠になる物を探しているのかもしれません。

  僕は二人が何か考えていると思っています。

  二人が戻ってきてから、この件についてどんな対処をしなければならないかを考えた方が良いと思うのです。

  出来れば、僕らが人間であることを除いて考えても、今、人間とラミアの対立を深めたくありません」


 「下手に動くと、砦の奴らがラミアを敵対視して襲って来る可能性があるということだな」


 「自分に都合の悪い事実の発覚を恐れて、ラミアにその責任をなすりつけようとして来る可能性が高いよね」

 ボブとエレクは僕の考えを先読みして話をする。


 「砦だけならまだしも、もっと大きくこの辺り一帯の人間を巻き込もうとするかもしれない。 その可能性も結構あるんじゃないか」

 ケンの言うことも、あり得そうだ。


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